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鷹取リュウゴ
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性癖受肉プリンター 5

5思惑バースデーパーティ  学生向けアパートにしてはキッチンと寝室が別々であり、広めのバスルームがあるので駅から若干歩く点以外はとても条件の良い部屋だと言える。 宵の明星が西空に輝き始めた土曜日の夕暮れ。そんなアパートの一室に、 智也の友人の「的島 頼流(まとじま らいる)」 同じく同学年の友人である「天王寺 平吾(てんのうじ へいご)」 一年先輩ながらバイト先で知り合って仲良くなった「生駒 青雲(いこま せいうん)」 最後に、3Dプリンターを智也に贈った「芦原 京介(あしはら きょうすけ)」の4人がやって来た。 みな、智也の誕生祝いをする為に。 「俺までお招き頂いちゃって光栄だなぁ。でも本当にいいの? 場の空気、マズくならない?」 「赤ベコ」こと芦原が申し訳なさそうに眉をハの字に下げた。 「全然大丈夫ですよ! いつも配達で世話になっているし3Dプリンターまで頂いちゃったんですから、俺にとっちゃ大恩人です! なので遠慮なく飲んで食べて、楽しんでってください!」 なぜ、学生ですら無くただの運送会社の配送スタッフである芦原が招かれたのか? パーティ前日の金曜日、たまたま配達に訪れた芦原に智也が声を掛けたからだった。 そもそも、イケメンでスタイルも良くスマートに対応してくれる芦原に智也は憧れを抱いていた。つまり、智也にとっての「推し」、である。 そんな「推し」配達員を3Dプリンターで作成したリンクドールとリンクさせ、淫らに悶え狂う姿を智也は想像してしまった。 すると、勝手に口が動いて芦原を誘っていたのだった。  『あ、あの! 明日俺の誕生日パーティ、つっても来るのは野郎ばっかなんすけど、良かったら赤ベコ、いえ、芦原さんもいらっしゃいませんか? 先日頂いた3Dプリンターのお礼もさせてもらいたいです!』  『明日っすか?』  『き、急過ぎて難しいですか?』  『いえいえ。丁度仕事は非番なのでこっちは問題無いんですけど、俺なんかが参加しちゃって良いんすか?』  『もちろんですよ!』   ◇ 「はいこれ。誕生日おめでとう。こいつは祝いを兼ねて差し入れだ」 頼流がシャンパンの瓶を智也に渡した。 ベストのような黒のノースリーブパーカーと、太ももにピタッとフィットする迷彩のジョガーパンツという服装は、頼流のアスリート体型が服の上からでも如実に見て取れ、すこぶる挑発的なファッションだと言える。 「手ぶらで良いっつったのに。でもサンキューな、皆で飲んでも?」 「もちろん。俺も頂くつもり」 「うわ! これって俺でも知ってる有名なヤツじゃん。値段も相当だろ? 無理しなくたっていいのに」 「智也が俺と同じ二十歳になったらサシで飲もうと思って買っておいたんだ。だから気にするな」 ふんわりと微笑む頼流の青い瞳が、微妙に艶っぽい色を帯びている事に智也は気付いていない。 「智也氏~。このたびは誠におめでとうでござる~! 僕からもつまらないモノだけどこちらをご笑納くだされい」 プレゼントの包みを智也に渡しながら独特の言い回しをするのは長い前髪で両眼が隠れてしまっている「天王寺 平吾」だ。 チェックのシャツの裾はいつも通り紺のジーンズに全てインしていてダサい恰好をしている。前に智也や他の友人がそれを指摘した事があったが改めることは無かった。 「平吾もありがとうな。えっと中身は何だろう?」 包装を解いて中身を拡げてみた。 「ジャ~ン! 僕とお揃いのシャツ~。これ、とっても着心地が良いし見た目もかっこいいだろう~? だから智也くんも似合うと思ってさぁ~」 「お、おう、そか……うん、ありがとうな。マジ嬉しいよ」 智也なら衣料品売り場で見かけても真っ先に「購入候補」から除外する古風なチェック柄のシャツだったが、平吾からの好意を素直に受け取った。 「天王寺 平吾」と言う男は前髪を上げて服装を少し改善すれば女の子はもちろんのこと同性の男からでも目を惹く綺麗な顔立ちなのだが、平吾自身はなぜか外見にコンプレックスがあるようで、敢えてダサい恰好をし続けていた。 いつか機会があればその理由を聞いてみたいと智也は思っている。 「手ぶらで良いって言ってたけど、常識的に考えてそうはいかねぇだろ? だから、大したもんじゃねぇけど、これ――」 有名書店の紙袋ごと智也に差し出したのは一年先輩にあたる「生駒 青雲」である。 光沢のあるワインレッドのシャツの袖を少したくし上げ、ボトムに黒のスキニージーンズと組み合わせているためチャラいホストにも見えるファッションなのだが、さっぱりとした顔立ちの生駒が着ていると派手なのに上品に映る。 普段はもっと地味目の大人しい服装しか着ない男が、こんなささやかなホームパーティごときに「キメ服」を着てくるとは智也は思ってもみなかった。 青雲とは少し前にバイト先で知り合い、現在では二人ともそのバイトは辞めてしまったものの引き続き仲良くしている年上の友人であった。 「おおっ! こ、これって――」 「前に遊んだ時に欲しいって言ってたのを思い出してな」 紙袋の中から出て来たのは『男のセクシー筋肉図鑑』と言う、写真とイラストの両方が収められたイラスト用資料の本であった。 「すっげぇ嬉しい! ありがとう! でもでも、マジでいいの? こんな値段の高い本を」 「ははは。たまには先輩らしいとこ見せておきたくってな。智也の同人誌作りに役立ててくれ。でも、それって載ってるのは男ばっかだろ? 女の子の方じゃ無くて良かったのか?」 「全然大丈夫! 男のカラダが上手く画けていないと女の子が引き立たないんで。それに、次に描こうと思ってるネタがマッチョヒーローと女妖怪モノなので、タイミングもバッチリ!」 「そこまで喜んでくれるんなら俺も嬉しいよ。お前が女だったらこのままベッドに誘って夜通しヤリまくるコースなんだが」 「またそんなふざけてさぁ。相変わらず青雲はエロいよな~。見た目とのギャップが激しすぎるよ」 「そうかぁ?」  「最後は俺から。HOMME烈人先生、お誕生日おめでとうございます。これは3Dプリンターの機能を拡張するための パッチデータのアドレス、だそうです。内容はHOMME烈人先生で確かめて頂くとして、お役に立てれば幸いです」 深紅の薔薇一輪と共にQRコードが印刷されたカードを渡すのは、グレーのYシャツにスラックスと言うラフな衣装ながら 筋肉質な本体が見て取れるほどピタッとカラダにフィットしていて、裸でいるよりも返ってセクシーさを際立たせている「芦原 京介」である。 いつもの制服姿しか知らない智也は芦原から匂い立つ男のフェロモンに思わず股間が反応しかけていた。 「ありがとうございます! て言うか、赤ベコさん、凄くスタイルが良いですよね。制服姿でもカッコイイなと思ってましたけどその服も凄く似合ってます!」 「HOMME烈人先生にそんな風に褒めてもらえたら俺も気持ちが上がります。そうだ、これからはアカウント名じゃなく実名で呼んで下さい」 「なら俺も智也でお願いします」 「それにしても……」 芦原が他のパーティ参加者を見渡した。 「皆さん、智也さんもお若くて素敵な方たちばかりだ。瑞々しい精気が溢れんばかりで実に素晴らしい」 じゅるりと舌なめずりをした、ように見えて智也は一瞬ギョッとしてしまったが、すぐに自身の気のせいだろうと打ち消しておいた。 ◇  智也の誕生パーティに集まった参加者の4人は、不思議な事にこの日まで一度も会う機会の無い者ばかりだった。 年齢も違う上に一人だけ社会人でもある芦原はともかくとして、頼流も平吾も、そして青雲も、それぞれが別の交友関係を構築しており「智也」というただ一点のみでこの場所に集う事になったのだ。 そこで、改めて自己紹介をすることになった。 「まずは俺からいかせてもらうぜ。俺は『的島 頼流』 こいつと、智也と知り合ったのは入学式が終わってすぐのオリエンテーションの時だ。 学部、学科関係なくランダムで決められた5人のグループの中に智也が居た。 講義の選び方やカリキュラムの概要を聞いているとグループの一人が急に体調を崩しちまったもんで、俺と智也の二人が 保健管理センターにそいつを運んだんだが、その時に初めて話をしたんだよな? 最初はなんだか頼りなさそうヤツだ、――おっと、もう昔のことだし第一印象なんで聞き流しといてくれ、――って、思ったんだが、 保健管理センターに居た担当医への状況報告とか、その後の締め方が手際よくってさ、すぐに第一印象を改めた。 一番好感を持ったのはまだ名前も分からない見ず知らずレベルの相手なのに親身になって動いていた事だ。 俺でさえ少し面倒だな、と感じていたのに智也はそんな素振りを微塵も出さなかった。正直凄いと思ったぜ? 上っ面だけ良くて内心はゲスな奴なんかもそれなりに見て来たが、智也は全然違うな、と。 だもんで、コイツとは是非仲良くなりてぇ、ダチになってやる、と決めたんだ」 拍手が起こった。 「いやいや、あのさぁ、それって自己紹介じゃなくて、俺との馴れ初めじゃんか。それじゃぁお前自身の事は全然分かんねぇぞ?」 「じゃぁ、次は俺が――、俺は生駒、『生駒 青雲』って言う。智也から見て一年上の先輩になる。そっちの二人も智也と同じ二年生らしいな? だけど、俺が先輩だからとかしこまらないで欲しい。俺も智也も知り合った時には互いの事を先輩だとか後輩だとか知らずに タメだと思っていたからな。 だもんで皆も俺とはタメで話してくれ。ええと、良かったら芦原さんも……」 芦原はニコリと微笑んでうなずいた。 「ありがとう。じゃぁ、続きなんだが――」 昨年のGW期間、生駒はとあるコンビニで智也と一緒に働き、目の回る繁忙をなんとか乗り切った経験を話した。 「そういや智也は『実家には戻らずバイト三昧でくたくたになった』、みたいな事を言ってたな」頼流が思い出して口に出した。 「経験者の俺はそれなりに自信はあったんだが、その時のお客の殺到ぶりは異常だった。なんかの大きな国際会議と、 人気アイドルのライブ、そんでもって『ジャパンアニメ&ゲームフェス』なんかが被っちゃったんだよな? 商品を補充しても補充しても片っ端から売れて無くなるし、迷子は来るし落し物は多発するし、日本語の理解できない海外のお客さんが何人も尋ねるし、で、店内はパニックになってた。 だが、智也がそのパニックを止めたんだ。 『入店制限をしましょう』って店長に掛け合って、迷子は交番に連れて行き、外国人の問い合わせには英語が堪能なモノに一任して、 その分の穴を俺と智也で埋める。 そうやってパニックを収めて悪循環からなんとか通常運転に戻すことができたんだ。その時から俺は智也には一目置いてんだ」 「つうか結局、青雲も俺と出会った時のハナシじゃん」  「三番手は僕が」 シャンパンを注いだ紙コップをテーブルに置いて平吾が立った。 「え、えと、僕は『天王寺 平吾』であります。SF同好会に所属してござる。好きな事は読書、と好きな作家は眉村卓先生、好きな星はカノープスでありやす。 あの、あんまり話すのは得意じゃないんだども、智也氏は安心して話せる僕の大事な友人なのでござる」 少し奇妙な口調で自己紹介をする平吾を下から見上げる頼流や青雲がギョッとして目を見開いているのは、平吾の長い前髪に隠れていた目元がちらりと見えていたからだ。 クソダサい恰好とは真逆の整った美しい顔に、二人とも目が離せなくなっていた。 「平吾のが一番自己紹介らしい感じだったよ。でも語尾がさぁ、相変わらず変だったな」 「そ、そうでござるか? 智也氏」 「ああ、でも、それもお前らしくって良いと思うぜ?」 「あ、あの、ありがと、智也……、くん」 照れて頬を染めうつむく姿は可憐に咲いた一輪の花のごとし、と思わせたとかそうでなかったとか。 「では、最後は俺ですね。皆さん初めまして。智也さんのお心遣いに甘えてお邪魔しています。『芦原 京介』、と申します。 普段はこのエリアを含めてあちこち駆けずり回っている運送業者の一人、なんです。 智也さんとも配達の折に何度かお目にかかってはいたんですが、ちょっとしたご縁でプリンターをお譲りしまして、 それで今回、智也さんの誕生祝いの席にお招き頂いた、と言う訳なのです。 皆さんのような学生でもなく、ましてやひと世代歳上の者がこちらへ混ざるなんて甚だ場違いじゃないか、と恐縮している所ではありますが、 せめてひと時だけでも、智也さんをご一緒に祝福させて頂ければな、と思っております。 ――と、まぁ挨拶なのでそれっぽく丁寧に喋ったけど、これからは普段通りの口調に戻すんで、そこんとこよろしく!」 「あの、質問、いいっすか?」 頼流が芦原に向かって手を挙げた。 「どうぞどうぞ」 「ひと世代年上、って言葉が聞こえたような気がしたんですが俺の聞き間違いっすよね?」 「いや。間違いじゃなくてその通り。俺は今年、32歳だからね」 「「ええっ!?」」 智也も頼流も、平吾も青雲も驚きのあまり腰を浮かせた。 「……マジっすか?」 智也が念のため聞いた。 「マジもマジ。人間としては32歳さ」 「全然、そんな風に見えないでござる……」 「ひえぇ……、雰囲気的に少し上かな、とは思っていましたけど、せいぜい2~3歳程度だとばかり」 青雲の感想に頼流も重ねた。 「俺もっす。全然30越えたオッサン、いえ、お兄さんには見えない……。同じ大学生だ、と言われたらまんま信じちゃいますよ」 「いやいや、そんなの気にしないで。むしろ同年齢として扱ってくれた方が俺も嬉しいし。それに、今夜の主役は智也くんだろ? さっきみたく敬語なんて気にせず話して欲しい。そうしてくれよ」 そう言って笑顔を智也に向ける芦原。 「無理に、とまでは言わないけど京介さんのリクエスト通りいつものノリで話そうぜ? 楽しく祝う会に堅苦しい作法はナシ、ってことで」 頼流も青雲も、平吾も大きくうなずき了解の意を智也と京介に返した。 「んじゃぁ、まぁ、分かったような分からんような微妙な自己紹介も済んだことだし、用意したツマミを食べながら飲んで 大いに盛り上がっていこう~! 頼流がプレゼントしてくれたシャンパンの他にもキンキンに冷えたビール、チューハイ、ワインやポン酒もあるぞ~! あ! そうそう! 雰囲気を出すためにケーキも買っておいたからみんなで食べようぜ~」 智也は冷蔵庫にしまっておいたイチゴと生クリームでデコレートされたバースデーケーキをテーブルの中ほどへ置いた。 「ケーキも自分で買ったのか? 言ってくれたら俺が用意したのに」 頼流が申し訳なさそうに言いつつ智也から渡されたカラフルな蝋燭をプスリ、プスリとケーキに突き立てていく。 「いや、俺もどうしようか迷ったんだけど、あった方が華やかでいいかな、と」 挿し終わった蝋燭に火を灯し、「せーの!」で智也が吹き消した。 「智也ー! 誕生日おめでとう! 乾杯~!」 頼流の音頭に合わせて他の三人も手に持つ紙コップを上に掲げた。 「智也氏ー! おめでとうでござる~!」 「智也ぁ! これからもよろしくなぁ!」 「大塚智也をこの世界に送りだしてくれたあらゆる神霊、あらゆる聖魔に深く謝意を申し上げる! 終焉の時至るまで智也に良きことの多からん事を!」 芦原の芝居がかった祝辞を聞き、平吾がくすくすと声を上げて笑った。 「ぷぷ! 京介氏~? 何でござるかそのセリフ~」 「ま、こう言うのも面白いっしょ? ファンタジーっぽくてさ」 「なるほど。京介氏は王道ファンタジー世界がお好きと見た。僕の愛好するSF世界とも共通するところが無きにしも非ず と言うか色々と混ざっちゃってて今や異世界転生モノの如くに分類不能なほどカオスな新表現~。 ならば京介氏とは知己を得たも同然。大地踏む軸足は違えども、臨み仰ぐは共通の碧空となります故、更なる親交を温めて行く事に、もはや躊躇はございませんぞ」 「俺もだよ。平吾くんとも仲良くできればこの上なく嬉しい。これからも気兼ねなく話しかけてくれ。俺もそうするから」 頼流と青雲は顔を見合わせて肩をすくめて首を傾げている。 「…...ええと? 今の会話、理解できたっすか? 青雲先輩」 「頼流。俺に対してもタメで良いって。んで、その問いへの回答は『否』、と言うしかない」 「こらそこ! 頼流も青雲もコソコソ二人だけで話さないの! 分からなかったんなら聞けばいいじゃん? 平吾か京介さんに、今なんのハナシをしてたのか? って」 「は、そうだったな」 「へへへ、もっともだ」 「京介氏、解説をお願いしても?」 「OK~、まかせろ。俺と平吾の今の会話は、簡単に言うと好きなジャンルの世界観が近しいのでこれからもっと仲良くなりましょう、と言ってただけだ。な?」 「さようでござる。明瞭且つ簡潔な言語化、痛み入るでござる」  お酒が進むにつれ話す内容が「ここだけ」系の淫靡な色合いを帯び始める。 みんな、彼女はいるの? 最近、セックスはいつした? オナニーはどれくらいの頻度で? ぶっちゃけチンポはでかいの? 乳首も感じる? 等々……。 いくらお酒が入っているからとは言え初対面の者同士で下ネタがこうも飛び出すなんて何だか意外だな、と智也は感じていた。 ただ、場の空気に合わせて無理に下ネタに乗っかっている雰囲気ではない。 真面目で奥手な平吾でさえ芦原が語る「ケツでも気持ち良くなる方法」を熱心に聞いている有り様であった。 「まぁ、下ネタは誰でも食い付いちまう、ってことか。それよりも、皆、すっかり仲良くなってるのは俺としても嬉しい誤算、ってやつだな」 猥談も挟まりながらではあったが大学での出来事や趣味の話題、芦原からは配送中の苦労話などで大いに盛り上がった。  パーティ開始からおよそ1時間が経過した。 宴もたけなわ、の頃合いではあったが、智也は予定していた通り次の行動に出た。 さらに大事なミッションはこの後に控えているのだ。 最初の一杯目以降は飲み過ぎてベロンベロンになったりしないよう、あらかじめ中身をただのサイダーに入れ替えた「缶チューハイ」もどき、を口にしていたのもそのためであった。 「さぁて、そろそろアレ、を出そうかな?」 智也がスッと立ち上がった。 「アレとはなんでござる?」 「よくぞ聞いてくれた。実は、このごろ巷ではレモンサワーが流行ってるらしいじゃん? なので、俺もクック◯ッドを参考にして自作のレモンサワーを作ってみたんだ。 良かったら皆も飲んで、感想を聞かせてくれないか?」 「へぇ~? 智也の自作だって?」 「お! いいねぇ~! 俺レモンサワーめっちゃ好きだ!」 「拙者、そろそろ度数の低い飲み物が欲しくなっていたので、アルコール少な目炭酸多めで頂きたいでござる」 「智也はとってもマメな人間みたいだね。そう言う所が同人誌の方にも良い感じに現れているんだなぁ」 「平吾はアルコールを少なく、だな? 皆は? リキュール多め? 少な目?」 「俺はほどほど」と頼流。 「俺は強めでもいいよ~」と青雲。 「じゃぁ、俺もアルコール強めでお願いしよう」と芦原。 「オッケー! じゃぁ、紙コップだと混ぜにくいからグラスで用意するんで、少し待っててくれ」 キッチンに戻った智也は用意したグラスに市販のレモン汁と甘味シロップを混ぜた原液にリキュールを足し、それを炭酸水で希釈していく。 さらに、計画通りグラスごとに一錠ずつ睡眠薬を入れて溶けるまで混ぜる。 誰にも見られないよう緊張しながら、ではあったが頼流たちは再び卑猥なトークで盛り上がっていて智也の居るキッチンに 注意を払う雰囲気は全く見られない。 グラスになみなみと、ではなくあえて半分以下の少ない量にしてあるのは、途中で飲み残されないようにするためである。 雰囲気を出すためスライスしたレモンを添えているのも、微かに顔を出す薬の苦みを誤魔化すために役立つ。 「お待たせー! さぁ、どうぞ~!」 4人は、智也が渡したレモンサワーを微塵も疑わずゴクゴクと飲み干した。 (よしっ! これで第一関門はクリア!) この時、智也の眼光が一瞬ギラリと鋭くなっていたのだが誰もその事には気付かず、レモンサワーのお代わりを全員が注文していたのであった。

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