挿絵 takumi様 さーばーふぇいず様
エンヴィが大興奮の朝を過ごしたその日の午後…
灯たちが暮らす春野市の郊外に広がる山の裾野に、エンジェルモードに変身した灯と愛菜…二人の救聖天使の姿があった。
「最近この辺でハイキング中に倒れる人たちが続出しているの…火山性のガスとかいろいろ原因の調査が入っているのだけど、未だその理由ははっきりしないそうよ。」
救助された人たちは皆、衰弱こそすれそのほかに中毒のような症状などは確認されなかったそうである。
そんなシャインの話を聞いて、ハートは神妙そうな表情で頷く。
「オウマの可能性が高いということなのかしら…」
シャインは頷きつつも、ハートの肩に優しく触れる。
「少し気になるのは、人が集まる都会以外で彼らが求めるマイナートはそんなに発生しないということ…ハートは知らないと思うけど、私のような天使の末裔がいるように、悪魔が人間界で細々と生きているケースもあり得るわ。オウマ以外の可能性も排除せずに調査にあたりましょう。」
とはいえ、範囲は広大に広がっている。
ハートとシャインは手分けしてハイキングコースを中心に捜索を開始することにし、二手に別れるのだった…
「ちぇー…つまんないデビねぇ…」
久しぶりの遠出に喜んでいたエンヴィだったが、地道な調査を続けるハートとシャインとは違ってすでに飽き出していた。
「オウマの気配なんて全然ないデビ…灯ちゃんたちは真面目デビねぇ…」
一緒に行動していたハートは肩をすくめ、エンヴィの頭を撫でる。
「まったくもう…少し休んでいていいわよ。何か見つけたら呼ぶからね。」
一休みのお許しが出たことで、エンヴィは飛び上がって喜んだ。
「わーい!ハート優しいデビ〜!ここでお昼寝してるデビよ!」
そう言ってエンヴィは、道端にあった謎の祠の上で横になった。
「あらら…そんなところで寝たらバチが当たるわよ…」
ハートは苦笑するも、オウマの手がかりを求めて飛び立っていく。
朝からテレビに大興奮で疲れていたエンヴィは、早速スピスピと寝息を立て始めるのだった…
一方そのころ、別ルートで捜索を続けていたシャインは、怪しい力場を感知して地上に落りていた。
「なんでしょう…オウマとは違う雰囲気を感じる…」
まわりの様子を伺いながら、シャインはセイヴァーフォームへと姿を変えた。
プラウスに反応されて逃げられるのを防ぐため、力をセーブしてゆっくりと歩を進めるシャイン。
しかしそれが彼女にとって裏目に出てしまうことになった。
ブウゥン…
シャインのまわりが暗く変化し、何かを感じ取った表情でシャインの動きが止まる。
シュルルルルル…
何かが地を這う音が聞こえたかと思うと、ヌメヌメとした触手がシャインの足にまとわりついていく。
しかし、シャインは固まったまま、身動き一つとらなかった。
ズチュ…ズチュ…
シャインの股間や上半身に到達した触手が、ゆっくりとプラウスを吸い上げる。
しかし次の瞬間、シャインの胸のコアジュエルが光を放ち、あたりを一瞬眩しく照らしだした。
「グギャアアアッ!」
強烈なプラウスにあてられた触手が引き下がり、動きを止めていたシャインは我に帰った。
「…!?…んあっ…んんっ!」
シャインのプラウスを吸うために股間に差し込まれていた触手が抜き取られたことにより、救聖天使の身体を快感が駆け巡り、シャインは身体をビクビクと痙攣させてそれに耐えた。
「ぐ…これは一体…」
触手の正体は遥か昔にこの地に居着いた悪魔の成れの果てで、森と一体化して細々と生きながらえていたものだった。
ところどころに足を踏み入れた瞬間に獲物の体感時間を極端に遅らせる罠を仕込み、かかった生物の生気を奪っていたのである。
コアジュエルの眩い光を威嚇するように正体を表した悪魔に、シャインは疼く体を堪えて素早く槍を構えた。
「土着の悪魔だったのね…消え去りなさい!シャイニングチャージ・ストライク!」
必殺の一撃で悪魔は消え去り、シャインはゆっくりと息を整える。
「はぁ…はぁ…イヴィルシードではなかった…これで一件落着ならいいのだけど…」
悪魔関係の事案だけに、念の為に『家』へと報告して後処理を依頼し、ハートと合流するために飛び立つシャイン。
森は静寂を取り戻し、事は一件落着かのように見えたが…
「エンヴィ〜!帰るよ〜!」
人気のない山中にハートの声がこだまする。
「ぐ〜…うぇっ!灯ちゃんの声デビ!置いてかないでデビ〜!」
祠の上でぐーすかと寝ていたエンヴィは、自分を呼ぶ声に焦って空へと飛んでいく。
がしゃっ…
その足が飛び立つ瞬間に何かを蹴り倒したことに、エンヴィは気づく事はなかった。
エンヴィが飛び去った後には崩れてしまった祠が残り、そこから漏れ出す黒い瘴気がゆっくりと山裾へと広がっていくのだった…
「ぐー…」
散々祠の上でお昼寝していたにもかかわらず、エンヴィは灯の部屋に帰るとまたすぐに眠り始めていた。
灯はエンヴィが静かなのはこれ幸いと、趣味の読書に興じて夜が過ぎていく…
一見には何事もない平和な夜に見えたが、すぐそこには新たな大事件が迫りつつあった…
「起きよ…エンヴィ…」
夢の中でエンヴィは謎の声に起こされる。
「あやや…あんた誰デビ?」
夢か現かまんじりとしない空間の中で、エンヴィはぼんやりと相手に問い返す。
「そんな事はどうでもいい…私はお前に大変恩義を感じているのだ…よってお前の願いを一つなんでも叶えてやろう…」
謎の声の申し出に、エンヴィはむにゃむにゃと目を擦る。
「それは律儀にどーもデビ…アタイなんかしたデビか?…ま、どーせこれは夢デビね…それならふっかけてやるデビ〜!」
怪しい相手にエンヴィはとある願いを口にした。
「ごにょごにょごにょ…まぁ、期待してないデビよ〜…」
そう言って再び眠りに落ちていくエンヴィ。
「よかろう…その願い、最も最悪の形で応えてやるぞ…ふふふ…」
そう言って消えていく謎の声。
エンヴィはというと、自分のやらかしに気づく事なくスヤスヤと眠りこけるのだった…
第一話へと続く…
ガチピン@ご支援感謝
2025-04-25 13:08:04 +0000 UTCyukimi
2025-04-21 20:08:24 +0000 UTC