リンクディルドの可能性 5 最終話
Added 2020-03-25 15:51:13 +0000 UTC5リンクディルドの可能性 証拠がハッキリするまで疑わしくとも犯人扱いは控えなければ。 もしも「シロ」だった場合の事も考えて行動しないといけないからだ。 とは言え、他人の部屋に侵入した挙句、その部屋のモノを、よりにもよってディルドだけを盗んで行くような奴と、差し向かいで座るってのも、非常に危険である事には違いない。 さりげなく脱出しやすい位置に腰を下ろし、いつでも逃げられるような態勢をしておく。 が、平野はモジモジするばかりで何のアクションも起こそうとしない。 「あの……」 「あのぅ……」 痺れを切らして来訪の目的を聞こうとしたら声が被っちまった。 お先にどうぞ、と譲ってやる。 「すみません。どこから話せばいいのかな、って考えちゃって」 そう言った平野はまたもや長考モードに入りかけたので、俺の方から先に仕掛けてみた。 証拠とか集める余裕は無かったが、こうなっちまったもんは仕方がねぇ。 「昨日のこの時間、平野さんはどちらに居たんですか?」 マッチョな巨体がビクンッ! と撥ね上がった。 バッと顔を上げ、そして俺の視線から逃れるように再び伏せた。 「も、もう、察しがついてるみたい、ですね……。そうです。……俺です。俺が、昨日、こちらに間違って入ってしまって……」 やっぱり平野! お前か! 俺のディルドを奪った犯人は! 「申し訳ない! 本当に! 少々酔っていたとは言え部屋を荒らしてしまって! それと――」 「俺のディルドを無断で持ち帰った。ですよね?」 「っ!! は、はい……」 マッチョな平野が小さく縮こまって頭を下げている。 その態度からも言葉からも嘘やごまかしは感じられず、しっかり誠意をもって謝罪しているのが理解できた。 「分かりました。しかし、なんで勝手に人の部屋に? それと俺の、その、あんなオモチャを持って行っちまうだなんて」 事情や動機があるなら聞いておきたい。 「あ、その前に……」 平野は立ち上がってポケットから『リンクディルド』を引っ張り出し、俺に返した。 太腿がパンパンだったせいで目立たなかったが、そんなところに入れていたんだ。 人肌で温もっているディルドを受け取り、亀頭の部分を少しこするとビリビリと電流のような快感が流れて来た。 リンクモードで俺のチンポと繋がったまま。正真正銘俺の『リンクディルド』に間違いない。 「すみませんでした。気が付いたら、その……」 「持ち帰っていた、と?」 「……はい」 平野のハナシをまとめると、当時の状況はこうだったらしい。 引っ越し会社で働いている平野は、昨日も日の出前に会社へ出勤し、早朝からハードな引越し作業に精を出していた。 昨日、最後の案件となる引っ越し作業を終えると珍しい事にまだ日がある時間帯だった。 もちろん、勤務時間としてはとっくに終了している。 残業が普段よりも少なかったため平野は早めの夕飯を食べ、そしてよく行くバーでアルコールを飲んだ。 「それが、いけなかった」と本人は言うけど、それだけが理由じゃ無かった。 程よく良い気分に酔ったまま帰宅した平野は、部屋の様子がいつもと違う事に気が付いた。 置いてあった本や雑誌が無い。着替えをしまってあるボックスも。 クローゼットに掛けていた洋服も無い。 探し回ってからようやく平野は理解した。 「ここ、俺の部屋じゃ無いじゃん!」、と。 慌てて玄関を出た。案の定自分の部屋では無く「お隣」のB号室だった。 鍵を突っ込んで回した時、何か抵抗なくやけに軽いな、と思ったんだ、と平野は言った。 それから平野は、一応元通りに片付け侵入した事がバレないようにしよう、とは思ったらしい。 しかし、玄関を出て「お隣」だと確認した時に見えたのだ。街灯の下、俺が通りの先の交差点を渡っている姿を。 呑気に歩いてこちらへ、アパートへまっすぐ向かっているのを。 平野は焦った。このまま片付けなんてしてたら鉢合わせになる。そして、鉢合わせになっちまったら確実に泥棒認定されちまう! と。 「しかし、交差点を渡っているのが俺って、よく分かりましたね? ここからでもかなりの距離がありますけど」 「俺、視力は良いんです。両眼とも2.0以上はあるんです。それに、天王寺くんだったら見間違えたりしませんし」 「俺、だったら?」 えっとぉ? ちょっとよく分からない表現だったがハナシを元に戻して先を促した。 言い訳できない状況から脱するため片付けるのは諦めた平野。急いで自室に戻るしかない、と。 しかし、そこでテーブルの上にちょこんと乗っかっていたモノが目に入った。 それが、『リンクディルド』だった、と言う訳だ。 「何も考えていませんでした。本当に。慌てて自分の部屋に戻って冷や汗をぬぐいましたが、その手にディルドを掴んでいた、なんて」 つまり、考えるよりも先に動いていた、と言う事らしい。 このようにして平野は俺の部屋から『リンクディルド』を持ち去った経緯を話してくれた。 「じゃぁ、悪気は無かった、ってことですね?」 「も、もも、もちろん!」 「なら、もう良いです。俺だって酔っぱらって隣の部屋のドアを開けかけた事なんか何度もありますし。 ただ……、コイツで色んなこと、しましたよね?」 「うっ!」 平野の顔が真っ赤になった。 「どうしてそんな事が分かる?」とか逆質問されるかと思ったが、そんな余裕は無いようだ。 なので、今度は俺の方から少々仕返ししたくなってしまった。 真面目で誠実そうな人物をからかってやりたい、とも。 「昨夜、一晩中コイツを使って遊んでいましたね? 凄く気持ち良かったでしょう?」 「うう、そ、それは、そのぅ……」 「詳しく聞かせてもらっても良いですか? やっぱりご自分のケツの穴に? それともフェラだけで?」 俺は聞かなくとも知っていた。あれはフェラチオの舌遣いだったし、アナルの挿入感もあった。 「り、両方、です……」 「へんぇ~? 平野さん、相当変態だったんですねぇ? そんでもってアナルオナニーで何度もイキまくってたんですねぇ? 俺なら1、2回イけば満足してしまいますけど」 「き、君の! 天王寺くんの使ってたディルドだって、思うと! 止められなくて! 止まらなくなっていたんだよ! だって俺! 天王寺くんとずっとセックスしたかったし! その前に! 天王寺くんが好きだから!」 「――は?」 今、なんと? 「お、俺は、天王寺くんが好きなんだ。半年ほど前から気になり始めて、そっからはずっと君に恋していたんだ!」 「お、俺に!?」 気が付かなかったぞ? まったく。全然。完璧に。 「……知りませんでした」 「そりゃぁ、俺だって君に、天王寺くんに気付かれない様にしていたから……。俺の気持ちを知られて気味悪がられるのはだけは避けたかったし」 「少しくらいモーションかけてくれても構いませんでしたが」 「いや、だって……、ノンケさんにそんなの、マズイでしょう?」 「俺、ノンケじゃないですよ? 100%ゲイですから」 平野さん、目がまん丸になってる。くっそ! かわいいなぁ! よし、じゃぁもう一つ追撃してやろう。 「実は俺、平野さんみたくマッチョな人がタイプっす。セックスするんだったら平野さんみたいな人とヤりたいっすね」 「お、俺と? 俺がタイプ?」 「平野さん、凄い精力ですよね? まんま絶倫じゃぁないっすか。俺が女だったらひと晩で孕んじまいそうでしたよ?」 照れまくる平野さんの顔はゆでだこみたいになっていた。 男に対して言うのは何だが、実にかわいい。 「そ、それ、じゃぁ、さ。も、申し込んでいいかな? 君に、天王寺くんに、交際を。俺と、俺と、付き合って欲しい、って」 「告るのに事前許可は要らないですよ?」 「なら! 天王寺くん! 俺と付き合ってくれ!」 「えーと、ダメです」 なんで? と。今の流れならOKなんじゃないの? と平野さんの顔に書いてある。 「平野さんは半年も前から俺をチェックしてたみたいですが、俺はまったく。精力が半端無いって事以外の情報はゼロなんですよ? 名前だってちゃんと把握したのは今日ですし」 「だ、だけど、あの……天王寺くんの事が、俺は……」 俺は『リンクディルド』の先端を平野さんの唇にちょんと触れてから自分の唇に触れさせた。 「んふっ!」 それだけでも気持ち良さが伝わって股間がムクリと起き上がる。 「あ! 勃ってきちゃった。どうしよ? 平野さん」 自分では見えちゃいないけど、今の俺、めちゃくちゃ挑発的な表情してんだろうなぁ。 「……少し汗臭いけど、構わないかな?」 平野さんがタンクトップを脱ぎ捨てた。 「構わないどころか、俺、仕事で頑張った男のニオイって興奮しちゃうんで。いかにも雄、って感じがして」 俺も部屋着を一枚ずつ脱いでいった。 平野さんの目がまたもやまん丸になった。 「て、天王寺くん、そんな……、凄い、筋肉を、していたんだ?」 「引いちゃった?」 平野さんは大きく首を左右に振った。 「いや、思ったより逞しくってさ、少し驚いただけさ。むしろそんな体してたんだ、って思うと俺も興奮する」 「だったら問題ないっすね? もうハーパンも脱いじまいましょう。すごくキツそうですよ?」 「うわ!」 ギンギンにそそり勃つ平野さんのイチモツによってハーパンの尖がった先に黒い染みを作り出していた。 「も、もう? こんなに? は、恥ずかしいなぁ」 「これからもっと恥ずかしい事しようとしているのに、何を言っているんです? それとも、恥ずかしいから止めておきますか?」 「それは無い!」 「……ふ、ふふっ! あははは!」 なんだか可笑しくって思わず笑った。平野さんも照れながら笑っていた。 「それにしても――」 ふっと笑いを引っ込めた平野さんが、再びマジ顔になった。 「?」 「そのディルドは奇妙だったなぁ」 「具体的に言うと?」 「あ、あのさ、俺の頭がおかしい、とか思わないで欲しいんだけど、その、ディルドなのに本物みたいなんだよ。 本物みたいにドクドクって脈打っていたし、弄り始めたら先走りは出すし、そ、そんで、しゃ、しゃぶっていたら勢いよくドビュッて射精するし……。 あ、酔っていたせいじゃぁない! それは断言できる、と思う」 別に、秘密にしろとは言われていないし話してあげても構わないだろう。 「そうなんですよ。このディルド、ちょっと不思議なディルドなんすよね。俺も昨日ゲットしたばっかりで 詳しくは無いんですが、マジかよ! って思っちゃう機能があるんです――」 平野さんが位置を変えて正面から俺の隣に座った。 肩同士がくっついてマッチョな平野さんの体温が、直に伝わって来る……。 「でも、その前に。チンポモドキの玩具じゃなくって生の、本物のチンポで楽しみませんか? 俺だってほら、もう我慢汁が出まくっててヤバイんですよ」 ザッとボクブリごとカーゴパンツを下ろす。 はち切れんばかりに勃起しまくっている俺のチンポが平野さんの視線を浴びてヒクヒクと揺れ動く。 「お、大きい! 天王寺くんのチンポ、そんなにもデカいのか! しかもディルドに……」 ディルドにそっくり、コピーしたかのように瓜二つだ、と言いかけた言葉を飲み込んだんだろう。 けれど、妄想が過ぎる、と思ったのかな? 「俺のカラダだけじゃなくって、チンポとディルドが似ている事も、その辺りも含めてセックスが終わってから説明しますから。 そろそろ始めませんか?」 「う! うん……」 「俺も平野さんも、互いに知らなくちゃいけない事、色々ありますしね?」 そう呟きながら俺はゆっくりと平野さんに体重を預け、平野さんのカラダを押し倒していった。 『リンクディルド』は人と人との縁もリンクさせるのか? だとしたら凄い可能性を持ったアイテムじゃないか? 硬くなった股間を押しつけ合いながら、俺の頭にそんな思いが過った。 だけど、今はセックスに、平野さんに集中しよう。 俺を求めて興奮している平野さんの方がディルドよりも遥かに魅力的なのだから。 追記: 「いやぁ~! 確認して見たんですが正直、驚きでした!」 阿倍野氏が再びやって来たのは平野さんと結ばれてから二日後だった。 『リンクディルド』が戻ってきた事はすでに知らせてある。 「どうでしたか?」 リンクモードを解除したらカラダはマッチョから普通の体形に戻ってくれた。 なのでマッチョになった原因はやはり『リンクディルド』だったんじゃないか? と俺は推測していた。 「お客様にお渡しした『リンクディルド』は、ご自身のペニスへ感覚をリンクさせられるだけではなくてですね、 相手の肉体の特徴までリンクさせられるそうなんですよ! なので、お客様がお使いになっている『リンクディルド』は不良品でもありませんし、異常な動作と言う訳でもありません。 安心して継続使用されて構いませんよ?」 それなら良かった。 ちゃんとした『リンクディルド』の機能の一つとして備わっているものだったのだ。 「阿倍野さんも使っている割に詳しくはなかったんですね?」 「そうなんですよねぇ~。いや、お恥ずかしい。私も気持ち良くなる事にばかり意識が行ってしまって、商品の詳細を把握しきれていませんでした。一人で使う以外無かったですしねぇ」 俺も他人の手に渡っていなければ肉体の特徴もリンクするなど知らないままだっただろう。 阿倍野氏の場合は他にも扱っている商品だってあるだろうし、全部が全部把握するなんて無理だろう。 「ところで阿倍野さん」 「はい? 何でございますか?」 「阿倍野さんて凄くスーツが似合っていますよね? ガタイが逞しいからだと思うんですけど、やっぱりカラダを鍛えていらっしゃるとか?」 「そうですねぇ。ジムにも通っておりますが、学生の頃は水泳選手としてそれなりに頑張っていましたから」 だから肩幅が大きく胸板も分厚いんだ。 「顔もイケメンだし、カラダもカッコイイなんて、凄くモテるでしょう?」 「いえ、それほどでも。意外にこう見えて奥手なものですから、あまり色恋には縁がないんですよ」 『リンクディルド』を使っているのに縁が無い。それはよほど周囲に良い男が居なかったせいだろうか。 「それはもったいないですね。もう一つ確認したい事があって」 「はい?」 「『リンクディルド』によって人と人との距離が縮まるかどうか、縁が結ばれるかどうか、って事なんですが」 「それは、さすがに……」 「俺もさすがにそんな機能は無い、と思うんですけど、事例が一つだけじゃ判断できませんし、もしよかったら 阿部野さんにも協力してもらおうかな、と」 「何を、です?」 「そりゃぁ、ご縁が結ばれるのかどうか。『リンクディルド』の可能性について、ですよ」 俺は『リンクディルド』を掴んで阿倍野さんに近づけた。 基底部のボタンをクイっと押してリンクをONしてから。 「え? あの、お客、様?」 ヒクつくディルドの先を、のけ反る阿倍野さんの手首にピトっと触れさせる。 「ふんぐぅっ!」 来たぁ! やっぱりだ! やはりリンクON状態で相手のカラダにディルドを接触させると、使用者もまた相手のカラダと同じ体形へと変身してしまうのだ! ドクドクと流れ込む阿倍野さんの肉体情報。それが生の筋肉と化し俺のカラダをメリメリと膨張させていく。 「わ! お客様! うそぉ! 本当に!?」 着ていたTシャツはビリビリと裂け、部屋着のジャージが内圧に耐えかねてゴミと化す。 あっという間に俺のカラダは逞しき雄の筋肉美を獲得し、滾るエネルギーが股間を大きくさせる。 俺を見上げる阿倍野さんの顔つきが、仕事中からプライベートな表情へと切り替わっていた。 「すげぇ~! ヤバイですよ~、そんなカラダ見せられちゃ。エロ過ぎるっしょ~」 いや、エロ過ぎとか言うけど阿倍野さんのボディをコピーしたんだから、ご自身のカラダに欲情しているのと同じなんだけどな。 ああでも、カラダの上に乗っかっている顔が違えば、そうは見えないのかも知れない。 そういや、顔までコピーしないのは何故なのか? 「さて、阿部野さん。この後の予定はどうなっています? アポイントが無いようでしたら……」 「きゃ、キャンセルしますっ! 何でしたら明日は有休取ります! ですんで、是非! 是非お客様と!」 ここまで俺を求めるなんて。やっぱ『リンクディルド』の機能のせいじゃないか? 「はい。喜んで。俺も阿部野さんとはヤりたいって思っていましたし。それに……」 後で平野さんも交えて3Pで楽しむつもりなんだよな~。 だって俺、『リンクディルド』を使うたびに、どんどん淫乱になっちまっているもんだから……。 終