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鷹取リュウゴ
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感じるミルクバー1

1初めてのバー  林田が何やらウキウキした調子で放課後空いてるかどうか聞いてきた。 何かあるなと思いつつ大丈夫だ、と言うと一枚のカードを出し顔の真ん前に近づけた。 『バー 【Juicy Freak】』 「バー? バーに何の用だよ?」 「飲みに決まってんじゃん。バーなんだから」 「ま、そりゃそうなんだろうけど、居酒屋と違ってなんか敷居が高くね?」 スーツをビシッと着たフォーマルな紳士がバーボンとかを飲んでいるような光景が目に浮かんだ。 きっとそんな洋画を見て覚えているためだろう。 「いや、そこまでかしこまった雰囲気じゃないぞ。俺らみたいな学生も普通に行ってるし」 「マジで?」 「ああ。料金だって別に高い訳じゃないし」 「そうなのか?」 「俺でも払える値段設定だ」 「ふ~ん。だったら行ってもいいか」 「よし。決定な! じゃぁ、また連絡入れるから後で落ち合おうぜ」  林田は嬉しそうに少し顔を赤らめて別の教室へと移動した。 俺はと言えば引き続き同じ教室で次の講義を受ける。おっと、チャイムが鳴る前にトイレに行っておこう。  今日の講義を全て受け終わって学内の中庭で林田を待つ。 スマホでゲームを楽しんでいると林田のメッセージが届いた。奥義ゲージが溜まっていよいよボスが倒せそうな局面ではあったが、 うっかりメッセージを開いた段階で俺の持ちキャラは全員死亡が確定した。 3、4分後に林田も中庭に現われた。 「ごめんなー。待たせた」 「いや、それほど待ってねぇし。それよか俺のパーティが全滅しちまったのは無念だな」 「ああ、あれか? 微課金で遊んでるって言ってたアレだろ?」 「アレでは無く『アレイアス=サガ』だ」 「ま、そんな事より早速飲みに行こう。お前が店に入ってどんな反応するか楽しみだな!」 何気に前屈みになっている林田。なんだ? 勃起でもしてんのか? 「……変な姿勢で歩くんだな。チンポでも勃っちまったのか?」 「バッ! ババ、バッカ野郎! ち、ちげーよ! そ、そんな訳ねぇから!」 妙に焦ってやがんの。それじゃぁ勃起してるって正直に認めてるようなもんじゃないか? と、思ったがそれ以上追及するのは止めてやった。追い詰めて凹ませても悪いし。溜まってなくても勃起してしまうなんて俺にだってあるし。  バーは大学から離れた都心の中にあった。周囲は高層ビルだらけでスーツを着たサラリーマンばかり。 俺らがちょっと浮いてるようで居たたまれない気分になってくる。 「なぁ、林田。本当に学生も来てんのか? そのバーに」 「初めてのバー体験で緊張してきちまったのか? ヒロちん、なんて繊細なの!」 「ヒロクニ、だ。ちん付けすんなし」 林田と下らない話をしているとバーの入っているビルに到着。 他のビルと比べても特に目立つ造りでは無く、地図だけを頼りに訪ねたら辿り着けなかったかも知れない。 それほど平凡なビルだった。 エレベーターに乗り林田は迷いもなく最上階のボタンを押す。 「……林田は何度も来てんのか?」 「いやぁ? 俺はこれで4回目かな? ――さぁ、着いたぞ」 エレベーターのドアが開いたらもう店内、と言う構造では無く短い廊下を挟んでいた。 木製のドアには小さく【Juicy Freak】と書かれている。さらにその下に【男性専用】との文字が見えた。 「いらっしゃいませ。お客様、2名さまでよろしいでしょうか?」 ドアを開けて入った俺たちに黒いベストに蝶ネクタイを結んだギャルソンが頭を下げて挨拶をした。 「へへ。また来ました。今日は初めてここに来る連れも居ます」 「ご友人をお誘い頂いたんですね? 誠にありがとうございます」 恭しく頭を下げるのは良いけど、このギャルソン、ベストの下に何も着ていないじゃないか。 しかもエプロンの陰から生足も見えてるし。どう言う恰好してんだよ。随分と筋肉がムキっとしてるけどさ。 「では、初めてご来店になるお客様もいらっしゃると言う事ですので先にご案内とご説明をさせて頂きます」 「あ、はい。分かりました」 「悪いけど俺、先にバーに入ってるから。もう飲みたくて我慢できねぇ」 今、俺たちが居るスペースはバーと言うよりも品の良い老舗ホテルのロビーのような空間だった。 バーはもう一つのドアの奥にあるようだ。 「おま、どんだけ酒好きなんだ? 俺を誘っておきながら置いてけぼりとは信じらんないんですけどぉ~」 ギャルソンの男が俺と林田の双方見て口を挟んだ。 「もしかして、林田様はこちらのシステムなどをお話になってらっしゃらないのでしょうか?」 「へへへ、実はコイツの驚く顔もオカズにできるかな、って思って」 「でしたら、ご一緒でないと驚く顔も何も、見えないんじゃないですか?」 「そっか。そうだった。ん~、でも待ち切れねぇ~」 「では、ひとまず林田様と共にバーに入って頂きまして、私がその都度こちらの方のご質問に答える、と言う流れでいかがでしょうか?」 「あ! それ良いですね! じゃぁ、詳しい説明はお任せしますんで早く飲ませて下さい!」 「はい。承りました。ではお客様も一緒に奥へ参りましょう」 「え? あ、はい……」 何だか勝手に仕切られ乗せられた感が無くはない。 「恐れ入ります。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」 「高崎です。高崎 博国(たかさき ひろくに)」 「ありがとうございます。では、高崎様、こちらへお願いします」 促されて今度こそバーのドアをくぐる。ピカッとレーザーのような光が俺を包んだ。 すると、『生体情報分析、及び個体登録完了しました』、と無機質な音声が聞こえた。 「これで高崎様も当店のお客様として登録できました。次回からはすぐにご入店が可能になります」 会員制? だろうか。顔認証ならぬ「人認証」とか、随分と最新鋭じゃなかろうか。 林田も光線を浴びたが機械音声は『いらっしゃいませ。中へお進み下さい』としか言わなかった。 2枚目のドアは音も無くゆっくりと内側に開いた。

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