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【チラ見せ】皆陵洲村、若き村長の誕生~1

「ただいまー」

「おかえり」

学校から家に帰ってきたら、珍しくお父さんが迎えてくれた。

普段は早くても7時くらいにしか帰ってこないのに。

「えっ、どうしたの?」

「お前に話があって、早く帰ってきた。二人で話そう」

「う、うん……」

何だろう……お説教されるようなことをした覚えはないけど……



書斎で二人きり。

しばらく居心地悪い沈黙が続いたけど、お父さんが真剣な眼差しで口を開いた。

「今朝、『村長』が亡くなったそうだ」

この皆陵洲(みなおかす)村で「村長」といえば、村の有力者である皆陵洲家の当主のことだ。

もちろん、村長を決める選挙はするんだけど、そうやって決まる村長は住民から「お飾り村長」って呼ばれる。

この人口400人足らずの小さな村のありとあらゆることは、皆陵洲家が牛耳ってるらしい。


とはいえ、その「村長」が亡くなったところで、僕に何か関係があるとは思えないんだけど……。


「明日の晩、”承継の儀”が行われる」

「”しょうけいのぎ”?」

「ああ。新村長が皆陵洲家の当主を引き継ぐための儀式だ。

 この儀式には、村の男たちが全員参加する」

「僕も参加するってこと……?」

「そうだ、元服を迎えた男は強制的に参加しないといけない」

僕は先週、元服を迎えた。

この村では、労働力と認められる年齢になると、元服の儀をする。


「ってことは、お父さんも参加するんだね」

「……そうだ」

お父さんの顔は強張っている。

間違いなく参加したくないのだろう。

多分、僕にも参加してほしくないんだ。

「……その”承継の儀”っていうのは、どういう儀式なの……?」

「……それは——」



お父さんが語ったのは、信じられない内容だった。


そんなこと、許されるの……?

でも、皆陵洲家が村を支配できている理由も分かった。


正直うまく想像できなくて現実感がない。

でも、いつも頼もしいお父さんが追い詰められた顔をしてるのが、すごく怖い。



怖い怖いと思っているうちに、あっという間にその時がやってきた。


「行くぞ」

お父さんが相変わらず強張った顔で声をかけてきた。

僕は黙ってうなずいて、二人で夜の道を歩いた。


向かったのは、皆陵洲邸。

昔、一度だけ家の前を通ったことがある。和風の豪邸だ。

この村のお金はここに集中してるんだろうなって思った。


皆陵洲邸に近づくと、僕たちと同じように男の人たちがぞろぞろと家の中へ入っていくのが見えた。

みんな表情が暗い。これから自分の身に降りかかることが分かってるんだ。


僕とお父さんも中に入る。

高級な旅館のように広々としている。

和装の従者みたいな人が誘導していて、それに従って進む。


進んだ先は、大浴場。

「しっかり身を清めるんだ」

お父さんが僕の体を丁寧に洗ってくれる。

「ひゃっ……そ、そんなとこ……」

「洗うんだ。今夜は、しっかりと」

僕が体をよじらせてもお父さんは容赦しない。

怖くなって、僕は大人しく身を委ねた。


体を隅々まできれいにしてから、大浴場を出る。

用意されていたタオルで体を拭くけど、服は着ない。

裸のまま、移動する。

いよいよ承継の儀の会場だ。


そこは、道場みたいな雰囲気の部屋だった。

壁際に行燈が並んでいるけど、全体的に薄暗い。


中では、すでにたくさんの男の人たちが床に座って儀式が始まるのを待っていた。

(ねえ、お父さん、何人くらい儀式に参加するの?)

(お年寄りと、元服前の子ども以外の男は全員だから……100人近くいるはずだ)

100人くらいの男の人が全員が裸で座っている。とても不思議な光景だ。


僕とお父さんが会場に入って10分くらい経ったくらいだろうか。

従者が仰々しく部屋に入ってきた。

男たちはみんな一気に緊張して正座になった。


「間もなく皆陵洲家の新当主である雄麟(ゆうり)様が湯浴みをなさっています」

従者がそう言うと、部屋の中がざわついた。


(お父さん、なんでみんな驚いてるの……?)

(雄麟様は末っ子なんだ。元服を迎えられたばかりのはず……)

(えっ、じゃあ、僕と同い年なの!?)

(そのはずだ。皆陵洲家のご子息は学校に通われないから、お目にかかったことはないだろうが……)


僕と同い年なのに、この村の「村長」を承継しようとしている。

一体、どんな子なんだろう……。


(お父さんは、その子を見たことあるの?)

(幼少期にお見かけしたことがあるが……皆陵洲家の方々は成人なさるまでは村民にほとんどお姿をお見せにならないからな……)


「お静かに願います。雄麟様のご光来です」

会場がしんと静まり返る。


ガラガラガラッッ……


入口の引き戸が開かれる。


背が高い。

決して低くない入口をくぐるように入ってきた。


体が厚い。

全身が筋肉まみれで着ぐるみみたいだ。


(嘘だろ……これが、龍麟様なのか……!?)

(元服を迎えられたばかりでこれほど成熟しておられるとは……)

(「成熟」? そんな生易しいもんじゃない……

 これは……これはもう”化け物”だろ……!!)


「静粛に! 新当主の御前であるぞ!!」

ざわつく男たちを従者が一喝する。


再び部屋の中が静まり返る。


新当主は、そのタイミングを見計らったかのように僕たちの方に向き直った。


正面から見ると、本当にすごい体だ。

逆三角形。それも、横にかなり広がった逆三角形。

それだけ肩と背中の筋肉が盛り上がりがとんでもないんだ。

そのせいでウエストが細く見える。

こんなに腹筋とか脇腹の筋肉が盛り上がってるんだから、細いはずないのに。


男らしい顔つき。おじさんっぽくはないけど、僕と同い年にはとても見えない。

堂々としていて、余裕の笑みを浮かべている。


「今日は、俺の承継の儀に集まってくれて、感謝する」

よく通る声だ。

低くて落ち着いた声をしている。


「早速だが、儀式を始める。

今からお前たちを……“皆犯す“!!」


続く。


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