挿絵 らすP様
グレイスの来訪から少しの時が流れ…
地球には、しばしの平和な時間が流れていた。
「それでは現状の再確認を…」
アンナとルクリアはこの平穏を利用して、自分たちの置かれている状況を整理することとする。
「はい…現状ゴーデスはグレイスを特異点へ引きずり込むために、その持てる細胞のほとんどを使用したと考えられます。」
ルクリアの説明によると、この間地球を訪れたアルティマレディ・グレイスは、様々な次元でゴーデス細胞を絶滅させるために戦う戦士ということだった。
ゴーデスも特異点を利用する性質から、他の次元の平行同位体との交信が可能らしく、彼らの中では超危険人物としてグレイスは認識されているようだと、ルクリアは解説する。
今回もゴーデスがその力を失うこともいとわないで自らの細胞を特異点に放り込んだことにより、グレイスはそれを追わざるを得ない状況になった。
「でもそれは、私たちをゴーデスに対抗する力だと信用してくれたから…ってことでいいんだよね。」
本来は地球に残ったゴーデスも何とかしたかったはず…でも、最後はルクリアに託して彼女は特異点へと吸い込まれていったことを杏奈は思い出す。
「そしてそれは、こんな形で私たちの中に残った…ミックスアップ!アルティマレディ・グレイス!」
アンナが腕のブレスレットを掲げて強く念じると、そこにはグレイスの力をまとった彼女の姿が顕現した。
「すごい…彼女の力を感じます…」
ルクリアも身体にみなぎる力を感じ、気持ちの高揚を隠せずにいる。
「ゴーデスなんか、この姿を見ただけでびっくりして逃げ出しちゃうんじゃないかしら!」
少しおどけた様子のアンナだったが、その心の内には新たな使命感を宿していることを、彼女と同化しているルクリアは感じ取っていた。
「タケシさんのこと…どうするつもりなのですか?」
ルクリアの問いに、アンナは苦笑しながら遠くを見つめるような表情になる。
「もう対話することから逃げない…タケシ君がどんな結論を出して、どんな暴挙に出たとしても、私だけは彼を止めるために尽力する…それが先輩としての役目だから…」
ゴーデス細胞によってしか生きながらえることができないタケシに対してどうするかまだ迷いがあったアンナ。
しかし、その思いと向き合ってルクリアと想いを一つにすることで、新たな力『イクリプスモード』が彼女たちの中に芽生えることとなった。
ルクリアもその時の気持ちを知っているからこそ、野暮なことを聞いたとしてもアンナとの心をさらに通わせたいと思うようになっていた。
「とりあえずタケシさんの力の源たるゴーデスが弱っている以上、彼らが表立って何かを仕掛けてくることはしばらくないでしょう…でもこういう時に警戒しなければならないのが…」
ルクリアのセリフで、アンナには数々に苦々しい思い出がよみがえってくる。
「また来るのかしら…あのひと…」
タケシへの想い以上に、今、ルクリアとアンナは同じ嫌な予感を感じているのだった…
「それで…しばらくは身をひそめるのでいいのか?」
タケシは思った以上にちんちくりんになってしまったゴーデスを、少々呆れながらも手のひらにのせて質問する。
「うむ…どうしたって失った細胞の回復には時間がかかるからのう…幸い、ルクリアにもこのセーフハウスの場所はわからなんだろうしな。」
先日グレイスから逃げるために使ったセーフハウスは、タケシが中でアンナ相手に少し暴れたものの、いまだ健在であった。
まぁ、それも仕方ないかとタケシも小さくため息をつく。
アンナを執拗に煽った結果、新たな力に目覚めさせてしまったのは、タケシ的にも下手を打ったと若干の後悔を残していた。
「まぁ、安心せい。今回もマイナスエネルギーを生み出すべく、できる範囲で手を打つ予定じゃ…ルクリアたちの新モードに興味津々の『奴』も嬉々としてこっちに向かっておるそうだしな。」
誰のことか容易に想像できてしまい、タケシも苦笑いを浮かべる。
「あいつかぁ…まぁ、でもこのタイミングで来てもらうには適任者なのかな…」
こっちに滞在するとなると、また説明責めやら身体の状況のサンプルをよこせやらよこせやら、うるさくなることが想像できる。
いろいろと状況を秤にかけて顔が一喜一憂するタケシを見て、ゴーデスも一緒にため息をつくのだった…
「ふうむ…今までも現地の惑星で活動するために原生生物と同化することは彼女たちの用いる手段としてはよくあることではあったが、まさかその合体が新たな力を生み出す要因となるとは…これは地球という星の人間の性質なのか、アルティマレディたちの新たな一面が発露したとみるべきか…なかなかに興味深い…」
相変わらずの早口で自説をまくしたてる男『エロフェッサー』の来訪は、タケシとゴーデスの平穏な暮らしを脅かすには十分すぎる刺激であった。
これまでも三度ほど地球を訪れては、ルクリアやシャインたちアルティマの戦士にちょっかいを出しては痛い目を見ている…はずなのだが、彼は不屈の闘志(?)で毎度舞い戻ってくる。
さすがにタケシも躱し方にも慣れてきたのか、あまり我関せずといった様子で自分の研究に戻っていった。
「まぁ、今回も頼むとするわい…アルティマレディもいいんじゃが、地球人どもに負荷をかけてマイナスエネルギーを出させることもよろしく頼む…」
それを聞いたエロフェッサーは背中から生えたマジックアームでサムズアップし、地上へと出かけていく。
「任しておきたまえよ!この星の言葉で言うところの、大船に乗ったつもりでいるといい!」
妙に楽観的なエロフェッサーの姿に、泥船でないといいけどな…とつぶやくタケシであった…
ゴオオオオッ…
季節外れの吹雪が春野市を襲い、交通機関のマヒやいきなりの寒暖差で倒れる人々が続出する。
この原因を作っているのが、上空で巨大なファンを回転させて吹雪を生み出しているエロフェッサーであった。
「こういう未開な星の生物どもには、極端な環境変化こそが最大のストレスになる…そして寒さに弱いアルティマレディを引き込んで有利に戦うことができるという優れものってことなんだなぁ。」
マイナスエネルギーの発生とアルティマレディへのデバフを兼ねる一石二鳥に、ご満悦な様子のエロフェッサー。
しかし、そんな非道は許さないとルクリアがすぐに現場へと駆けつけてきた。
「またあなたなの、エロフェッサー!いい加減にこりて地球に来るのはおやめなさい!」
ルクリアの呼びかけも歯牙にもかけず、エロフェッサーはファンを回し続ける。
「そんなことはいいから、さっさと新モードにでもなってみたまえ!そんな事ではこの吹雪は止められないぞ!」
エロフェッサーの挑発に、アンナはルクリアへイクリプスモードへの変身を提案する。
「悔しいけれど、このままでは埒が明かないわ…フレアモードかイクリプスモードであの巨大ファンごと破壊しないと…」
確かにルナモードは浄化に特化した仕様である以上、モードチェンジは必須…ルクリアもそれに異存はなかった。
「わかりました…アンナ、いきましょう!」
しかしここで二人は判断ミスを犯してしまう。
ノータイムでチェンジできるフレアモードと違い、イクリプスモードは二人の心を同調させるために精神集中が必要だったのである。
そのために一瞬目をつぶって精神を統一しようとする間を、エロフェッサーは見逃さなかった。
「おやおや…予想通り、やっぱりこの瞬間は隙だらけですねぇ…それ、強モード!」
吹雪を起こすために首振りをしていたファンをルクリアに向けて固定するエロフェッサー。
「きゃああああっ!」
ファンの起こす強力な吹雪がルクリアを襲い、一気にその身体を凍り付かせていく…
弱点である冷気の責めに、ルクリアは窮地に陥ろうとしていた…
ルクリアを吹雪が襲ったその時、地球の大気圏上に一人のアルティマレディが忽然と姿を現していた
「ふむ…アルティマレディの新たなる可能性を示したものがいると聞いて、このような辺境まで来てみたが…何やら窮地に陥っているようじゃのう…どれ、少し手伝ってやるとするか…」
そういって地球へと降りていくアルティマレディ…
銀と紫に彩られたその荘厳な姿は、まさに『女王』の降臨を思わせるものであった…
②へ続く…
syonnai_hito
2025-05-30 16:16:47 +0000 UTC