変態勇者の究極装備 7
Added 2020-05-19 01:14:01 +0000 UTC7祈祷師の食事 麓の村で教えてもらった道をたどり、勇者と二人の従者はボンボンの泉のある丘の上へとやって来た。 「お! あれかぁ! 祈祷師の小屋ってのは!」 樹木の繁みが開け、泉を中心とした広場のような空間が広がる。そして、日差しを浴び清らかに輝く水面の傍らに 板で簡単に仕立てられた小屋が建っていた。 「木漏れ日が青い泉に反射してとっても神秘的な場所だなぁ~! 清々しいとはまさにこう言う場所を言うんじゃない?」 マイトは親指と人差し指でフレームを作り、いかにもインスタ映えしそうな光景を目視ながらシャッターを切っていた。 「ボンボニエールと言う村の名の由来となっただけの事はありますね。美しいと言う外ありません」 フォルクもフードの先を持ち上げ眩しそうに眺めた。 ナイブが湧き出たばかりの泉の水を掬って口にした。 「へぇ。美味いぜこいつぁ。冷たくて良い飲み心地だぜ。――そんでもって、あれが導水管だな?」 泉の水を一旦集める四角い貯水槽がありその貯水槽から大の大人がすっぽり収まるほど太い導水管が口を開けて水を受け入れていた。 「なるほど。こいつぁ大したもんだ。こんな丘の上から村のほうぼうまでコイツで水を配っているなんてよ。 乾季でも蒸発しねぇよう地下で延々と繋いで伸ばしてくにゃぁ、相当な苦労があっただろうぜ」 ナイブが心から感心しているとフォルクも「雨季でも濁りの無い清らかな水を安定して供給しているため、大河から遠くとも飲み水に困らない。優れたシステムだと思います」 「感心してないで祈祷師サマのお姿を拝見してみようじゃない。ボンボニエールの救い主、なんでしょ?」 祈祷師がどんな人物なのか気になっているマイトが小屋へと向かおうとすると、フォルクが「待った」をかけた。 「少しお待ちください勇者様……。この、導水管の内側にぶら下がっているモノは、いったい何なんでしょうね? 少々魔術的に嫌な気配が感じられるんですが……」 フォルクに言われてマイトも覗き込んだ。 太い導水管の中にティーバッグのようにぶら下がってる大きな布袋が見える。 「? なんだろう? 中に何か入ってるみたいだけど」 「何者ですか! あなたがたは!」 いきなり響き渡った甲高い声に驚き、覗き込んでいたマイトは危く貯水槽に落ちそうになった――が、かろうじてナイブがマイトを引き戻し、あわや水没の危機からは免れた。 「おっどろいた~! ええと、俺たちは祈祷師様を訪ねてきた者なんですけど」 「あら? アタクシを訪ねて来たの? まぁ、驚かせてしまってゴメンなさぁ~い」 「と言う事は、あなたが祈祷師のジェルバさん?」 「そうよぉ~。アタクシがジェルバ。んで、その導水管には魔物除けの『お守り』を繋いでいるんでぇ、近づかないで欲しいのよねぇ~」 黒いマントに派手な貴族めいた装束。村人から聞いた噂通りのいで立ちだった。 首にはジャラジャラと首飾りをいくつもぶら下げ、手首には金色のブレスレット、足首にはフリルのついた靴下を履いている。 歳の頃は30歳程度だろうか? 些か年齢が分かりにくい中性的な顔立ちのどこか蠱惑的な雰囲気の漂う男である。 「魔物除け? もしかしてあの布袋ですか?」 フォルクがジェルバを睨んだ。 「そうなのよぉ。アタクシの祈りを込めた『お守り』が、あの中に入れてあるの~。さすがに眠っている時まで 見守っている訳にはいかないでしょぉ~?」 「まぁ、確かにな。別におかしな点は無い」ナイブがうなずいた。 「ところでところでぇ~? アタクシを訪ねて来たんでしょぉ? 何のご用かしらぁ? いつものお食事の時間にはかなり早い感じだしぃ」 「俺たちはボンボニエール村の者じゃありません。旅の途中で村に立ち寄った者です」 「あらぁ? 旅人さんだったのねぇ?」 「ええ。それで、この村に来て驚いたのが、どの食事を食べてもお酒を飲んでも凄く甘い、と言う点なんです」 マイトの話をナイブが引き継いだ。 「最近起こった異変ってのがこのボンボンの泉にまつわる案件だったもんで、村の危機を救った祈祷師サマってのがどんなお人なのか、ちょーっと拝見してみたくってやって来た、って訳ですぜ」 「なぁんだ。そんな事だったのね? んふふ、特別、用事があるって訳じゃないのねぇ?」 こう見えてもアタクシ、色々と忙しくってぇ」 シッ、シッ、と犬でも追い払うかのようにジェルバは手を振った。 「そろそろアタクシ、次のお祈りの時刻になっちゃうんでぇ、お引き取り願えますかしらん?」 ジェルバはそう言うとマイトたちを振り払うかのように小屋へ入ってしまった。 ――ムワァ~ッ 小屋の扉が開いた瞬間、異様なニオイが拡がった。 「うん? な、何、この甘ったるいニオイは!?」 飴や蜜を炊きこんだような濃厚なニオイだ。 そのニオイの元は明らかにジェルバの小屋からだと知れた。 ナイブがジェルバの小屋のドアをノックした。 「なぁ! ジェルバさんよぉ! 少ーしだけお話させてもらいたいんだがなぁ!」 『だぁ~めぇ~よぉ~! 忙しいって言ったじゃなぁ~い! しつこい人ってアタクシ、嫌いよぉ~!』 再度ナイブがドアを叩いたが今度は返答すら無かった。 明らかに怪しさが増したもののドアを蹴破ってまで中に突撃するのは憚られた。 ならどうするか、と考えていると一人の青年が小屋の方へとやって来た。 「あれ? 皆さんは?」 「俺たち、祈祷師様に会いに来たんだけど忙しいって断られちゃったんです」 青年はジェルバのために食事を運んで来た者で、リュガと名乗った。 「リュガさんは毎日ここへ?」 「いえ、交替で運んでます。七日に一度ですね。毎日はさすがにキツイですから」 丘の標高はそれほど高くはない。一時間もあれば泉のある頂上へとたどり着ける。 「キツイ、ですか? ああ、お仕事の合い間を縫って、でしたら毎日は無理ですね」 フォルクがなるほど、と青年に返すと、 「いえいえ。仕事があるからじゃなくてジェルバ様のお相手を毎日勤めるのはキツイ、って事なんです」 「うん? そりゃどういう意味なんだ?」 リュガは何も持っていなかった。 食事を運ぶ者だと言うなら食材なり弁当なりを持っている筈なのに。 ナイブは改めてリュガの発言に違和感を覚え、詳しく尋ねようとした。 『なにダラダラおしゃべりしてんのよぉ! 早くお入んなさい! とっとと食べさせてくんなきゃお仕置きしちゃうわよぉ!』 「わっ! わっ! すみませんジェルバ様! すぐに参ります!」 小屋から響いた怒声にリュガ青年は身をすくめて返事した。 「すみません! 俺、もう中に入らないと! じゃぁこれで!」 リュガはマイトたちの前を急いで走り抜け小屋へと駆け込んだ。 扉が開いた瞬間、やはし小屋の中から激烈に甘い香りが流れ出て来た。 「ぐえぇ……。甘いニオイで鼻がおかしくなっちゃうよ!」 マイトが鼻を摘まんで顔をしかめている。 「勇者様、色々な疑問が新たに出てきました。ここは一旦引き下がって村長や他の食事担当の人に話を聞いた方が良さそうです」 「俺もそう思うぜ。あの祈祷師、胡散臭さが半端無ぇぜ。なぁんか嫌な感じもするしよぉ」 フォルクに続いてナイブも顔を険しくさせた。 ◇ んぉおっほぉっ! すっげ! スゲェぜ! キモヂイッ! さすが勇者様のチンポだぜ! マジヤベェッ!』 リュガとは別の、ジェルバに食事を運んでいる村の青年の居場所を訪ねてやって来た。 すると、体格まで熊のように威圧感のある青年はマイトの股間の膨らみをじっくりと品定めした後、マイトのチンポを味わわせてくれるのであれば質問に答えてやる、と条件を出した。 その条件を呑んでマイトは青年のアナルに勇者の肉棒を挿入し、何度も何度も中で精液を吐き出した。 「ううっ! んぐぅっ! ちょ、タンマ! も、俺、満足したしっ! こ、これ以上、ケツが、こ、壊れちまっ! んおおっ! またイグッ! またイ、ィ、イッヂマウゥゥーーーーッ!」 始めの内は余裕を見せていた青年だったがマイトの底なしの精力の前に結局は翻弄され、途中からマイトにストップを申し入れていた。 そして、青年のギブアップ宣言を聞いてから3発、さらに青年のアナルに放出してマイトはチンポを青年から引き抜いた。 「はぁっ、はぁっ、んぐ! っはぁっ、や、やっと、終わって、くれたのかよ、はぁ、はぁ、と、とんでもねぇ 絶倫野郎だ、な、あ、アンタは……勇者ってのは、そう言うもんなのか?」 汗だくのまま肩で息をする青年にマイトは言った。 「勇者だから? そうじゃないさ。ケツとの相性が良かったからだよ。キモチ良過ぎて俺もつい、ね?」 ぱちりとウィンクを投げると青年は思わず頬を染めた。 「ば、馬鹿かアンタ……俺みてぇなむさくるしい野郎相手に愛想を振りやがって……。でも、気に入ったぜ。 何でも聞いてくれ。知ってる事なら何でも正直に話してやるよ」 「祈祷師様に食事を運んでいるのは俺やリュガを入れて七人。七日に一度、ってのはそう言う事だ」 熊のような体格の青年は「ザッシュ」 ザッシュはマイトを見ると照れくさそうに頭を掻いて質問に答えた。 「丘の上に現れたリュガさんは食事を運びに来た、と言ってたましたが何も持っていなかったんです。何故なんでしょう?」 フォルクが問いかけた。 「そりゃ当然だ。祈祷師様の食事ってのは俺らの精液を飲むことだからな。ジェルバの食べ物は男の精液さ」 「精液だって? そんなモノで腹が膨れるのかよ?」 ナイブが思わず口に出した。 「腹が膨らむかは俺もよく分からねぇ。けど、ジェルバに渡す精液は一発や二発じゃきかねぇ。何十発も、だ」 「勇者様ならあり得ますが、普通の人が何十発も射精するなど無理でしょう? リュガさんはとんでもない 精力の持ち主でいらっしゃるんですか?」 「いや、違う。リュガだけじゃねぇ。俺も食事当番で祈祷師様のとこへ行きゃ何十発も射精させられちまうのさ。 俺やリュガだけじゃなく他の食事担当の男も一緒だ。 んで、俺らからトコトン精液を搾り取ってしまうってんで毎日はキツイのさ」 「祈祷師ジェルバ、いったい何者なんだ?」 「俺も正直いって分からん。見た目は軟弱なクセしてやけに力は強ぇし。不気味で本当は俺だって行きたくはねぇ。でも村長の言いつけは拒否できねぇし」 「あのもの凄く甘いニオイ、ザッシュはどう思う?」 マイトが小屋の中から漏れた異様なニオイについて聞いてみた。 「甘いニオイ? う~ん、べつに気にはなんねぇけどな? そんなに甘ったるいニオイなんてあったのか?」 マイトたちはハッとした。 甘い味だけではなく甘いニオイも感じなくなっているのでは、と気付いたからだ。 改めてマイトたちはザッシュを見た。 熊のようないかつい体格ながら、どことなくやつれて頬が削げ落ちているように見える。 「ん? 俺か? 俺は元気だ、と言いたい所だが、最近はカラダが重く感じる日が増えて来てんだよ。 なのに体重は下がってきやがるからなんかの病気か? と疑って医者に診てもらったが何ともないらしい」 ◇ ザッシュからジェルバについての情報を得たマイトたちは、村長の家へとやって来た。 幸い村長は在宅しておりマイトたちのとの会見を許可してくれた。 「あなた方が魔王を討伐に行かれる勇者様御一行だとか? ロクなおもてなしもできず大変失礼いたしましたの」 身分や正体を名乗りながら村にやって来た訳じゃないのでお気になさらず、とフォルクが答えた。 「さて、この度は私になんのご用でしょうかな?」 白くなった髭を玩びながら高齢の村長はあらたまってマイトたちに尋ねた。 「ボンボンの泉の前の小屋に居る祈祷師様について、です」 急に村長の顔が曇った。 「ああ、あの祈祷師様の事ですか……」 「どうされました? 何かお困りごとでも?」 ナイブが丁寧な言葉で村長を労わるように聞いた。 「ふうむ……、どこからどう話せば良いやら……」 「祈祷師ジェルバが不思議な膜を祈りの力で排除して、村の井戸を救った件は知っています」 「そうでしたか。ある程度は存じておられるんですな。では、その後の事も?」 「詳しくは知りません。ですが、ジェルバの食事についてはザッシュさんから聞きました」 村長が一つ、大きくため息を吐いた。 「……ジェルバと言う祈祷師の正体は、魔物ではないか、と私は睨んでおるんですじゃ」 「魔物?」 村長はうなずいた。 「初めは、村の大事な水源を守るありがたい存在、と思っておりましたが――」 村長は祈祷師が魔物ではないか、と考えるに至る経緯をゆっくりと話し始めた。 それは、ずっと胸に溜め込んでいたモノを誰かに聞いて欲しかった、と言わんばかり態度で。 「ジェルバから再び導水管に膜が張られている、と聞いた私たちは急いでボンボンの泉へと駆けつけました。 そして、到着するとジェルバが祈りの力で膜を打ち破っている最中だったのですじゃ。 私たちは当然ながら感謝しました。こうやって二度も村の水をお守り頂いたわけですからの。 そして、ジェルバはこう言いました。『これからは膜を張られないよう魔物避けのお守りを付けておきますわぁ』、と。 それから、村の井戸に届けられる水の質が微妙に変わったのです」 村長は長年泉の水と向き合っていただけに、わずかな変化であってもその変化に気付いていた。 「ワシのように年を取った者であれば気付いている者もおるでしょう。ですが、それぐらいわずかな変化なのです。 村の大半の者は気付いておりますまい」 「で、その井戸水の変化のあと、村で何が起きたんですか?」 フォルクは敢えて「味覚の変化」に触れずに質問した。 「それが、まだ何も起きてはおりません。村を訪れる旅人の数が減った、と言う程度しか」 やはり村長自身も「甘味に対する鈍化」には気付いていなかったようだ。 「で、ジェルバが魔物じゃないか、って感じ始めたのはいつからなんです?」 ナイブが村長にハナシの先を促した。 咳払いを一つ挟んだ村長は、周囲に誰も居ない事を確かめてから話し出した。 「……ここだけの話にして欲しいんじゃが」 マイトたちは体を傾けて村長の言葉を聞きこむ。 「ジェルバが魔物になって村の男から精を抜きとっておるのを見たのじゃ」 「ジェルバが魔物に!?」 「精を抜き取る?」 「男から!? 超うらやま!」 マイトの発言に村長だけではなくナイブとフォルクもじろりと視線を投げた。 「あは、はは、冗談、冗談だってば~」 「ごほん。その話、詳しく聞かせてもらえますか?」 ナイブの声に村長は改めてジェルバが魔物だとする事実を話し始めた。 「あれは、先ほど言いました二度目となる膜を打ち破って村の水を守って下さった時のことじゃった。 知らせを聞いて駆け付けたわしはジェルバの活躍に感謝し、ボンボンの泉から村の中へ戻った訳ですが、 いざ戻って来て見ると泉で忘れ物をしておったことに気が付いたんですじゃ――」 忘れ物とは村役場の鍵だった。 導水管に取り付けたと言う魔物除けのお守りを覗き込んで確かめた折、首に掛けたままでは落としかねないと思い、 囲いの柵に引っ掛けておいたのだ。 大至急村長は泉へと戻った。 鍵を掛けねば家に戻れないからだ。 急いだものの丘の頂上に到着するとすっかり日が落ちてしまった。 幸い、光を放つ魔鉱石を携帯していたのでその光を頼りにボンボンの泉のそばへ向かった。 案の定、村役場の鍵は囲いの柵に掛けられたままで、無事に取り戻すことができた。 ホッと安堵の息を吐いた村長は、すぐに麓の村へ引き返そうとした。 「その時です。繁みがガサガサガサっと揺れたもんじゃから魔物か? と恐れたわしは咄嗟に魔鉱石の光を服の中に隠し、魔物に見つかるまいと身を低くしてじっとしとりました」 そうして、恐れながら待ち構えていると、揺れた繁みから現れたのは村の男たちだったのだ。 「村の者が五人も、光も灯さずにふわふわと羽虫のように小屋へと向かい、そのままジェルバの小屋の中へと 入って行ったんですじゃ。 毎日運んでいる食事の時間でもなし、ましてや五人も集まるなど何事か? と当然ですがわしは怪しみました」 村長はジェルバの小屋に近づいて様子を窺った。 程なく、聞こえて来たのはなまめかしく卑猥な声だった。 村を救うために留まって頂いたジェルバ様の小屋でまさか破廉恥な事をやっているのでは? と大いに憤慨した村長は、 思わず小屋のドアに手を掛けた。 「おぬしら! 何をやっとるんじゃぁ!」 小屋の中を照らす弱い光によって見えた光景は、ぬめぬめとした粘液の塊と、その塊にカラダを包み込まれ グニュグニュと揉み扱かれながら淫らに喘ぐ村の若者たちだった。 「ぬお!? な、なんじゃこれは?」 「あら? 村長じゃないの? ダメじゃない、勝手に入ってきちゃぁ。今、イイトコなんでぇ、邪魔しないでもらえるかしらぁ?」 聞こえた声はジェルバのモノだった。 だが、あの派手な装束を身にまとった祈祷師の姿はどこにも見えない。 「聞こえなかったのかしらぁ? アタクシ、お楽しみの真っ最中なんでぇ、村長はお引き取りください、っていったのよぉ?」 声は粘液の塊から発せられていた。 「お、お前がジェルバ、様? な、なぜそのようなお姿になっとるんじゃ?」 「いちいち説明なんかしてらんないの! 大事な大事な食事の真っ最中なんですから! ほら、もう出ていってちょうだい!」 粘液の塊によって小屋の外へ押し出された村長。 淫靡な声は相変わらず漏れて聞こえてくるもののドアはもう開かなかった。 それよりも、粘液の塊じゃジェルバの本当の姿だとすると、それはつまり魔物ではないか? 「――そのように考えたワシはすぐに村の主だったモンに相談したのですじゃ。 じゃが、小屋に集まった五人はその夜ボンボンの泉には足を向けておらぬと言うし、その家族のモノも夜はずっと家に居た、と言うのです。 わしは夢でも見たのかと、自分を疑いました」 しかし、一度生じた疑念は張れないまま次の疑念が浮かび上がった。 「渋々ジェルバの元へ食事を運んでいた者が、喜々として行くようになったのですじゃ。 あれほど面倒臭がっていたものまでコロリと態度が変わりました。 そして、村の若いモン同士が不自然なほど仲が良くなったんですじゃ」 「それは良い事ではありませんか? 村人同士が親しくなるのは」 フォルクは素直な感想を告げた。 しかし、村長は首を左右に振った。 「親しくなるのがもちろん結構な事なんです。じゃが、昼の日中から家にこもって淫らな遊びに興じておったり、 仕事も放ったらかして互いの性器を弄り合うなど、度が過ぎとるでしょう?」 マイトはナイブとフォルクを順に見渡した。 そして、代表して村長に聞いた。 「村に来てまだ日は浅いんですが、村の若者がそのような性的な遊びに耽っている感じは見受けられませんでしたよ? 祭りも賑わっていましたし、若者が仕事に精を出している姿も良く目にしましたが」 「そうなのです。一見すると何も『起きていない』んですじゃ。しかし、真面目な青年が急に仕事を怠けるようになったり、 荒くれ者が妙にかいがいしくなったり、しかも、それら若い者の親はその変わり様をなんとも思わぬどころか、 それで良いと言う始末。 何故か分かりませぬが妙に何事に対しても甘くなっているのですじゃ」 「甘くなった?」 マイトは思わず腰を浮かした。 「ゆ、勇者様?」 村長が少しびっくりして目を開いた。 「村長は、ジェルバが魔物かも知れない、と言う話を他にもしましたか?」 村長はまたもや首を横に振った。 「他に話そうにもワシ以外のもんはジェルバをすっかり信じ込んでおるので、迂闊に言えんのですじゃ。 もしもジェルバが魔物かも知れぬなどと言おうものなら、ワシの頭がおかしくなったのじゃろ、と言われかねんからの」 「なるほど。村長が他所から来たジェルバを追い出そうとしている、と痛くも無い肚を探られては逆効果でしかありませんものね」 フォルクが村長の「思い」の核心を代弁した。 「まったくもってその通りですじゃ……」 「大将。今の話しを聞いた限りじゃまだ100%とは言えねぇがよぉ。ジェルバが相当怪しいってのは理解できただろ?」 「もう一度確かめに行きましょう。それも昼間では無く夜に。 村長のおっしゃられた通り村の青年たちから精気を抜き取る魔物だとすれば、このまま放置できません。 ただちに排除せねば村に大きな災いが振りかかるでしょう」