SamSuka
ミスターウッド
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冬のラブラブサンドイッチ

「……でさー、ここでツッコミした後のボケだけどさ」 「んー。ボケの部分少ないからツッコミ多めにすんの?」 「それよりも俺はさ、ボケとツッコミ短く刻んでスピード感出したいんだよなー」 「でもそれするには早過ぎね?もうちっと会場あったまってからの方が良くね?」 雪が降る真冬。 ぼろい木造アパートの一室で、これまたぼろい炬燵を囲んで二人の男が熱心に話し込んでいた。 炬燵の上の大学ノートに出し合ったアイデアを事細かに書き込み、そこからやり取りを具体的に構成し順序立ててまとめていく。 ボールペンを走らせる小太りで金髪眼鏡の男は着古した半纏を羽織り、黒髪強面の男はフリースを着て横からノートを覗き込む。 「……って、最近話題になってるじゃん。だからそれをツッコミに入れたら受けると思う」 「あーいいじゃん。その位なら炎上しないだろうし誰でも分かるべ」 「でさ、考えたんだけど、そのツッコミに繋げるためにここからちょっと横道に逸れて……」 「ふむふむ。あ、ボールペン使う?」 「使うー。あんがと。でさ、ここから一回……」 黒髪が渡されたボールペンでノートに新しい分岐を作り出し、その先に新しいアイデアを書き足す。 几帳面で整った金髪の文字とは違う、崩れて勢いのある黒髪の文字がノートの上で踊り出し、ページの隙間を埋めていく。 雪の日のテレビもエアコンも付いていない静かな部屋。ボールペンがノートの上を走る音と、互いの呼吸の音だけが聞こえる。 金髪がふと視線を横に移せば、真剣な眼差しでネタを書く黒髪の横顔が見える。 いつもはおちゃらけてだらしない相方の、無防備だが凛々しい表情が間近にある。 「…………」 思わず、体を寄せて距離を詰める。邪魔にならない程度に体に触れ、安心感のある柔らかい肉の感触を求める。 ノートを渡し合いネタを書き記す度に自然と二人の距離が近づき、肩が触れ合い炬燵の中で足が絡み合う。 少しだけ、触れた場所があったかくなる。 ふと、目蓋を閉じて頭を肩に預けてしまう。 人前では見せない、いつも布団の中でだけ見せる甘えた仕草にふける。 芸人の相方ではなく、人生の伴侶としての意識がまどろみの中で少しずつ戻って行く。 「…………こんな感じ。でさ、この後は普通に戻って……」 「…………」 「……おい、おーい。おーい?」 「…………」 「おーい、聞いてる、聞いてる?」 「…………」 「ほーれ、起きろおきろー。人の肩枕にしてんじゃねーよー」 ぺちぺち頭を叩いても反応が鈍かったので、持っていたボールペンで額を突く。 まどろみから覚醒した金髪が慌てて頭を持ち上げ、恥ずかしそうに愛想笑いを浮かべる。 「えっ、あ……悪い。ちっと気持ち良くって……」 「ったく、人の肩の上で寝るなよな。お前は使い魔の鳥かよ」 「ちげーよ。お前の相方だよ。……もしかして、俺の事ちょっと嫌いになった?」 半ば返答を予想した質問に、黒髪は臆面もなく視線を合わせる。 「こんなことで嫌いになる位なら、お前の相方十数年もやってねーよ」 「……じゃあ、好き?」 「…………好きに決まってんだろ、ばーか」 真顔で見つめ合う二人。 だが、暫くしてどちらからともなく笑い出し、緩んだ笑顔を浮かべる。 「……今のいいな。いつかのオチに使おう」 「マジで?人前でガチ惚気とか恥ずかしいんだけど……」 「へーきへーき。お客さんも他の芸人もガチだなんて気付かねぇだろうし」 「えーでも……」 新しいページにネタを書き出す黒髪の横で、金髪が若干頬を赤らめて腕に抱き着く。 思わず黒髪のボールペンが止まり、恥ずかし気に目を泳がせる金髪の表情に視線が向かう。 「……ぶ、舞台の上で勃起したら、放送事故になっちまうじゃん……」 「…………ふっ、ふひひひひひ……」 「わ、笑うなよ!こっちは割とマジで悩んでんだぞ!今だって、御無沙汰の時はチンポケース入れないとお前の顔見るだけで勃起しちまうし……」 「ははははははっ!ははっ……ひーっ、ひーっ、ひーっ……。わ、悪いわるい。でもよ、そんなの簡単に解決すんじゃん」 「え?」 黒髪が金髪の腕を引き寄せ、そのまま唇を奪う。 舌を捻じ込んで強引に涎を絡ませながら、ズボンの中に腕を突っ込み犯し慣れた肉棒を慣れた手つきで弄り出す。 一瞬にして快感に蕩けた表情になった相方に自分の盛り上がった股間を掴ませながら、黒髪は耳元で囁く。 「これから毎日、中でも外でも犯ってイかせてやるからな。安心して惚気ろよ?」 返答を待たずに、黒髪は金髪を押し倒して更に激しく唇を貪った。 唇が相方の乳房、肉棒、肛門へと移り、芸人という立場を越えた雄同士の盛り合いに発展するにはさほど時間はかからないだろう。 粘っこい水音と甲高い嬌声が響く部屋の中。炬燵の中で豊満な雄の肉体が臨界点を越えて重なり合う。 新しいページに書かれた新しい惚気芸のフローチャートと、放り出されたボールペンが、激しくなる盛り合いに合わせて揺れていた。 窓の外の静寂の雪景色とは対照的な熱情の交尾が、『また今日も』この部屋で繰り広げられるのだった。 普段、観客やカメラの前で見せる、精緻に作り出された至高の漫才とは正反対の、激しく本能的な雄交尾が……。 了


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