挿絵 ささくら様
帰国した父との再会を前に、オウマに襲われるハプニングに見舞われる灯。
シャインや父と合流し、なんとかそれを退けて寮へと帰り着く三人。
そこで父・総一郎から語られたのは、灯の母・久瀬あゆむとの馴れ初めであった…
その昔、高校生だった総一郎は、ジョギングの最中に山中で謎の光を見かける。
山火事かと確認に向かった彼はそこで不思議な姿をして倒れた一人の少女と出会っていた。
それこそが後の灯の母・あゆむである…というところまで語ったところで、総一郎は一息おく。
「あゆむとの大恋愛の話はカットしていいかな?」
おどけた様子の総一郎に、灯は顔を真っ赤にして反論する。
「もう!お父さんのバカ!自分の両親の恋愛事情なんて、子供が一番気まずくなるのわかってて言ってるでしょう!氷神先生だっているのに!」
冗談のつもりが、年相応に反応する灯に苦笑する総一郎。
愛菜もそんな灯を微笑ましく思い、つい笑顔になってしまう。
自分の狼狽ぶりを笑われたのかと、灯はさらに顔を紅潮させて俯いてしまった。
「とはいえ、灯ももう社会のことをわかってくる年だろうし、一応ちゃんと流れは説明しておくぞ…」
総一郎の話では、彼に保護された少女は全ての記憶を失っており、最終的に久瀬の家で面倒を見ることになった。
あゆむという名は、最初に総一郎が介抱した際に名乗った名前の発音が近いものから選んでつけられたものだったそうである。
「最初に倒れてたのを発見した時はまだ記憶が少しあったっぽいんだが、そこで気を失って目覚めた時には綺麗さっぱり何も覚えてなかったんだよなぁ…」
外見の歳が近そうだったこともあり、総一郎が可能な限りあゆむの世話をすることになったそうで、周りに冷かされながらも真摯に世話を焼く彼に、あゆむも徐々に心を開いていったそうである。
「まぁ…そんな状況なら情も移るってもんだし…あゆむはあの通り美人だしな…健全な総一郎少年が恋に落ちるのも致し方ないと灯も思うだろう?」
言い訳がましく言いながらもニヤニヤしながら惚気る総一郎に、もはや怒りを通り越して呆れ始める灯。
実際、灯の中のあゆむも母として以上にある意味神格化されてしまっているので、反論のしようもなかったのである。
それを肯定の意思と受け取ってさらに総一郎が惚気そうなのを感じた愛菜は、灯を忍びなく思い助け舟を出す。
「それで…奥様に関して何か思うところがあるのでは…」
愛菜の質問に総一郎は本題を思い出したかのように真面目な表情へと戻る。
「そうだな…この話は灯にすべきかどうか迷ってたんだが…もうすでに色々起きてしまってるようだし、きちんと話しておこう。灯…おそらく母さん…あゆむはまだどこかで生きている。少なくとも俺はそう信じているんだ…」
もしかしたら…
いままで灯がうすうす感じていた可能性を総一郎が口にしたことで、場の空気が一気に緊張を帯びる。
「お母さんが死んだ原因は病死だって聞いていたけど…そうじゃないの?」
灯の認識では、母は灯を産んでしばらくした後、病気で他界したという話だった筈である。
「あれはお前にあゆむの不在を納得させるために、俺が周りと口裏を合わせたものだ。とはいえ、あゆむはもう死亡届を受理されているから法的には嘘ではないぞ。」
総一郎の話では、あゆむが手紙と指輪…灯が今所持しているコアジュエルを置いて姿を消したのが、灯が生まれてしばらくしてからのこと…
そして捜索願が出されてから数年が経過し、死亡認定を受けて今に至るとのことだった。
「手紙も走り書きで要領を得なくてな…『自分にはやらなければいけないことがある。灯のことを頼む…』あとは俺への謝罪だけだった。お前には下手に希望を持たせるわけにはいかないと、俺の判断でこのことは伏せさせたんだ。それが結果的にお前を今、危険な状況に置いてしまったのかもしれん。すまん、灯…」
頭を下げた総一郎の表情に影が落ち、灯は心配そうに父を気遣う。
「謝らないで、お父さん…私は全然気にしてないよ。それよりもお母さんのこと、なんで生きてるって思うの?」
娘の優しい言葉に救われたのか、総一郎はふっと笑顔を浮かべてまた話し出した。
「あゆむはおそらく氷神先生の家系と同じく、別世界から来た天使というやつなんだろう…一緒に過ごすことで、俺は少しばかり今日みたいな超常的なことを感じることができるようになったみたいでな…警察に入ってからもそれが事件解決に役立つことがあった…」
その話を聞いた愛菜がゆっくりと頷く。
「私たちの『家』だけではこちら側に来てしまった悪魔や天使のことを全て把握できているわけではないの。おそらくそこから漏れたものが起こした事件も多かったはずよ。」
悪魔などのせいであわや迷宮入りになりかけた失踪事件などを、その痕跡を感じることで解決することができた総一郎は、警察内での出世も早かったそうだ。
あゆむが失踪したあと、総一郎はその功績で得た地位をうまく利用することで、海外の警察組織への出向を繰り返していたのである。
「国内でできることはあらかたやったんだが、あゆむの足取りは掴めなくてな…海外でも悪魔絡みの犯罪があるのを聞いて、そこで手掛かりがないかと走り回ってたってのが、俺のこれまでってやつだ。結果として灯には寂しい思いや大変な目に合わせちまったみたいだし、父親失格だな…」
落ち込む総一郎に灯は優しく声をかける。
「お父さんがお母さんのために一生懸命頑張ってくれてたの、私とっても嬉しいの…ありがとう…」
自分を慰めるその表情に妻の面影を感じ、総一郎は複雑な気持ちをおぼえるのだった…
話は遅くまで続き、寮の門限が近づいたことでその場はお開きとなった。
せっかくの再会ということもあり、特例で総一郎との外泊を愛菜は灯に提案したが、総一郎は本業の多忙を理由に灯に謝りながら帰っていく。
母の失踪や父の真意を聞いた灯も、心の整理をするために一人になる時間が欲しいと感じていたため、その日は自室でゆっくりと過ごすのだった。
一方、総一郎の話を聞いた愛菜は思うところがあり、『家』のデータベースにアクセスしていく。
そして愛菜はひとつの可能性に思い至り、資料をまとめるのだった…
「愛菜先生のご実家へ…ですか?」
翌日愛菜から実家への招待を受けた灯は少し驚く。
彼女の『家』が人間界に迷い込んだ天使を保護する役目を務めていたことは聞いていたが、母の話と関係があるのか…という疑問が灯の表情に出ていたのか、愛菜は簡単に説明を続けた。
愛菜は自分の使用しているオーロラシャインのコアジュエルが見つかった時期が、あゆむが行方不明となったタイミングと近いことになにかの関連性を感じていたのである。
「お母さまが天使だということは、私の家のデータベースにアクセスすれば何か情報が得られるかもしれない。ただ…わたしにはその部屋にアクセスする権限がないの…でも、救聖天使に変身すれば、監視をすり抜けることができるかもしれないわ…」
確かに救聖天使になれば、壁などのすり抜けも可能である。
少しでも母に関する事実を突き止められれば、それは父のためにもなるかもしれない…
そう考えた灯も、愛菜の提案に乗ることに迷いはなかった。
愛菜は灯を天使の子孫かもしれないと『家』に報告し、『家』も灯を調査をするという体で二人を邸宅へと招き入れる。
夜に家全体が寝静まった後、二人はそれぞれブライトハートとオーロラシャインに変身して地下のデータベースへと降りていく。
「ここすごいですね…プラウスが満ちていてセイヴァーフォームでも問題ないです…」
本来ならブライトハートのセイヴァーフォームは十分程度しか活動できないのだが、『家』の中はプラウスの濃度が高く、活動に支障がなかった。
「天使を保護するための施設を兼ねているから、私たちにはとても過ごしやすくなっているはずよ…エンヴィはプラウスにのぼせて臥せっていたみたいだけど…」
こっそりついてきたエンヴィがカバンの中でのびていたことを思い出し、ハートは少し心配になってしまう。
それを察したシャインはことを早く済ませるべく急いでデータルームへと向かう。
しかし、その行動は『家』の人間に筒抜けであった。
「…シャイン…」
後ろをついてきていたハートからの呼びかけにシャインが振り向いた瞬間、その唇がふさがれてしまう。
「んむっ…」
瞳にハートを浮かべたハートがシャインの身体を引き寄せ、拘束していく。
「ハート…だめっ…(濃度の高いプラウスにあてられているの?…このままじゃ…)」
何らかの罠にかかったのか、平静を失ってしまったハート…
果たしてシャインはこの窮地を切り抜けることはできるのだろうか…
②へと続く…
ガチピン@ご支援感謝
2025-03-06 17:00:18 +0000 UTCsyonnai_hito
2025-02-23 14:06:20 +0000 UTC