「第三話 怪獣チャンネル」 挿絵 らすP様
生徒の集団失踪事件から少し経ち、落ち着きを取り戻しつつあった春野市に、新たな異常が迫っていた。
今度は市民から、ある特定の時間にスマホやテレビがいっさい動かなくなるという報告が多数上がってきたのである。
それらの市民は皆、同じ区画に住んでいるという共通点があった。
単純に生活の基盤を揺るがされる恐怖や、その正体が不明なことから不穏な空気が街を覆い始めていた。
その様子を見ながら、青年はゴーデスに質問する。
「効果の程はどうだい?ずいぶん地道なことをしている様だけど。」
ゴーデスは成果に満足している様子で、青年の質問に答えた。
「いや、上々じゃよ。不安と不満が入り混じったいい空気じゃ…」
青年はいい機会と思い、疑問に思っていたことを尋ねてみた。
「どうしてベムラーの時みたいに怪獣の姿を出さない?わかりやすく恐怖を煽ることができるんじゃないか?」
その問いにゴーデスもごもっともという顔をしながら、持論を展開した。
「それも効果はあるんじゃが、人間とは面白いものでの。それだと好奇心や憧れの様な感情も出てくるのじゃ。お主も怪獣が出現したら喜ぶクチじゃろ。」
そう言われた青年は、確かにと相槌を打った。
「なるほどね、正体によっては喜ぶ輩も多いわけか。そういう意味では、ただただ理不尽を感じる今の状態の方が、マイナスエネルギーを生みやすいというわけだな。」
「ご名答…それに地域を区切れば、奴の食いつきも早いだろう。そうすれば、そこで初めて怪獣の出番というわけじゃ。」
ルクリアを示唆する言葉が出たことで、青年の顔にも笑顔がのぞく。
「果たして今回の怪獣には勝てるかな…お手並み拝見といこう…」
そう言った青年の目は、遙か上空の空を眺めていた。
アンナは生徒からの相談で上がってくる区域を整理し、その中心にアマチュア無線部の部長の家があることを確認していた。
この生徒は生徒会の役職も務め人望が篤かったが、例の失踪に巻き込まれてからは部活にも生徒会にも顔を出していなかった。
一度面談を、と理由を作り、アンナは部長の家へと向かっていく。
そうして生徒の家の前に立つと、強大なマイナスエネルギーが家全体を包んでいた。
「ルクリア、携帯が壊れても困るし、ここで変身しましょう。」
電子機器を狂わされる可能性がある以上、先手を打った方がいいというアンナの判断であった。
ルクリアも賛同し、
「わかりました。変身しましょう!」
と答えると、変身のプロセスを開始した。
スマホ画面の中のルクリアアプリが光り、アンナがそれをタップする。同時にスマホごと手を上に掲げて、パートナーの名を呼んだ。
「ルクリアッ!」
アンナを包んだ光の中から、アルティマレディ・ルクリアが現れる。
「アルティマフィールド!」
同時にエネルギーフィールドを生み出し、家を包みこむルクリア。
周りの家に被害が及ばない様にというのと、自らの存在を気取られ無い様にという処置であった。
安全を確保し、家に乗り込むルクリア。
リビングでは部長の家族が、死んだ様に眠っていた。
「彼は一体どこに…」
捜索を続けるルクリアは二階から強力なマイナスエネルギーを感知する。
二階に上がり、エネルギーの発生場所を捜査するルクリア。
そして、一つに部屋の前にたどり着いた。
「ここが発生源…」
その部屋の扉は鍵もかかっておらず、ルクリアはすんなりと中へと入っていった。
「…っこれは…!」
中では部長が何かに取り憑かれた様に、無線の基地局を操作していた。
基地局によって、増幅されたマイナスエネルギーが拡散されたことが今回の電波障害の原因だったのだ。
「ルクリア、彼を浄化しましょう!」
アンナの提案にルクリアも、すぐに反応した。
「ええ!フルムーンレクト!」
ルクリアから発生した浄化の光が部屋全体を包んでいく。
しばらくすると、家全体を取り囲んでいたマイナスエネルギーは消失し、部長も糸が切れた人形のように眠っていた。
「ここはこれで大丈夫ね。問題はマイナスエネルギーの発生源だけれど…」
アンナの問いにルクリアは視線で答える。
「この家の遥か上空…そこに原因があります!」
そう言うとルクリアはベランダから、上空へと飛び立った。
上昇しながら体を元の大きさまで戻していくルクリア。
家の上空数百メートルの位置に、巨大なエネルギーフィールドが展開されていた。
「怪獣はおそらくこの中です。いきましょう!」
エネルギーフィールドを中和しながら、中へ侵入していくルクリア。
フィールドの中に入ると、眼前には不思議な光景が広がっていた。
「これは…街?」
足元には古びた街並みが広がり、その中心には電波怪獣・ビーコンが水平に浮いていた。
恐る恐る着陸するルクリア。
「生命反応はありませんね…ここは一体?」
ルクリアは混乱しながらも、目の前に浮いているビーコンにファイティングポーズを取るのだった。
この様子をモニターで見ていたゴーデスは青年に問いかける。
「フィールド内は言われた通りにしてやったが、アレになんの意味があるんじゃ?」
当然の問いに青年は笑って答える。
「あれはアルティママン本編で使われたセットと同じ作りなのさ。せっかくリアルにアルティママンと同じ存在が来てくれたんだから、こだわりたくもなるものだろう?まぁ、オタクの性だとでも思ってくれよ。」
ゴーデスも青年の嬉しそうな様子に、
「まぁ、お前が楽しいならそれでいいわい。」
と納得した様子でモニターへ向き直った。
とりあえず誰も傷つける心配がなさそうなことに安堵したルクリアは、ビーコンへと向かっていった。
「セァッ!」
掛け声と共に、掌底をビーコンの顔面に入れるルクリア。
押されたビーコンは後ろに下がったと見せかけて、ブランコの要領でそのまま勢いをつけてルクリアに突進した。
巨大な質量の突撃を捌くことができず、ルクリアは後方に飛ばされてしまう。
「きゃあっ・・・」
街中に倒れこむルクリア。
「無人の町で助かったわ・・・あの硬さは簡単には突破できない・・・それなら!」
こぶしにエネルギーを集中するルクリア。
ドラキュラスの羽を浄化した刃が発生し、剣の形に変わる。
「てやぁっ!」
ルクリアはアッパーカットの要領で宙に浮くビーコンの腹部に剣を突き立てようとするものの、簡単にはじかれてしまう。
「なんていう固さなの・・・っ、いけない!」
ピコンピコンピコン・・・
ルクリアのカラータイマーが点滅を始める。
部長の家の浄化でエネルギーを消耗していた分、リミットが早まっていたのだ。
急激な消耗に気を取られたルクリアを、ビーコンは見逃さなかった。
スッと直立状態になると、そのまま空中を滑るようにルクリアへ迫る。
交差する瞬間に、足をかけてルクリアを転倒させるビーコン。
「・・・え・・・きゃああぁあ!」
目を離していたルクリアはまとも引っかかってしまい、あおむけに転ばされてしまう。
すかさず上からのしかかり、ビーコンはルクリアを拘束した。
「くっ・・・離れなさい・・・なにをするつも・・・」
ルクリアが何とか引きはがそうとした瞬間、ビーコンからまばゆい光が瞬いた。
バシュッ!!
ビーコンは腹の接地面からルクリアの体へ強力な電気ショックを放った。
「かはっ!・・・」
声を上げる間もなく失神状態へと追い込まれてしまうルクリア。
ピー…ピコ…ピ…ピコピ…
過度なエネルギーが体を駆け巡ったためか、カラータイマーも不規則な点滅を残したまま消えてしまう。
目も閉じてしまい、ルクリアは完全に沈黙してしまった。
この状況を見ていた青年とゴーデスは、予定外の展開に焦りの色を見せていた。
「・・・まさか様子見の一撃で殺しかけてしまうとは・・・わしもだがルクリアもだいぶ弱体化しているようじゃの。」
困惑するゴーデスに青年も苦笑いで答えるしかなかった。
「いや、このままではまずいな。お互いの目的のためにも、彼女にここで死なれては困るだろう。」
「ビーコン!出力を下げて、胸の中心にもう一度電気ショックだ!」
青年の指示通り、カラータイマーの下部付近に電気ショックを放つビーコン。
すると、少しルクリアの顔が紅潮する。
「まさか敵相手にCPRをするわけにもいかないが・・・」
状況を見守る青年とゴーデスの前で、ルクリアは急にせき込んだ。
「・・・ヒュッ・・・けほっけほっ・・・」
ピコンピコンピコン…
ルクリアの意識が戻ったことを示すように点滅しだすカラータイマー。
ルクリアはとぎれとぎれの意識の中で、今が戦いの最中であることを思い出した。
アンナの意識は電気ショックを受けた際に消失しており、まずい状況には変わりなかった。
「くはっ・・・ヒュー・・・ヒュー・・・意識が・・・体が動かない・・・」
一方指示が途切れたビーコンも、何をするわけでもなく宙に浮いている状態であった。
ルクリアがふと手元に目をやると、先ほど弾かれた浄化の刃がまだ健在であった。
「イチかバチか・・・お願い・・・一瞬でいいから動いて!」
自らを奮い立たせ、腕に力を籠めるルクリア。
何とか腕を動かせることを確認し、一瞬のチャンスにかけて狙いを定める。
「ここ!」
最短の動作でビーコンの三つの目の中心に刃を突き立てるルクリア。
刺さった部分から少しずつ浄化のエネルギーがビーコンへ注ぎ込まれていく。
ピコピコピコ・・・
タイマーの点滅が早まり危機を伝えていたものの、構わず浄化を続けるルクリア。
ビーコンはそのまま浄化され、フィールドと共に消失していく。
「な・・・なんとか勝てたのかしら・・・」
空中で態勢を整えたルクリアも、半分状況に疑問を持ちながら地上へと降りて行った。
「もう少しいたぶってやってもよかったんじゃないか?」
ゴーデスは青年に尋ねたが、青年の答えはあっさりしたものだった。
「いや、今回はこんなものでいいさ。次回は少し搦手で行こうと思うしね。」
それを聞いてゴーデスも納得する。
「いよいよ仕込みが役に立つというところじゃな。せいぜいルクリアにも屈辱を与えてやってもらおうか。」
「まぁ、楽しみにしておいてくれよ・・・」
そう笑った青年は、久しく使うことのなかった携帯電話に手を伸ばすのであった。
第三話 「怪獣チャンネル」 終
次回 理事長室に呼び出されるアンナ。
仕組まれた面談の最中、彼女に悪魔の手が迫る。
アルティマレディ・ルクリア 第4話 「密室の罠」
さぁ来週もみんなで見よう!
※次回はオリジナルエピソードです。お楽しみに!
更新は8月上旬を予定しております。
ガチピン@ご支援感謝
2020-07-22 04:10:48 +0000 UTCタペ
2020-07-22 03:15:12 +0000 UTCガチピン@ご支援感謝
2020-07-05 15:37:15 +0000 UTCNASU1917
2020-07-05 15:32:35 +0000 UTCガチピン@ご支援感謝
2020-07-05 15:27:10 +0000 UTCNASU1917
2020-07-05 15:20:09 +0000 UTCガチピン@ご支援感謝
2020-07-05 15:16:46 +0000 UTCNASU1917
2020-07-05 14:56:21 +0000 UTC