新体操部の悲劇 【リクエストより】
Added 2021-12-29 15:00:00 +0000 UTC【報復編】 翼の本当の目的は先輩の娘たちに自分のされた事をやり返す事ではなかった。 段ボールを送りつけて、家の中を盗聴する事にあった。 娘たちが行方不明になり、居ても立っても居られない一夜を過ごした夫婦、そして拘束されていた娘たちが戻ってホッとすると、お腹も空いてくる。 無事を祝して美味しい食事になると翼は踏んでいた。 翼が出かける準備をしていると、盗聴器から声が聞こえてきた。 「あなた達、何が食べたい?」 「今から買い物に行ってくるから、みんなで好きなもの食べましょう!」 麻理の声は、先ほどの翼に対する申し訳なさのカケラもない声だった。 翼は盗聴しながら急いで駐車場へと向かう。 そして、麻理が出かけたタイミングで、車を発進させた。 車を発進させて、すぐに道路の左側を歩く女性の姿を見つけた翼はクラクションを鳴らす。 『ブーブー!』 車のクラクションにさらに左に寄ってこちらを見る女性。 高校生の時と違い、かなり老けた印象だが、間違いなく麻理先輩だ。 翼は車を停めると声を掛けた。 「もしかして、麻理先輩じゃないですか?」 麻理は翼の顔を見てすぐに気づいたようで一瞬ビクッとする。 それはそうだろう、さっきまで翼の話をしていたのだから、タイミングが良すぎる。 気づいているのに、ワザと気づかないフリをする麻理。 「あらぁ、どちら様?」 翼も役者、さっきまで盗聴していたので、全て分かっていての対応。 「高校の新体操部で一緒だった門矢翼です、覚えてませんか?」 「ああ、門矢さん、お久しぶり」 「先輩、お買い物ですか?良かったら途中まで乗せて行きますよ」 この住宅街からスーパーまではかなり距離がある。 歩いていくのには、麻理自身家族と少しだけ離れている時間を取りたかったのだろう。 戸惑っている麻理を強引に誘う。 「スーパーまで遠いですから、お話したい事もあるのでどうぞ!」 麻理は渋々といった感じで車に乗り込んできた。 「久しぶりですね、ご結婚されているんですか?」 翼は全て分かっているが、ワザと聞いてみた。 「うん、今は主人と双子の娘の4人暮らし、あなたは?」 「私は独り身です、あ、良かったらコーヒーどうぞ!」 ドリンクホルダーに入っている新しい缶コーヒーを勧める。 「先輩、コーヒー好きでしたよね、どうぞ!」 翼は誘導するようにコーヒーを勧めて、麻理はそれを口にした。 翼も同じ缶コーヒーを口にする。 コーヒーを口にした麻理はすぐに眠ってしまい、翼の運転する車は、スーパーを通り過ぎてそのまま走り去ってしまった。 翼が眠った麻理を連れてきた場所は、かつて2人が通っていた高校。 今は少子化で、高校も統合されて2人が通っていた高校は廃校になってしまっていた。 翼はこの廃校に何度か通い、報復の準備を進めていた。 それは恵理と友理の双子に家族写真を見せてもらってから始まった。 緊急連絡先と称して、母親の名前と住所、連絡先も入手していた。 「麻理先輩を連れて来ましたよ」 翼が声を掛けると女性たちが出てきた。 出てきたのはいずれも麻理の同級生で同じ新体操部で翼の先輩たち。 「伊波先輩の薬、効果的面でしたよ」 翼が話しかけた伊波は、薬剤師として今は働いている。 缶コーヒーに入れた薬と事前に車に仕込んだ特殊な芳香剤の2つの効果で人を簡単に眠らせる事ができる調合がなされていた。 伊波奈々は自慢げに話す。 「そうでしょ、私の特別ブレンドよ、2時間は起きないわ」 眠っている麻理をみんなで車から運び出す。 「翼、麻理の服脱がせて」 そう指示してきたのは木田香代子。 香代子はラテックスの会社に勤めていて、研究員をしている。 全裸にした麻理に香代子の指示の下、まずは麻理の頭をバリカンで丸刈りにする。 今から着せる特製の白いラテックススーツは着せるとしばらくは脱ぐ事が出来ないので髪は邪魔だという事。 長い黒髪のついでに下の毛も全て剃り落とした。 そうしてから白いラテックススーツを麻理に着せていく。 見た目には麻理の体には小さいと思われたスーツだが、驚異の伸縮性があり、簡単に麻理に着せる事ができた。 最後に大きく開いた背中を専用の接着剤で閉じて完全に封をした。 このラテックススーツは目の所に細かな穴があり視界は確保されており、口のところは穴があいていて呼吸もできるし、飲食もできる。 そして、下半身もラテックススーツを脱がなくても排泄ができるようになっている。 「さて、インナーの装着はできたわね」 そう言って嬉しそうにしているのは穴田里美。 里美は造形の仕事をしている。 映画なんかで使用されるような特殊な着ぐるみを扱っており、麻理を閉じ込めるための着ぐるみを作製していた。 どんな着ぐるみか? それは毒虫、イモムシの様な容姿で全身に毒のついた毛が無数に生えている。 高校の時、散々自分中心で上手くもないのに、新体操部を振り回した麻理。 皆がそれぞれに迷惑をかけられて不満を抱いており、翼と同じように辞めざるを得ない部員もいたらしい。 本人は知らないが、部員全員から麻理は新体操部の毒虫と言われていた。 なので、里美は毒虫をイメージして、着ぐるみを作ったらしい。 深緑のイモムシの様なボディには長い腕2本と足が2本生えている他、複数の本来のイモムシの短い脚も生えている。 腹側は黄緑色になっていて、イモムシの蛇腹の一部が開口部となっている。 この毒虫の長い脚の先は全て先が丸くなっているので、麻理のラテックススーツの手の分かれた5本指をグーにして、香代子は使えないようにラテックスで丸い手にしてしまった。 このラテックスは融着するので、時間が経つとラテックススーツと一体となり2度と開かなくなってしまうという。 以前、眠ったままの麻理に着ぐるみを着せていく。 足を通し、腕を通して。 着ぐるみの中も接着剤を流し込みラテックススーツと着ぐるみを接着し、口と排泄用の穴も調整し、最後に開口部を接着して完全に閉じた。 毒虫の複眼のようになった目からは視界は十分に確保されている。 こうして、元新体操部員の恨みの詰まった毒虫が完成した。 里美は毒虫となった麻理の首辺りに木製の名札を掛ける。 そこには、ひらがなで【まり】と書かれていた。 最後に毒虫の脇の下を通してリードが巻き付けてから、翼の車の後部座席に毒虫を積み込んだ。 「翼!後はお願いね」 そう先輩方から声をかけられて、翼は車を発進させた。 翼の運転する車は元来た道をゆっくりと戻っていった。