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鷹取リュウゴ
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リビドーマスク・エキサイト 2

2フォロウマスク  「今日はギリギリだったな。珍しいじゃん、広人にしちゃ」 俺が着席したほんの10秒後くらいに嵯峨沢先生が教壇に登り、すぐさま出欠カードを配布。 マジで危ないトコロだった……。 講義が終わると俺が座っていた一番前の席まで中野がやって来た。 「起きたらビックリだったぜ。危く単位を一つ、寝坊でフイにするとこだった」 「試験は甘いけど出席だけは厳しいもんな。嵯峨沢先生って」 筆記用具やノートをバッグの中に入れようとすると、黒いマスクがひらりとこぼれて落ちた。 「おい、広人。落としものだぞ」 俺より先に中野が拾い上げた。 「――ちょっと待て。何でお前がコレを?」 「うん?」 何で、と聞かれれば「拾った」、と答えるしかないが。何だろう? 今の中野の質問、少々おかしくなかったか? 「昨夜、プロレス観戦の帰りに拾ったんだよ」 「拾った? ……あ、ああ、拾ったのか、なるほどな……拾った、か……」 やけに歯切れが悪い。なんだろうな? この微妙な「間」 「もしかしてお前が持ち主だったとか?」 「えっ!? い、いや、違う……、違うが……」 「なぁんだ。思い当たる節でもあるのかと思っちまうじゃん」 中野は何かを考え込み始め、そのまま俺のそばから離れて行った。 呼びかけても返事すら無いと来たもんだ。 仕方がないので俺は二時間目の講義へ行くため違う教室へと移動した。 ◇  昼休みに入り学食で昼メシを食べていると中野がやってきて俺の隣に座った。 「さっきは呼んでるのにスルーしやがって。俺、なんかやっちまってたか?」 「そいつは悪かった。別に広人は何もやってねぇよ。少し他の事に意識を取られちまってだけだ」 「ふぅん。なら良いけど」 そうして中野はテーブルに置いたとんかつ定食に箸をつけるのかと思ったら、また俺に向かって口を開いた。 「さっきのな、広人が拾ったって言ってたあのマスク――」 「うん? マスクがどうかしたか?」 「あのマスク、……着けてみたりしたか?」 視線はとんかつに向けているものの箸が微動だにしていない。俺の答えがよほど気にかかるオーラが全身から滲み出ている。 「ま、まぁ、着けてみたらどんな風に見えるかな、って。一応、着けてみた、けど……」 「着けたのか?」 「ちょっとな」 「確かに着けたんだな?」 「いやだから、そう言ってるじゃん。ちゃんと洗ってから交番に届けるし」 無断で他人の物を使った事に対して責めているんだろうか? それぐらい俺も自覚してるってのに。 中野は「ふぅ~」、と深く息を吐いて持っていた箸を置いた。 「おい、食べないのか? 冷めちまうじゃん」 「……広人、よく聞いてくれ。そのマスクは他の奴には絶対に見せないでくれ。そして、交番にも届けなくていい」 「は? なんで?」 「詳しい事はここでは言えない。……放課後、用事とかあるか?」 「いや、無いけど」 中野は放課後、一度自宅に戻ってから俺の部屋に来ると言う。 結局、とんかつ定食はまったく食べずにふらりと学食から去って行った。 「なんなんだ? アイツ。変なの」 いつも落ち着いていて淡々としている中野がああも「心ここにあらず」になるなんて。 そこまで俺の拾ったマスクってのは大層なモノだったのか? もしかしてやっぱり持ち主を知っていて、その人物が超有名人だったとか? 或いは中野自身がマスクドレスラーとしてデビューする予定だったとか? 「俺と違って中野はガタイがいいからあり得るかもなぁ。謎の覆面レスラーでデビューしようとしてんのに、その前に正体を部外者に知られてたらシャレになんねえもんな。そりゃ誤魔化したくもなる訳だ」 身長は190cmもあってパーカー越しでも分かるほど筋肉隆々としたマッチョな中野。 ラグビーとかやってたのか? と前に聞いてみた事があるのだが返事は「無い」だった。 ジムとかにも行ってはいないと言う。 それきり中野のガタイについては話題にした事は無かったが、改めて考えてみれば実に不思議じゃぁないか。 自力でその逞しさを手に入れたとすればもっと誇ってもいいのに、微塵もドヤらず控え目なままだ。 そんな中野を羨ましいと思った事は山程ある。 大学に入って仲良くなったきっかけは、同じ講義を受けている時に近くの席に座っていたから、と言うよくある偶然からだった。 少しずつ挨拶をする程度の顔見知りになり、二言三言、言葉を交わすようになり、気付いたら趣味の話題や日頃の愚痴なんかを話せる友人になっていた。 「実は、マスクにかこつけて別の案件での相談だったりして。ま、金に関しては力になってやれないけどな」 仕送りと奨学金とでほぼほぼ不自由は無いけどだからと言って贅沢な生活はできない。 バイトで稼いだ小遣いレベルの収入はプロレス観戦やグッズでの支援で大抵ゼロになる。 「まぁ、どっちみち中野から話を聞かないと考えても意味ねぇし。それよりも――」 バスターマスクが出る試合日程の確認と、観戦チケットの手配を考えていた方が楽しい。 ごついカラダから繰り出される猛烈なバスターホールドやバスターキックの――「ん? んん?」 極太の太ももに挟まれこんもりと膨らんだ股間のビキニ……? わずかにピクリと反応をした、ような気がした。 かすかに昨夜の記憶が甦ったような気がした。 俺はあの時、バスターマスクを夜のオカズに想像していた? 「まさか! んなコトしねぇって! あのバスターマスクさんに失礼だろうが!」 しまった。思わず大声で口に出てしまった。 周囲を見渡すと俺を見る怪訝な目。訝る視線。冷やかな空気。 気まずくなった俺は逃げ去るようにして学食を出なければならなかった。

リビドーマスク・エキサイト 2

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