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鷹取リュウゴ
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俺と魔神とコックボアヒーロー 7

7向日葵と仙人掌  テレビを点けてみると人気漫画家の一人が新作に出す予定のキャラクターや世界観を説明して記者たちを驚かせていた。   「あの先生、今日は日の出テレビで会見をやっているんだな。昨日は文集社でやっていたし中々忙しいようだ」 「派手なピンク色のスーツを着たプロデューサーさんが直々に綺羅先生に会見を開いて欲しいって頼み込んでいたけど、 本当はもう作業に入りたいと言ってたから本人的には不本意だっただろうね」 青少年向け王道バトル漫画の作者が次は男同士の濃厚な性行為を含むBL・ゲイ漫画を描くとか言い出したら、 そりゃぁ周りの者は驚くに違いない。 記者の質問が普段よりも鈍いのはその世界について知らなさ過ぎるか、あるいは詳しいからか、どちらなのだろう? ぶっちゃけ一方的に新作への熱意を語りまくっている時点で綺羅先生の独壇場。独り勝ちな会見模様だ。 これ以上は見なくてもこのところ連日のように「直接」耳にして来た単語が連綿と出てくるだけだと見越してテレビをオフにしようとした。 「む? コイツは……」 遠島が画面の端を見て眉をひそめた。 「どうしたんだ?」 「居た。モンスターだ。それなりの大きさまで成長しているな」 「え? どこどこ?」 「ちっ、もう見えなくなった。さっきの会見場の中の一人だ。記者の席に座っていた」 なら記者の一人なんだろう。 カメラの向きが変わって遠島が見つけたモンスター憑きの記者は再び画面に映ることはなかった。 逆からの角度の映像では記者席は画面に全く入らない。 「おいおいおい! こっちにも立派なのがいるじゃぁないか!」 「えっ?」 もう一度遠島が指し示した部分を見ると、司会進行役の男だった。 「この人?」 「そうだ」 「でも、モンスターっぽいのはどこにも見えないじゃん」 「また『目』だけで見てんだな? チンポを通してそいつを見てみろ」 何度か瞬きをしてからチンポにも意識を向けつつ司会の男を見てみた。 「ん~? んん~? んっ!? こ、この股間にある緑色のサボテンみたいなのは一体……」 司会の男の服がすうっと消え失せ、全裸になった姿が見えた。と言っても本当に服を脱いだ訳じゃない。 魔神ペニスの能力の一つ、ってやつだ。 「分かっただろう? その男とモンスターの合体は随分と進んでいる。浄化する場合は綺羅の時のように容易ではないな」 ◇  俺の住んでいるアパートが綺羅によって買収されリフォームされている間、俺と遠島は綺羅が「第一スタジオ」と言っていたマンションに仮住まいをしていた。 都心に行くのに便利な交通の要地で、大学へ行く場合でも30分掛からない。 人気漫画家「綺羅 朔也」のマネージャーである氷上さんの手配で身の周りの荷物なんかもあっという間に 搬入済みだ。 「手狭でしょうけれど繁忙期にアシスタントさんたちが寝泊まりするスペースを使って頂こうと思います。足りない物があったり困った事がありましたら何なりとお申しつけ下さい」 パリッとした三つ揃えのスーツがとっても似合う紳士だ。 ただ、若いようにも見えるし落ち着いて老成しているようにも見え、年齢がよく分からない。 「氷上さんておいくつなんですか?」と尋ねても、「お好きに想像して下さい」と言うだけで少しも教えてはくれなかった。 「手狭どころか余るほど広いじゃありませんか……」  心地の良い北欧家具のソファに座って50インチのテレビをもう一度点けてみたが、綺羅先生の記者会見のコーナーから『楽しいヘルシーライフ』と言う健康情報番組への再放送版に切り替わっていた。 「う~ん、一気に二体も見つけたのは良いけど、どうすればアイツらを助けられるだろう?」 ある程度近くまで接近しないといくら超巨根であってもコックボアできないし浄化もできない。 もし、無限に伸びるチンポだとしても「記者」と「司会者」って情報だけでは今どこにいるのかなんて分かりやしない。 「ならばアイツらは放置しておくか? そうなるとあの二人は完全にモンスターと合体して命を落とすか他人をひたすら害する存在へと堕ちる。 ま、モンスターに殺された人間は初めから居ない存在になるから俺らの記憶にも残らねぇけどな」 「いや、放置なんかしないって。正義のヒーローをやると決めた以上、救える人にはちゃんと救いの手を差し伸べるからさ。 そんなに心配しなくたっていいんだぜ?」 「いやなに、俺は心配と言うより鉄也がヒーローをやめて性欲のままに人間どもをチンポでボアしまくって、従魔を増やしていくのも『アリ』だ、と思っているんだが?」 それって完全に悪堕ちじゃねーか。 「お前の気に入ったやつをさ、俺みたいに片っ端から従魔に変えて、コックボア三昧・セックスやり放題の日々! ってのはどうだ? ヒーローよりかぜってー楽しいしキモチいいぜ?」 遠島ってばコイツ、今まで見た事も無いような悪人面の笑みを浮かべていやがるなぁ! 「またまたぁ、そうやって俺を試すような事言ってさぁ。まだ一人しか救っていないのにヒーローを辞めるなんかできないよ。 遠島も本気でそんな事は思っちゃいないだろ?」 それには何も答えず「さぁね」と肩を竦めただけだった。きっと照れているんだな。 「会見の参加者については会見場となっていたテレビ局で聞けば分かるはずだ。 鉄也が本気であの二人を救うのなら急いだ方が良い。司会役の男なんざ8割がた合体が進んでたように見えたからな」 「じゃぁ急ごう! 会見場は『日の出テレビ』だったよな?」 「その通りだ」 仮住まいのマンションを出て歩くこと10分ほどで「日の出テレビジョン」へと到着した。ほんと近いんで助かる。 テレビ局のビルの前まで来て、ふと俺は止まった。 そうだ、警備員にはなんて説明すればいいのだろう? 素性の知れない無関係の人間を中に入れてくれるのだろうか? 「鉄也、入れるところまで入ってから考えようぜ? 今は立ち止まってる場合じゃねぇだろう?」 そうだ。遠島の言うう通りだ。ちゃんと事情を話せば分かってくれるかも知れないじゃないか。 入り口のドアが開いて中へと進む。 特に咎められることも無く入る事ができた。 「そうか、ここまでは自由に一般人も入れるんだな」 番組のポスターとかテレビ局の記念品とかを売っているショップがあった。 かと思うとフロアの一部がカフェコーナーになってて思い思いにコーヒーを飲み一息入れている。 そして、女の人が立っている受付の横の通路には『これより先は関係者以外立ち入り禁止』のボードが立っていて 職務に忠実そうな警備員が2名、周囲に目を光らせていた。 さて、とっくに会見は終わっているようだけどどうやって会見場にいた記者や司会者の情報を集めようか? 「おや? 鉄也くんじゃないか! こっちこっち!」 俺を呼ぶ声がして振り返るとカフェコーナーの中から手を振っている人物が見えた。 「綺羅先生だ。会見が済んでここまで降りてきてたんだ」 「丁度良いな。あの先生からも話を聞かせてもらおう。記者や司会者について何か知っているかも知れないしな」 綺羅先生の居る席まで行こうとすると俺たちの前にサッと割り込んで来た人物が居た。 「何か用か? 今、俺を呼んだだろう?」 「え?」 「はい?」 大柄な男の前で綺羅先生が、そして男の背後で俺までもが疑問符をそのまま声に出していた。 「あらぁ? 世良ちゃんじゃなぁい! これから収録よね? 今日もがっつり視聴者を沸かせて頂戴ね?」 派手なピンク色のスーツを着た中年の男は、確か綺羅先生に会見を開くよう説得しに来ていた人物だ。 「それはもちろん。仕事はちゃんとこなすが……」 大柄な男が再び視線を綺羅先生に向けた。 「すみませんね。僕が呼んだのはあなたではなく、あなたの後ろにいる人に対して、ですよ」 ようやく振り向いて俺を見た。 そして、一呼吸置いてからパッと微笑んだ。 「ああ! そうか! そう言う事か! あんたも鉄也って名乗ってんだな! てっきり俺の事かと勘違いしちまった! 申し訳ねぇ。河豚野もそばに居るもんだから収録前の顔合わせ的な何かか、と思っちまったぜ!」 「せっかくだから紹介させて頂こうかしら。この方は漫画家の『綺羅 朔也』先生よ。今日はウチで会見を開いてもらってたの。 で、この子は『世良 鉄也』ちゃん。うちの看板番組になってる『楽しいヘルシーライフ』の出演者なの」 「存じておりますよ! 男の色気が評判の『体操のお兄さん』、ですよね? 僕も時折拝見させて頂いてます!」 「どうもありがとうございます。生憎、俺の方は綺羅先生を良く知らなくて……」 「ヤダ、世良ちゃん! 『デビルズソード』の作者様よ! あなた、この前全巻イッキ買いして読破したとか言ってたじゃない!」 「おお! あの『デビルズソード』の!? いやー! 失礼しました! 内容に夢中になるあまり作者の方の名前などほとんど意識していなかったので……」 「いえいえ。それだけのめり込んで呼んで頂けたなら作者冥利に尽きるってもんです。お買い上げもどうもありがとうございました」 「こちらこそ! あんな面白い漫画を読ませて頂いて! 是非お礼を言わせて頂きたい!」 「ん~、なんか俺らってばすっかり蚊帳の外?」 「みたいだな。綺羅先生は後にして他をあたるとするか」 恰好が違うから一瞬分からなかったが、確かにこの人は『体操のお兄さん』で有名な『世良 鉄也』さんだ。 番組そのものは数える程度しか見た事は無いが、少し前に凄いマッチョなイケメンがテレビに出てる、とネットでもバズってたのを覚えている。 そろりと離れて席を外そうとしたらピンクスーツの男に「待って」と止められた。 「ねぇ、綺羅先生? この子たちは?」 「彼らこそ僕に新しいインスピレーションをもたらしてくれた大恩人なのです! こっちが『金銅 鉄也』くん。 横に居るのが兄貴分の『遠島 昇』さん」 「へぇぇ! そうだったのね? て言うか! ヤダ! 二人とも良い感じじゃない! 世良ちゃん程じゃないけど良い肉付き! どうかしら! 『楽しいヘルシーライフ』の体操コーナーに参加してみない? きっとテレビ映えするわよぉ!」 「いえ、そう言うのはちょっと……」目的外の行動は避けたい。 「そうだぞ河豚野。いきなり番組出演を頼むなんて迷惑な事は控えた方がいい」 大男の方の「鉄也」さんが小声で俺に耳打ちをした。 「河豚野は口の上手い奴だから曖昧な返事じゃ無くピシッと言ってやった方がいい。俺だって半分はコイツの口車にまんまと乗せられて『体操のお兄さん』なんかする羽目になっちまったんだ」 あ~、至近距離だと男のフェロモン? みたいのがぷんぷん感じられてヤバいんですけど! ただでさえ美味そうなガタイをしていらっしゃるし! ムクリと起きかけた股間に「ダメダメ! 今はダメだよ!」となだめるが、このままじゃマジで勃起しちまう! 「鉄也、アレを見てみろ」 焦る俺に遠島はある一点を指差した。 そこには日の出テレビが放送中のドラマのポスターが貼られていて、ビキニ姿の女優が指先に着いた生クリームをベロリと舐め取っている姿が大きく表示されていた。 「あ~、……うん、ありがとう遠島。一気に萎えたわ。もう大丈夫」 「どういたしまして」 「あら? どうかしたかしら?」 河豚野氏が人差し指を顎に当ててキョトンとしている。 「いえ。何でもありません。ですが、番組への出演は全くその気がないので辞退させて頂きます」 「ええ~! 残念すぎぃ~! 世良ちゃん! あんたこの子たちに何を吹きこんでくれちゃったのぉ?  営業妨害的な事は困るのよぉ~!」 「知らん。それより、そろそろスタンバイせねばならんから俺はもう行くぞ?」 世良さんが不服そうな河豚野氏を見限ってカフェの席から離脱しようとした。 その時、ふと立ち止まってもう一度俺たちのそばに顔を寄せた。 「なぁ? 俺の気のせいだと思うんだが、君らって普通の人間?  …………ま、何でも良いが困った事があったら俺も相談に乗るんで遠慮なく言ってくれ。 力になってやれることがある、かも知れないぜ?」 イカツイながらもチャーミングな笑顔の世良さん……、頼れる兄貴感満載でカッコ良くてマッチョで……。 ――やっべぇ! 遠島と来てなきゃ世良さんの魅力に即落ちしちまうトコだったぜ。 「……俺たちに『普通の人間』か? などと質問する世良さん自身はどうなんだ? あの人こそ普通の人間ではないんじゃないか?」 遠島は背を向けて立ち去って行く世良さんを訝し気に見ている。 従魔にとっては世良さんはさほど魅力的に見えないのだろうか? 「いっけなぁい! アタシもそろそろ行かなくちゃ! 大事な打ち合わせが入っちゃってるの! なので綺羅先生! お先にごめんなさいね! そして、会見をウチでも開いてくれて本当にありがとうございました!」 ピンクのスーツ男も小走りでカフェエリアから去って行った。 「で、改めて――、鉄也くん。どうしたんだい? テレビ局にまで来ちゃってさ」 俺は、中継されていた会見場に居た二体のモンスターの事について綺羅先生に尋ねた。 「なるほどね。僕には全然見えなかったけどそう言う事情だったのなら喜んで協力するよ。 幸い、名刺交換はしていたからその名刺ごと君たちに渡しておこう」 こうして、モンスター憑きの記者と司会者の情報は綺羅先生のお陰で予想外の早さで集まったのだった。


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