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ごむらば
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咲山さんの恋〜私だけのウルトラマン〜

俺は上野 夕助(うえのゆうすけ)。 ショッピングモールで建物の管理の仕事をしている。 先週はいろいろあった。 ショッピングモールが停電になり、エレベーターに閉じ込められた。 しかも、ショーへと向かうウルトラマンゼロと一緒に。 しかも、ウルトラマンゼロの中身が女の子だった、それもかなり可愛い女の子だった。 女の子の名前は河神玲奈。 まあ、いろいろあって今は俺の彼女だ。 そんな彼女とも順調に距離を縮めている。 そして、そんな彼女とデートの約束をした時の事新たな事実を知った。 玲奈ちゃんと同じようにショーでスーツアクトレスをしている女の子の存在を。 2人ともかなり可愛いい、もちろん玲奈ちゃんには及ばないのだが。 背が低く明るく活発な柳下芽衣ちゃん。 そして、もう1人が背が高くてモデル体型で大人しい咲山莉奈ちゃん。 今日も仕事の後、玲奈ちゃんとの楽しいデートが待っている。 なので張り切って仕事に来ている。 屋上での点検業務をサクッと終えた俺はウルトラマンショーを覗く。 ここのショーは毎週のようにストーリーが変わっていき、観客を飽きさせない。 かくいう俺もショーを楽しく見ている1人だ。 スマホで撮影しながら玲奈ちゃんを探す。 今日はスマホの録画は間違いなくされている。 ショーの途中だったが、どうやらベリアルがウルトラマンたちに倒されたようだ。 鎖で厳重に拘束された舞台上に現れて、凶悪さを表に出して観客を威嚇しながら鎖を外そうとするが外れるない。 ベリアルを追ってきたウルトラマンゼロとウルトラマンジードに床へ押し付けられてもなお蠢きながら抵抗する。 “今日は玲奈ちゃんどっちなんだろう?“ ベリアルで鎖に縛られている玲奈ちゃんを想像すると股間が熱くなり、周りの人に分からないようにポジションを調整する。 後ろ手に縛られて腕が使えない様に鎖がグルグル巻きされている。 さらにどういう風に鎖を巻いたのか分からないが、股のところにも2本ほど鎖がかけらている。 あんなので歩いたら女の子だったら、刺激されて濡れてきそうだなあと思うとまた股間が熱く硬くなってきた。 俺はポケットに手を突っ込み前傾になり、体勢を立て直す。 見ている大人はなんとも思わないのかと考えたが、ベリアルの中身が可愛い女の子が入っている事を知らなければ、ただのショーになってしまう事に気づいた。 裏方を知っているだけに役得だなぁと思いながら見ていたがショーはもう終わりの様だった。 その後、少し大人しくなったベリアルをゼロとジードがつれてテントへ戻っていく。 最後にピグモンとお姉さんが出てきて、地球の平和が守られて良かったねと話をしてショーは終わった。 “ピグモンはあの明るい芽衣ちゃんで間違いなさそうだ“と思いながら撮影を終えて防災センターへと戻った。 建物管理をしている俺たちが詰める防災センターにはさまざまな依頼の連絡が入る。 先週の停電もそうだが、電球の交換やトイレの詰まり補修に水漏れの対応補修、空調機からの風向き調整などさまざまな依頼に対応すべく道具も揃っている。 そして、日常点検を終えて防災センターで待機している人がその対応に当たる。 防災センターの電話が鳴り、責任者が対応した。 依頼は南京錠の鍵がなくなったので、南京錠を破壊してもいいので外して欲しいというもの。 防災センターで待機していた俺と先輩の姫矢 英人(ひめやひでと)で対応する事になった。 鉄線を切断できるクリッパーという特殊な鋏を大中小の3種類を持って、依頼のあった現場へ向かう。 依頼があったのは5階の案内所から。 案内所へ行くと、受付の女性にこの方について行って下さいと受付前に立っていた男性を紹介された。 「お呼びだてして申し訳ありません、鎖を南京錠で繋いだんですが、南京錠の鍵を紛失してしまいまして、みんなで手分けして探したんですが見つからず」 男性は困った表情を見せる。 「南京錠は壊してもらって構いません、よろしくお願いします」 事情を説明し頭を下げた男性の後を姫矢先輩と俺はついて行く。 ついていった先にあったものは、ウルトラマンショーのテント。 “まさか“と思ったが、そのまさかだった。 スタッフの男性はそのままテントの中へと入っていこうとする。 姫矢先輩がスタッフの男性に声をかけた。 「我々がテントに入っていいんですか?」 スタッフの男性はテントに半分入ってこちらを振り向いて答える。 「どうぞ、この中です」 ウルトラマンや怪獣の中の女の子たちとは知り合いだが、テントの中には入った事がない。 俺もドキドキしながら姫矢先輩に続いてテントの中へと入る。 まず初めに思った事は、ゴムや化学薬品的な臭いが強くするという印象を受けた。 そして女性の香りと汗の臭いも混じっているなぁと思った。 いつも司会をしているお姉さんとピグモンがいた。 ピグモンの背中が開いていることから、全員で南京錠の鍵を探したのだろう。 俺は思わずピグモンに言ってしまった。 「芽衣ちゃん、背中開いてるよ!」 それを聞いたピグモンは少し慌てた様子で背中をお姉さんに向けて閉めて欲しいといった動きを見せるが、お姉さんは俺が芽衣ちゃんの事を知っている事に驚いているようで、すぐにはピグモンの背中を閉めようとしなかった。 スタッフの男性に手招きされ、テントのさらに奥へと入っていく。 奥に入ると鎖で縛られたベリアルがパイプイスに座っていた。 その手前にはウルトラマンゼロの姿もある。 先をいく姫矢先輩の後をついて行く、俺はウルトラマンゼロに話しかけた。 「玲奈ちゃん?」 「早く、助けてあげて夕助くん」 ウルトラマンゼロは手で俺をベリアルの方へ行くような手振りをする。 と言う事はベリアルは莉奈ちゃん。 スタッフの男性は「こちらに南京錠が3カ所あるので、すべて外して頂ければ」とベリアルの背中側の南京錠を指差した。 姫矢先輩と俺が覗き込むと確かに南京錠は3カ所あり、かなり強く鎖で縛ったのかベリアルの体に鎖が食い込んでいた。 怖い見た目のベリアルからは想像もつかない可愛い声で「申し訳ありません、お手数をおかけします」と莉奈ちゃんのくぐもった声が聞こえてきた。 彼女の声を聞いた先輩はかなり驚いていてたが、少し置いてベリアルに話しかける。 「女性だったんですね、驚きました、すぐに外しますからね、もう少し待って下さい」 それまではどちらかと言うと素っ気ない対応だった姫矢先輩だが、ベリアルの中身が女性だと分かると対応が一変して丁寧になった。 「夕助、一番小さいクリッパーを」 姫矢先輩は俺に指示し、南京錠をいとも簡単切断していく。 南京錠は外れて、クリッパーを俺に渡すと丁寧に鎖を外す姫矢先輩。 すべて鎖を外すとスタッフの男性の表情は安堵の表情に変わった。 「ありがとうございます、本当に助かりました」 ベリアルはパイプイスから立ち上がり、姫矢先輩に深々とお辞儀をしていた。 ショーの始めから着ぐるみを着ていたのなら、かなりの長い時間着ぐるみを着ていた事になる。 特に莉奈ちゃんは鎖で縛られていたので、着ぐるみを脱ぐ事もできなかっただろう。 「先輩、帰りましょう、彼女たちも着替えたいと思うので」 俺は姫矢先輩を促し撤収する。 帰り際、ハイタッチを求めてきたウルトラマンゼロに俺は応えてテントを後にした。 防災センターに戻りながら、姫矢先輩が話しかけてくる。 「夕助、驚いたな、着ぐるみに女性が入っているんだなぁ」 今まで気にも留めていなかった事実に驚きを隠せないといった様子の姫矢先輩は何か興奮したように何度も頷いていた。 「まさか、あんなゴツくてイカついキャラクターに、あんな可愛いい声の女の子が入っているなんて思わなかったよ」 普段は口数の少ない姫矢先輩がよく喋る。 「助けた女の子って、声からして俺は絶対可愛いと思うんだが、夕助はどう思う?」 「ええ、莉奈ちゃん可愛いですよ」 歩いていた先輩の足が止まった。 俺はしまったと思った。 姫矢先輩に話しかけられながら、クリッパー3本を紐で一纏めにしながら歩いて話を聞いていたので、何も考えずに答えてしまった。 「夕助、おまえ、あの子の事知ってるのか?」 何か異様な雰囲気で迫ってくる姫矢先輩。 「ええ、まあ、知り合いといえば知り合いの様な」 俺はなんとか誤魔化して、早く防災センターに戻ろうとしたが近くのPS(パイプシャフト)内に引っ張り込まれた。 PSは各フロア毎にあり、建物の配管などが縦に走っている場所。 点検などで時々人が来ることはあるが、ほとんど来ることはない。 俺は姫矢先輩に何を言われるか想像もつかず、勢いがよ過ぎて少しビビっていた。 「夕助くん、俺に彼女紹介してくれ、お願いだ」 何をされるか分からなくてビビっていたが姫矢先輩の行動は意外だった。 確かに姫矢先輩は俺よりも3つ年上で、独身。 彼女がいるというのも聞いたこともなかった。 「ええ、まあ、紹介するだけならいいですけど、彼女に彼氏がいるかどうかまでは知りませんよ」 「ええっ、そうなの、夕助は知り合いなんじゃないの?」 「いいえ、顔見知り程度です、すみません」 姫矢先輩は露骨に肩を落とした。 姫矢先輩の気持ちはよく分かる。 俺も玲奈ちゃんに会う前に、ベリアルに入った莉奈ちゃんに話しかけられていたら、見た目と声のギャップ、加えて中身が可愛い彼女を見たらイチコロでやられてしまうだろう。 接点を持ちたくても、子ども向けのショーに出ている彼女と接点を持つのは難しい。 仮にショーを毎回でも見に行って、お近づきになれたとしても、ただの変な男と思われるのがオチ。 そんな時、身近に知り合いという人間がいれば、伝手でお近づきになろうとするだろう。 そして、気づいた姫矢先輩はもしかすると、顔も見たことのないベリアルの中の莉奈ちゃんに恋をしてしまったのではないかということを。 俺は肩を落としたままの姫矢先輩に声をかけた。 「先輩、14時のウルトラマンショーを一緒に見にいきましょう」 少し涙ぐんでいる先輩は頷いた。 「点検早く終わらせて下さいよ!」 姫矢先輩は目を擦り頷いた。 昼休憩が終わり点検に回っている時に、玲奈ちゃんからメッセージが入った。 【聞きたいことがあるんだけど、教えてくれない?】 【何?どうしたの?俺で分かる事なら】 そう返すとしばらくして返信があった。 【さっき、夕助くんと一緒に来た人って】 そこでメッセージは切れていた。 “?、何か歯切れの悪いメッセージ“ だが、先輩の事を売り込むチャンスと思ったので、こう返した。 【先輩も俺と同じ独身貴族です、俺は先輩より先に彼女できたけどね】 既読はついたけど、返信はなかったので14時のショーに間に合うように点検を急ぐ。 点検の終わりくらいにメッセージが来た。 【今日、夕助くんと会う時、莉奈も連れていっていいかな?】 【大丈夫だよ!また仕事の後で】 そうメッセージを返して点検を終わらせて、ショーの見える2階席へ急いだ。 姫矢先輩は既に来ていて、さっき俺と先輩が入ったテントがよく見える位置で一般の方の邪魔にならない場所を確保していた。 「夕助、遅いぞ!」 少し浮かれた感じの見たことのない姫矢先輩に思わず笑みがこぼれる。 俺が先輩の横に行って程なくしてショーが始まった。 会場にベリアルの声が流れる。 『俺を倒したと思っているウルトラマンども、俺は無敵だ、体を休めたらまたおまえらを始末しに来てやる、それまでコイツらが相手だ!」 怪獣が2体、二足歩行のスカルゴモラと四足歩行グビラが現れた。 怪獣2体はところ構わず暴れ出す。 そこへ音楽が流れ、ウルトラマンが登場。 ウルトラマンゼロとウルトラマンジード。 ウルトラマンゼロとスカルゴモラが対峙し、戦いを始める。 俺はウルトラマンゼロのお尻に目が行ってしまう。 プリッとした引き締まったお尻。 こちらを向いた時にモッコリがないことからも玲奈ちゃんで間違いないだろう。 莉奈ちゃん、それに芽衣ちゃんも探す。 で、すぐに気がついたのは芽衣ちゃん。 グビラがジードに軽々と持ち上げられたまま、その場で回転し投げられている。 それにグビラの着ぐるみがブカブカに見えるのでおそらく間違いないだろう。 さて、問題は莉奈ちゃん。 ウルトラマンジードにはモッコリが確認できる。 隣に目をやると、ベリアルがいつ登場するのかと心待ちにしている姫矢先輩の姿がそこにあった。 しかし、ベリアルはおそらく出てこないだろう。 先輩はおそらくだが、最近のウルトラマンについてはほとんど知らないだろう。 だから、冒頭のベリアルの声にも気づいてないと思った。 ウルトラマンゼロと組み合っているスカルゴモラの動きが俺たちの方を見た時、一瞬止まった。 ウルトラマンゼロのキックがモロに当たる。 スカルゴモラは演技ではない倒れ方をした。 ウルトラマンゼロはスカルゴモラを引っ張って、起こすと攻撃を続ける。 その時、怪獣の呻き声とともに怪獣が3体増えた。 そして、ウルトラマン側もウルトラマンメビウス、ウルトラマンゼット、ウルトラマントリガーの3人が加わる。 姫矢先輩が話しかけてきた。 「夕助、俺たちがさっき助けた黒いウルトラマンみたいなの出てこないなぁ」 姫矢先輩の声はどこか寂しそうだ。 「そうですね、でも中身の彼女は出てますよ」 それを聞いた姫矢先輩は目を白黒させている。 「え、どこだ?」 俺はウルトラマンゼロを指差す。 「あのウルトラマンと戦っている怪獣の中身です」 「え、なんで夕助そんな事が分かるんだ!」 俺は自信満々に答えた。 「俺、大のウルトラマン好きなんで」 実をいうと以前、玲奈ちゃんと同じような事があったので、おそらくそうだと思った。 “ん!?もしかして“ 俺はさっきの歯切れの悪い玲奈ちゃんからのメッセージを思い出していた。 アレってもしかして、莉奈ちゃんに頼まれたものではないかと考えた。 俺の中では何となくだが、着ぐるみに着替えて準備しながら話をしていて、玲奈ちゃんが莉奈ちゃんのために俺にメッセージを送って聞いて欲しい、いややっぱり止めておくとかいった結果、歯切れの悪いメッセージになったように思えてきた。 という事は2人はいい感じになりそうだと俺は密かに思った。 ショーはそのままウルトラマンたちが怪獣を倒す。 そしてまたベリアルの声だけが流れた。 『俺が完全復活した暁にはおまえたちを皆殺しにしてやる、ハッハッハッハー』 ウルトラマンがベリアルに『いつでもかかってこい!俺たちはおまえに負けない!』 と返して、ショーは終わった。 「大変だろうな、女の子がウルトラマンや怪獣に入ってショーをするのって、段取りも覚えないといけないし、動き回らないといけないし、体力もいる」 俺は返した。 「そうですね、でもそれが本人たちにとって楽しければ、それは僕たちの仕事より充実してるんじゃないですか?」 「そうだなぁ、さあ、防災センターへ戻ろうか」 俺は頷いて姫矢先輩の後をついて行く。 先輩はショーを見る事で何か別の展開がある事を期待をしていたのかも知れない。 しかし、現実は何もない。 [ショーをする人]と[ショーを見る人]に過ぎない。 防災センターに戻ってからも先輩は待機中は、視線はどこか遠くを見て、時折ため息をついていた。 まるで、恋する乙女。 そんなため息を聞き続けながら、今日の業務を終えた。 “ヨシ、玲奈ちゃんに会える!“ 俺は玲奈ちゃんに早く会いたくて、サッサと着替えて更衣室を後にする。 一方、姫矢先輩はまだ恋する乙女。 相変わらずため息をついて、ゆっくりとした動き。 「お疲れ様です、お先失礼します」 俺が元気に声をかけると、姫矢先輩からは元気のない返事が返ってきた。 姫矢先輩の恋を成就するお手伝いをしてやりたいと思う。 まずは俺の予想が当たっているか、今から莉奈ちゃんに会って確認するつもりでいた。 防災センターのショッピングモール側の出口を出たところに玲奈ちゃんと莉奈ちゃんが待ってくれていた。 「お疲れ様」 玲奈ちゃんの笑顔で俺は物凄く癒される。 「お疲れ様!」 玲奈ちゃんの隣で莉奈ちゃんが頭を下げている。 「今日は大変だったね」 「ところでどこか、カフェいく?それともご飯いく?」 3人で話合い、少しお酒も交えて話す事になり、居酒屋へ行く事になった。 その時、ちょうど着替えを終えた姫矢先輩が出てきた。 姫矢先輩の視界に俺は入っていない。 玲奈ちゃんを見ると声を出さずに先輩を誘えといった身振り手振りの指示。 隣の莉奈ちゃんは顔が真っ赤になっていた。 “やっぱり、そういうことか“ 俺は玲奈ちゃんとアイコンタクトすると、頷いて姫矢先輩の後を追う。 「先輩、お疲れ様です」 姫矢先輩に声を掛けると、足を止めて振り返ってくれた。 「今から女の子たちと居酒屋行くんですけど、先輩もどうですか?」 姫矢先輩は俺を見て、俺の後ろの女の子たちに視線を移した。 「いいのか?夕助」 「先輩、行きましょう」 姫矢先輩は笑顔になり4人で居酒屋へ行く事になった。 居酒屋はショッピングモールを出て駅へ向かう途中のチェーン店。 席は姫矢先輩の横に俺、俺の前に玲奈ちゃん、その横、先輩の前に莉奈ちゃんが座った。 まず、生ビールを四つ注文して乾杯をしてから自己紹介となった。 自己紹介はなぜか俺から。 「じゃあ、皆さんご存知と思いますが上野夕助です、24歳で身長は175cm、趣味はウルトラマンショーを見る事でウルトラマンが昔から好きです」 俺のウルトラマンの事を語る俺をオイオイといった表情で見てくる姫矢先輩。 「じゃあ、次は私!」 玲奈ちゃんは自ら手を上げて立ち上がった。 「私は神河玲奈、21歳大学3回生です、身長は168cm体重は秘密、趣味はサーフィンを少しやってます」 「へー、そうなんだ、俺もやってるよ、寒いから今は行ってないけど」 「夕助くん、暖かくなったら一緒に行こうよ」 玲奈ちゃんは俺の腕にしがみついてくる。 「夕助、おまえ」 「あ、玲奈ちゃんは俺の彼女です」 俺の後ろで玲奈ちゃんは先輩にピースしていた。 「じゃあ、次は莉奈ちゃん!」 莉奈ちゃんはもうすでにかなりお酒を飲んだような真っ赤な顔で自己紹介を始める。 「咲山莉奈です、22歳で今はフリーターです、身長は168cm、趣味は読書です、本が好きなので図書館司書を目指して勉強中です」 「じゃあ、次は先輩ですよ」 姫矢先輩が立ち上がり自己紹介をする。 「初めまして、姫矢英人です、27歳、仕事は建物管理をしています、身長は178cm、趣味は神河さんと同じくサーフィンをしていて夕助と一緒に行ったりしています」 「なんか、改まって自己紹介していると合コンみたいだね」 俺がそう言うとみんな笑顔になった。 玲奈ちゃんと莉奈ちゃんに食べたいものを注文してもらっている間に姫矢先輩が話かけてきた。 「夕助、こんな可愛い子たちとどこで知り合ったんだ?」 俺は少し考えて答えた。 「玲奈ちゃんとは先日の停電の際、エレベーターで2人っきりで閉じ込められて知り合いました、莉奈ちゃんはその後彼女から紹介されたんです」 チラッと女子たちを見ると、メニュー表に隠れて何かコソコソ話をしている。 どう仕掛けてくるのだろう、もちろん援護射撃が必要ならするつもりだが。 食べ物の注文を終えた後も玲奈ちゃんが莉奈ちゃんに仕掛けるように促しているのが手に取るように分かる。 なぜなら、莉奈ちゃんの顔がみるみる真っ赤になっていくから。 読書が好きで図書館司書を目指すような大人しい莉奈ちゃんがベリアルに入って舞台上で暴れている姿は到底想像ができない。 その事実を知っていてもなお。 煮え切らない莉奈ちゃんのために俺は援護射撃をする。 「莉奈ちゃん、今日は大変だったね」 「はい」 “莉奈ちゃん話広げないと“ そう思いながら俺は続ける。 「今日は玲奈ちゃんの蹴りをモロに食らってたみたいだけど、大丈夫だった?」 俺の言葉に反応したのは莉奈ちゃんではなく、姫矢先輩。 「え?玲奈ちゃんと莉奈ちゃん喧嘩でもしたの?」 女子2人は首を振る。 そして莉奈ちゃんが説明を始めた。 「私がスカルゴモラで、玲奈ちゃんがウルトラマンゼロだったんです、ショーの中でキックをされて倒されてしまって……でも夕助さん、よく分かりましたね」 姫矢先輩は何を言っているんだといった顔で俺を見てくる。 「先輩、莉奈ちゃんと会うの初めてじゃないですよ」 姫矢先輩の表情から分かる事は完全に俺たちがトンチンカンな事を言っているとしか思えない顔になっていた。 莉奈ちゃんがやっと自ら動いた。 「姫矢さん、今日はありがとうございました」 莉奈ちゃんにお礼を言われてもなお現状の把握ができない姫矢先輩。 一方、玲奈ちゃんは俺にサムズアップして俺の援護射撃を喜んでくれていた。 莉奈ちゃんが語り出す。 _________ 今日はベリアルになって、鎖で縛られて南京錠をかけられた時からいつもよりキツかったんです。 腕は痺れてくるし、お腹の辺りも痛かったので嫌だなあって思ってて。 でもショーの時間ぐらいは耐えられると思っていたんですが、ショーが終わると南京錠の鍵が見つからず、スタッフ、出演者総出で探してくれたんですが、結局見つからなくて。 私はこのまま鎖で縛られたまま着ぐるみの中に閉じ込められてしまうのじゃないか、そんな事を考えていると不安で涙が溢れてきました。 そんな時、現れたのが姫矢さんだったんです。 誰にも助けられなかった私の元へ現れて、南京錠の鍵をいとも簡単切断して私を救い出してくれたんですから。 その時の姫矢さんは私だけのウルトラマンに見えました。 だから、午後のショーを上野さんの横にいるあなたの事を見つけて私は動けなくなりました。 そこへ玲奈ちゃんにキックされたという訳です。 __________ 莉奈ちゃんの説明を聞いて、姫矢先輩はようやく事の内容が理解できたようでした。 だが、核心が持てずに俺に聞いてきました。 「俺たちが助けた黒いウルトラマンの中の人って?」 俺はウンと頷いて「莉奈ちゃんですよ」 「ええ!本当に!」 姫矢先輩はビックリして立ち上がる。 そして、興奮して言う。 「あんな見た目の怖い黒いウルトラマンに彼女みたいな清楚で大人しい子が入ってたの?」 先輩はもはや思った事を全部口に出しているなぁと俺は思った。 「ギャップがあり過ぎて犯罪級だと思わないか、夕助」 俺の肩を先輩が前後に振るので、俺の頭は壊れた人形のように前後に揺れる。 「思いましたよ、俺も玲奈ちゃんの時同じ事を」 で、少し落ち着きを取り戻した姫矢先輩に莉奈が告白する。 「友達からで構いません、お付き合いしてもらえませんか?」 右手を差し出す。 姫矢先輩の答えは「お友達なんてなれませんよ、誰かに取られたくないので今すぐに俺の彼女になって下さい」 先輩は差し出された莉奈ちゃんの手を両手で握って「こちらこそ、よろしくお願いします」 と返した。 莉奈ちゃんは姫矢先輩の手を力強く握りながら言った。 「あなたは私のウルトラマンです」 莉奈ちゃんの声は小さく、舞い上がっている先輩の耳には届いていないかも知れない。 でも、気持ちはしっかりと届いたと思う。 「おめでとう!」 俺と玲奈ちゃんから祝福を受けて、2人とも顔を真っ赤にしていた。 その後、カップル同士隣になるように席替えをして楽しくお酒を飲み交わした。 次の日、姫矢先輩から点検後、14時からのウルトラマンショーを見に行こうと誘われた。 もう、先輩は莉奈ちゃんにメロメロだ。 俺に断る理由はない。 俺の玲奈ちゃんも出ているのだから。 午前中のショーもしっかりと見た俺は昼からのショーも楽しみにしながら、点検に出かけた。 完


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