挿絵 夏乃様
灯と愛菜が出会ってから数週間…
二人は協力しながらイヴィルシードの回収に当たっていた。
先日のエンヴィが暴走した原因について、愛菜は灯がブライトハートの活動を始めたころから急激にイヴィルシードの回収速度が上がったことで、エンヴィのマイナートの消化が間に合わなくなったことが原因ではないか…と考えていた。
それを灯たちに話したうえで、灯と愛菜で極力浄化をしてからエンヴィに処理させることと決めて対応に当たる。
「マイナートが薄くなるとおいしくないデビねぇ…」
エンヴィはぼやいていたものの、多少は効果があったのか、その後エンヴィの体調に不調は見られなかった。
シエロも目立った動きを見せず、平和な日常が過ぎていく…
そう思った矢先、灯を呼び出す館内放送が学園内に響くのであった…
「久瀬灯さん…久瀬灯さん…指導室へお願いします。」
図書委員の仕事をこなしていた灯の耳に、呼び出しの放送が飛び込んでくる。
「あれ…なんだろう?」
指導室ということは、呼び出した主は愛菜の可能性が高そうであるが、それなら個人的な連絡手段をとりそうなものである。
疑問に感じながらも、灯は一緒に図書委員の仕事をしていた先輩に一言入れて、指導室へと向かっていった…
「失礼いたします…」
ノックして指導室の扉を開ける灯。
そこにはやはり愛菜と、そしてもう一人の女性が立っていた。
明らかに学外の人間…そんな雰囲気を醸し出していた女性は、懐からバッジを取り出した。
「久瀬灯さんですね…」
警察のバッジに背筋が伸びる灯…
彼女の緊張を感じ取ったのか、女性は柔和な表情になり、自ら所轄署の『国枝』と名乗った。
「いきなり呼び出したりしてごめんなさい…実は…」
国枝の話を要約すると、先日灯に淫行を働こうとした罪で逮捕された前任の生徒指導担当の『語呂月』が多額の保釈金を積み、結果的に不起訴になって釈放されたということ。
そして、学園への私物の回収を希望し、弁護士同伴でこの後ここへやってくるということだった。
当然被害者である灯には接近させるわけにはいかず、このあと国枝とともに下校してほしい…というのが呼び出しの理由であった。
色々思うところはあれど、一つ不安を感じて愛菜を見る灯。
愛菜もそれを察してか、うなずいて灯へと応えた。
結局あの時、語呂月のバックに誰が付いているのか灯にはわからずじまいであったが、今となってはシエロが手引きしていたと考えるのが自然である。
そう考えると、今回の語呂月の動きにも何か理由があるのではないか…というのが灯の不安であった。
「(ここは私に任せて、一旦あなたは警察の言うとおりに…)」
愛菜からの視線から指示を感じ取った灯は、うなずいて国枝の言葉に従うのだった…
灯が下校してから数時間後、指導室には愛菜と語呂月、そして同伴の弁護士が揃っていた。
現・生徒指導担当者の愛菜は余計な物を持ち出さないように監視する為、立会いを依頼されていたのである。
すでに残されていた語呂月の私物に関しては愛菜がまとめておいたため、チェックして持ち出すだけになっていたが、語呂月はガサゴソと棚を漁っていた。
「あの…その辺にはもう私の私物が入っていますので…あまり触ってほしくないのですが…」
何か別の目的でもあるのではないか…そんな疑いが愛菜の頭をよぎった時、背後にいた弁護士が急に床に倒れてしまう。
「…!どうされましたか?!」
とっさのことに愛菜は弁護士に駆け寄り、結果として語呂月から目を離してしまう。
弁護士を介抱しようとして膝をついた愛菜の後ろにゆっくりと迫る語呂月。
その顔には、にたりと気色悪い笑顔が浮かぶのであった…
そのころ灯は、一足先に帰宅して自室で本を片手に机に座っていた。
やはり語呂月の話を聞いてしまってからは気分が落ち着かず、いつもなら夢中になる読書にも身が入らない灯。
エンヴィは我関せずとばかりにベッドでむにゃむにゃと寝息を立てていた。
「さすがにもう帰ったころだよね…何もないまま終わっていればいいんだけど…」
一応事が済んだのちに愛菜から連絡があるはず…
そう考えていた灯のスマートフォンがなったのはその時であった。
「…!氷神先生からだ!」
無事に事が終わった連絡だろう…そう思って電話を取った灯の期待は、電話口から聞こえてきた野太い声にあっさりと砕かれてしまう。
「久瀬ぇ…会いに来てくれないなんてつれないじゃあないか…」
ねっとりとした声で聞こえてきた語呂月の言葉に、灯の背筋に緊張が走る。
「語呂月先生…どうしてその電話から…」
灯の口をついた疑問に、語呂月は嬉しそうに答える。
「お前のおかげで『先生』ではなくなっちまったけどな…まぁそれはいい。いやなに、説明するより見てもらったほうが早いだろうな。」
そういうと一方的にビデオ通話へと切り替える語呂月…
するとそこには、床に座り語呂月を恨めしそうに見上げるオーロラシャインの姿があった。
カメラのアングルにはバキバキに勃起した語呂月のあそこも映っており、トラウマを思い出した灯はとっさに目をそらしてしまう。
「あの時を思い出すなあ…久瀬ぇ…まぁこっちの言いたいことはわかんだろう?あの『部屋』で待ってるぜぇ…その間、俺の後任とかいうこの女で楽しませてもらうからよう…へへへ…」
「久瀬さん!来てはだめっ!…うあああああっ!?」
下卑た笑い声をあげる語呂月にシャインが食って掛かると、面倒くさそうに語呂月は指を鳴らす。
するとシャインの首筋に黒い光が走り、彼女は苦しそうにのたうち回った。
「…!?あれはいったい…」
疑問に思った灯に答えを示すことはなく、語露月は通話を切るのだった…
灯と語呂月の通話の少し前…
指導室で急に倒れた弁護士に駆け寄った愛菜に、背後から語呂月が襲い掛かる。
「…っ!甘い!」
気配を背後に感じていた愛菜は、回し蹴りで語呂月を壁際まで弾き飛ばした。
「おうおう…俺の後任ともあろう女が、随分と足癖が悪いじゃねえか…」
ふつうの人間ならショックで失神しているはず…
しかし語呂月は何事もなかったかのように立ち上がった。
「やはりその様子…何か強化を施されていますね…」
元々天使の力を強く継いでいるわけではない愛菜では、隠匿されたマイナートの力までは感じることができない。
んべ…とベロを出した語呂月の舌先に埋まったイヴィルシードを見て、最悪のシナリオに愛菜は舌打ちした。
「やはり何者かの手引きを受けて…何を企んでいるかは知りませんが、好きにはさせません!シャイニーライトアップ!オーロラシャイン!」
語呂月をきっと見据えて眩い光に包まれる愛菜。
次の瞬間には青く清廉としたコスチュームに身を包んだ、銀髪の救聖天使が顕現する。
「闇夜に揺蕩う眩耀なる光!救聖天使オーロラシャイン、顕現です!」
目の前に現れた天使の姿に、語呂月は興奮したようにニヤついてた。
「へぇえ…久瀬は妙に色っぽくなってたが、姉ちゃんは元の素材の良さを生かしてるじゃねえか…楽しませてくれよ!」
迫り来る語呂月のセクハラ発言に、呆れたように首を振るシャイン。
突進を躱そうとステップを踏んだその時、身体に隠れていた語呂月の手が見覚えのある印を結んでいることにシャインは気づいた。
「…!…まさか!?」
次の瞬間、身体の自由を奪われたシャインは床へと倒れ伏していたのだった…
時は進み…
スマホを奪われ、灯への連絡をゆるしてしまったことに、シャインは歯噛みする思いであった。
通話を終えた語呂月はニヤリと笑う。
「心優しい久瀬のことだ、お前を救いにのこのこやってくるぜ。」
スマホを床へと放り出し、シャインの身体をいやらしい手つきで撫で回す語呂月。
「それまで楽しもうぜぇ…オーロラシャインさんよぉ…」
抵抗できずか細く声をあげてしまうシャイン。
「あんっ…やっ…(久瀬さん、きてはダメっ…なんでこんなやつが『家』の術式を…?)」
この学園に派遣される前に当主からかけられた『天使を拘束する印』…
それをなぜ、この男が使えるのか?
駆け巡る思考を阻害するように、語呂月の愛撫がシャインを苦しめていた…
「せっかくいい気持ちで寝てたのに酷いデビ〜!」
学園の上空にはエンジェルフォームとなった灯と、安眠から叩き起こされてご不満のエンヴィが到着しようとしていた。
「まだそんなに遅い時間じゃないでしょ!いつも夜更かしして動画とか見てるから不摂生になるのよ!」
シャインの危機に緊張感のないエンヴィに、灯の叱咤が飛ぶ。
「…見えた!変身して突入します!」
先程スマホごしに見せられたシャインの危機に焦っているのか、灯は余裕なく突貫しようとしていた。
「罠じゃないといいデビねぇ…」
のんびりとしたエンヴィを半ば無視して、灯は救聖天使へとその姿を変える。
「闇夜を照らす一条の灯!救聖天使ブライトハート、光臨です!」
そのまま指導室へと飛び込んでいくハート。
「あややや…変身を巻いたり、開幕必殺技のブッパはピンチのフラグデビよ〜!」
ハートの後を追って、エンヴィもふよふよと飛んでいくのだった…
「シャイン!無事ですか?」
指導室に飛び込んだハートの目に入ったのは、語呂月に奉仕させられるシャインの姿であった。
「おお!その格好…お前が久瀬だよな…へへっ、あの時お預けだったのが心残りだったんだ…楽しませてくれよぉ〜…ふん!」
ハートを見るなり、剥き出しの語呂月のソレが大きくしなる。
「きゃあっ…し、しまってください!」
ハートは年相応に顔を赤面させて目を逸らしてしまうが、それこそが語呂月の目的であった。
「戦闘中に相手から目を逸らすとは…隙あり!」
語呂月がサッと印を組むと、ハートの身体から力が抜けていく。
シャインを蝕む術がハートにも襲い掛かり、その力を奪っていた。
「えっ…なんで…いやっ…」
背後に回られて語呂月に身体を弄られてしまうハート。
抵抗しようにも力が入らず、されるがままとなってしまうのであった…
「あやややや…二人とも大ピンチデビ〜!」
影から状況を見ていたエンヴィは、ハートたちのピンチにオロオロと飛び回る。
「何か手はないデビか…」
状況を打開しようとしたエンヴィのとった策は…
▶︎「おじさんの注意がハートに向いてるうちに、シャインを助けるデビ〜!」
「あ、スマホ!この間とおんなじ目にあわせてやるデビよ!」
「今のうちにシャインを助けるデビよ!」
エンヴィは床に苦しそうに倒れているシャインに近づくと、様子を窺う。
「うーむ、アタイの勘ではこのビリビリが悪いことしてるデビね…食べちゃうデビ!」
シャインを苦しめている語呂月の術を確認したエンヴィはそのままバクっと、拘束している部分に噛みついた。
「ダメよ…そんなことをしても術は…え…?」
かけた本人以外に解除する術はないはず…
そう考えていたシャインの予想を裏切り、エンヴィはイヴィルシードをムシャムシャと食べるように、術から発生する光を食べてしまった。
「イヴィルシードよりは美味しくないデビねぇ…この後のメインディッシュの前菜と思えばヨシ!デビ〜!」
驚愕の光景に目を疑うシャイン。
「(どういうこと?…この術は明らかに『家』で使われていたものと同じはず…なぜこの子が解除できるの…というかこれ、解除と呼んでいいのかしら…)」
困惑するシャインをよそに、術式の拘束を全て食べ切ったエンヴィは、ワタワタと飛び回る。
「元気になったらハートを助けてあげてほしいデビ〜!あっちはアタイじゃどうにもできないデビよ〜!」
エンヴィに急かされて状況に引き戻されたシャインは、ハートを弄る語呂月に視線を戻す。
「そうね…助かったわ、エンヴィ。ありがとう!」
まずは目の前の脅威を排除しなければ…
シャインはエンヴィにウィンクすると、落としていた槍を構えて語呂月へと向き直る。
「覚悟!シャイニングチャージ・ストライク!」
槍の先端にプラウスを集中させ、対象へ突撃する大技を放つシャイン。
「ああん?」
ハートに夢中になっていた語呂月は、抵抗する間もなく吹っ飛ばされていた。
「わーい!イヴィルシードデビ〜!」
壁に叩きつけられ、気を失った語呂月の舌から抜け落ちたイヴィルシードを、嬉しそうに食べるエンヴィ。
「シャイン、ありがとう!」
ハートはゆっくりと立ち上がり、シャインへと歩み寄る。
「ええ、この子に助けられたわ。ここは私がなんとかするから、あなたは寮に帰りなさい。」
流石に今回も灯が巻き込まれてしまったことがバレると大事になってしまう。
シャインの提案に、ハートは頷いてエンヴィとともにその場を後にするのだった…
その後、愛菜から連絡があり、語呂月が再度逮捕されたことが報告された。
弁護士に睡眠薬を盛って気絶させた後、愛菜を襲ったところを返り討ちにされたということになった…との話を聞き、灯はこれでもう会うことはないだろうとほっと胸を撫で下ろす。
これにて一件落着…
そう思った灯は、メールの着信通知が光っているのに気がついた。
「あれ?氷神先生かな…うええっ!?」
スマホの画面を見た灯は、血の気の引いた顔で硬直してしまう。
「お父さんが…帰って来る…」
ショックを受けてスマホを落としてしまう灯。
その横ではイヴィルシードを平らげて気の抜けたエンヴィが、我関せずとすやすや寝息を立てるのであった…
次回予告
私が事件に巻き込まれていたことを知ったお父さんが、海外から緊急帰国!
救聖天使のことは話せないし…もし海外に連れて行くなんて言われたらどうしよう!?
次回!救聖天使ブライトハート15話「父帰る!救聖天使の秘密を守れ!」に光臨です!
ガチピン@ご支援感謝
2024-06-24 00:15:57 +0000 UTCsyonnai_hito
2024-06-23 01:47:12 +0000 UTC