エレベーターのウルトラマン
Added 2022-01-25 15:00:00 +0000 UTC俺はショッピングモールで建物管理の仕事をしている上野 夕助(うえのゆうすけ)。 点検で屋上へ向かう為、地下2階から業務用エレベーターに乗り込んだ。 業務用エレベーターは俺のような裏方の人間の他に店舗従業員もよく利用する。 だから、俺は屋上階を押すとすぐに、行き先ボタンのある操作盤の後ろの壁にもたれた。 エレベーターはすぐに次の地下1階に停まって、人が乗ってきた。 点検表をボンヤリと見ていた俺がふと顔を上げると乗ってきたのはウルトラマンゼロ。 俺が軽く会釈すると、ウルトラマンゼロも会釈し、5階の行き先階を押した。 俺はすでにドキドキしていた。 今日から5階の催事場でウルトラマンイベントをやるのは知っていた。 実は俺はウルトラマンの大ファンだ。 その中でも特にウルトラマンゼロが好きだった。 ウルトラマンイベントにはウルトラマンゼロも出るのはチェック済みで、仕事の合間に見に行こうと思い、屋上の点検をゲットした。 それがまさかエレベーターで2人きりになれるなんて夢にも思っていなかった。 ウルトラマンゼロは175cmの俺とそう変わらない身長だが、中の人は着ぐるみの分を差し引いても170cmほどはありそうだ。 ウルトラマンといえば、背中のヒダの奥に隠されたファスナーがチラッと見えるだけで、ウルトラマンの中の人の事を想像させる。 さらにこのウルトラマンゼロの中の人が女性だったらと妄想すると股間が熱くなるが、俺は頭を振った。 “イヤイヤ、俺は何を考えているんだ“ そう思いながらも、俺の目の前に立っているウルトラマンゼロのお尻を見てしまう。 クッと上がった引き締まったお尻に少し括れた腰、すらっと伸びる足は長く、中身が男性だとしても男の俺から見ても見惚れてしまうほどのスタイルの良さであった。 ウルトラマンゼロとエレベーターに乗っている興奮を少しでも抑えようと腕時計に目をやった。 14時を少し過ぎている。 確か、イベントは14時からのはず、ウルトラマンゼロは1人遅れたのでアテンドなしで、1人でエレベーターに乗ってきたのだと理解した。 思い切って声をかけて握手してもらおうか迷う。 エレベーターは3階を過ぎた。 「あのー 」 俺は思い切って声をかける事にした。 『ガタン!』 大きな音ともにエレベーターは停止した。 「キャァ!」 くぐもってはいるが確かに女性の声がした。 エレベーターの停止とともに、エレベーター内の照明が非常灯に切り替わり、少し暗くなった。 ウルトラマンゼロは少し怯えている。 「ちょっとすみません」 ウルトラマンゼロに操作盤の前を代わってもらうと非常通報ボタンを押した。 「はい、防災センターです」 点検に出る前に防災センターには同僚が多くいたが停電対応に追われているのだろう。 対応してくれたのは山本所長だった。 「所長、上野です、何があったんですか?」 エレベーターの非常灯に切り替わった時点で停電だとすぐに分かった。 「夕助か、今、近くの変電所でトラブルがあったらしく復旧のメドはまだ立っていないそうだ」 「ところでエレベーター内には何人いる?」 「私を含めて2人です」 「分かった、また復旧のメドが立ち次第連絡する」 そう言うと連絡は切れた。 「あのー、復旧には時間がかかりそうです、お急ぎのところ、すみません」 ウルトラマンゼロは手振りで大丈夫ですといった対応をしてくれた。 話してはならないウルトラマンゼロと話したくて仕方のない俺の沈黙が続く。 かなり気まずい。 時計に目をやると既に30分が過ぎていた。 徐々に照明が暗くなり始める。 バッテリーが切れかかっているのだろう。 そして、非常灯が切れて真っ暗になった。 すぐ隣にいたウルトラマンゼロが話しかけてきた。 「あのー、一緒にいて貰ってもいいですか?暗闇が怖くて」 女性のくぐもった声は震えていた。 「ええ、構いませんよ」 俺の返事と同時くらいに女性は俺の腕にしがみついてきた。 「大丈夫ですよ」 そう言ってウルトラマンゼロの肩を撫でた。 ウエットスーツのゴムの感触と彼女の体温が掌から伝わってくる。 体はかなり熱を帯びているように感じたので聞いてみる。 「暑くないですか?」 ウルトラマンゼロは何も答えずに俺の腕にただしがみついている。 まあ、本人が暑くないと言うなら、このままでもいいのだが。 しかし、一向に連絡は来ないし、復電した様子もない。 ジッと2人で体を寄せ合っていたが、掌から伝わる彼女の熱がどんどん増し、呼吸音も大きくなっている。 ウルトラマンのイベント自体30分程で終わる。 しかし、今はもう30分はゆうに過ぎている。 改めて時計を見ると、15時30分を過ぎていた。 1時間以上はさすがにまずい、脱水症状を引き起こせば命の危険もあると判断した俺は彼女に説明した上で、ウルトラマンゼロの着ぐるみの上半身だけでも脱ぐように説得した。 暗闇でほとんど見えない事に納得した彼女は着ぐるみを脱ぐ事を了承してくれた。 だが、彼女は自分ではウルトラマンゼロの着ぐるみを脱ぐ事ができない事を伝えてきた。 肩の装飾が邪魔をして頭頂部近くに手が届かないのだ。 まず俺は点検を早く済ませて飲もうと準備していたペットボトルのお茶を彼女に手渡した。 「このお茶にまだ口をつけていないから良かったら飲んで」 彼女は俺に背を向けて何か言ったが聞こえなかった。 俺はスマホのライトを点灯させて床に置くと、ウルトラマンゼロの頭頂部付近のファスナーの位置を探る。 ファスナーを見つけた。 しかし、俺はこれからとても悪い事をするような気になる。 その反面、ウルトラマンゼロの背中のファスナーを開いていくという行為にドキドキしている。 しかも中身は女性、人助けを理由に好奇心が勝りファスナーをゆっくりと開いていく。 暗闇の中でスマホに照らされたウルトラマンゼロの背中が開いていく。 ゴムの匂いと熱気と彼女の汗の臭いが一気に広がる。 彼女は黒いインナーを着ており肌は見えない。 長い髪がファスナーを開けると出てきて、白い肌の背中が出てくるイメージをしていたので、少し拍子抜けした。 スマホのライトを消すと彼女はウルトラマンゼロのマスクを脱ぎ始めた。 マスクを脱ぐと、俺の渡したペットボトルのお茶に口をつける。 よほど喉が渇いていたのだろう。 『グビッ、グビッ」』といい音をさせてお茶を一気に飲み干した。 「ありがとうございます、正直、身体の調子がおかしかったので危ないところでした」 そう言って再び、俺の腕にしがみつく彼女。 ゴムと汗の臭いにまみれた彼女だが、俺は幸せな気分だった。 まだ、俺はドキドキしている。 「すみません、お名前教えてもらえませんか?」 突然の彼女からの申し出に俺は答えた。 「上野夕助です、このショッピングモールの建物の管理をしてます」 「私の命の恩人は上野さんですね」 甘えたような声が可愛い! 「私は大学に通う河神 玲奈(かわかみれな)です」 「今は期間限定イベントでこちらでアルバイトをしています」 恥ずかしそうに話した後、俺の腕にギュッとしがみついてきた。 “玲奈ちゃん可愛い、ずっとこうしていたい!“ そんな俺の思いを打ち消すように、エレベーターの照明が点灯した。 途端に俺から離れる玲奈ちゃん。 俺に背を向けてマスクを被り始める。 それと同時くらいに非常通報から声がした。 「夕助、大丈夫か?」 山本所長の声が聞こえた。 「はい、大丈夫です!ところでエレベーターの復旧には時間かかりますか?」 「今からこっちで復旧操作を行う、復旧したら階段で防災センターへ戻ってきてくれ!」 「はい!分かりました」 エレベーターが動き出す。 ウルトラマンゼロのマスクを被った玲奈ちゃんが俺に背中を向けている。 「じゃあね、玲奈ちゃん」 俺はウルトラマンゼロの着ぐるみの背中のファスナーを頭頂部まで閉めて、ファスナーをヒダで隠した。 ウルトラマンゼロになり切っている玲奈ちゃんは言葉を発せずに握手を求めてきた。 俺は握手に応じる。 中身が女の子だと分かったからだろうか、ウルトラマンゼロの手が小さく華奢な手に感じられた。 エレベーターが5階に到着して俺もウルトラマンゼロと一緒に降りると手を振って別れた。 俺は勢いよく防災センターへ向かって階段を駆け降りた。 完
Comments
コメントありがとうございます。早速、こちらでもウルトラマンネタを上げさせてもらいました。また、ちょくちょく投稿致しますので、今後ともよろしくお願いします。
ごむらば
2022-01-26 22:01:37 +0000 UTC