挿絵 炭酸水様 バンクイラスト さーばーふぇいず様
※今回の①は選択肢無しで進みます。
語呂月先生の一件が終わり、一息ついていた灯のもとに一通のメールが届く。
それは海外で国際警察の捜査官をしている父・久瀬総一郎からのメールであり、久しぶりの連絡に灯の顔も最初は綻んでいた。
しかし、その内容を読んだ灯の表情から、一気に血の気が引いていくのだった…
翌日、灯は寮の管理人室に愛菜を訪ねていった。
語呂月の件を引きずっているのかと心配した愛菜であったが、灯はおずおずとメールの件を切り出す。
それは語呂月の事件のことを警察づてで聞いた総一郎が、いちど灯の様子を見に帰国するというものであった。
「でもお父様が心配されるのも当然だわ…元気な姿を見せてあげればいいと思うのだけれど。」
父の話をするときの灯からは嬉しそうな様子も見て取られ、愛菜には何を心配しているのか測りかねていた。
「久しぶりに会えるのはうれしいんですけど…その…昔から父にはウソをつけなくて…というか、いつも隠し事も全部看破されてしまうんです…」
確かに灯はいかにもな優等生のため、そもそも嘘をついたりした経験が少なそうではある…とはいえ隠し事まで見透かされてしまうとは、灯の父とはなかなかの人物なのだなと愛菜は感心する。
「もし、なんで事件に巻き込まれたのかとかを聞かれたら、エンヴィのことや救聖天使のことを隠し通せるかわからなくって…」
確かに語呂月の件の発端は、学園に勝手についてきたエンヴィが語呂月に発見されたことだったと愛菜も聞いていた。
その辺の話を聞かれたらごまかしがきかなくなってしまう…という灯の心配ももっともである。
「なるほど…友達の化粧品を預かっていて没収されてしまったとか、ごまかしようはあるんだろうけど…お父様を前にしたらそんなウソは簡単に見破られてしまうというわけね。」
愛菜は少し考えた後、灯に一つの提案をする。
「そういうことなら…」
愛菜の提案は簡単にいうとこういうことだった。
今回の話はセンシティブな内容のため、先に愛菜が総一郎と面談して事件に関しての説明をする。
灯の心のケアを重視する観点から、語呂月の一件に関しては灯にはあまり聞かないように言い含める。
灯の話によれば、総一郎は基本的に人格者であるとのことだったので、こういう流れにすれば娘を問い詰めるようなことはしないだろう…
愛菜の提案を聞いた灯は、少し心の重荷を降ろすことができたように感じていた。
「先生…ご迷惑をおかけします…」
頭を下げる灯に、愛菜は寄り添いながら首を横に振る。
「ごめんなさい…本当はまだ子供のあなたをオウマとの戦いに巻き込んでいることこそ、こちらが謝らなければいけないのに…私でよければなんでも協力するわ。」
いままでエンヴィと二人で四苦八苦していた灯からしても、姉のように見守ってくれる愛菜の存在はかけがえのないものになりつつあった。
「ありがとうございます!」
シュンとしていた灯に笑顔が戻り、愛菜の顔も自然と綻ぶのだった…
数日後…
愛菜と方針を固めた灯が父にメールでそのことを伝えると、総一郎からは問題ないとの返事があった。
「お前とすぐに会えないのは寂しいが、事情は理解した。」
父からのメールを受けた灯は本当のことを話せないもどかしさを感じたが、救聖天使の秘密を守るためグッとこらえてやり取りを終えた。
そこから後は愛菜と総一郎で連絡を取り合ってもらったため、父の帰国当日も灯は普通に学園へとむかう。
「ええっ?今日はアタイも学園にいっていいデビか!…ヤッターデビ~!」
愛菜から不測の事態を避けるためエンヴィを寮から連れ出してほしいと頼まれた灯は、事情を話してエンヴィにと一緒に出発するのだった…
寮の学生がみんな登校した後、愛菜は応接室の片づけをして総一郎を迎える準備を進める。
ほどなく約束の時間となり、インターホンが鳴りひびく。
灯のためにもきちんと粗がない説明をしなくては…そう思って受話器を取った愛菜の耳に聞こえてきたのは、予想外の女性の声だった。
声の主は語呂月事件の対応で学園を訪れていた女性刑事の国枝であった。
「今回の久瀬さんの訪問のことをお聞きしまして…さすがに警察関係者とはいえ、女性の園に男性一人で行かせるのはどうかと…」
国枝の説明によると他の女生徒の目を考えてとのことだったが、事件のあらましを総一郎に伝える手間が省けて愛菜は少し安堵した。
「お気遣いありがとうございます。生徒はみな授業中ですのでご安心ください…さ、こちらへどうぞ。」
愛菜が応接室を案内すると、国枝の後ろから精悍な顔つきの男が頭を下げながら現れた。
「氷神先生でしたな。はじめまして、いつも娘がお世話になっております…」
その男こそ灯の父・久瀬総一郎その人であった。
きちっとスーツを着こなしているものの、その下には鍛え上げた肉体があることが一目瞭然というくらい胸板や腕が隆起している。
これぞ文系少女…といういで立ちの灯の父とは思えない風貌に、愛菜は少し驚いていた。
愛菜を目を合わせた総一郎も何か思うところがあったのか、一瞬の間をおいてからその口角を上げた。
「いえ…この度は大切なお嬢様をお預かりしながらこんなことになってしまい…」
値踏みされたようで少し緊張した愛菜であったが、まずは学園の代表として総一郎と向き合うのだった…
「今頃お父さんが寮についたころかなぁ…」
灯は放課後の図書委員の仕事を一区切りさせ、カウンターでため息をつく。
面談が終わったところで愛菜から連絡が入ることになっており、灯はそれまで学園で待つ手筈となっていた。
テスト期間でも受験の追い込みでもないこの時期は図書室も閑散としており、あとの仕事は時間になったら閉めて帰るだけであった。
「灯ちゃーん…このおへや、漫画が少なくてつまんないデビ~!帰りたいデビよ~!」
念のためにと学園に連れ出したエンヴィは、飽き飽きしてほほを膨らませている。
いつもならスマホの漫画アプリや動画サイトでも見せておけばいいのだが、今日は愛菜の連絡を待たなければならないためそれができなかった。
「ごめんね…おへやに帰ったらいつも通りにしていいから…」
そろそろ戸締りして帰らないと…
灯が時計を見たその時、背中に独特の悪寒が走る。
「灯ちゃん!オウマの反応デビ!」
つまらなくてぐでーっとしていたエンヴィが飛び上がり、灯のところまでやってくる。
「うん…そんなに遠くない…片づけるから待ってて!」
ちょうど閉館時間になるところだったのも幸いし、灯はそそくさと片づけを済ませてオウマのもとへと走るのだった…
「灯ちゃん、あそこデビ~!」
道端の空間が陽炎のようにゆがみ、その中で人々が数人倒れている。
その中では電柱に手足が生えたような化け物が、電線を触手のように伸ばして暴れていた。
「デンチューオウマデビ!なんであんなものにイヴィルシードがくっついたデビ?」
本来は生命体が持つ負のエネルギー『マイナート』に反応するはずのイヴィルシードが、無機物のはずの電柱になぜ…
エンヴィの疑問も最もであったが、灯は最近あの電柱に暴走族が突っ込んで死亡するという事故が起きていたことを思い出す。
亡くなった人間の強い怨念や、人が死んだことによる人々のネガティブなイメージが電柱自体にイヴィルシードを呼び寄せたのかもしれない…
気になることは多かったが、人々を守るためにはまずは理由を解明するのは二の次にしなければ…
灯は駆けだしながら胸から下げたコアジュエルを握りしめる。
「ホーリーライトアップ!ブライトハート!」
マイナートに対抗するための正のエネルギー『プラウス』を身にまとい、救聖天使へと姿を変える灯。
「闇夜を照らす一条の灯!救聖天使ブライトハート、光臨です!」
デンチューオウマの前に飛び出たハートは、電線を鞭のように振り回す腕を搔い潜ってボディに近づいていく。
「エンジェリングスラッシュ!」
腕輪の周りに発生させた光輪で一撃を入れようとしたハートであったが、コンクリートのボディを持つデンチューオウマはそれを簡単にはじいてしまう。
バチバチッ!
躱したはずの電線が体勢を崩したハートの背後に回り、電気をまとったマイナートの波がハートを襲う。
「きゃああああっ!」
気を付けの姿勢で電撃に拘束されてしまうハート。
「あわわわ…どうしたらいいデビ~!」
その周りをあわあわとエンヴィが飛び回るのだった…
「…!?」
面談も大体終わってきたころ…
外で発生したオウマの反応を感じた愛菜は、一瞬身体をこわばらせる。
その様子を見た総一郎は、何かを察したように国枝に話しかけた。
「国枝君、大体のあらましは承知した。氷神先生とちょっとお話することがあるから、君はもう業務に戻っていいよ。」
国枝は一瞬大丈夫かなという表情をうかべたが、愛菜がうなずくと総一郎の指示通り帰っていった。
国枝が敷地から出たのを確認した総一郎が、上着を掴んで立ち上がる。
「さて…僕らも行きましょうか、氷神先生!」
オウマの対応のためにどうやって抜け出そうか…
そう考えていた愛菜に、お見通しとばかりに総一郎が軽くウインクする。
「え…どこへですか?」
あっけにとられた愛菜は一瞬思考停止してしまい、普通にリアクションしてしまった。
「もちろん、わが愛娘・灯に会いに!この感じ…悪魔絡みの事件でしょう?」
にこやかに悪魔の名前を出す総一郎に驚愕する愛菜。
「(そんな…この国でも天使や悪魔のことを知るのは私の『家』だけのはず…この人は一体何を知っているというの?)」
驚きを口に出さずには済んだものの、表情にはしっかり出てしまったようで、愛菜はしまったと内心で後悔した。
「まぁまぁ…そんなに身構えなくても後でちゃんと説明しますよ。灯にもいろいろ聞かなければならないこともありますしね…」
一人状況に全く動じていない様子の総一郎…
その超然とした姿に、愛菜はただただ驚くのだった…
②へ続く…
ガチピン@ご支援感謝
2024-08-28 06:12:39 +0000 UTCsyonnai_hito
2024-08-24 06:22:31 +0000 UTC