3・俺、丑年の神や丑年の年男たちともまぐわう…… 回廊を進んで祓殿から隣の建物へ移る。 建物と建物の間は屋外の空間で冷たい真冬の冷気がビュウビュウ吹き抜けているのに、ちっとも寒く感じない。 「褌と足袋しか履いてないのに、全然寒くないなんて……」 「そりゃぁ、おいら特製『年男装備』だから。神気がバリアになって寒暑を防いでいるのでござんす」 神様か何かはともかくとして、子津の話を聞くに丑年の年神に会って、年男としての務めを果たさないとこの神社からは一歩も出られないらしい。 その話が本当かどうかは分からないが子津を振り切って脱出しようにも俺のスマホも財布もバッグごと全部取り上げられたままなのだ。 すぐにも解放して欲しいのだが、変に機嫌を損ねるよりもとっとと務めってのを終わらせて用済みになった方が早いかもな、と、俺は自分を納得させた。 「それにしても、もうすぐ夜明けの時間だろ? ずっと暗いなんて変じゃないか?」 もう一人の「俺」を使ったお祓いの儀式だけでも一時間くらいは過ぎているだろう。なのにまだ月は明るく玉砂利の庭を照らし、空の端が白む気配も無い。 「そりゃそうでござんす。このお社の中では年神様の思し召しがなければ時は動きませぬよ」 「何だって?」 「平たく言いますと、現在時刻は十二月三十一日の二十三時五十九分。最後にいらした年男の源我さんが年神様を完全に目覚めさせて頂いてようやく年を越せるのです」 おかしい……。俺は日付が変わって新年になってから山に登り始めたのだ。 山の麓で時計を見た時には午前三時を超えていたし展望台では午前四時だった。 そこから道に迷ってこの神社に入り込んで、なんだかんだでとっくに午前七時にはなっている筈。 「時間が、巻き戻っている……?」 「おいらのお役目は日没でおしまい。なので、大晦日の夜からは『年奉持』として務めているのでござんす。 今の時刻はまぁ、ありていに言えば今年でも新年でもどちらでもない時の境界線上、とでも申せばよござんすかねぇ」 鼠少年、もとい、子津はネズミみたいに鼻をヒクヒクさせて目的の場所らしい建物の扉を開いた。 「ここは……?」 見上げれば木目の美しい天井に玄武や朱雀、白虎に青龍の四神が描かれ、四神の周囲には菊や蘭、桃に梅に桜、菖蒲や紅葉と四季の花々が鮮やかに配されている。 「こちらがお社の中心であるご神殿でござんす。ご祭神たる十二の年神さまをお祀り申し上げる最も大事な御殿でもありまする」 子津が手をかざした場所には天井画とは逆に飾り気のないシンプルな神棚と十二枚の鏡を掛けた祭壇があった。 「年神様はまだ奥のご寝所でいらっしゃいますね。先にお見えになられた年男の皆さまとの応接が済んでお休みに入られたようで」 そういえば……。 「俺以外の年男もいるんだよな?」 「さようでござんす。源我さんが最後の、十二人目の年男さんでありまする。先にいらした十一人の年男さんたちはお務めが終わられて現世(うつしよ)に戻られたかも知れませぬ」 「一体どんな奴なんだ? その丑年の神ってのは」 「これこれ。口が悪うござんすよ? 畏れ多くも丑年の年神様は、現世では災難に遭われた人々を救うレスキュー隊のお仕事をされている立派な御方。 見目麗しく肉体頑健なる偉丈夫にあらせられます」 「お前も現世では中学生なんだろ?」 「なっ!? ご冗談を! おいらは立派な大学生です! 十八歳の大人ですっ! 子ども扱いはしないで下さいっ!」 へぇ~、普通の喋り方もできるんじゃないか。 『――そいつが最後の年男くん、かい?』 祭壇の脇にあった檜戸が開き、中からぞろぞろと男たちが現われた。全員が褌と足袋だけの、俺と同じ格好だ。 同じじゃないのは全員が筋肉モリモリ、マッチョなヤツばかりだったと言うコト。 「おや? 皆さま、これからお戻りになるところだったんでござんすね? さようでありまする。こちらの方が十二人目、最後の年男さんでいらっしゃる『牛窓 源我』さんでござんすよ」 男たちの年齢は俺と同じか一回り上、くらいの人が多いようだ。 「じゃぁ、これからよろしくね、牛窓くん。俺たちは一旦帰っちゃうけど」 「?」 要領を得ない俺に子津が解説した。 「年男さんたちは現世(うつしよ)にお戻りになられても年神様と『ご縁』を結んだ事によって皆さん方同士でも繋がっているんです。 今年一年、皆さんで協力して年神様を盛り立て神威を大いにするためでござんす」 「名前だけでも覚えておいてもらおうかな。俺は牛水」 「俺は牛島」「ども、牛元って言います」「ちっす! 牛原っす!」「牛川と申します。よろしくお願いします」 「初めまして~、俺は――」 「わわ! 待った! ちょっと待って! そんないっぺんに覚えられないって!」 「じゃぁ、カラダで直接覚えてもらった方がいいんじゃない?」 「は?」 「やっぱそれが一番だよな? 俺もお前らの顔と名前が中々一致しなかったし」 「はぁ?」 「と言う訳で牛窓くん、褌を取ってケツを俺たちに向けるんだ」 「はぁぁぁ?」 どう言う意味かは分からないけど、何をしようとしているのかは察しがついた。 こいつら全員、俺のケツにチンポを突っ込んで精液をぶっ放すつもりなんだ! 「な、何考えてんだ! なんで俺がお前らに犯されなくちゃならないんだ!」 「犯す? 違う違う。ただの自己紹介さ。名前が覚えれないと言っただろう? その『代わり』だよ」 一回り年上っぽい男が俺を諭す。 じっと目を見つめられれば不思議と反発は治まり、俺もその方がいいな、と思ってしまう。 「そっか。俺のために、か。なら良いぜ。ケツを使うのは生まれて初めてだが、みんなの精液を俺にぶち込んでくれ」 「それでこそ俺たちの仲間、丑年の年男だ。なら、俺からイかせて頂こうかな?」 最初に「牛水」と名乗ったカラダのごつい男が俺の腰をがっしりとホールドして褌からずらして出したチンポを俺のアナルへヌブブとのめり込ませた。 「ぐうぅ、ううっ!」 「き、っついね……。生まれて初めてアナルを使うってのは本当だったんだ。本当に処女アナルだったみたいだね」 「だ、から、そう、言っただろっ! んぐぅぅ! ぎひ! あが、っががが! で、デカ、いっぎぃぃーーっ!」 「だけど俺たち、年男に選ばれた男は、年神様のご神徳を授かり、さらに年神様のお力を強くするためにアナルは決して壊れないモロ感名器になっている筈。 なので、牛窓くんも、もう、感じるだろう?」 そう。確かにそうなのだ。 ケツなんか弄った事はないのにメリメリこじ開けられたケツ穴の奥からじわじわと圧迫感以外の「何か」が込み上がってきていた。 「な? モロ感? 名器? んふ! も、もしかして、それって!?」 「そう。今、君が味わっているのがアナルの快感、の一部、ってところかな? ともあれ、後が控えているからね。 俺もさっさとイかせてもらうとするよ」 ずちゅずちゅとデカいチンポを俺のケツん中で軽く動かしたかと思うと牛水はあっさり精液を発射した。 「ん゛イグゥッ!」 「ほわひぃっ!?」 ドビュドビュビュビューーーッ! 牛水が俺の中からチンポを抜いたかと思うとすぐに新しいチンポが入って来た! 「んを!?゛」 「俺は牛久。いい尻してるな。本当に処女ケツだったのかい?」 ヌブヌブと音が鳴るのはさっき牛水がぶっ放した精液が残っているからだ。 気にせず牛久がチンポを前後させていたかと思うと、すぐに牛久も射精した。 「さ、これが俺の精液だ。名前と一緒に覚えておいてくれ」 「はひ! ひぎぃ~!」 めちゃくちゃだ! と頭の半分は思っているのに、言われてみれば確かに精液からそいつの名前や顔がしっかりと浮かんでくるのだ。 『牛久、牛久 俊輔(うしく しゅんすけ)36歳、歴史学者でありトライアスロン選手でもある。趣味は筋トレと読書』 『牛水 大地(うしみず だいち)36歳、米農家。趣味は温泉巡り』 こんな風に顔の特徴と共に、脳内にしっかりと書き加えられていくのだ。 順に十一人の年男たちの精液をケツの中に浴び続けた俺だったが、終わる頃には一発ずつだなんて少なすぎて、もう一発、もう一周してぶちこんでくれ、と頼んでしまうほどになっていた。 「あ゛あ゛あ゛! ケツ、キモヂィッ! もっと欲しいっ! もっとチンポ欲しいっ!」 「そんなに喜んでくれるのは嬉しいっすけど、あんまり年神様を差し置いて俺たちだけで先に盛り上がっちゃうのも、なんか、……ね?」 最後に射精してくれた『牛山 壮太』が檜戸の後ろをちらりと見やって申し訳なさそうに眉を下げた。 「そ、そんなぁ~!」 「自己紹介ってコトだし、今回はこれで勘弁してもらいたいっすね、牛窓くん。現世に戻ってからも俺たち同士で出来るんだし」 「でも、連絡先も電話番号も聞いてないし……」 スマホも無いしメモしようにも紙もペンも無い。精液からはアドレスなんか分からなかったぞ? 「大丈夫。心配いらないっす。年神様のご神徳で万事よろしく取り計らってもらえるっすよ!」 そこまで丑年の年神ってのを頼りにしていいのか? と疑問が湧き起こるものの、帰り始めた年男たちを引き止める術などなく、俺は渋々見送る他なかった。 「先にいらっしゃってた年男さんたちとのご挨拶も無事に済んだところで、いよいよ年神様にお目にかかるといたしましょう」 子津が金色の稲穂を振ると、アナルから垂れていた精液があっという間に見えなくなり、足元に出来ていた精液溜まりが跡形も無く消えてしまった。 そうして、他の年男たちが出て来た檜戸を子津が軽くトントンとノックすると、どしんと腹に響く声が返って来た。 『――入れ』 声の質から感じたのは任侠映画に出てくるような頬に疵のある強面兄貴だった。 どうしよう。いきなり殴られたりしないだろうか? 難癖をつけられたりしないだろうか? 寝所と言われた部屋に入るとすぐに俺も子津も頭を下げ膝を膝を折って平伏した。 御簾の向こうに丑年の年神が居るのは分かるが、姿はハッキリと見えなかった。 「遅くなりまして申し訳ありませぬ。こちらが最後の年男であられる『牛窓 源我』でございます。これで、年神様のお力も完全なるものとなりまして、よろづ世にご神徳を響かせられるかと存じまする」 「……うむ。案内御苦労であった。あとは我が引き受ける故、そなたは他の務めをこなすがいい」 「承知いたしました。では、これにて――」 膝を送ってそのまま入って来た檜戸から退出してしまう子津。 戸が完全に閉じると御簾が動いて中から年神が平伏したまま戸惑っている俺の方へやってくるのを感じた。 暖かい日差しみたいなオーラを持つ年神が、そっと俺の肩に手を乗せた。 「ほら、そんなに緊張すんなよ? 俺まで構えちまうからさ」 あれ? さっき聞いた声と違って、長閑で優しい声だな……。 恐る恐る顔を上げれば、マッチョで純朴で優しそうな男がニッコリ俺に微笑んだ。 「よ! 俺は『丑津野 元森(うしつの もともり)』ってんだ。まぁ、丑年の年神ってのも副業? でやる事になったんだけどな! 本業はあくまで消防署のレスキュー隊員だ」 「め、めっちゃカッコイイ~」 俺は胸がときめいた。股間が熱く滾りこの人と猛烈にセックスしたい! と欲望が燃え盛る。 「ははっ! ありがとうな! 他の者たちの前じゃ格、ってのを出さなくちゃいけねぇらしいんだが、そうじゃない時ゃ 普通に接してくれよな!」 「は、はい……、丑津野さん……」 「そんじゃ、ま、早速、源我とも始めるとすっかな!」 丑年の年神・丑津野さんが俺をひょいと抱き上げたかと思うと、御簾の内側の布団の上にそうっと俺を下ろした。 「す、凄ぇ、俺、それなりに体重はあるのに、まるで何でもないように持ち上げて……」 「ま、神様モードになってっと色々パワーアップしてんだ。それに源我、気付いてっか? 俺のサイズをさ」 「サイズ?」 胸いっぱいになっていてちゃんと「見れて」いなかったが、改めて丑津野さんを確かめてみたら、「うお!? でっか! え? 身長どんだけ!?」 「ははは、正確な身長はちょいと分かんねぇが、おそらく2m50cmはあんじゃねぇか? だもんで、この部屋も俺のサイズに合わせて少々大きく変えさせてもらった」 入った時には感じなかったが、確かに柱も天井もうんと高く大きい気がする。 俺の下にある布団だって万歳しても手がはみ出ない。 「凄い……。こんなに大きい人初めて見た……」 でも、これだけ大きいと困ることもあるんじゃないか? 本業はレスキュー隊員だそうだけど、頭とかぶつけまくってるんじゃないだろうか? 「だが、俺も現世じゃぁ普通サイズに縮んじまうんだよな。現世なら俺と源我の背丈はほぼ変わらないぜ?」 「そ、そうなんですか?」 「ああ。現世での俺の身長は180cm。源我もそんなもんだろ?」 「そうですね。少ししか変わりません。じゃぁ、この筋肉も神様モードの時だけ、って感じですか?」 ボッコボコの腹筋やドンと張り出した大胸筋など、鍛え抜かれたマッスルボディも現世に戻れば小さく縮むのだろうか?」 「ん? 筋肉は変わらないぜ? つか、質量的にゃ小さくなるが比率ってかマッチョ度合いは小さくならない。 このフォルムのまま全体のサイズが縮小する、って言った方が分かりやすいか?」 「はい。よく分かります。しかし、そうかぁ、レスキュー隊員だからこんなにムキムキなのか~」 「へっへぇ、職業柄身に付いた筋肉もあるが、個人的にマッチョになりたくて鍛えていた、ってのも大きいな。 それに、俺の好みもやっぱマッチョな奴なんでな」 俺はそう聞いてぎくりと青ざめた。 背丈はそこそこあるものの、筋トレなどやって来なかった俺のカラダは中肉中背で特に見るべき部分は無い。 腹筋は割れていないし大胸筋もあるのか無いのか分からない隆起具合。 そもそも、ご来光を拝むために山に登る事にしたって自分の体力を見越して軽く登れる「かんなび山」を選んだくらいだ。 「あ、あの、俺……、丑津野さんの好みに全然合っていなくって、こんなカラダだし、チンポも普通サイズだし、体力もそんな持ってないし……」 ――泣きたくなってきた。 相手の好みのタイプにかすりもしていない。こんな俺で丑津野さんが満足する訳がない。 俺、年男なのに年神様に奉仕できない。 こんなに素敵な年神様なのに! 好かれる要素が無い! 全然無いじゃないか!