【限定公開】沖縄の男、その1。:那覇空港
Added 2019-08-14 14:55:01 +0000 UTC「今から一週間、お休みをいただきます」 「……分かった。ゆっくり休めよ」 「ありがとうございます」 まだ午前中だったが、さっさと会社をあとにした。 これが俺の精一杯の反抗だった。 それから約4時間後。 俺は沖縄に来ていた。 会社からそのまま羽田に直行し、那覇行きの一番早い便に乗ったのだ。 ワイシャツにスラックス姿。当然着替えも持っていない。 でも、とにかく早く遠いところに行きたかった。 「兄ちゃん、どうした?」 那覇空港で一人佇む俺に、一人の男が声をかけてきた。 (うっわ、カッケェ……) よく日焼けしていて年齢が分かりにくいが、恐らく30代前半だろう。 俺より5歳くらい年上に見える。 沖縄の人らしく濃い顔で、イケメンだ。あごひげがよく似合っている。 そして、何よりそのカラダ。 脇の下がざっくり開いたダボダボのタンクトップに膝上の短パンという露出度の高い服装をしており、引き締まりながらも厚みのある肉体美が露わになっている。 きっとフィジークの大会に出ていたりするに違いない。そう思わせるほどの迫力と魅力がある。 「どうした、というと……?」 俺の性格的に、普段だったら「うるせぇほっとけ!」と思っているはずだ。 しかし、目の前の男は俺の好みド真ん中。理想と言ったっていい。そんな男に声をかけられたのだ。会話を続けたいと思うのは当然だ。 「ひどい顔してる」 ひどい顔、か……。 顔の美醜の話ではない。俺はそこそこイケメンだ。 表情が悪いのだろう。暗い顔しているのか、それとも怒った顔をしているのか。とにかく他人から見てひどい表情をしているのだ。 俺は何も言えず「あはは……」と笑った。力のない笑いだというのは自覚できた。 「これからの予定は?」 「えっ……あ、いや、しばらく観光しようかと……」 本当は何も考えていない。 「そうか。よかったら、俺と一緒に回らないか?」 「えっ!?」 「もしも一人で回りたいとか、誰かと約束があるとかなら全然気にしないでくれ」 「いや、いやいやそういうのは全然ないです! ぜひ一緒に回ってください!」 こんなタイプの男からのお誘いなんて……ツイている! 「ハハッ、そうか。俺、岸本っていうんだ。兄ちゃんは?」 「あ、俺は……鈴木です」 「よし、鈴木! 行くか!」 「はい!」 続く。