SamSuka
ごむらば
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フェブラリー

私はコンビニでバイトしている。 この季節になると恵方巻に力がはいるんだけど、周りはコンビニだらけの激戦区。 他店との差別化のため、店長が繰り出した案は鬼の着ぐるみを導入しての集客。 着ぐるみは特別手当も出るということで、私は手を挙げた、いや手を挙げてしまったと言った方がいいのかもしれない。 軽い気持ちだったが、店長は本格的だった。 年明けすぐにこの話がでたのだが、私の体を細かく採寸するため、スキャンまでとある会社まで出向いた程だった。 もう、この時にはやっぱり辞めます、なんて言えない雰囲気になっていた。 1月末、赤鬼の着ぐるみが完成し、試着することになった。 赤鬼の着ぐるみの出来はというと、リアル過ぎる。 そのひと言に尽きた。 私が女性であることも考慮し、胸までしっかりある赤鬼。 顔は私の顔をベースに造られていており、ホリが深く眉間から額にかけて深い皺が入っていた。 下半身と上半身に分かれており、下半身を履いてから上半身を被るのだが、汗をかいても着ぐるみが汗臭くならないようにと、赤いラバースーツというのを着せられた。 それも頭の先から足の先まですっぽりと私を覆うもので、穴があいているのは、目と口のところだけ。 とはいっても目出し帽のような感じではなく、細かい穴が無数にあいている。 だから、見た目には赤いゴム人形にしか見えなかった。 そして、このラバースーツには汗を外に逃がさない役目ともう1つ、赤鬼の着ぐるみを繋ぎ止める役目もあった。 というのは、ラバースーツを着て着ぐるみを装着すると、その間に接着剤を流し込まれた。 時間が経つと粘着力が急激に低下するという説明を受け、赤鬼の着ぐるみを中で接着された。 赤鬼の頭も上半身と一体になっており、目玉はレンズになっており、外がよく見える。 口にはキバがありうっすらと口あけているので、呼吸もできる。 外から口の中が見えるが、赤いラバースーツを着ているので問題ない。 最後に上半身と下半身の継ぎ目を接着剤で固定して完成となる。 鬼ということで、私の体に隆起するほどの筋肉がついた感じになっているが、それほど体型も変わらない感じの細マッチョといった感じに仕上がっていたので私はこれはこれで気に入った。 仕上げとしてトラ柄のミニのワンピースを渡された。 このワンピースはエナメル製で光沢があり、ハイレグのワンピース水着にミニスカートを付けたようになっていた。 しかも胸の谷間がしっかりと見えるほど。 そして、ワンピースと同じエナメル製のニーハイブーツ。 見た目にはかなりセクシーな赤鬼が出来上がった。 「店長!この接着剤って、どれ位の時間で外れやすくなるんですか?」 「ゴメンゴメン、えーと、5時間って書いてある」 「えー!試着ですよね、今日」 思わず大声で店長に文句を言う。 「せっかくだから、赤鬼でチラシお願いできる?」 妙に低姿勢で店長が頼んできた。 「だって、私今日シフト入ってないんですよ!」 「そこをなんとか、特別手当も今から出すから」 そういわれて渋々引き受けることに。 コンビニの外に出てビラを配り始めると効果歴然。 人が集まり、あっとゆう間にビラを配り終えた。 それどころか、写真撮影まで頼まれる始末。 店長も出てきて撮影を手伝っていた。 そんなことをしている間に、5時間が過ぎコンビニの中へと引き上げる。 着ぐるみ初体験で5時間の労働は、さすがに疲れた。 着ぐるみを着たまま、イスに腰掛けると店長がワンピースとブーツを脱ぐのを手伝ってくれた。 接着剤は取説通り、5時間経ってから引っ張ると簡単に剥がすことができ、私は赤鬼の着ぐるみから解放された。 で、ご想像通りラバースーツの中は汗だくで、下着はびしょ濡れ。 とても着て帰れなかったので、ノーパン、ノーブラでその日は真っ直ぐ家に帰った。 節分が近づいたある日、店長が笑顔で近寄ってきた。 何か嫌な予感がした、私の予感は的中。 内容は恵方巻の大量注文が入った、それだけなら赤鬼で頑張った私はのおかげで終わるのだが続きがある。 赤鬼の出張サービス。 なんでも、コンビニから少し離れた幼稚園で恵方巻の大量注文を届ける際に、赤鬼に来てもらいたいとのこと。 お分かりと思うがただ出張するだけでなく、豆まきの的になることはすぐに分かった。 「イヤですよ、痛そうだもん」 「そういわずにお願い!」 また、店長の低姿勢のお願い。 私が断固ことわると、「ボーナス出すから」と言い出した。 またしても受けてしまった私は、節分当日、大量の恵方巻が積まれた店長の箱型の軽自動車の助手席に赤鬼姿で座っていた。 もちろん、コンビニで外回り作業の時に着るスタッフジャンパーをフードまで被って。 幼稚園に着くと、園長先生が出迎えてくれた。 私を見て園長先生はビックリしながらも、控え室へと案内してくれた。 店長は恵方巻を車から園内へと運び入れていた。 園児たちの声が聞こえない、昼寝でもしているのか凄く静かだった。 通された控え室にも昼間の温かい陽射しが入ってきて、すごく気持ちよくなり机にもたれかかる。 肩を叩かれ、目が覚める。 「おまたせ!」 知らぬ間に寝ていた私は、起こされて振り返ると大きな赤鬼が! ビックリしてイスから転げ落ちる。 「ゴメン、ゴメン」 手を差し伸べてきた赤鬼からは店長の声がした。 店長、いや男の赤鬼の手を掴み起こしてもらう。 「いやぁ、赤鬼任せっきりってのも気が引けて自分のも作って、夕方のバイトに入ってもらうまでは実は俺も赤鬼になってビラ配りしてたんだ」 店長の大きく逞ましい赤鬼はトラ柄のパンツに裸足で、胸には立派な胸毛が生えていた。 園児たちの声が聞こえ始める。 「じゃあ、そろそろヤラレにいきますか」 そういって、逞ましい男の赤鬼は女の赤鬼の手を引き園児たちの元へ。 赤鬼が現れ、泣く子もいたが、勇敢に立ち向かい豆を投げつけてくる子もいた。 豆が当たりしゃがみ込むと蹴りを入れてくる子もあらわれた。 2人の赤鬼は園内から外へ。 そして、「ゴメンなさい」の声とともに幼稚園の裏手へと逃げていった。 そこで園長先生からスタッフジャンパーを受け取り、撤収した。 赤鬼のまま、車に乗り込む店長に園長先生が「その格好で大丈夫ですか?」と聞いてきたが、「店近くなんで!またお願いします」そういうと車を発進させた。 私はスタッフジャンパー越しでも筋肉が隆起した逞ましい店長の腕に思わず、抱きついてしまった。 そして「好き!」と自分の思いを口にしてしまった。 店長は何も反応なかった。 車はしばらく走り続ける。 聞こえていなかったら、いなかったでいいかと自分で割り切ったとき。 「俺も!」 「え!?」 私が聞き返すと、店長ははっきりと「俺も君のことがずっと好きだった」と。 それを聞いて私は店長の腕をさっきよりも強く抱きしめる。 車はひと気のない駐車場に入って停まった。 「後ろ行こう」 私は頷いた。 大量の恵方巻を下ろした荷台は2人が横になるのに十分なスペースがあった。 赤鬼のまま抱き合う2人。 「着ぐるみのままでゴメン、時間が来たら着ぐるみを脱いで抱き合おう」 そう店長に言われ恥ずかしくなり、赤鬼の胸毛の生い茂る胸に顔を埋める。 どれ位時間が経ったのか、気づけば辺りは暗くなっていた。 2人とも起きたのは、車のガラスを叩く音、警察官がライトで車内を照らしこちらを見ている。 慌てて起きると警察官も驚いていた、その後2人して警察官に絞られたのは、いうまでもない。 節分の翌日、店長が「相談があるんだけど」と、低姿勢で近寄ってきた。 赤鬼の時もそうだが、私は店長のことが好きでお願いされると断ることができなかった。 「今度は何ですか?」 強めの口調で店長に返す。 店長は何も言わず、カレンダーを指差す。 ”2月14日!” 「知ってます、バレンタインです、で!」 店長は用意していた大きめダンボールから何かを取り出した。 少し光沢のある茶色のそれは人の形をしている。 顔は私の顔!! 目玉までも茶色一色。 髪型はショートになっているものの、常連が見れば誰かすぐに分かる。 「えー、これって私ってバレバレじゃないですか!」 店長は何もいわずに私そっくりのチョコレートの着ぐるみを渡し、次にダンボールから茶色のラバースーツを取り出した。 「要領分かってるよね、お願い」 手を合わせてお願いされると断れなかった。 バレンタインまでの期間、私はまたチョコレートの着ぐるみを着て頑張った。 私が頑張ると店長は決まって、着ぐるみの上からギュッと抱きしめてくれた。 バレンタインが終わると、また店長が低姿勢でやってきた。 そしてカレンダーである日を指差す。 「ホワイトデーですけど、白いチョコレート人形になんてならないですよ」 「えー!マシュマロウーマン」 ”どっちらにしろ着ぐるみだろ!” 私は心の中でツッコんだが、店長の押しに負けて、結局店の前でモコモコした白い着ぐるみに包まれ立つことになった。 完


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