挿絵 ルリヲ様 ささくら様
あらすじ
亡くなったと聞かされていた母が生きているかもしれない…
父・総一郎からもたらされた情報は、灯にとって衝撃のものであった。
そして母への手がかりを探すべく、愛菜と共に天使を保護するという目的のために活動する、氷神の『家』と向かう灯。
天使が生活ため、正のエネルギー『プラウス』が充満する『家』の中で救聖天使の姿で地下のデータベースへと向かう二人であったが、ハートの様子がおかしくなり…
「んむっ…ハートっ…だめぇ…」
虚な目でシャインにキスを迫り、その手で彼女の弱いところを刺激していくハート。
訳もわからずなんとか引き離そうとするシャインであったが、そのハートらしからぬテクニックの前に自らの身体がビクついてしまう。
その時、部屋に備え付けられているスピーカーから声が響いた。
「愛菜…我らを欺けると思うとは、随分と甘くみられたものだな。」
その声は、この『家』を出る際にシャインを手籠にした当主のものであった。
「この空間は天使を従属させるために思考力を奪う特殊なプラウスで満ちているのだ…どうやらそちらのお嬢さんはお前より天使としての素養があるのだろう。効果がしっかりと表れておるぞ…」
天使の研究に余念がない『家』ならではの罠に気付けなかったことで、愛菜は苦々しい思いに駆られる。
「まったく…お前が反目するとは予想外だったが…とはいえ、連れてきたその娘…色濃い天使の力を感じる…良い検体を連れてきたことだけは褒めてやるぞ。」
天使と人間のハーフで、尚且つ救聖天使に変身できるハートは、『家』にとってそれは魅力的なサンプルに映ることだろう。
しかし今の言葉は、窮地の中のシャインに幾つかの情報をもたらすことになっていた。
「(もし『家』が純粋な天使であるあゆむさんを捕らえたりしているなら、灯さんよりも有益な検体と考えるはず…今の言い方だとおそらくあゆむさんは彼らの感知する場所にはいないということね…)」
ならばここに用はない…
『家』はプラウスを維持する関係上、遠方である春野市へ手を出してくることがないのは愛菜も理解していた。
「(なんとかハートの目を覚ましてここを脱出しなくては…)」
しかし熱に当てられたように上気するハートの手は、さらに艶めかしくシャインへと迫るのだった…
「うーん…あれ?ここはどこデビか?」
一方そのころ、客室では施設内の濃度の高いプラウスに当てられていたエンヴィが目を覚ましていた。
灯たちが窮地に陥っていることなど知る由もないエンヴィは、眠たそうな眼をこすりながら辺りをうかがう。
「灯ちゃーん…どこデビ~?」
いつもならそばにいる灯の姿がないことに、エンヴィは一抹の不安を覚えていた…
▶「ふぇぇ…灯ちゃんどこデビ~!おいてかないでほしいデビよ~!」
「きっとお花摘みデビね…ふぁあ…寝て待つデビ~…」
「一人にしないでほしいデビ~!あっ!灯ちゃんのプラウスを感じるデビ~!」
部屋を飛び出したエンヴィは、灯の反応がする地下へ向かってふよふよと飛び立つのだった…
地下の一室ではふらふらと棒立ちのハートが虚空を見つめていた。
足元にはシャインが横たわっており、時折身体をビクつかせている。
「ふむ…愛菜め、何を企んでおったのかは知らんが、しばらくは動けんじゃろう。ブライトハートといったか…その力、少々試させてもらうぞ!」
主の声が響いた瞬間、天井の暗がりで怪しい光が蠢く。
シュルルル…
何本もの触手がハートの背後から襲い掛かり、その身体を搦めとっていく。
ギリリリリッ…
触手の締め付けがハートの身体を軋ませ、その痛みが彼女に平常心を取り戻させた。
「うううっ…これは一体…かはっ!…く…苦しい…」
腕や首を締め上げられたハートに苦悶の表情が浮かび、ギチギチと鈍い音が室内に響く。
「初めましてじゃな…儂はそこに転がっておる愛菜の主人だ。君がどれほどの天使の素養を秘めているのか、試させてくれ給えよ…」
部屋に響く声で、はじめて足元に倒れたシャインの現状に気付くハート。
まさか自らが手練手管でシャインを追い詰めたとは気付かず、姿の見えない声の主をキッとにらみつける。
「シャインになんてことを…私に何をするつもりなの?!」
主の返答はなかったが、その答えの代わりに触手の主…大きな一つ目の怪物がハートの身体を弄り始めた。
「うう…気持ち悪い…これは…オウマなの?」
怪物は自らの背後にいるため、ハートにはその姿をうかがい知ることはできない…
その正体は、天使の力を封じ込めたり解析することに特化した人口生命体であった。
怪物の収集したデータをみて、主の表情が綻ぶ。
「ふむ…体内を循環するプラウスの量はシャインの比ではないな…なかなか研究しがいがありそうだ…」
キィン…キィン…
ハートのコアジュエルが危機を伝えるように点滅を始める。
ハートを弱らせるために、意図的に室内のプラウスが減らされ始めていたのだった。
「くっ…このままじゃ…」
強力な締め付けにより、ハートの意識がもうろうとし始めたその時、怪物の張り付いている天井からヌッと侵入してくる影があった。
「あーっ!ハートいたデビ~!捜したデビよ~…ん?」
エンヴィがすり抜けで室内に現れ、ハートを視認して大喜びする。
すぐ横に何かの気配を感じて顔を向けたエンヴィと、怪物の目玉がこんにちはしたのはその瞬間であった。
「あわわわわわ!目玉のお化けデビ~!」
ゴチン!
焦ったエンヴィは飛び去る方向を間違え、怪物へと頭突きしてしまう。
「痛いデビ~…きゅ~…」
目を回したエンヴィと、こちらも目玉にダメージを受けた怪物が一緒に床へと落ちていく。
「エンヴィ!ありがとう…エンジェリングスラッシュ!」
拘束が解かれたハートは、すかさず手首に発生させた光輪を怪物に投擲する。
オウマではないため倒すことはできないが、物理的に光輪をはめて触手を抑えることに成功するハート。
室内の特殊なプラウスが抜けきったことで、シャインも意識を取り戻して立ち上がった。
「ハート、ごめんなさい…こんな危険なところに連れてきてしまって…しかもお母様の情報はおそらくここにはないわ…」
ハートはやさしく微笑みながら首を横に振る。
「ううん…シャイン、ありがとう…とりあえず脱出した方がいいかしら?」
ハートとシャインはのびているエンヴィを抱きかかえると、壁をすり抜けて『家』の施設を脱出する。
そのまま二人はエンジェルフォームへと姿を変え、春野市へと向かって飛び去るのだった…
「ふむ…『お母さま』ねぇ…」
部屋での一部始終を見ていた主はシャインの発した言葉に口角を上げる。
あらたな獲物の匂いを、その鋭い嗅覚で感じ取るのだった…
※次回からはクリエイター支援サイト五周年特別企画をお送りする予定です!ブライトハートも大活躍の予定ですのでお楽しみに!
ガチピン@ご支援感謝
2025-03-28 14:14:13 +0000 UTCsyonnai_hito
2025-03-23 13:29:30 +0000 UTC