SamSuka
鷹取リュウゴ
鷹取リュウゴ

fanbox


逆転セクサロイド 4 終章

4「ヒト?」とセクサロイド  再生チームが頑張ったお陰で一年後では無く半年後、オリジナルの「ケンタ」のカラダの再生が完了した。 そのため、セクサロイドの「仮の」カラダで生活する必要がなくなった。 榊原総合病院に付属する榊原生体研究所に特別に入る事を許された俺は、ケンタと一緒に完成した新たなケンタの、 いや、事故に遭う前の元のカラダと対面させてもらった。 培養槽の液体の中にゆらゆら浮かぶケンタの肉体。 これこそがケンタである筈、なのに何故か人間を模した「人形」みたいに見えて仕方がなかった。 「ケンタ。その、良かったな。やっと本当のカラダに帰れるんだ」 「う~ん、まぁ、嬉しいと言ったら嬉しいんだけどさ、正直、こっちの『セクサロイド』のカラダも気に入っちゃってんだよね。 手放すのは惜しいなぁ」 「とは言ってもさ、そのカラダだと何年たっても老化しないんだろ? 長く使って周囲から不自然に思われない内に元のカラダに戻っておかないと、 後で面倒な事になるんじゃないか?」 「それもそうだよね。うん。ユキヒロの言う通りだ」 ニッコリ微笑んだケンタは、培養槽の中の「自分」をじっと見つめ、それからそばに居た研究スタッフの1人に声を掛けた。 「あっちの方はできてる?」 「はい。完成しております。あとは脳内情報を転送するだけで起動可能となっております」 「そう。ありがとう」 ケンタが振り向いて俺に言う。 「あのさ。実は、今まで黙ってたんだけど、ユキヒロのも造ってもらってたんだ」 「はい?」  どう言う意味? 「ユキヒロの細胞をベースに『セクサロイド』へ移植して生成したカラダなんだけど。つまりセクサロイド・ユキヒロバージョン」 「は? お、俺の? 『セクサロイド』!?」 「今の俺、つまり『KE-602』をさらに改良した優れものでさ、基本形以外に4種類の形態に変形可能になってるんだよ。 それに、それに、チンポの大きさも最大6倍にまで大きくできる仕様だから」 「ろ、6倍ぃ!? って事は、最大90cmになっちまうじゃん!」 「すっごくおっきいユキヒロが見られるね!」 「見られるね、 じゃぁねーよ! 何、勝手に俺をベースにセクサロイドなんか作ってんだよ!」 「いや、ちょっと面白いかなぁ、って。それにさ、俺よりでっかいチンポになったユキヒロとセックスしてみたかったし」 「うぅ……、ま、まぁ、それは、しょ、しょうがないじゃん。何回セックスしたって急にチンポがでかくなる訳ないんだし。 てかさ、やっぱケンタもデカい方が良かったのかよ?」 「そりゃそうだよ! 俺だって奥のほうまでガンガン突いて欲しいんだ! ユキヒロだってそう思ってるだろ?」  まぁ、確かに……。 できればもっと深いところまで掘り込んで、じっくりたっぷりケンタを責めて感じさせてやりたいと思っていた。 俺ばっかりケンタのでっかいイチモツで「最高」なのを味わわせてもらって申し訳ない、って気持ちもあったし。  結局はケンタの説得に負けて俺は『セクサロイド』になってみることにした。 聞けば、元のカラダにはいつでも戻れると言うことなので安心したためもある。 ケンタに手を引かれ隣の部屋に入る。いくつも並ぶ培養槽の中、俺の顔をした「一体」が液体の中、何本ものケーブルに繋がれ静かに揺れていた。 「こ、これが……?」 「そうだよ。『セクサロイド YU-801』 俺の『KE-602』と違って新機能が追加された改良型だよ」 顔こそ確かに俺、「山下ユキヒロ」の顔をしているが、培養槽の中の肉体は筋肉隆々のビルダーマッチョボディであり、 ペニスサイズが本当に90cmはありそうな、モンスターサイズのチンポが股間からぶら下がっていて膝を超えた先に亀頭が頭を出しているのだ。 「……あの、さ、デフォの状態でこれ?」 「そう。基本形はこれだね。意識を向ければちゃんと今のユキヒロに近い体型に変化するから」 「ふうん、……で、一つ疑問なんだが、この『YUー801』だっけ? に、なるのをもしも俺が拒否したらどうする気だったんだ?」 「どう、って言われてもなぁ~。そんなの考えたこともなかったよ。あ! 良い事思い付いた! 俺がこのカラダに入ってさ、『セクサロイド・ユキヒロ』としてユキヒロとセックスしまくるっての、どう?」 「すると、俺が俺とヤるってことじゃん。ややっこしいなぁ! それに、体格は違ってるけど同じ顔の者同士でサカるなんて萎えちまわないか? ――と、言う訳でその案は却下だ」 「じゃぁ、俺がユキヒロの『セクサロイド』になってる間、ユキヒロは俺のこのカラダになったら良いじゃん。それで同じ顔の者同士じゃなくセックスできるよ?」 「いや、そう言う問題でも無いんだが……」 無邪気に笑うケンタの顔を見ていたらこれ以上の問うのがバカバカしくなった。 すんごく目をキラキラさせて100%の期待を俺に向けてくるもんだから。 「しょうがないなぁ、わかったよ。ケンタの望み通りこのカラダになってやる。『セクサロイド』になったら、ケンタのケツがガバガバんなるまで掘って掘って掘りまくってやるからな!」 マジ覚悟しろよ、と言うと 「さすがユキヒロ! 俺の見込んだ通りの男だよ~! それじゃぁさ、早速ユキヒロの意識を転送してみようか! 処置はすぐに済むから安心してよ! 『セクサロイド』になった初めの2、3時間は肉体情報と脳内情報の結合や整理で少しふわふわした気分が続くだろうけど、それも終わったらちゃんと落ち付くからさ」 「俺が『セクサロイド』になってる間、この『元』のカラダはどうするんだ?」 ケンタと違って事故にあった訳でも無いから、再生する組織も部分も何も無い。 しばらく顎に手を当てて黙り込むケンタ。どうやらそっちも考えていなかったようだ。 「培養槽の中で眠っていてもらう、ってのもアリだけど、眠ってもらわず2人のユキヒロとセックスするのも良さそうだよなぁ~」 「ちょ!? 俺の脳内情報を『セクサロイド』に転送したら、人間のカラダにゃなんも残らないんじゃないのかよ?」 魂の抜けた「抜け殻」になってしまうモノとばかり思っていたけれど、ケンタの回答は違っていた。 「そんな事ないよ? あくまでコピー、複製した脳の情報を『セクサロイド』に注入するだけ。だから、完成したボディさえあれば、いくらでも、何人でもユキヒロを増やせるんだけど」 完成品が現状、俺の顔をしたこの一体だけ、と言うことらしい。 「それにさ、ヒトとセクサロイドの両方の意識をリンクさせて、『1人で2体、3体、もっと多く』になったりもできるけど」 研究スタッフが俺にそっと耳打ちをしてくれた。一体完成させるためには時間以上に製作予算が半端無いと言う。 具体的な数字は言わなかったが、安く仕上げようとしても軽く「数億」は必要らしい。 「ま、待った。もう、分かった。分かったから約束してくれ。俺の知らない所で俺の『セクサロイド』はこれ以上作らないと。 俺の脳内情報も、絶対に俺の許可無く何かのボディに転送したりしないって」 「ユキヒロがそう言うんなら約束する。ただし――」 「ただし、何だよ?」 「今まで以上に俺とセックスしてくれよな! 最低でも一回で3発以上! んでもって、2日以上は間隔を開けないこと! ってね」 それこそ『セクサロイド』でしか応えられないレベルの精力が必要だな、と思った。 「本当は俺、毎日ユキヒロとセックスしたい。毎晩ユキヒロを感じていたいけど、さすがに無理だろ? だから、 これくらいで我慢するよ」 ケンタが屈託ない笑顔で「へへっ」と笑う。 そんなケンタが今の俺にはとても愛おしく、俺の心とカラダ(の一部)が熱くなるのだ。 「よし、それなら早速俺を『セクサロイド』にしてくれ。ケンタと早くヤりたいしさ」 さっきまでの躊躇や不安はどこへやら。 ケンタとのこれまでのセックスを思い出し、今じゃすっかり雄の味に夢中な俺。 男同士でセックスなんてあり得ない、って思っていたのが今じゃ逆。男同士の良さを知らないなんて人生の損失だ、と意識が逆転していた。 「セックスした相手の常識や精神まで逆転させるセクサロイド――か……」  椅子に座った状態でケーブルの先端が針状になっているプラグが後頭部に刺し込まれた。チクリとした。 そのまま水槽の中に入ればたちまち培養液で俺の周りは満たされた。 呼吸はできない筈なのに不思議と息苦しさを覚えない。理由は分からないが。 「脳内情報読み取りの最中は、とても眠くなっちゃうからしばらく寝ちゃうと思うんだ。次に目覚めたらユキヒロは 『セクサロイド』になってるからね」 水槽越しに聞こえるケンタの声は、夢の中の人物のようにおぼろげに聞こえていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「良かったですね、ケンタ様。間にあって何よりかと」 「これも全て研究スタッフの皆のおかげです。これでようやく『ユキヒロ』は死なずに済みますから」 少しあらたまった言葉でスタッフたちに感謝を伝えるケンタ。 ケーブルで繋がれたまま水槽の中でがくりと項垂れるヒト型の肉体、通称「ヤマシタ=ユキヒロ」から脳内情報をコピーでは無く全て吸い上げて「抜き取る」と、 水槽の中の液体が入れ替わって「還元槽」へと移行した。 「還元槽」とはセクサロイドのボディを元の「何者でもない」有機物に分解し、別の新しいセクサロイドの素材へと還元するための水槽である。 「危なかったね。ユキヒロのボディはあと一月ももたない段階だったんだよね? このまま放っておくとボディの崩壊に引きずられて、 ユキヒロの自我も意識も壊れてしまう、って」 「その通りです。『お二人』が遭われた交通事故の折、完成していたボディは1つしかございませんでしたので。 やむを得ずユキヒロ様の『意識』はテスト版の簡易ボディに移すしかありませんでした」 「だけど、なんでユキヒロの記憶からは自分が交通事故に遭った事が消えて、俺だけ、ってなってたんだろう?」 「合理的記憶喪失、と考えられます。人は、時として自分に不都合な記憶、不愉快な記憶、あるいは、受け入れられない記憶は無意識の内に封印や消去をしていきますから。 必要とあらば『無い記憶』を捏造しますし、保持する記憶に矛盾が生じないよう、勝手に想像と現実を置き換えたりも致します。 今度の、ご自身の事故についての記憶はユキヒロ様にとって、まさにそう言う、記憶処理の必要な案件だったのでしょう」 「じゃぁ、新しいボディで目覚めたユキヒロは、消し去った記憶を思い出したりするのかな?」 「必要なら思い出す可能性もありますね。ですが、最新型セクサロイドのボディはケンタ様のご要望通り素晴らしい出来栄えとなっておりますので、 『ヒト』のボディに戻ることすら考えられなくなるかも知れません」 「まぁ、しばらくはその方が良いんだろうけどね。しっかし、ユキヒロの方はまだまだかかりそうだよなぁ~」 黒い幕のかかった培養槽が、研究室の一番奥にあった。 ちらりと視線を投げたケンタは、「はぁ~」と、深いため息をついた。 「あの日、ユキヒロが咄嗟にかばってくれたから俺のカラダは大した事も無く先に目覚められたけど、ユキヒロの方は……本当に酷かったよね」 「榊原総合病院に運ばれた段階で、すでに心肺停止状態でございましたね。内臓の方も損傷が激しく、誰もがもう手遅れ、と諦めておりました」 「けれど、奇跡的に脳だけはほとんど被害が無かったから、記憶と意識とをサルベージして、取りあえず完成してた簡易ボディに移植した。ただ、簡易ボディはテスト版だから、培養槽から出ると長持ちしない……せいぜい一年程度で耐えきれなくなるんだったよね?」 「さようです。ユキヒロ様を記憶と意識を保持するためにも新規ボディへの 乗り換えは必須でした」 「で、どうなんだい? ユキヒロの『元』の体は何%くらい再生できてるの?」 「まだ45%程度、と言う段階です。脊椎とその周囲はかなり出来上がって参りました。ただ如何せん、首から下は全て一から作り直しておりますので」 「そっか。じゃぁ、このペースだとやっぱりあと1年くらいかかるよね?」 「申し訳ございません。一日も早く完成のお知らせをお伝えしなければならないのですが……」 「こればっかりはしょうがないよ。慎重に再生させていくしかないんだもの。その間はユキヒロと一緒にセクサロイドのボディで遊んでるからさ」 「ありがとうございます。ユキヒロ様はケンタ様にとって命の恩人でございます。研究チーム一丸となってユキヒロ様の完全再生修復を完遂致します!」 「うんうん。お金ならいくら使っても構わない、って親父も言ってくれてるし、必要なのがあったら遠慮なく請求してね」 「はっ! かしこまりました!」   終 山下ユキヒロ 16歳 高1  ケンタとは中2の時からの友人。 交通事故により仮の肉体に意識を移殖されている。 しかし、ユキヒロ本人には事故の記憶は無く肉体が仮のモノと言う事も知らない。                   榊原ケンタ 16歳 高1  榊原財閥の御曹司。気さくで気取りのないさっぱりした性格。 ユキヒロのおかげで事故の被害を免れた。 命の恩人であるユキヒロを救うため、ユキヒロの再生が終わるまで寿命が尽きかけている今の「仮の肉体」から新しく別の「仮の肉体」へユキヒロの意識を移動させようとしていた。


More Creators