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ごむらば
ごむらば

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売れなくなった女優

デビュー当初、ドラマや映画の仕事もかなりあった真由美だが5年ほど経った頃から仕事が激減していった。 真由美は可愛くスタイルも良かったが、身長だけは低かった。 初めは可愛さから仕事があったのだが、遅咲きで30歳が近づくと急激に仕事も減っていった。 それだけでなく、絶頂期に調子に乗り過ぎスタッフや周りの人間を粗末にしたことも原因の一因だろう。 最近では全く仕事もない中、ある映画の仕事の話が舞い込んできた。 役は”犬を愛する主人公に恋を抱く女性” ということしか情報がなかったので、断ってもいいとマネジャーからは言われたが、真由美は二つ返事で仕事を受けた。 しばらくして台本が届いた。 内容を確認して愕然とする。 犬を異常なほど愛していた主人公のマサルに不幸が訪れる。 それは愛犬の死、そんな時に出会うのがアユミ。 アユミの猛烈なアタックで2人は付き合うことになるのだが、マサルはアユミに自分の愛犬のように振る舞って欲しいと懇願する。 マサルはアユミに愛犬を重ね合わせていたのだ。 歪んだ愛とも知らずにアユミはマサルの言う通りにし、逆らえなくなっていく。 マサルを愛するが故に、断わることができず受け入れるアユミ。 そして2人は恋人同士なのだが、飼い主とペットのような主従関係になっていく。 次第に心が満たされたマサルはアユミを女性と見るようになり、2人は結婚してハッピーエンドというストーリー。 台本の序盤と終盤こそ、人としての役があったが、その他は犬として扱われることが大半となっていた。 しかし、真由美はマネジャーのアドバイスも聞かず独断で仕事を受けてしまった。 何より仕事をしなければ食べていくのもキツくなってきていたのも事実。 犬でもなんでも、真由美にはやるしかなかったのだ。 映画に向けて家の中で四つん這いになり、犬になりきり歩き回る練習をした。 しかし、普段全くすることのない姿勢のため、翌日には体のあちらこちらが筋肉痛になった。 そんな日々を過ごして一週間が経過し、クランクインとなった。 今売り出し中の俳優 優一との共演。 真由美より5つほど歳下だが、身長は40cmも高い180cmあった。 2人で並ぶとまるで子どもと大人。 そんな2人で撮影は進んでいった。 序盤の出会いのシーンと終盤のシーンを先に取り終えた。 撮影は進み、いよいよアユミがマサルの思いに応えてイヌにされるシーン。 台本には特に”イヌとして”との表記しかされていなかった。 真由美には首輪を付けられ四つん這いになりリードを引かれる程度にしか考えが及んでいなかった。 しかし、劇中ではマサルから「これに着替えて」と黒いラバースーツを渡される。 撮影現場では独特の雰囲気で真由美がそれを拒否できるはずもなく従う。 スタッフからは「ラバースーツに着替えたら教えて下さい」 そう言われて更衣室へと案内された。 ラバースーツに着替えて出てくると、女性スタッフに全身に光沢剤を塗られた。 恥ずかしいほどに黒光りする体でセットへと戻る。 そして、撮影のリビングのセットでマサルと向き合う。 撮影が再開、「よく似合うよ!それに綺麗だよ」 そう言われると、女性として悪い気はしない。 身長こそ低いがスタイルのいい真由美にとってこのラバースーツは少し小さいようで、シワがなくぴったりし過ぎていた。 恥ずかしいほど体のラインがくっきりと浮き出ているので、隠そうとすればするほど、『ピチピチ』と独特で卑猥な音に真由美は少し興奮した。 この格好のままイヌにされるのかと真由美が思っていると、マサルは座って腕を曲げるように指示してくる。 曲げた腕にマサルはラップをきつく巻いていく。 これも真由美の台本に記載はないが台本通り。 撮影は一旦止めてスタッフが、真由美の腕、そして足も曲げた状態でラップを巻きつける。 丁寧にしっかり、そして強く。 四肢を切られたようにラップを巻きつけられたところから再びカメラが回り出す。 「だいぶ、イヌに近づいたね」そういって微笑むマサル。 本心では泣きたくなっていた真由美だが、アユミとして笑顔を浮かべてマサルに擦り寄る。 マサルもアユミを抱きしめる。 「じゃあ、次はこれだね」そういってマサルは何かを広げた。 それは革でできたヒトイヌスーツ、外観は茶色。 ヒトイヌスーツの4本の脚にはそれぞれファスナーが付いている。 短く折り畳まれた真由美の手足を入れやすくし、着た後はしっかりと脱げないようにする為のもの。 アユミはラップでグルグル巻きにされた手足を革のヒトイヌスーツへとマサルに入れられていく。 正直、役とはいえ真由美には不安しかなかった。 ヒトイヌスーツに手足が収まるとお尻の辺りにあるファスナーがゆっくりと閉じられていく。 頭を残した所でファスナーは止まる。 そしてマサルはアユミに顔を近づけてキスをするシーン。 なんとも無様な格好だが、真由美は自分が女優である事を実感していた。 「じゃあ、これを咥えて」 キスを終えたアユミに猿轡がされる。 頭の後ろでしっかりと固定された猿轡に真由美は動揺しながらも演技を続ける。 「何か喋ってみて」 マサルの言葉に答えるようにアユミは喋ったが、アユミの声はイヌの声に変換されてしまっていた。 アユミは唸り声を上げてしきりに首を振る。 それはアユミとしての演技ではなく、真由美本人の叫びだったが、周りは演技として捉えて撮影は続く。 「そうかい、イヌに近づけて嬉しいんだね」 マサルはアユミの頭をポンポンしてから、水泳用のゴム製のキャップをアユミの長い髪を纏めて被せる。 さらにアユミの頭に目と鼻の穴しかあいていないラバーマスクを被せた。 ラバースーツ同様、サイズの小さなラバーマスクを被せられた真由美の顔は鼻は潰されて顔の凹凸がクッキリと浮き彫りになる。 首までラバーマスクをしっかりと被せたアユミを愛おしそうにハグするマサル。 真由美の中ではマスクで顔が見えないなら、私じゃなくてもいいじゃないと激しく抗議したが、その声はイヌの鳴き声でしかなかった。 マサルはヒトイヌスーツの小さくあいた覗き穴と鼻の穴を合わせるようにしてマスクをアユミに被せるシーン。 真由美はマスクを被せられるのが本当に怖くなり、演技でなく必死に本気で首を振って抵抗した。 しかし、共演者も含めスタッフ全員が迫真の演技だと真由美を賞賛したが、真由美にはそんな事はどうでも良かった。 マサルはアユミに革のヒトイヌスーツのマスクを苦労して被せると背中のファスナーを閉めていく。 真由美はゆっくりと圧迫されながら閉められるファスナーに何かえもいわれない不安を感じていた。 マサルはヒトイヌスーツのファスナーを全て閉めると真由美の頭の辺りで何かしている。 改めてヒトイヌとなった真由美を見て「よく似合うよ」と言って抱きしめた。 そして、小さな鍵をアユミに見せる。 「これ、何だと思う?」 真由美の台本にはイヌになって彼を喜ばせるとしか書かれていなかったので検討もつかない。 四つん這いで顔を上げて首を傾げるアユミ。 「これはね、ヒトイヌスーツのファスナーの鍵なんだ、ロックしたから、もう僕以外には誰もアユミを人間に戻せないよ」 そう言うマサルの顔は笑顔になっていたが、その笑顔は演技か優一の本心か分からないほどであった。 マユミは革のヒトイヌスーツの中で暑さと息苦しさ、そして手足の痺れと戦っていた。 汗がラバースーツの中を伝い短くなった手足の先へと落ちていく。 このヒトイヌ状態でもキツイが、実生活のことを考えると、これぐらいで根を上げていられない。 この厳しい状況の中、マサルに甘えるイヌを演じる。 「アユミも気に入ってくれたかい、俺も嬉しいよ」とマサル。 こんな顔も見えない状態なら、私でなくとも私と同じくらいの女性を代役を立てればいいのにと心の中で何度も思いながら演技を続ける。 そんな事を考えているマユミのイヌのシーンは続く。 真由美は手足の自由を奪われ、話す事も奪われた、本気でマスクを拒否したので、覗き穴がズレていてかなり見にくい、耳も革のマスクで外の音が阻害されている。 唯一頼りになる耳で、微かに聞こえるマサルの声を聞こうとする。 「 ……から………して、………からね」 何やらマサルが話しかけてくれているようだが上手く聞き取れない。 体がフワッと持ち上がり移動を始める。 仰向けに静かに降ろされる。 背中側が柔らかい。 四つん這いの時間が長かったので、凄く今は手足が楽だ。 大の字に寝そべると、短い腕や足に何かされている感触が伝わってくる。 そして、頭にも何か被せられた。 僅かな視界が闇に閉ざされて、音がさらに聞こえにくくなった。 顔全体が暑くなり呼吸も少し苦しくなった。 全く見えないし、これ以上抵抗すると撮影に支障を来すと思い、ジッとしているとさらに暑くなった感じがした。 何をされたか分からない真由美。 マサルはヒトイヌとなったアユミを抱き抱え 、仕上げとして犬を模したファースーツに閉じ込めたのだ。 頭には犬の頭の模造品を取り付けて。 腹側のファスナーは閉じられた後、縫われて完全にイヌにされた真由美の撮影は続く。 首輪をされた際、声を上げたがイヌの鳴き声しか出ない。 このドラマというのは嘘でCM撮影であった。 動物への虐待が増えてきているので、人間が犬になって、犬の気持ちを見ている人に理解してもらおうというもの。 小さなヒトイヌとなった女優は首輪をつけられて、街中を散歩する。 その姿は散歩というより、首輪をつけて引き摺り回されているだけ。 散歩で汚れた体に今度は水を掛けられて、綺麗に洗われるのだが、そこは寒い屋外。 体を震わせるイヌ。 それぞれのシーンにイヌを演じた女優である真由美のコメントが生々しく綴られてCMは終わった。 このCMを見て女優が体を張ってイヌを演じた事、また改めて犬の立場になって考えなければならないという声が高まった。 だが、実際には真由美はイヌになり犬の気持ちではコメントなどしていない、正確にはできない。 なぜなら、これは全盛期の真由美に嫌な思い、辛い思いに遭わされた人々が集まって作られたCMだから。 優一の姉は全盛期の真由美に虐げられ、芸能界を引退し精神的に病んでしまった。 他のスタッフも真由美に対して、好意的でない人物ばかりが集められていた。 マネジャーはその事に気付いて止めたのだが、真由美は自らそこへ飛び込んでしまったのだった。 屋外で汚れたイヌを洗った場所の近くの公園には薄汚れた歩き方の妙なイヌが住み着いているという。 完


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