SamSuka
鷹取リュウゴ
鷹取リュウゴ

fanbox


性感男豪ディルダービルダー 5

5終章  「稲葉くーん! どうして今日は『ディルダー』じゃないのさ?」 会社に着くなり一年先輩の仁井留(にいる)が稲葉に口を尖らせた。 「し、仕方ないっしょ。着られるスーツがこのサイズのしか無かったんですから」 「仁井留の言う通りだ。俺だって前よりかっこよくなった稲葉くんを今日も拝見できると信じていたからガッカリしているんだよ」 仁井留とは別の一年先輩にあたる瀬井留(せいる)も稲葉に苦情を申し立てた。 「いや、んな事言われたって、あのカラダに入るサイズのスーツって特注になるからおいそれと作れないし……」 「おう。今日も稲葉はモテモテじゃねぇか。やるねぇ~、羨ましいぜ~」 ヒュウと口笛を吹きながらひやかして来たのは厚主である。 「おはようございます――って、厚主先輩! 聞いてなかったっすよ? この会社に居る人間のほとんどが異世界から来た仲間たちだった、なんて!」 稲葉が勤めるこの会社は、社員の8割が厚主と同じ異世界出身者で占められていたのだ。 「だって聞かなかったじゃん。それに、仲間と共にこっちに来た、とは言ってただろ?」 「そ、それはそうかも知れませんけど、こんな近くにこんな大勢、だなんて思う訳ないでしょう?」 稲葉は仁井留や瀬井留の方に顔を向けた。 「先輩たちだって、今まで全然異世界出身なんて雰囲気出してこなかったし……」 「秘密ですしねー?」 「秘密ですよねー?」 「こっちの世界で生きぬく為さ。無駄に奇異に思われたり不信感を煽る様な行為、できねぇだろ? 万が一バレちまったら取引先様になんて説明するんだ?」 「そ、それはそうかも知れませんけど~」 厚主が手を叩いて仁井留と瀬井留を仕事に戻す。 「さぁ、もうとっくに始業時刻は過ぎてるぞ? 仕事しろ仕事」 稲葉も自分のデスクに向かおうとすると、ちょっと待て、と厚主に引き止められた。 「今日は20時に俺の部屋だ。食事は先に食べておいても構わないが待っててくれるのなら『ル・グラッチェ』から俺の分も一緒にデリバリーを頼んでおいてくれ」 『ル・グラッチェ』とは厚主の住むマンションの近くにある高級イタリアンの店である。 デリバリーメニューは「本日のおまかせディナー」のみ。1万5千円をお支払い頂きます。 「俺、今夜もそっちへ行きます、って言ってましたっけ?」 「うん? 来ないのか? 来るだろ? 俺とセックスするだろ?」 はぁ~、とため息を吐いた稲葉があきらめ顔で自身の股間を見つめた。 「そりゃぁ、セックスしたいですけど、連日っすよ? 連日。『ディルダー』になっていたら疲れないからって……」 『ディルド』によってビルダーマッチョな『ディルダー』へ変身すると、筋肉激盛りムキムキマッチョボディになり絶倫と化す。 しかも性感は爆上りし快感が著しく増大される。 なのに、セックスの後は疲れ知らずで気持ちスッキリ、お肌ツヤツヤ。デメリットはほとんど無い。 あるとすれば睡眠不足になる事くらいだ。 「俺はお前と毎日したいんだがな? 嫌か? 今夜は止めておくか?」 「あれあれぇ? 厚主先輩がダメなら俺とヤりましょうよ稲葉くん。いつも同じ相手じゃ飽きちゃうよね~?」 仁井留が戻って来てドアの隙間からひょっこりと顔を出した。 「待って待って。仁井留よりも俺との方が良いと思うよ? 『ディルダー』になった時の俺、一昨日見せたでしょう?」 会社のトイレで『ディルダー』姿を見せてくれた瀬井留が仁井留の前を塞ぐようにドアの陰から現われた。 おかげで稲葉はその日の昼休みを相互アナニーとしゃぶり合うだけで終了せざるを得なかったのだ。 「そいつを言うんだったら俺とヤるしかないですね。この中では俺が一番カッコイイ『ディルダー』になれるんですから」 瀬井留・仁井留とは別の先輩である弓場(ゆば)が現れ二人の前に立ちはだかった。 「おいお前ら! 仕事中だ! 持ち場に戻れ!」 厚主が怒鳴ると三人はサッとドアの向こうへと消えた。 「ったく、俺が居る前でいけしゃぁしゃぁと、図々しい奴らめ」 「……厚主先輩って結構嫉妬深いっすよね? 俺が他の奴らに誘われてる時って、いつもみたく余裕ないですし」 「ち、違ぇよ! そんな嫉妬とか、んなもん、冗談じゃねぇ……」 「そうっすか? じゃぁ、やっぱり今夜はあの先輩がたとセックスしようかな。前にヤってから少し間が空いちゃったし」 厚主の顔が萎れた風船みたいにしょんぼりと寂しそうになった。 「――と、思ったけどやっぱ厚主さんちに行く事にします」 「お、おう! そう、だよな! それしかない、よな!」 打って変わってガハハと笑う厚主。 厚主と稲葉の関係は、厚主が強引に引っ張っているようでいて実際は稲葉が主導権を握っていた。 「けど、仁井留先輩たちにもあんま寂しい思いをさせたくは無いし、間を取って俺と先輩がたと全員で厚主先輩の部屋に伺います。 今夜は複数でヤりましょう」 ぼりぼりと頭を掻いた厚主が呟いた。 「稲葉、まさかとは思うが、お前って本当は俺らと同じ異世界人だろ? でなきゃそこまで淫乱になれる訳が無ぇ」 「かも知れませんね? っへへ。欲望に忠実なのは厚主先輩やアイツらだけなんじゃないっすからねぇ~ と言うか、厚主先輩が勇者やってた世界の男たちってどんだけエロいんすか。そんなにヤリまくってたら子供が 何人も出来て大変じゃないっすか」 「その心配は無かったな。子作りセックスん時はお互いがその気でやんねぇと受精する器官が芽吹かない」 「うーわ、凄いっすねそのシステム……。合意なき妊娠は無しっすか……」 強姦でも妊娠させられてしまうこっちの世界よりもその点は進んでいるんじゃないか? と稲葉はふと思った。 「ともかく、だ。俺が独り占めできると思ったのによぉ。稲葉がここまで変わっちまうんだったら相談所なんか紹介すんじゃ無かったぜ」 「そろそろ俺も仕事するっすよ? 厚主先輩も自席に戻って下さい、ほら、早く、急いで急いで!」 ◇  「『ディルド』が『ディルド』を産むのは珍しいかい?」   真野場の見ている箱の中でディルドの鈴口が大きく開き、中から小ぶりのディルドがズルゥと這い出て来た。 「実際に見るのは初めてだ。あちらの世界でもディルド工房は秘中の秘とされていたしね」 「それもそうだ。魔術と錬金術との融合。それがこのディルドの真髄だからな」 「そのような技術。どうしてこの世界でも行使できるんだ? 大賢者よ」 「勇者アッシュのように異世界の知識と技能を身に帯びたままでいると、この『世界』に奪われる。そうなる前にこの『世界』の人間に預けたのだ。 もちろん、その人間は自分がそんな異世界の知識を預かった、などと認識できない。 そして、『世界』から吾輩への干渉が止まった頃合いを見て、その人間から返してもらったのだ」 「それで、ディルドの錬成も可能なのだな。恐れ入ったよ。それにしても大賢者様の膨大な知識を託された人間は 少々気の毒だな。かなりの負担だったろうに」 「その点も抜かりはない。彼への補償として【Brave party】へ採用するよう勧めただろう?」 「ああ。彼か。彼が君の中身を保管していたんだね?」 真野場は男にうなずいた。 「一年分の記憶が失われている。そのせいで彼の人生に損害を与えてしまったからね。これくらいのフォローはやって当たり前だ。 しかし、当の本人がここへ相談しにくるとは思いもよらなかった」 「彼を我が社に迎え入れた時から勇者様はいたくご執心だったからね。 隠しているようで実は本人以外はバレバレだったさ」 「いずれこんな日が来るだろう、と予想はしていましたがね。導師アロカ殿もそれは同意見では?」 「もう私は勇者を導く導師などではない。小さな会社の社長、その真似事をしているだけの一介の老人にすぎぬよ」 「ご謙遜を。吾輩と違ってこの世界に全てを削ぎ落とされていても、皆を導ける力を持ち続けられた奇跡の人であられるのに」 「その力を悪用されては困るから社長でありながら滅多に顔を出せなくなったがね」 「それも賢明な判断。アッシュが役割を引き継ぐまでは見守ってやって下さい」 「大賢者マノーバ殿も、共に――」 仁王像のような体格の男の横に居た細身の紳士は、長いあごひげを撫でつけながらふんわりと微笑んでいた。  終 ◆人物紹介など◆ 稲葉 聖太(いなば せいた)25歳  合コンに精を出す少々ノリの軽いお調子者。顔もスタイルも良いので一見するとモテそうなタイプ。 気分がノっている時は仕事をバリバリこなす優秀さを見せるものの、そうでない時はかなりポンコツ。 入社2年目だが後輩がいないのでいまだに先輩たちには新入社員のように扱われている。 厚主 員我須(あっしゅ いんがす)30歳  数年前に設立されたスポーツ&ジムウェアメーカー『Brave party』のホープ。 社長がほとんど顔を出さないため実質的なリーダーとして会社を仕切っている。 実は、別の世界では闇の魔王を討伐した勇者であったが、倒される寸前に魔王が放った呪いにより勇者とパーティのメンバー全員がこちらの世界へと転移させられていた。 元の世界での名は「アッシュ インガス」 神龍グラティアと光の神パルシアの加護を受け、魔王を倒せる唯一の武器・聖剣ブリガンドを、触れた者を悉く黄金に変えてしまう呪いが仕掛けられていた黄金の柩より世界でただ一人取り出すことに成功した男である。 2年に渡る過酷な旅を経て、ようやく仲間たちと共に魔王を滅ぼすことができたのだが……。 アッシュにとって異世界であるこちらの世界の言語や常識、ルール、文化などは大賢者マノーバが瞬時に「世界」を読み取り吸収したものを「そのまま」脳にコピーすることによって得られた。 聖剣は元より魔王を討ち滅ぼせるほどの剣技やその他の勇者的能力はほとんど失われ、鍛え上げた神の如き鋼の肉体でさえ 転移によって削ぎ落とされていた。 『ディルド』はアッシュにとって一時的とは言え元の世界の姿を取り戻せる「鍵」のような意味を持っている。 真野場 紫苑(まのば しおん)年齢不詳  「M&B 真野場なんでも相談所」所長。元の世界名は「マノーバ シオン」 勇者アッシュのパーティメンバーにして大賢者。勇者一行を導き、ある時は防御魔法でパーティを護り、ある時は岩でゴーレムを錬成し、 またある時は迷宮の暗号を解いてダンジョンを無事に抜けさせるなど知恵と知識によって勇者の魔王討伐に対し側面から大いに助けた賢者。 『ディルド』は本来、勇者の戦闘力を純粋に強化するマジックアイテムであったが、この世界に飛ばされた時点で男性器及び筋肉を増強する淫具として変質してしまった。 仁井留 一郎(にいる いちろう)稲葉の先輩の一人 元の世界名は「ニール ファンディール」  勇者パーティのメンバーで弓の名手だった。 瀬井留 太郎(せいる たろう)稲葉の先輩の一人 元の世界名は「セイル フェンディール」  勇者パーティのメンバーで大斧の使い手だった。 弓場 碑林(ゆば ひりん)稲葉の先輩の一人。元の世界名は 「ユバ フィリン」   勇者パーティのメンバーで双剣の使い手だった。


More Creators