SamSuka
鷹取リュウゴ
鷹取リュウゴ

fanbox


淫欲流星コンバーター 13

13一色 高丸  朝練を終えた高丸が汗だくになった野球部のユニフォームを後輩に託すと、先輩に続いてシャワールームに入った。 一人ずつ仕切りで区切られたブースの中で熱いシャワーを浴びていると隣のブースから声が掛かった。 「一色さぁ、言い忘れてたんだけど昨日もまた雑誌の記者が取材したいって来ていたぞ。お前が居ない時に。 で、いつも通り断っておいたからな」 声の主は沢田と言う高丸の一年先輩の野球部主将のものだった。 「ありがとうございます。それと、いつもお手数をおかけしてすみません」 「なぁに、気にする事はない。アポ無しでの突撃取材は一切お断り、って前もって伝えているのに来るヤツが阿呆なのさ。でも、そう言う事があったってのは知らせておかないと、と思ってな」 「そうでしたか。改めて急な取材は無理だ、と申し入れておかないといけないですね。抜け駆けしたって別に 面白いハナシなんて出てこないんですし」 「だったら後で名刺を渡してやるよ。監督もコーチもお前の集中を乱さないよう気を遣って、こう言う事は言わないからな」 高丸は野球部全体が自身を大事に守ってくれているんだと感じ、心の中で深々と頭を下げた。 「そう言えば主将、明日からどうするんすかぁ~? 部活は中止で三日間自主トレっしょ?」 別のブースから高丸を超えて声が飛んできた。 「俺か? 俺は自主トレに励みつつ明日は彼女とデートで箱根に一泊する予定だ」 「うわ~、良いなぁ~! お泊りで温泉デートなんか最高じゃないっすか!」 「こう言う時くらいしかガッツリ相手してやれないしな」 「ガッツリとセックスもするんでしょう~? ニシシ」 「おい、田辺、一色や他のヤツもいるんだぞ? もっとオブラートに包んだ物言いをしてくれよ」 「うっす! 失礼しました~! しかし、いいなぁ~、俺もセックスしてぇ~」 他のブースからもつられて「俺もヤりてぇ!」「俺も溜まってんだけど!」との声が上がった。 話題が下ネタになった途端、高丸は昨夜の昴とのセックスを思い出していた。 途端に高丸のイチモツがググッと力をみなぎらせ、頭を持ち上げ始める。 そんな股間に冷水を当てて無理矢理大人しくさせると、高丸は早めに切り上げてシャワールームを離れた。 ぐずぐずしていると部員同士の下ネタ話に巻き込まれ、チンポの抑制が効かなくなる可能性があるからだ。 シャワールームで後輩部員にシモの処理をさせるのは、公然の秘密で頻繁に行われていた。 もしも、高丸が昴に告白する前であれば、後輩に命じてチンポをしゃぶらせていただろう。 けれど、昴に交際を申し込んだ舌の根も乾かぬ翌日に、違う男と性的な行為をするのはさすがに気が咎めたのだ。 ムラムラとした気持ちのままチンポをボクブリに押し込み着替えを済ませると、高丸は1時間目の講義を受けるため部室を後にした。 この日、高丸と昴は同じ講義を履修していないため講義室で出会う事は基本的に無い。 それでも昼メシの時には一緒にランチを摂れるかも知れないと、野球部の仲間からの誘いを断り一人で学生食堂にやって来た。 「……しかし、全然来ないな……。もしかして今日は外に食いに行ったのか? それともパンでもかじってんだろうか?」 フトコロ事情が切迫してくると昴は売店で買ったクリームパン一個だけをかじって昼メシとする事がある。 だとするといつも通りベンチが豊富に置かれている中庭に居るのだろう。 学生食堂を出た高丸は中庭に足を向けた。 「あれ? こっちにも居ないのか。じゃぁ、どこにいっちまったんだ? まさか、また寝坊してんじゃないだろうな」 心配した高丸はスマホを取り出し電話を入れてみた。が、昴は電話に出なかった。 「仕方ねぇ、光に聞いてみるか……」 昴を取り合うライバルの筈なのに、何故か流されて光ともセックスを楽しんでしまった高丸。 「なんで俺、光ともヤっちまってたんだ? クソ気持ち良かったけど、俺は雰囲気に飲まれるタイプじゃないと思ってたんだけどな……」 野球で肉体だけでは無く精神をも鍛えてきた、と高丸は自負している。 ガッツも忍耐力も人並み以上に持ち合わせており、平常心も失わないよう努力も重ねてきた。 なのに、昨夜はあっさりと性欲に負け、昴だけでは飽き足らず光ともセックスをしてしまっていた。  不思議だった。 視野に入っていない対象外の男とにも激しく興奮していた事が。 興奮し、昴に劣らず光のチンポを欲していた自分が。 スリムでイケメンで、女子に人気のある中性的な顔立ちの、高丸にとってはストライクゾーンから外れた存在である男に、 どうして創られたマンコだけではなくアナルまでヒクつきチンポを欲していたのか。 そこまで男に対し無節操に、手当たり次第に求めてしまうほど自分は淫乱な男だったのだろうか? 「く、くそ、やっぱ天野に聞いてみるのは止めておこう。なんか構えちまって、どうすりゃ良いのか分からなくなってきた……」 取り出したスマホを再びポケットに戻していると、誰かの手がポンと肩に触れた。 「うん?」 「僕がどうかしたんですか? 一色さん」 「うえっ!? あ、天野?」 「昨夜はどうもご馳走さまでした。あ、逆かな? 僕だって御馳走しましたしね、鍋を」 「あ、ああ……」 「やだな、そんな硬くなんないで下さいよ。僕はもう一色さんを敵視することは無いですから。 あんなに僕のイチモツをおねだりする人に対して邪険にするなんて到底できませんよ」 高丸の前に手を差し出す。握手しようと言う意味だ。 「仲良くしましょう。兄さんは僕たちが争う姿は見たくないと思うんですよ。だから、ね?」 ニッコリと微笑む光。そこに嘘は感じられなかった。 高丸も手を出すと光はそれを掴んでがっちりと握手を交わした。 「ところで、さっきの話に戻りますけど、僕に聞きたいことがあるんですよね?」 「あ、ああ、聞きたいってのは、昴の奴がどこに居んのか、ちゃんと大学に来てるのか、って事をな、 お前なら知っているかと思って」 「う~ん、知らないですね。僕も一色さんと一緒に兄さんのアパートから出た後は連絡取っていませんし」 「学食でも見かけなかったし中庭にも居ない。また昨日みたく寝坊でもしてんじゃねぇかと気になってな」 「なるほど。そうでしたか。じゃぁ、二度寝して寝坊してるのかも知れないですね」 「なら、急いで起こしに行ってやんねぇと」 「いえ、ちょっと待って下さい」 「? 何だよ?」 「寝坊しているのなら、そのまま寝かせてあげて欲しいんです」 「はぁ?」 「よく思い出してください。昨夜の兄さんはどういう状態でしたか?」 「どういう状態ってそりゃあ……」 高丸は光が作った鍋料理を平らげてから未明にかけての昴を思い起こした。 「メシ食って、お前が告って、俺も昴に告って、そうして昴がええと、『ゼクスパー』だかなんだかでとんでもねぇセクシーマッチョに変身しちまって、 んでもって俺らの股間にマンコは創るわ穴嵌めまくるわで、精力も上がって何度もドバドバ射精してイクし……」 「でしたよね。僕もあんなに精液が出るなんて、ホント、驚きでした。でも、口に出してみたら思い当たったでしょ? あれだけ激しいセックスをすれば」 「……相当疲れている?」 「正解です。一番射精してたの兄さんですし、一日くらい講義をサボったって単位に影響はありません。昨夜の疲れを癒すのに必要な時間なら そのまま寝かせてあげるのも良いと思いませんか?」 「ま、まぁ、そうかもな……」 「それに、昨日の今日でベタベタと世話を焼くってのも兄さんに『重い』と感じさせてしまうかも知れませんよ?」 「た、確かに……」 「さきほど掲示板を見たら、原田教授のネットワーク社会論とリヒター講師のドイツ語は休講に変わっていました。実習系は連休明けまでありませんし、サボるならもってこいの日、だと思いますよ」 「学部も違うのに詳しいんだな、兄貴の履修科目に」 光は文学部・東洋思想学科、昴は総合情報学部・情報学科の学生である。そして、高丸は経済学部・経済学科を専修している。 「そりゃぁ、好きな人の事ですからね~」 「ははっ、そっか。……まぁ、天野の言う通りだな。お節介焼いてうざがられるのは本意じゃない。おっと、話してる内に結構時間を食っちまった」 「あ、そうみたいですね。じゃぁ、僕は次の講義に行きます」 「俺も行くとするか。色々と聞いてくれてありがとうな、天野」 「いえいえ。これぐらい何でもありません。僕の方こそ昨日は変に噛みつくような態度をとってしまってすみませんでした」 「む? やけにあっさりと謝るんだな」 「そりゃぁ謝ります。一色さんとのセックス凄く良かったですし、またお願いしたいですから」 「んなっ!?」 「一番は兄さんに決まってますけど、一色さんともこれからは、って」 「筋が通ってんのか通ってないのか、もはや分からなくなってきたぜ……」 光はそっと高丸の股間を手で覆った。 「っ!?」 「分からないとか言ってますけど、ちゃんとここは硬くなってるじゃないですか。もっと自分に素直になって欲しいですね」 光は股間から手を外すと振り返る事なく中庭を後に去ってしまった。 「……天野は、見かけによらず肉食系男子だったんだな……」  午後からの講義を全て終え、高丸は再び野球のユニフォームに着替えて部室に入った。   夕方からの本練習は朝練よりも当然ながら参加する部員は多い。 部室はそれなりに規模を有しているが、監督やコーチを交えたミーティングの時には部室の温度が真冬でも暖房 がいらないほど部員たちの熱気で溢れかえっている。 それがいつもの光景であった。 「あれ? どうしてこんなに少ないんだ?」 ごった返している筈の部室に居たのは1年生が2人だけだった。 「それなんですけどね、一色先輩。ハロウィンイベント実行委員会が、会場設営の準備や機材の搬入があるので、 16時からグラウンドを締め切らせて欲しいと言って来たんです」 「随分と急だな」 「ですよねー。で、監督とコーチが事前に知らせがないと困るって委員会に抗議しに行ってるんですけど、 恐らく、無駄足になりそうで……」 「先輩、あれを見て下さい」 もう一人の一年が高丸を部室の窓から見渡せるグラウンドを手で示した。 見れば、明るいナイター照明の下、何台ものトラックがゆっくりとグラウンドに進入し、クレーン車まで使って鉄骨を組み上げ仮設舞台のセッティングしていた。 「あ~、もうイベント準備で使え無くなっちまってんだ。そりゃ抗議しても無駄だろうな」 「ですよねー。それで他の先輩達はさっさと帰っちゃいました」 「お前らは?」 「俺らは連絡要員として残ってたんですけど、さすがにもう帰ろうかなって思っていたんです。今から部室に来る人には貼り紙でも貼っておけば良いかな、って」 「それで良いんじゃないか? 練習できないんじゃ居たってしょうがないしな」 「じゃぁ一色先輩、俺ら、今日はこれで失礼します」 「ああ、俺も帰るぜ」 後輩二人はA4のコピー用紙にサインペンで『本日の練習はグランド使用不可になったので中止!!』と大書し、部室のドアに貼り付けた。 それを見ていた高丸も後輩たちと一緒にユニフォームから普段の通学着へと着替え、部室棟を後にした。  昼間と違ってグッと冷えた空気が体を包む。 日が落ちてまだそれほど経っていないのに、鬱蒼と茂る公園の中は早くも初冬の匂いが感じられていた。 「一色先輩は主将みたくデートの予定とかは入れてないんすか?」 そんなひんやりとした公園のベンチに後輩部員の二人と腰を下ろした高丸。 質問には答えず自販機で買ったホットコーヒーを口に運んだ。 「バッカ、一色先輩に失礼じゃんか。野球一筋に頑張って、将来プロ入りも期待されている人なんだぞ! 女なんかと遊ぶ訳ねぇじゃん!」 「お前こそ失礼だろ! こんだけかっこよくって将来有望な一色先輩だったら彼女の一人や二人、いるに決まってんだろ!」 後輩の評価を聞いて面映ゆくなった高丸は、鼻先をポリポリと爪で掻いてから口を開いた。 「デートの予定は無いんだが、デートしたい奴なら、居る。まぁ、告白はしたんだがイエスともノーとも答えをもらってない状態でな。 ただ、反応は悪くないんでこの連休中にもうひと押しできれば、と考えてはいるんだ」 「おお~!」 「そうだったんすか~!」 一年生の二人は高丸に買ってもらった缶コーヒーを握り締めながら破顔した。 「お前らの方こそどうなんだ?」 途端に二人はモジモジして口ごもった。 「無理に答える必要はないんだぞ。まぁ、聞いたところで誰かに話すような真似はしないけどな」 「そうっすよね。一色先輩は口が堅いし、人間として尊敬できる人だと思ってます」 「俺もっす。噂話をしてるトコなんて見た事ないし。マジ尊敬してるっす」 「いや、そこまで持ち上げられると少し不気味なんだが」 二人の後輩は目配せを交わし、「言う?」「言っちゃう?」「お前がいいんだったら」「俺もお前がOKなら」と声を潜めて相談した。 「おいおい。何コソコソ喋ってんだ? 俺に関係があるんだったらハッキリ言ってくれて構わないんだぞ?」 「いえ、失礼したッス、先輩」 「決めました。先輩だけには知っておいてもらおうと思うッス」 残りの缶コーヒーをグビグビ飲み干した二人は、ベンチから立ち上がって高丸の前に並んだ。 「実は……」 「俺たちは……」 「「付き合ってるんです!」」 二人はがっちりと手を握り合って、目と目を合わせて微笑んでいた。 だが、高丸の視線を受け止めると、少し目を伏せて不安げな表情に変わった。 「……そうか、そうかぁ! 良かったなぁ! お前ら付き合っていたのかよ! 全っ然気付いてやれなくて悪かった! ともかく、おめでとうな! 末永く仲良くするんだぞ!」 二人の不安げな表情はパァッと満面の笑顔に切り替わった。 「あ、ありがとうございます! 先輩っ!」 「お、俺、感激っす! こんなに応援してもらえるなんて思ってなく、って!」 笑顔の二人の両眼から涙が溢れ出した。 「あー、あー、分かってるから! ほら、泣くなって!」 「で、でも、あんまりうれしくって、ひっく!」 「俺も、ひっく、こんな、こんな普通に、受け入れてもらえるなんて、思って、なくって、ひっく」 後輩同士が肩を抱き合って静かに泣いている。 高丸は、敢えて言葉を掛けず、二人が泣き止むのを待った。 やがて、落ち着きを取り戻した後輩たちは、深々と頭を下げ何度も何度も高丸に感謝を伝えると、二人だけで公園から駅に向かって帰って行った。 高丸が、「俺はここで見送る。二人だけの時間が少しでも長い方がいいだろ?」と言って残ったからであった。 「さぁて……、まんまと後輩に追い抜かれちまったぞ? 『一色 高丸』 本当は羨ましくって仕方がないのにな?」 自嘲に唇を歪め、手の中の空き缶を見つめた。 「――と、拗ねていても始まんねぇ。俺だってこの連休中に、ハロウィンイベントで部活が休止してる間に、 マジで昴との関係を確かめておかねぇと。このまんまじゃ気持ちが宙ぶらりんで先に進める気がしねぇ」 決意を込めベンチに座ったまま空き缶をゴミ箱に放り投げる。 弧を描いてゴミ箱に向かった空き缶は、そのまま綺麗にシュート……を、決める事は無く、カーンと甲高い音を立ててあらぬ方向へと弾け飛んでしまった。 「……クソ、ここは外したらダメなシーンだろうが。投球練習を増やす必要が出ちまったな」 仕方ないなと腰を上げ、ゴミ箱に嫌われた空き缶を拾いに行く。 意外にも勢いがついて跳ね上がってしまったため、ゴミ箱の横にある自販機の裏側に入ってしまった。 「ええと、どこに転がったんだぁ?」 自販機裏は周囲の樹木と自販機本体の影のせいでほとんど街灯が届かない。 目を暗さに慣れさせてから慎重に足を運ぶ。 地面のわずかな凹凸をじっと見つめながら立つ位置を変えていると、触れた木の枝からドスンと物体の落ちる音が聞こえた。 「なんだ、枝に引っかかっていたのか……って、そんな訳ないな。確かにワンバウンドしたけど枝の上に乗るほど高く上がっちゃいなかったような……」 高丸は今落ちてきたモノの正体に不安を覚えた。 恐る恐る頭を下げ足元を確かめる――「!? こ、こいつは?」 ドクン、ドクン、と脈拍のように裂け目から赤い光を浸み出させている球状のモノ。 黒く皺だらけの外殻はまるでクルミ、或いは大脳の模型のようにも見える。 大きさはサッカーボールを一回り小さくしたくらいだろう。 高丸は意を決して球体を掴んだ。 「何だろうな? やっぱボールか?」 公園で昼間遊んでいた子供の忘れ物だろうか? それにしてはゴツゴツとして弾力が無い。 ボールと言うよりも石に近い硬さだ。 「どっちにしたって勝手に持ち去るのは良く無いだろう。落とし主がもう一度探しに来るかも知れないのだ。 高丸はそうっと地面に球体を下ろし、手から離そうとした。 ――ギュプ! 「う!?」 離そうとした球体は、離れてくれなかった。 ――グジュ! ブジュルル! ギュプゥッ! 聞きなれない異質な音が耳に届いたかと思うと、球体の裂け目から肉色の触手が溢れ、高丸の手を飲み込んだ。 「何だ!? 何だこいつは!」 時刻を示す時計はまだ18時になったばかりである。 しかし、公園内は人通りが無く、高丸の異常に駆けつける人はいなかった。 球体を引き剥がそうと必死の高丸は、ベンチの背もたれに球体を引っ掛けると、思いっきり力を込めて腕を引いた。 溶けたチーズのように伸びた触手がブチブチと千切れ、飲み込まれていた腕が徐々に姿を現した。 「よし、こうやって引き剥がしていけば、何とか……うぅっ!? ま、マジかよぉっ!」 あと少しで全ての触手が腕から外れそうになった時だった。ベンチに食いこませたはずの球体が空中に浮かび、 大量の触手を傘のように広げて高丸を飲み込もうとしていたのだ。 「や、っべぇっ! だ、誰かっ! たすっ! んぐぶぶぶ! んぶふぅぅーーーー!」 逃げようとした高丸の背中から肉色の触手は高丸を丸ごと飲み込んだ。 声も出せず、一切の身動きが取れなくなった。 視界が効かなくなった高丸はよろめきながら先ほど空き缶を探して踏み込んだ自販機の真裏に転がり込んだ。 早くも触手同士が癒着し、ドロドロのゲル状になって高丸を包み込んでいる。 ボコン、と背中から浮き出た拳ほどの黒い球体がゲル状の表面をズルズルと移動し胸の中央部へと到着すると、 そのままゲルを押し退けて高丸の体の中に沈み込んでゆく。 「ン゛ン゛ン゛ーーーー! ンググゥゥーーーーッ!」 この時、たまたま制服を着た3人組の高校生が自転車で自販機の前に現れた。 「うん? 今、何か聞こえたような」 「それって自販機の音だろ? それより咽喉乾いたから早く買おうぜ~」 「そうだ、ジャンケンで負けた奴はお汁粉にしねぇ?」 「んだよ、それ、でも面白いじゃん」 「よっしゃ、んじゃぁ、最初はグー、ジャンケン、ホイ!」 「うわ! 負けた!」 「いよっしゃぁ! 俺、ジンジャーエール~!」 「俺はポカリ~!」 「くっそ、なんで俺が汁粉なんだ?」 「運が悪い日だったんだなぁ、ああ~ポカリうめぇ~」 「んぐぐう゛くうううーーー! むぐぅんむむーーーーーーーー!」 「やっぱ変な音が聞こえてない?」 「そうか? 自販機って時々こんな音、鳴ってるじゃん」 「最近うちの冷蔵庫もなんか不気味な音がすんだよな」 「それって壊れかけてるだけだろ。それにしても汁粉、甘すぎ~! かえって咽喉が乾く! 超激甘ー!」 ひとしきりはしゃいだかと思うと、高校生3人組は再び自販機前から離れて行った。 この時点ですでに高丸は触手から変じたゲルと融合を果たしており、ドロドロだった表面がピンと張った皮膜に 変わっていた。 『融合完了』 『使用言語抽出完了』 『脳内領域確保完了』 次々と高丸の脳内に言葉が流れ込む。 『生殖機能拡張有機コンバーター・ゼクスパーをご利用いただきありがとうございます。これよりゼクスパーに使用者の生体情報との同期を行い、並行して操作方法、及び機能などの情報を使用者の脳に入力致します』 『続けてセーフモードへと移行します。肉体の使用権限を委譲していただきます』 『安全なポイントに到着次第、スリープモードに移行します。スリープモードからの覚醒にはおよそ5~7時間を要します』 ガサガサ、ザッ! 自販機の裏からゆらりと現われたのは、高丸とは似ても似つかない全くの別人であった。 ウルフカットのミディアムな髪は鮮やかな緑色に。雄臭かった顔立ちはチャラいホスト系に。 そして、頭よりも太くなった首から下の肉体は、極限まで発達した筋肉が爆盛りのゴリマッチョとも言うべきすさまじいマッスルボディと化している。 そんなマッスルボディの、八つに割れて一つ一つがつかみ取れるほどボッコボコに盛り上がる腹筋の下、 くびれた腰の倍ほどもある左右の太ももの上、優しく盛り上がってはいるが何も無い股間の下部がボコンボコンと 内側からハンマーで叩くかのように歪に膨張し、メキ! メリメリ、ミシィッ! と表皮が裂けて「肉の芽」が解き放たれる。 ヌビュ! グブブ! グビュル! グプ! ブジュゥゥッ! 音を立て猛烈な勢いで成長する「肉の芽」は、高丸の新しいペニス、チンポとなった。 ブルンッ! ブルンッ! と鎌首を揺らすごとに太く、長く、ますます大きくなっていく。 成長に追い付けなくなった包皮がズルルと引き下がり、亀頭が露出する。 腕よりもデカくなったチンポはまだ成長を止めず、包皮の血管をモコモコと蠢かせては血流を集め、さらにサイズアップして行く。 このタイミングで今度は別の制服を着た高校生が一人で自販機のそばへと近づいて来た。 ポケットから小銭入れを出し自販機に投入。商品のペプシを選択したら「ガコン」と受け取り口に落ちてくる。 上半身を屈めて自販機からペプシを掴んで顔を上げると―― 「うわわわぁっ! へ、変態だーーーっ!」 高校生のすぐそばに変身した高丸が立っていた。 オーガのようなゴリマッチョが、脚ほどもある超巨大なペニスが股間から聳え勃っている。 それでいて顔はキラキラとした今風のオシャレホスト系イケメン。 腰を抜かしてその場にへたり込む高校生は、何度も何度も口を開けたまま視線を上下に動かした。 『安全なポイントへの移動について、接触した人間を取り込み一時的に利用することを提案します』 「……てい、案、き、許可、する……」 朦朧とした半眼のまま提案を許す。 高丸がじわりと動き始めた。慌てて立ち上がり逃げ出した高校生。 しかし一瞬で前に回り込み、そのまま太い腕で羽交い絞めにして高校生を抱きしめると、高校生の頭へ巨大な亀頭を押しつけそのまま尿道の奥へと飲み込んでしまう。 「あ! があああっ! た、すけ、で! お、俺、いや、だ、助け、て……」 ゴクッ、ゴクッ、ズルル、と制服ごと高校生を飲み込み、すべてを取り込んでしまうと、ゴリマッチョボディが小刻みに震え出す。 震える筋肉がグニャグニャとランダムに動き回り、今度は急速に萎んでサイズダウンしたかと思うと、髪の色が緑から黒に戻った。 『借体調整完了しました。協力者の記憶処理は再構成返却時に行います。それでは、移動を開始します』 「……了解。では、行こう……」 そう呟く高丸の姿はペニスで飲み込んだ高校生のモノだった。 全裸だったカラダの上にじわじわと粘液が出て高校の制服やスニーカーに変化した。 これらは先に体内で吸収した後、『ゼクスパー』が再構成したものであった。  公園から出れば、丁度勤め帰りの人が多くなる時間帯だった。 夜風はさらに温度を下げ、家路を急ぐ人が足早に過ぎる。 そんな通りを高校生に融合変身した高丸は無表情のまま歩きだした。


More Creators