9エイリアンズマスク 6年ごとに開催される【キング位争奪アルティメットマスクトーナメント】の予選がマスキュラーワールドで始まった。 「――との知らせを信頼する同志が知らせてくれた。今の今まで目立った動きを見せなかった沖之石がこっちの世界へ刺客を送り込んで来たことも」 聞けば、沖之石と言う現在のキングの「闇」を秘かに調べ上げ、弓弦さんに報告していたのも同志と呼ばれる人たちなのだ、と。 「刺客がどのような挙に出るかは見当も付かない。広人くんや中野くんも俺や柳葉さんと接触しているのは知られていると見た方が良い。くれぐれも気を付けて欲しい」 電話の向こうで弓弦さんが申し訳なさそうに話す。 「弓弦さんはこれからどうするんですか?」 むざむざ刺客とやらの襲撃を座して待つとは思えないけど。 「俺は、できるだけ早くマスキュラーワールドに戻ろうと思う。柳葉さんにも伝えてある。アイツを……、剛を助け出したい。 とても嫌な、嫌な予感がするんだ。同志のお陰でアイツがどこに閉じ込められているのか、およその目星はついた。 沖之石の目がマスクトーナメントに向けられている間にアイツを、……取り戻したい」 全てを投げ打って助けに行きたい衝動を抑えて、敢えて紳士的に話している弓弦さん。聞いているだけで痛々しい。 弓弦さんとそんな会話をしてから2週間後、 公式に活動休止を宣言したバスターマスクこと「柳葉 双牙」さんや桃里さん、そして中野と俺は再び弓弦さんのカレーショップ・『ガラナンカレー』に集合した。 「刺客が来てるってのに集まっちゃって大丈夫かい~?」 桃里さんがまずは安全かどうかを弓弦さんに尋ねた。 「同志たちが囮になって敵を攪乱しているから大丈夫だ。今はな」 「しかし、広人も中野も、そして桃里も、お前らはマスキュラーワールドの人間じゃぁねぇし沖之石に恨みがある訳でもねぇ。 そんなお前らが危険を冒してまであっちに行く必要は無ぇんじゃねぇか?」 柳葉さんは俺らを邪険にしているのではなく単に心配しているだけだろう。 「その通りですが、俺は俺の意志で弓弦さんへの協力を決めました。マスクをもらった恩や寄生体の仲間、って言う点だけじゃありません。異世界とは言え『お隣』さんがピンチだ、と聞いたらじっとしてなんかいられません」 「俺は弓弦さんのフォローを最後までやりたい、って言うか好奇心を満たしたいって言うか~、まぁでも、一番の理由はズルいやつが嫌い、だからワンパン食らわせてやりてぇな、って感じかな~?」 「桃里くんも中野くんも『至高の五枚』の内の二枚と適合している上、『至誠の九枚』の一つを持つ柳葉さんも決勝戦のラストフォーティーン(最後の14人)に残れるほどの実力を持っている。 しかし、広人くんのマスクについては不明なままで未だにどのような特徴や力を持つマスクかはハッキリとしていない」 この話の流れでは「足手まといになるからマスキュラーワールドに行くのは止めておけ」となるのだろう。 俺は、そいつを否定したり論破できるような根拠を持っていない。 そもそも俺は観戦することは好きであっても自分で闘うなど考えた事も無いのだから。 「――でも! 俺も!」何か言おうとしたら中野が腕を引いた。弓弦さんの発言は途中だったようだ。 「未知のマスクを手に入れた広人くんをマスキュラーワールドに連れて行くのは心苦しいのだが、敢えてお願いしたい。 俺と、俺たちと共にマスキュラーワールドに来て欲しい。 すでに広人くんの存在は沖之石に知られていると考えた方が良い。こちらが同志から情報を得るように向うも密偵を放っていると思われるからだ。 ならば、サポートする者を置かず広人くんだけを残すのはリスクが大きい。かと言って同志の皆に頼ることは難しい。 広人くんに接触した時点で沖之石に知られるだろうしな。 ならば、俺たちと行動を共にしたほうが安全ではないか? 広人くんの未知のマスクについて調べるにしてもマスキュラーワールドの方が良いのでは? と俺は思ったんだ」 弓弦さんが温かい眼差しを俺に向けた。胸の奥がジュンと熱くなっちまった。 「俺は初めから弓弦さんや皆と一緒に行くつもりでしたよ? 弓弦さんのパートナーの剛さん、早く助けてあげたいし。 それに、マスク寄生体同士のセックスを知ったら、もう他のヤツとじゃ満足できないっすよ!」 「話はまとまったようだな? んじゃぁ、早速転移するとしようぜ? のんびりしてたら敵さんに乗り込まれちまわぁな」 中野からあらかじめこの集まりの予想を聞いていたから俺もある程度の準備は用意してきた。 柳葉さんも桃里さんも大きなバッグを抱えている。 「では、本来なら厳禁なのだがこの世界の3名の協力者と共にゲートを通過しマスキュラーワールドに転移しよう。 通過中は少し酔うかも知れないがすぐに収まるだろう。マスキュラーワールドでは同志が準備したポイントへすぐに移動する。 向こうで待ち伏せされる可能性はゼロとは言えないが、まず無いと見ていい」 刺客の奴らがいきなり弓弦さんの寝室に現れ寝首を掻くことができないのと同じ理由なんだろう。 大雑把にしか転移先の地点指定はできない、と弓弦さんが言うくらいなのだから。 『しばらくの間、お休みいたします』と言う貼り紙をドアに貼った弓弦さんが、小さな金属片でできたゲートキーを持ち、 何も無い空間に挿し込んだ。 すると、グニャリと空間が歪んで人が通れるほどのフレームが構築され、フレームの内部が白く濁った。 うなずき合った俺たちはゲートが消えてしまう前に、と次々に飛び込んで行った。 待ち伏せの心配はない、と弓弦さんは言っていたけどこことは違う異世界。どんな危険が襲い掛かってくるか分からない、 と気を引き締めたのは良いけれど、ゲートに入った途端上も下も、右も左も分からない無重力の宇宙空間に放り出されたような状態に陥り、せっかく引き締めた気持ちがあっけなく崩れて素っ頓狂な悲鳴と共に俺の口から飛び出しちまった。 「あひゃぁあああああ!? な、何これぇ! お、落ちる? いや、上がってるぅぅーーーーっ!?」 「んぅ……、んぁ、ぁ、ぅぅ……」 朦朧とした意識の中、ヌチュグチュと言う粘着く音色が聞こえ、それが自分の股間からだと理解するまでおよそ15秒。 その後、俺のカラダの一部からドロッとした心地よさと共に一部をケツに咥え込んで腰を振る人物が視界に現れるまでさらに15秒。 「んふ……ぅぁ、キモチ、イイ……い? って!? 誰!? あなた! 誰っすか!?」 「お? 気が付いちゃった? ああ、何か無性に欲しくなっちゃって君のチンポ、ごちになってまーす! んぁぁ! 良いっ! また堅くなったぁ!」 横たわる俺の股間の上に跨り騎乗位でチンポをケツで味わっている男は「へへへ」と顔を紅潮させながら気持ち良さげに カラダをバウンドさせていた。 「ちょ! えっ!? 待って! 待った! あなた、ってかお前! 何で俺と!?」 驚きのあまり逆レイプされている事もすっ飛び、上半身を起こしてよがるそいつを凝視した。 「同じ顔で、驚いた! よな! 俺もだ! んあ゛! も、イキ、そうっ!」 ケツの締め付けが「ギュン」と来て俺も快感のギアが上がってしまった。 我慢できずに腰を動かすとそいつも俺に合わせてジュッブ、ニュッブとさらに勢いをつけ俺のチンポを扱きあげる。 「うぉ、あああ! マジ、キモヂいいっ! んぐ! んふぅぅ! ぅあ! あああ゛!」 俺そっくりの「そいつ」がやけにセクシーに見えちまって、俺、ナルシストってほど自分に対して愛好はないのに、無いと思ってたのに股間の奥が一気に熱くなった。 「ぐ! 俺もっ! お゛れ゛も゛! いぐぅっ! イグイグ! イッグゥゥーーーーッ」 ――ゴビュルルッ! ドッビュゥーーーーッ! ああ~、精液が射精てる~、たっぷりなザーメンが俺のそっくりさんのアナルの中に注ぎこまれちまっている~。 でも、気持ちいいし、まぁいいか~。相手も俺の腹や顔にドビュドビュぶっかけてトコロテンしちまってんだし~ ◇ 「いや~! キモチ良かった~! 俺、超満足! こんな興奮したの久しぶりって感じだった!」 俺の肩をバンバンと叩いて笑顔と白い歯を見せる「そいつ」 俺の意識が戻ってからたっぷり3時間。おれは「そいつ」とセックスを愉しんでしまった。 「凄そうなマスクも持ってるし、俺以上にノリ良くサカるなんて、さすが俺と同じ顔!」 そう――、 起き抜けに一発イって、いや、イカされて一旦終わりか、と思いきや「そいつ」は俺に弓弦さんたちでも解明できなかったマスクを投げて俺と合体させると自分も黒いシンプルなマスクを被って合体。 性欲ばかりか体力・精力ともググッと膨張した俺のチンポや乳首を舐め回した後は、俺のケツ穴に俺と同じサイズのイチモツをぶち込み、攻守交替と言わんばかりに俺のアナルを責め始めた。 そうして、俺の中にたっぷり種付けをしたかと思うと再びケツを俺に向けチンポをねだった。 だもんでつい俺もその気になっちまってまた「ソイツ」のケツ穴にチンポを挿入して腰をピストンさせていった。 なんだか、顔が似てるだけじゃなく快感のポイントもほとんど同じみたいでチンポはどう弄れば一番弱いか、ケツの中をどう犯せば一番感じるか、乳首や腋なんかの性感帯をどう責めれば喘いでしまうのか、なんかがいやに重なっているような気がした。 そうして、「ひとまず」満足した俺とそいつは互いの結合部分を引き離してマスクを脱いだ。 「……やっぱり俺と同じ顔だ……。いったいお前は誰なんだよ?」 お互いの顔を掴んでまじまじと見つめた。あ~、うん、結構カッコイイんじゃないか? 悪くない気がして来た。 だが、心当たりはない。双子でもないし生き別れた兄弟も居ない。鏡から抜け出たドッペルゲンガーみたいな『そいつ』 あらら? 少し頬を染めて照れてやがんの。 「いきなり俺の部屋に現れたお前に『誰だ?』とはねぇ。 異世界からやってきたもう一人の俺ってのはいささか礼儀ってのを知らないようだな」 「もう一人、の俺? 異世界?」 セックスの快感と余韻で忘れていたが、そう言えばここって、俺の元居た世界じゃなくって「マスキュラーワールド」と言う別の世界だったか。 「マスキュラーワールド!?」 「そうだぜ? ここはマスキュラーワールドだ。突然やって来たお前は異世界の『俺』なんだろ? 顔やカラダの特徴が全部同じだったもんでビックリしたけど、精液の量なんかは俺の方が多かったような気がするな」 「それはお前の方が溜まってただけだろ? 俺は中野と昨夜もヤったから……」 「うわ! 良いなぁ! 異世界の『俺』はパートナー持ちか! 俺も早くそう言える奴に会いたいもんだぜ~」 中野の事は友達以上恋人未満でありセフレかつ同志、って感じで一言では言い表し難かったが、パートナーと聞いてすとんと腑に落ちた。 そうだ。 中野は俺のパートナー、なんだよ。 そのパートナーが俺のそばに居ない。どうして居ないのだろう? 弓弦さんや桃里さん、柳葉さんはどこに行った? 「部屋の中に急にゲートが現れて、そのゲートから出て来たのがお前、ええと、広人、だったよな?」 俺を広人と呼んだ俺のそっくりさんは『有川 優人』と自らを名乗った。 「マジでゲートから出て来たってのは俺だけ? 他に誰も出てこなかったのか?」 「いなかった。嘘じゃねぇよ」 優人の発言に嘘は無いような気がする。 目の動きや表情の小さな変化など「内心」が透けて見えそうな部分になんの違和感も感じなかったし、優人がさっき言った 「異世界の俺」ってのも冗談じゃなくて普通に事実のように聞こえていたからだ。 「広人は仲間? と一緒にマスキュラーワールドに来たんだな。今はぼっちでもその内会えるだろうぜ? その前に――」 優人が脱いだばかりの俺のマスクを掴んだ。 おいおい、またセックスしようってのか? マジで溜めすぎなんじゃねえの? 「このマスクと合体融合できた、ってことでお前のマスクに間違いない、と判断できる。が、どうして異世界の俺が、こんな『マスク』を持ってんだ? V紋のマスクなんてなぁ、一般人にゃ手の届かねぇ特別レアなお宝の中のお宝、『至高の五枚』の筆頭マスク、伝説の『ヴィクトリーマスク』じゃねぇか!」 俺のマスクを広げてわなわなとカラダを震えさせている。 初めて手に入れた時からはかなり形状が変わって、黒地に赤いVのラインは見えるものの目の二つの窓はさらに大きく広く なり、口の部分はより唇らしいカタチに、そして左右の耳の上には翼のような突起が伸び色が黒から灰色になっていた。 「『ヴィクトリーマスク』? もしかして優人はこのマスクについて詳しいのか?」 「……詳しい、って訳じゃねぇよ。たまたま図書館で読んだ本の中に『ヴィクトリーマスク』についての記述があって、 そこに書かれてた内容とこのマスクが合致した、ってだけだ」 「頼む! 教えてくれ! このマスクは、『ヴィクトリーマスク』ってのは何なんだ?」 手を合わせて優人を拝む。 マスキュラーワールドでも神社や寺はあるんだろうか? 手を合わせる、と言う仕草が願いを掛けるとの意味合いを持つのかどうかは知らないが、必死さくらいは伝わるんじゃないか? 「い、いや、俺もマジでたまたま、マスク学のレポートを書くためにちょい読みした程度なんだが……」 マスク学、多分、マスクについての学問なのだろう。 「広人の居た世界にもあるかどうかは分かんねぇけど、こっちにゃ【キング位争奪アルティメットマスクトーナメント】って言う、世界規模の大会がある。 勝てばキングとしての地位や莫大な賞金、世界中からの敬意を掴むことができるとてつもない大会だ。 ああ、一応俺も大会に出る選手の一人。マスクドファイターとして参加している。つってもまだ一次予選を突破しただけ、なんだけどな。 ――まぁ、俺の事は置いといてだ、 この【キング位争奪アルティメットマスクトーナメント】、略して『マスクトーナメント』ってのは今から100年前に始まって今に至っているんだが、 初めて開催された時の14人のファイナリスト、予選を勝ち抜き最後の本選に出場した『ラストフォーティーン』と呼ばれるファイナリスト14人のマスクドファイターが使ったマスクはマジで特別仕様だったのさ。 マスクそのものは一般のモノでも体力や精力を底上げしてくれる素晴らしいモノなんだが、初代『ラストフォーティーン』 のマスクは使用した選手にそれぞれ別の効果を与えていたのさ」 「別の効果?」 「そう。お前の持っている『ヴィクトリーマスク』なら勝利を、『ウィズダムマスク』だったら叡智を合体しているマスクドファイターに付与する、みたいにな。そして、初代『ラストフォーティーン』が使った特別仕様のマスクを『至高の5枚』『至誠の九枚』と区別して、二回目以降の本選出場を決めたラストフォーティーンに貸し与えて試合に臨めるようにしたんだ。だが――」 優人の顔が曇った。 「――初開催から6年後の二回目大会には13枚しか揃っていなかった。大会委員会が厳重に保管していたはず、なのに 初代キングが使った『ヴィクトリーマスク』が行方不明になっていたのさ」 「その初代キング、って人がずっと持っていたんじゃないのか?」 優人は首を横に振った。 「いや、初代キングを勝利に導いた特別なマスクってことで、大会後は各国で展示されていたらしい。当時の新聞じゃぁ、ご利益にあずかろうとして展示会には長蛇の列が作られてた、ってな記録もある。 そうやって色んな所でキングのマスクとして崇め奉られて、一年後には再び大会委員会の管理に戻されたらしいんだけど、 いつの間にか無くなっていた、らしい」 「盗まれた、とかではなく?」 「それもさっぱり不明。盗まれたのかも誤って処分されたのかも不明。ともかく、第一回大会以降、ほぼ100年近く『ヴィクトリーマスク』だけは所在不明のままだった」 「まさか、そんなスーパーレアな物がこのマスク、だったのか?」 優人が俺にマスクを戻して、ガクッと肩を下げた。 「……いや、そうだよな……。冷静に考えたら広人の言う通り、そのまさか、だ。100年探して見つからなかった超のつくお宝が、いきなりポンと見つかったりする訳がないんだ。 本に書いてあった記録と特徴は一致するが、きっとそいつは別モノ、偽物とまでは言わずともレプリカに違いない」 「……レプリカ、なんてのもあるのか」 「効果を付与するなんてのはできないが、作れない訳じゃない。俺の持っているマスクだって量産品の一つだし」 マスクってのはそもそもどうやって作り出されているんだ? 人間に合体し寄生するマスク――生き物と言っても過言じゃない。 「それに、『ヴィクトリーマスク』は大会本選に出場できるラストフォーティーンレベルの奴にしか適合できねぇ、特に厳しく人を選ぶマスクの中のマスクでもあるんだ。 俺とたいして変わりのない広人がそんな特別なマスクに選ばれるとも思えねぇし」 なんとなく小馬鹿にされているのは理解した。 俺に「本物の」ヴィクトリーマスクはふさわしくない、と言っているんだ。もう一人の「俺」は。 ともかく、俺のマスクの正体は、行方不明になっている超レアな『ヴィクトリーマスク』のレプリカ、と言う優人の話に落ち着きそうだ。 となると弓弦さんたちが知らないのも理解できる。 100年近く『ヴィクトリーマスク』の現物を目にした人などいないのだろうし。 さて、マスクの謎はこれで決着がついたとして、あとは中野や弓弦さんたちとどうやって合流するか、だ。 俺だけ、一人だけ優人の部屋に転移してきたようだけど、他の皆はどこに転移したんだろう?