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ごむらば
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アクトレスの苦悩

【ハエ人間】 「はぁ、こんな形でウエディングドレスを着ることになるとは」 私は大きなため息とともに肩を落とした。 「そんなに落ち込むなよ」 と声をかけてきたのは共演者であり、私の恋人。 「予行演習だと思えばいいじゃん!」 私とは対照的に落ち込む事なく、純白のタキシードを纏い軽い調子で私をなだめる。 「だって、親とか親戚にも映画でウエディングドレス着る事を公表しちゃったんだよ」 さらに続ける。 「しかも結婚式の彼氏役は本当の彼氏とも公表しちゃんだから」 私の目から涙が溢れてきた。 私は両手で顔を押さえて伏せた。 「仕方ないだろ、仕事なんだから、それに昨日、ちょっとだけ着れたじゃん、なあ、割り切っていこう」 そう言って、私の腕を掴んだ彼の手は細かな毛の生えた節のある手。 私は彼の手を振り解き、鏡を見た。 鏡には白いウエディングドレスに純白のベールをかけた花嫁姿がある。 しかし、よく見るとベールの下には、大きな複眼と細かな毛の生えたストローのような口。 ウエディングドレスの胸元からは毛の生えた硬そうな虫独特の体が覗いている。 「ハエだよ、ハエ、ハエ人間が結婚式あげるんだよ、いくら仕事でもトラウマになりそう」 私はまた両手で顔を押さえて伏せた。


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