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鷹取リュウゴ
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体操のお兄さん 第三体操の5

第三体操の5 人質奪還作戦  日傘山の中腹にある雨森城は標高300mのところにある。 この雨森城の地下に日の出テレビジョンの衣装担当・鯵山慎吾や、報道局・鰹木副部長の息子を含んだ11人が閉じ込められているとギリィから報告を受けた俺は、 我が『ルガルム』とは別の秘密組織である『ビースレイブ』に属するヒーロー怪人「ジャスティスレイブ」も作戦メンバーに加え、 捕らわれた11人を救出すべく雨森城へと向かった。 「どこに拉致られているのかまでは知られていませんけど、マスコミもこの事件を大々的に扱い始めましたね。 ネット上ではすでに『お祭り』みたいな騒ぎになってるっす」 諜報活動に行く時と同じ黒い装束に身を包んだギリィが雑草が生い茂る山道を登りながら世間の動きも伝えてくれる。 「……さすがにこれだけの人数が短期間に姿を消したんだからな、恰好のネタを見逃したりはしないだろうさ」 日の出テレビだけは身内が2人も含まれていたせいもあり、ぎりぎりまで報道を控え目にしていた。 金銭目的なのか何なのかは分からないが、犯人をいたずらに刺激しないように、と警察からの自粛要請があった 「この事件をマスコミの玩具にされる前にカタをつけないとな。俺らが動きにくくなっちまうぜ」 「ですよねー。僕も改造が完了するまではあんまり目立ちたくありませんし」 俺とギリィのすぐ後ろを青いスーツに派手なマスク姿のジャスティスレイブが付いて来ている。 「ちっ……まだ敵の姿も見えない位置なのに、もう変身しているなど……本当にお前は考え無しのバカなんだな」 ギリィがやれやれと両手を上げて頭を振った。 「な! こ、これはだなぁ! いつ敵が襲ってくるか分からないんだからあらかじめ備えておこうと思って! それで――」 「なぁ、ジャスティスレイブよ。その心意気はありがたい。ありがたてぇんだけどなぁ、登山口に入ったばっかりの場所でいきなり変身するやつがあるかよ! お陰で最短ルートから外れたこんな藪ん中を進まなくちゃならなくなっただろうが!」 日傘山は気軽に登れる山として、季節によっては数多くの登山客が来る山だった。 雨森城は登山ルートから外れた場所にあるとは言え、かなり近くまで整備された登山道で来ることが可能だ。 「偶然、本当に偶然、周囲に他の人間が居なかったから良かったようなものの……。ゼラン将軍、今からでも遅くはありません。コイツを置いて行きましょう」 ギリィが汚物でも見るような目でジャスティスレイブを睨んだ。 「ギリィ。お前もお前だ。黒いつなぎは問題無い、それに黒いブーツも。だけどな、その上に着ている派手なジャケットは何なんだよ!」 膝まで掛かる長さの黒いコート、ではなく昭和ヤンキーがイキっている時に着ていた「特攻服」を羽織っているのだ。 「同じ『黒』でまとめたんすけど。どこかおかしいですかね?」 「おかしいだろ! こんなに堂々と『ルガルム上等!!』なんて金の刺繍を入れるなんてなぁ! まだ日本制服の下ごしらえの下準備中ってレベルだっつぅのに、俺らの存在が即バレしちまうだろうが!」 「ご安心くださいっす。ゼラン将軍。こいつぁリバーシブルなんで、こうやって裏返しにすりゃぁ」 パッと脱いで裏地を見せたギリィ。 「早く戻せ! 余計に目立ってんじゃねぇか! 白地に赤で『ゼラン将軍最高!』とか入れんじゃねぇ! ああ! なんでそんなもんを! 目立つし恥ずかしい! 俺もうお嫁に行けねぇ!」 「へへっ! だったら俺っちがゼラン将軍をお嫁さんとしてお迎えするんで、大丈夫っすよ!」 「このヤンキー、叱られてんのに、何勘違いしてんだ。ゼランさんは僕が生涯添い遂げてあげますからね!」 「またバカな事を。ビースレイブのお前がルガルムの将軍と結ばれる訳がないだろう? 改造するならまずは知能を人並みに上げてもらうんだな」 「ははーん、さては僕とゼランさんとの深い絆を知らないから嫉妬してんだな? 同じ部屋で生活し、夜毎ゼランさんのカラダと一つに結ばれ、変わらぬ愛を誓い合った僕たちに」 「っな!? そうなんすか!? 将軍っ! こんなガバマン野郎なんかに本気になっちまったんすか? いや、きっと一時の気の迷いに決まってる! 日本に来てからロクにセックスできない日々が続いてたせいでコイツ如きでも美味しく感じちまっただけなんすよね?  俺の方がケツもテクも優れモノですよね!」 「…………はぁ~。悪いが少し黙っててくれる? つうか、恰好なんかどうでも良くなってきたわ」 話がどんどん別の方向へズレている事に2人とも気づいているんだろうか? ギリィは頼もしい奴なんだが、こと「ジャスティスレイブ」が相手だとレベルが下がる、と言うかおバカになるのは何故だ。 戦力的に少し不安を覚え始めた頃、ギリィが地下へ降りる洞窟の入り口を指差した。 「あそこから、か」 「そうです。この奥に地下空間へ降りる通路があるのです。そこに皆さんが捕まっています」 「他に出入り口は?」 「残念ながら……」 探りきれなかったのか。 「――敵、『シャドウ』って奴は前と変わらず5体なのか?」 「そのようです」 「では行こう。2人とも俺の作戦通りに動いてくれ」 俺とギリィとが敵を引きつけているスキに、ジャスティスレイブが捕らえられた11人を誘導し、安全な場所まで逃がす。 「では、行こう。まずは慎重にな」 ジャスティスレイブとギリィが無言でうなずき視線を前に戻す。 こう言う切り替えができるあたりはさすがだな、とさっき下げた評価を再び上げている。 剥き出した岩肌のあちこちに人の手が加えられた形跡が見られる。 様子を探りながらゆっくりと足を進め洞窟の奥へと向かう。 完全に真っ暗闇にならないのは人目に付かない場所に照明を設置しているためもあるが、闇の中でも戦闘が可能なように 視覚を改造しているお陰でもある。 全身をバトルフォームへと変身させずともカラダの一部だけを変えることが可能なのはこう言った時に便利だと言えよう。 「ゼラン将軍。いました。敵シャドウ5体に変わりはありません」 ギリィが声を潜めて俺に報告した。 「分かった。それで、人質になっている人々は?」 「ここからでは見えません。奥の空間に捕らわれている筈です」 「一本道って感じの構造か。少々厄介だな。敵が先に俺たちに気付いて奥に向かったら、誘導する以前に危害が及ぶかもしれん」 「いかがしましょう?」 しかし、敵にしてもこんな簡単な構造の洞窟では守るにも潜むにも問題だらけじゃないか? 戦術的にも最低な砦だと思われる。 敢えてこんな場所を選んだのならよほど愚かな指揮官だと判断せざるを得ない。 「少々作戦変更だ。俺がまず囮になって敵を引きつける。だが、敵の何体かが残ってしまった場合に備えてギリィ、お前が2番目の囮となるのだ。 そして、人質たちはジャスティスレイブ、お前が出口まで誘導する。これで行くぞ。変身っ!――『バトルフォームッ!』」 全身にエネルギーを行き渡らせ、視覚だけでは無く肉体の全てを「バトル」特化型へと変身させる。 衣服が膨張する筋肉で弾け飛び、二の腕や膝下、肩周りの表皮が鋼鉄になり俺を守護する鎧と化す。 額の中央からズブゥと角のような形状の超高感度センサーが外部に伸び、肩から生えたケーブルが頭部と繋がり脳と肉体との連携を最大限に引き上げる。 仕上げに頭部全体をメタリックヘルムが覆うと、俺は秘密組織ルガルムの四天王の一人、改造強化された 戦闘員の中の戦闘員である「鋼鉄のゼラン」の姿へと変身完了だ。 「……ふぅぅ、って、おい! お前ら涎なんか垂らすんじゃねぇ! 敵のすぐそばで何勃起させてやがるんだ!」 ジャスティスレイブとギリィの2人とも股間をモッコリと突っ張らせたまま俺のカラダと股間とを舐め回すように見つめてやがる。 「ゼランさんてば、変身後のほうがもっとエロいんだよなぁ。次はバトルフォームで俺とセックスして欲しい……」 「将軍……す、素晴らしい……こうやってバトルフォームになられたお姿を将軍の記憶ではなくリアルで目にすると、お、俺、なんて言うか、もっと将軍と一緒に……」 そんな事を言いながら徐々に俺の股間ばかりをじっと見つめてやがる。 変身して「バトルフォーム」なると、股間の部分もしっかり防御するビキニ型メタリック装甲で覆われているのだが、 何故か俺のペニスは変身前と比べても誇張された『見た目』になってしまうのだ。 まるで、窮屈なビキニの中で無理矢理デカマラを押し込んだがために、クッキリと中身が浮かんでいるかのように。 「ホント、お前らこんな状況でもエロい思考を捨てていないのって、むしろ俺からしたら驚きしかないぜ」 瞬間、2人とも目が輝いた。俺は褒めてるつもりじゃないんだけどな。 「……じゃぁ、こうしよう。今回の作戦、より目覚ましい働きを見せてくれた方と俺はセックスすると約束する。 バトルフォームでのプレイがお望みなら、それも叶えてやる。ザーメンが空になるまでケツを攻めてやろう。 だが、足を引っ張りやがった奴とはセックスしてやらねぇ。て言うか、触れることも禁止だ」 俺の宣言を聞いたジャスティスレイブとギリィが互いの顔をじっと睨んだ。 かと思うと同じようにニヤリと不敵な笑みをこぼし、視線をバチバチ絡ませた。 「悪いけど、ゼランさんのチンポは僕がいただくから」 「笑止。貴様などオナニーで十分。将軍のイチモツは俺がもらったも同然」 「はいはい……もういいから。そんじゃ、今から10秒後に行動開始。いいな?」 肯いて洞窟奥をキッと睨んだ2人。ようやく心身ともに戦闘モードになってくれたようだ。 10、9、8……3、2、1―― 『GO!!』 一気に距離を詰めてシャドウの背に蹴りを一発! 「ギィィィーーーッ!?」 錆びたドアみたいな叫び声を上げて一体が地に伏した。が、すぐに起き上がって俺の方へ向かってくる。 つられて3体のシャドウが集まってきた! それにしても、間近で見るシャドウはまさしく「影」のような全身黒ずくめの存在だ。 どちらが前か後ろかも分からないような黒一色の全身スーツに身を包み、時折カラダの一部をグニャグニャと歪に膨張させていやがる。 「不気味な連中だぜ!」 しかし、俺が引きつけられたシャドウは4体。残り1体は人質のそばに残ってしまった。 「将軍! 俺にお任せを!」 ギリィが俺の脇をかすめ洞窟の奥に飛び込んだ! そうして、シャドウの注意をそらさないように後退する俺の元へ、残した1体を引きつれたギリィが合流した。 「良くやった、ギリィ。これで人質はしばらく安全だな」 「はっ! 後はジャスティスレイブのヤツが作戦通り何とかする筈です」 シャドウは軟体動物のように腕や足を鞭のように伸ばして攻撃してくる。 それをかわしてボディに重い一発を打ち込んでやるのだが、ゴムのように腹部が凹んだかと思うと、すぐに復元されてしまう。 「将軍! 俺の能力もまるで効かないみたいです! こいつらシャドウには魂どころか意識が無いようで!」 ギリィの特殊能力である『魂抜き』、つまり「洗脳・催眠」の効く相手ではなかった。 俺の物理的な攻撃も効かず、ギリィの心理攻撃もダメだ、となると、戦闘が長引けば長引くほど俺たちには不利だ。 しかも、ジャスティスレイブが人質たちを引きつれ戦う俺たちの脇を擦り抜けるのはまず無理だろう。 一本道と言う洞窟の形状が災いした。 ――ヒュンッ! 「ぐわぁっ!」 振りかぶったシャドウの腕が伸び、ギリィの背にヒットした! 「ギリィ! 大丈夫か!」 「へ、へへっ、だ、大丈夫っすよ、将軍、この程度でやられたりしたらルガルム戦闘員の面汚しでさぁ!」 顔は笑っているが汗が滲んでいる。思いの外シャドウの攻撃によってダメージを受けたのが明らかだ。 いよいよ時間をかけられる余裕は無いって事だ。 「ジャスティスレイブ! 人質たちはどうなった!?」 岩陰になっていて見えない位置にいるジャスティスレイブに状況を問う。 『ぜ、ゼランさん! 人質の皆さんですが……全然起きてくれないんですよぉ! 何だか妙なケーブルが頭にくっついてて!』 目覚めない上にケーブルだと? 「将軍! シャドウの足元をよく見てください! 分かりますか!」 ギリィが寸前で敵の攻撃を避け、俺にある一点を指さした。 「……? 何だ? あの黒い縄は……」 シャドウの足元から洞窟の奥に黒いホースのようなモノが繋がっている事に気が付いた。 「ジャスティスレイブの言っていた『妙なケーブル』って、もしかしてアレですかね?」 「かも知れないな……、おい! ジャスティスレイブ! ケーブルの繋がる先はどうなってんだ!」 奥で必死に人質を起こそうとしているであろうジャスティスレイブに確認を求めた。 『ええっとですねぇ! ケーブルの先は一か所に集まってます! ええと、何だろ? これ』 「どうなってる!?」 『何だか小型の蓄電池みたいな装置に繋がってます! それから、黒いケーブルが5本、伸びてるんですけど! ――うわわっ!』 「おい! どうした!」 『すみませーん! うっかりして黒いのを引っこ抜いちゃいました! わわ! どうしよう!』 ジャスティスレイブの返事に気を取られた俺は、一瞬だがスキを作ってしまった。 「ゼラン将軍っ! 危ないっ!」 ギリィの声にハッとして意識を戻したがすでに遅く、シャドウの腕がもう目前に迫っていた! 避けるのは無理だ。 鞭と化した黒い腕が俺の頭部を思い切り叩きつける! 「くぅっ!!」 「…………………」 「…………しょ、将軍!」 咄嗟に目を閉じ腕を前にしてガードした俺だったが、来るはずの衝撃が全く来ない。 ギリィの呼びかけによってようやく目を開けると――「は!?」 シャドウが……、5体のシャドウがまるで空気の抜けた風船のように、プシュゥゥとしぼんでいるのだ。 『ゼランさん! さっき抜いたケーブルですけど、元通り差し戻しました!』 すると、シャドウは再びモコモコと膨らみ、俺たちへの攻撃を再開した! これで俺は理解した。シャドウに繋がっている黒いケーブルがやつらにエネルギーを流し込んでいるのだ、と。 「ば! バカヤロウ! そいつが敵の弱点なんだよ! 差すんじゃねぇ! もう一回引っこ抜けぇ!」 『は、はいいぃ!』 シャドウたちがジャスティスレイブのやろうとしている事に感付いて、奥へ戻ろうとする動きを阻止する。 だが、俺とギリィとじゃ2体が精一杯。 残りの3体がジャスティスレイブの方へ突進して行く! と、思ったら、またもやしぼんでペチャンコになっちまいやがった。 「ま、間に合ったぁぁ。ああ、ビックリしたぁ!」 5本のケーブルを束にしてぶっこ抜いたジャスティスレイブが「ふぅ」と息を吐いた。 ぺらっぺらの「皮」だけになっちまったシャドウたちは、今度こそ膨らみもせず立ち上がることもなく、 俺とギリィの足元で「薄く」のびちまっていた。 第三体操の6へ続く

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