SamSuka
鷹取リュウゴ
鷹取リュウゴ

fanbox


変態勇者の究極装備 4

4魔王と四天王  「ふむ? 一人足りないようだが?」 髑髏をあしらった玉座から睥睨している禍々しい存在。 その者こそプロステット王国を侵略し、さらには世界を手中に収めんとする魔王・ダークアナルであった。 ペニスを隠す小さな布以外は何も身に付けておらず、うねる血管を浮かべる黒褐色の皮膚が他を圧倒するかの如く発達した筋肉を力強く飾り立てている。 尖った両耳の上にはぐるりと輪を成して曲がる角。手や足の先には猛獣の如き鋭い爪。唇の端からは太い牙がちらりと覗いている。 「もう一度聞く。あと一人、なぜこの場におらぬ?」 岩肌が剥き出しの広間に魔王の低い声が苛立ちをこめて響いた。 「申し訳ありません。我らが呼びに行った時にはすでに……」 魔王の視線の先には三体の配下が頭を垂れて跪いていた。 その中の一体。爬虫類の頭と緑の皮を持つ魔族が畏まりつつ魔王に答えた。 「しようのない奴だ。勝手は許さぬ、と申しおいたはずなのだがな」 三体の配下はさらに頭を低くし、床にへばりつくようにして魔王の許しを請うた。 「なれば……、レクトム」 「はっ!」先ほど答えた爬虫類顔の魔族が少し前ににじり出た。 「セカム」 「ははっ!」レクトムの右側で控えていた巨体の牛男が顔を少しだけ上げた。 「イレウム」 「はいっ!」レクトムの左側で平伏していた琥珀色の鎧で全身を覆う魔族がよく通る声を響かせた。 「速やかにジェジュナムを連れ戻せ。あ奴のこと、勇者が未熟な内に殺してしまえば良い、と考えたのであろうが、 そのような事は勇者もとうに気付いておるだろう。 ゆえに、先手必勝とはなり得ぬ。むざむざ勇者に経験を積ませるような事はやめよ、と伝えてやれ」 魔王の許しなく先走っている者の名はジェジュナム。 カラスのような黒い翼を持った有翼魔人である。 「恐れながら申し上げます。ジェジュナムは、知恵はともかく単体での戦闘力では我らの中でも随一にございます。 閣下のお考えもまさしくその通り……、と僭越ながら同意させて頂きまするが、未熟な勇者なれば万が一にも討ち損じる事などあり得ないと思われるのでありますが……」 レクトムはやんわりと魔王に意見を申し述べた。 「そこよ。それこそが油断と言うものよ。これまで討ち破れた魔王どももそのように勇者を侮ったが故に、 最後は滅ぼされたのではないか? レクトム、ジェジュナムの実力など我も良く知っておる。それゆえ真っ当な戦いならばお前の言う通り決して敗北などはせぬだろう。 だが、この記録を見よ」 魔王・ダークアナルが何も無い空間に手を差し込むと、空間の中から一冊の本を掴み出した。 そして、レクトムたちの前に放り投げた。 「これは?」 恐る恐る手を伸ばし拾い上げるレクトム。 「歴代の魔王が書き残した記録。『素敵な魔王の日記』、通称『SM日記』だ」 「なんと? これまでの魔王閣下が書き残された日記ですと!?」 「特別に閲覧を許す。が、その前に要約すると、勇者を侮ったがゆえに敗北した、と言う事が書かれておる」 「さようでございますか……」 「なればこそ、ジェジュナムを連れ戻さねばならぬ。あ奴の出番はもう少し先となるからだ」 「恐れながら申し上げます」 セカムが口を開いた。 「連れ戻せ、との仰せでありますが、もしもジェジュナムが拒否した場合はいかがなさいますか?」 「我の命を拒めば、その場で抹殺処分となる……。だが、今はまだ勇者と対するな、と具体的に言うておかなんだ我にも若干の非はあろう――」 「滅相もありません! 魔王閣下に非など!」 「控えろセカム。閣下はお言葉の途中だ」 イレウムがたしなめるとセカムはさっと引き下がった。 その様子を見てから魔王は再び言葉を続けた。 「命令の内容についてジェジュナムの浅慮を差し挟む余地を残した我の非は、それなりにある、と我は考える。 ゆえにだ。もしもあ奴が帰還を拒むのであれば、別の命令を与えるまでよ」 「別の命令とは、どのような?」 イレウムが明るく澄んだ声音で魔王に問う。 「勇者は必ず己が未熟さを補うため、かの『究極装備』を手に入れようとする。 なれば、勇者が『究極装備』を手に入れられない様にしてやるのだ。 勇者よりも先に我らが『究極装備』を奪う。さすれば勇者の戦力は整わず我らは憂いなく勇者を倒せるであろう。そうジェジュナムに伝えるがよい」 レクトム、セカム、イレウムは再び魔王に稽首した。 「閣下。感服いたしました。そのような深謀をお持ちであられましたか」 レクトムが慇懃に賛辞を伝えた。 「勇者を丸裸のままにして、あとは焼くなり煮るなり、との策。このセカムも完全に同意でございます」 セカムが勇者への揶揄をこめて微笑んだ。 「と、なると、『究極装備』はジェジュナムにお任せになるとして、我ら三体はいかが致しましょう」 イレウムは再び魔王に尋ねた。 「ジェジュナムだけでは足りぬ。お前たちも『究極装備』を手に入れて来るのだ。 『究極装備』は一つにあらず。四つだ。『SM日記』によると全部で四つ存在する。 だが、どこに秘されておるのかは分からぬ。それ故、お前たちも『究極装備』の在りかを探し出し、ジェジュナムと共に我の元へ持ち帰るのだ。 よいか? 改めて命ずる。勇者よりも先に四つの『究極装備』を手に入れ我に捧げよ!」 「「ははぁーっ!」」 魔王・ダークアナルは三体の魔族を一瞥すると玉座から立ち上がり、岩の広間から去って行った。 しばしの静寂の後、レクトムが他の二体に話しかけた。 「さて、各々がた。閣下が仰せになられた持ち帰るべき『究極装備』は四つ。 そして、四天王と呼ばれし我らも都合の良い事に丁度四体。 一刻も早く魔王閣下にお届けするためにもここは別行動に。それでよろしいか?」 「当然である。むしろ別々に動かねば効率が悪かろう」 セカムもレクトムの意見に賛成した。 「そうおっしゃると思っておりました。構いませんよ? どうせ真っ先に閣下へ『究極装備』をお渡しするのは この私、イレウムでしょうし」 イレウムはなぜかセカムとレクトムを小馬鹿にしたような物言いをした。 それを聞いたレクトムとセカムの背がピクリと動いた。が、敢えて反論はせず、 「さようですか。期待しておりますよ」 「ぬはは。自信があるのは結構な事だ」と反駁する事無く余裕を見せた。 広間からそれぞれの部屋に戻った三体は、広間に居た時とは全く別人のような邪悪さを顔に顕わし苛立ちを言葉にしていた。 「イレウムのあの高慢! ええい! 許せぬ! 侮辱するにも程があるぞ! ジェジュナムもジェジュナムだ! 勝手に暴走する癖はなんとかならんのか!  こうなればワシが一番先に『究極装備』を閣下にお届けし、他の者の鼻をへし折ってやらねばやらねば気が済まぬわい!」 レクトムは早速地図を広げ『究極装備』が隠されていそうな場所を検討し始めた。 「人間どもにとって至上とも言うべきお宝を隠し、我らの手が届かぬよう小細工が出来る場所など限られておる。 それに、閣下から授けられた『SM日記』は我が懐にある。これを読み分析すれば『究極装備』の在り処なぞ、 ほほほ、掌を指すに等しき児戯よ。ほほっ! ぬほーっほほほ!」 耳に障るレクトムの高笑いは、それからもしばらく続いていた。 「どうも、イレウムの小賢しい発言は吾輩へのあてつけのように聞こえるのだが。吾輩を図体がデカいだけで知恵も早さも無い、などと思っておるのだろう」 セカムは分厚いテーブルに思いっきり拳を叩きつけた。すると、憐れテーブルはその形状を変え、何の機能も果たせないガラクタと呼ばれるモノとなってしまった。 「実にムカつくぜ。だが、ぐふっ、ぐふふっ、能力をひけらかすイレウムやジェジュナムとは違って、知者ぶって気取ってやがるレクトムとも違って、 吾輩はみだりに手の内を明かさぬよう動いておっただけの事。それを見抜けぬヤツらの無能さこそ失笑もんよ! 見ておれ! この命令を見事真っ先に成し遂げるのはこのセカムなり! 閣下の信に応え得るはこのセカムなるぞ!」 ドン、と胸を張ったセカムは恭しく魔王の居室の方角に向かって敬礼すると、乱雑に置かれた「別の」ガラクタの中から灰色の粉末が入った瓶を引っ張りだした。 「――コイツを使ってやろう。この土に我が精を混ぜ、探知に長けた我が分身を量産し、しらみつぶしに調べ上げれば数日を待たず成果を得ること間違いなし、だ」 セカムはそう言うと股間を覆う鉄板を内圧で弾きとばし、巨大なこん棒の如き性器をボロンと放出するのだった。 「なにが『期待しておりますよ』だ? なぁにが『自信があるのは結構な事』だぁ? 私の挑発にも乗れない臆病者め! 今頃私に呪詛を吐いているなどお見通しだっての! それに別行動をしたいのは手柄に目がくらんだだけだろうに! あ~、やだやだ。あんな低劣なのと私が一緒くたにされるなんてさ。四天王? 違うだろ? このイレウムと三体の道化、ってのが正解だな。 まぁ、どっちみち宣言通り私が最初に閣下にお褒め頂くのは決まったようなもんさ」 部屋の中をぐるぐると歩いていたイレウムは、つ、と立ち止まると頭部を覆うヘルムを少しだけ下げ、 中から狼そのもののマズルを突き出し無音で吼えたイレウムは、配下の魔物を何体も呼び寄せていた。


More Creators