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ごむらば
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ダイビングショップ 【前編】

私、綾子は大学の時にスキューバダイビングのサークルからダイビングを始めた。 在学中はダイビングショップでバイト。 いつかは自分の店を持つことを夢見て、大学卒業後はダイビングショップに就職した。 ライセンスは勿論だが自分の店を持てるようにと高圧の空気を取扱う資格やウエットスーツを作る技能も身につけた。 平日は店番で、土日はダイビングスクールで海へ出掛けることもある。 平日は暇なように思われるかもしれないが朝は商品が入荷すれば、値札をつけポップ広告を手書きで作る。 週末の夕方にはお客さんが増えるが、それでも閑古鳥が鳴いている時はウエットスーツを着ての呼び込みをする。 すると男性客が増え、そのまま接客をすることも。 それでも暇な時は大学生アルバイトの萌絵ちゃんとウエットスーツを何枚重ね着できるか挑戦してみたりしている。 ゆるキャラ人気がひと段落した感もあるが、やはり着ぐるみがいるだけでその場の雰囲気を一変するものがあるということで、お店のゆるキャラを考えて欲しいと店長から依頼があった。 暇な時間にアレコレ考えてみるが、良い案は早々に浮かぶわけもなく。 店長と従業員の直人さんと唯さん、それにアルバイトの萌絵ちゃんも巻き込んで試行錯誤した。 萌絵ちゃんは美大生ということもあり、ゆるキャラのイメージを絵にしてもらった。 そしてゆるキャラの案が4つ出揃った。 ①イルカをモチーフとした全身が水色でふっくらとした容姿のキャラ ②ウミガメをモチーフとした全身が黄緑色をした丸みのある容姿のキャラ ③人魚をモチーフとし、上半身はアニメ風美少女着ぐるみに下半身が人魚というキャラ ④アニメ風美少女着ぐるみにウエットスーツを着せたダイバーのキャラ この中から多数決で3票集めたのが④ダイバーのキャラクター、残り2票は①イルカのキャラクターとなった。 決定した美少女着ぐるみのダイバーキャラクターの名前がまず話し合われた。 海にまつわる名前として、キャラクターの名前は夏海と書いてナミと命名することになった。 さて、このナミの製作に当り難問が早くも浮上した。 美少女着ぐるみをどうやって作るか。 だが問題はすぐに解決した萌絵ちゃんのコスプレ仲間である友人にマスクだけ作ってもらえることになったからだ。 美少女着ぐるみのウエットスーツは私が作ることはすぐに決まり、新たに問題になったのは誰が着ぐるみに入るのか。 全員が顔を見合わせて譲りあう中、コスプレ経験もある萌絵ちゃんが自主的に手を挙げてこれもあっさりと解決した。 トントン拍子に決まることに気を良くした店長は、多数決で次点だったイルカもウエットスーツで作ってみたらと提案した。 このことで問題になるのは中に入る人。 こちらもあっさりと決まる。 イルカに入るのはショップ内でも若年者である私となった。 あと、イルカのキャラクターの名前だが、流線形の美しいイルカの見た目のイメージで流美と書いてルミと決まった。 次の日から暇な時間帯を狙って着ぐるみの製作を始めた。 まずは萌絵ちゃんの体の採寸を行い、そして美少女着ぐるみの体から作り始めた。 マスクはしばらくかかるようだったので。 まずはより肌に近い色のスキンスーツの素材を探した。 上手い具合にピンクがかっているが、色合いが肌に近いものを見つけた。 萌絵ちゃんの採寸に合わせて裁断しようとして思った。 これじゃあ、キャラでもなんでもなく萌絵ちゃんがウエットスーツを肌色のウエットスーツを着ただけになると思った。 慌てて店長に相談に行く。 店長に相談すると、マスクによって体型を考えてみてはどうかとアドバイスされた。 大学に行っているであろう萌絵ちゃんに連絡を取り、美少女マスクの完成したものはないから、完成したものに近いイメージのマスクの画像を送ってもらった。 萌絵ちゃんからも頭だけでは感じが出ないので体もウエットスーツで作って欲しいと要望があった。 送ってもらった画像には長身細身でメリハリのない萌絵ちゃんの体とはかけ離れたイメージのマスクの画像があった。 私は萌絵ちゃんにメリハリのあるセクシーな体に変身してもらうと勝手に決めて製作を再開した。 まずは萌絵ちゃんの採寸に合わせて薄いウエットスーツ素材でスーツを作った。 その上にネオプレーンゴムを貼り付けて、セクシー女性の体を作り上げていく。 胸とお尻周りは肉付きをよくし、腰回りは括れを作った。 こだわったのは胸のところにシリコンを入れて柔らかくしたこと。 セクシーな体の上からピンク色がかったスキンスーツを肌の切れ目を上手く消しながら仕上げていく。 ある程度まで仕上げだところで、萌絵ちゃんの友人が作っているマスクを私自身が見せてもらっていろいろ話せたことで当初考えていたものとは異なる仕上がりとなっていった。 つまりこの美少女着ぐるみをかなりこだわって作ったということ。 それは当初、一般的なウエットスーツや典型的な着ぐるみと同じように背中に縦一本ファスナーを付ける予定だった。 当然美少女マスクも体部分と一体化して。 しかし、後頭部を切り開くことができないことを知って体と頭を分割するしかなくなってしまった。 その時、サーフィンのジップレスのウエットスーツのことが頭に浮かんだ。 ジップレスのウエットスーツは、フラップを後ろから被るように頭を通すことでウエットスーツを着ることができる。 背中のファスナーを廃したことで、背中からの水の浸入がジップファスナータイプよりも少ないや動きやすいという利点があるが、今回は利点のためでなく見た目を良くしたい思いからジップレスにしたことはいうまでもない。 さて、美少女着ぐるみにこのジップレスをどう採用したかというとフラップに美少女マスクを取り付ける。 これを萌絵ちゃんが着ぐるみスーツを着て首の後ろに垂れ下がる美少女マスクを被る。 マスクの首の下に広がるヒダは着ぐるみスーツの中へと入れる。 そうすると、首と胸の境界辺りに切れ目が現れるのだが、そこは目立たないように着色した。 なぜ私が一体モノの着ぐるみにこだわったかというと、つい先日映画の補助的な仕事があり、着ぐるみを着て海に沈められる女の子を助けたことに端を発している。 その娘は人魚の姿をしたゾンビの着ぐるみを着て網に絡まったまま海に沈められた。 それを私が救出した。 ゾンビの着ぐるみを脱いだ彼女は可愛らしく思わず抱きしめたくなったが、初対面だったので控えた。 また、着ぐるみの中で苦しんで出てきた可愛らしい姿を見てみたいと思った。 だから、この美少女着ぐるみを着て出てきた萌絵ちゃんもきっと可愛いいと思うので、ギュッとしたいと考えていた。 美少女マスクの前に体の方が先に完成した。 それを見つけた萌絵ちゃんは一度試着してみたいと言いだした。 彼女の勢いに押されてフラップのところはまだ完成していないので、フラップは被らないという条件付きでOKした。 彼女は笑顔で美少女着ぐるみスーツに足を通す。 笑顔とともに彼女の顔が紅潮していることに気づいた。 “やはり!“ 彼女とふざけてウエットスーツの重ね着をしている時に、この子には全身を締め付けられ密閉されることに快感を覚えるタイプではないかと私は疑いをかけていた。 着ぐるみに入ることも自ら手を挙げたことも私の疑いを強くした。 萌絵ちゃんは着ぐるみの体だけを着用した。 顔と体の色は当然合っていないが、皺一つなく体だけを見ればピッタリしていて我ながらいい出来だと思った。 紅潮した萌絵ちゃんに聞いてみる。 「キツかったり、痛いところない?」 「いいえ、包まれている感があり凄くいい感じです」 「ところで綾子さん、この体の採寸必要じゃありません?」 萌絵ちゃんに言われて、ハッとした。 この着ぐるみにはまだウエットスーツを着せるのだ。 自分にはない大きな胸やプリっとしたお尻を触っている萌絵ちゃんに構わず採寸を済ませた。 「ありがとう萌絵ちゃん、すっかり忘れてたよ!」 私がお礼を言うと萌絵ちゃんは、採寸したサイズを教えて欲しいと言ってきたので教えてあげた。 なぜサイズを知りたいのか聞いたが、笑顔ではぐらかされた。 数日後、美少女マスクが届いた。 私は早速、フラップにマスクを取り付けた。 体の色に合わせて欲しいとサンプルを送ってあったのでほぼ肌の色の違いは分からないほどの出来栄えであった。 萌絵ちゃんは美少女着ぐるみの完成を察知していたように元気にやってきて試着をねだってきた。 私も初めて作った着ぐるみを着てもらい気持ちもあり、試着してもらった。 萌絵ちゃんは着ぐるみの上から着る水着を自ら用意していた。 彼女が採寸のサイズを知りたかったのはこのためかと、私はこの時気付いた。 水着は彼女が普段絶対に着ないだろうと思うメタリックピンクの水着で形は競泳水着タイプだが、背中にファスナーがあり首元まで締まるタイプのものであった。 萌絵ちゃんには美少女着ぐるみの試着をしてもらう。 着ぐるみを丁寧に持って、広めの更衣室へと萌絵ちゃんは消えていった。 彼女が着ぐるみに着替える間に、美少女着ぐるみに装備させるブーツ、フィン、マスク、シュノーケル、グローブを準備する。 準備が整ったところで更衣室に動きがあった。 顔まですべて覆われて萌絵ちゃんとは別のナミが私の前に現れた。 小顔で細身、長身の萌絵ちゃんがベースとなり肉付けしたナミは健康的でセクシー、バランスの取れた体つきだった。 萌絵ちゃんには悪いが本人より女性が見ても魅力的に見えた。 「どんな感じ?」 私がナミに問いかける。 ナミは黙ったまま直立している。 「萌絵ちゃん、苦しくない?」 それにはくぐもった声で 「ハイ、大丈夫です!」と。 「声が聞こえにくい?」 私の問いに萌絵ちゃんは 「いいえ、よく聞こえます」 続けて 「ナミは喋ったらダメかなぁって思って黙ってました」と。 「今は試着だから色々教えてね」 私の言葉に元気な返事が返ってきた。 ナミは姿見の前でいろいろなポーズを取ったり、体を不思議そうに触っていた。 それが終わると私の方を向いて 「水着を着てもいいですか?」 と聞いてきたので頷くと早速水着に足を通し始めた。 水着を着ながら萌絵ちゃんが話す。 「なんだか裸でいるみたいで恥ずかしくなってきて」 サイズをうまく選んだようで、ピッタリし水着はナミの体にオーダーしたようにフィットしていた。 背中のファスナーを閉めると、水着が着ぐるみの体に張り付くようになり、体の凹凸をより顕著にした。 メタリックピンクの水着はセクシーな体を引き締めて光沢が艶っぽく見えた。 「苦しくない?」 着ぐるみが水着で締め付けられたのをみて思わず声をかける。 「大丈夫です」 返ってきたくぐもった声は、少し気持ちよくなったのか上ずった声に聞こえた。 「どうする?ウエットスーツも着てみる?」 私は萌絵ちゃんが当然着ることを見越して聞いてみた。 答えは私の思った通り着るとの回答。 美少女着ぐるみ用に作った女性らしさが引き立つピンクを基調とし白いラインが入ったウエットスーツを準備する。 私がウエットスーツを広げて着るのを補助し、ナミはウエットスーツに足を通そうとしたが上手く通らない。 何度かチャレンジしてみたが、ウエットスーツもピッタリしたものを作ってしまったこともあり、着ることはできなかった。 美少女着ぐるみを着た萌絵ちゃんからは、荒い呼吸が聞こえてくる。 一向に進展しないので、一旦休憩を入れた。 休憩を入れたことで私に良いアイデアが浮かんだ。 それは美少女着ぐるみを脱がせて、ウエットスーツを着せてから再び萌絵ちゃんに着ぐるみを着てもらうというもの。 これならば上手くいきそうであるのと同時に、荒い呼吸をしていた着ぐるみの中の萌絵ちゃんがどうなっているのか見てみたい気持ちもあった。 水着のファスナーを下ろしお腹の辺りまで脱がせる。 次にお待ちかね、美少女着ぐるみを脱がせる。 息の荒くなっていた萌絵ちゃんはおそらく着ぐるみの中で汗だくで疲れているはず。 グッタリして出てきた萌絵ちゃんはきっと可愛いに決まっている。 そんな萌絵ちゃんに“大丈夫と優しく声をかけてギュッとする手はず。 美少女着ぐるみを脱がせる手にも自然と力が入る。 フラップからマスクをめくって、美少女着ぐるみのマスクを外す。 そこには真っ赤な顔の可愛い萌絵ちゃん! “ ! “ 「はへっ」 間抜けな声が出た。 美少女着ぐるみのマスクの下から出てきたのは黒いのっぺらぼうの頭。 「萌絵ちゃん?」 間の抜けた声のまま話かける。 「綾子さん、どうしたんですか?」 「あ、これ、私全身タイツ着ているです」 「着ぐるみの中が裸という訳にもいかないので」 萌絵ちゃんが話している間に、私は気持ちを落ち着かせ平静を装った。 「へー、そうなんだ萌絵ちゃん機転効くねぇ」 と私が褒めると、表情は分からないが萌絵ちゃんは照れているようだった。 いうまでもなく、私はガッカリしたがその後は萌絵ちゃんに気づかれないように普段どおりに振る舞った。 少しガッカリしながらも萌絵ちゃんの脱いだ美少女着ぐるみにウエットスーツを着せる。 先ほどとは違い中身のない着ぐるみにウエットスーツを着せることは容易にできた。 私が作業している間、全身タイツから萌絵ちゃんが顔を出してくれることを期待していたのだが、汗をかいて恥ずかしいと言って萌絵ちゃんが全身タイツから顔を出すことはなかった。 下半身だけウエットスーツを着た美少女着ぐるみを再び萌絵ちゃんに着てもらう。 全身タイツの滑りがよく、萌絵ちゃんは着ぐるみの中へスルスルと戻っていく。 先に美少女着ぐるみを着せてから、メタリックピンクの競泳水着も着せる。 ウエットスーツを着せようとした時、萌絵ちゃんから待ったがかかった。 それには彼女なりの狙いがあった。 ウエットスーツを上半身だけ脱いで、頭にはゴーグルとシュノーケル、グローブをつけていかにもダイビングやってます感を演出した写真を撮って欲しいと。 このイメージで店頭に立つと、お客さんを呼び込めるのではと。 そのため、美少女着ぐるみに着せる水着もメタリックピンクと派手なものを選んだのだと理解した。 彼女なりにいろいろ考えてくれていたことが嬉しくて「ありがとう」の声とともに彼女を思いっきり抱きしめた。 一応、ウエットスーツも着てみたが足ほど腕は苦戦せずに着せることができた。 ダイビングの装備を一通り装着した後の写真も撮影し、後で萌絵ちゃんが考えたイメージ写真とともに店長や先輩たちに見せることにした。 なぜかウエットスーツを着た萌絵ちゃんはテンションが上がり、そのまま店長に見せて来ますと言い残すと、店舗へ行ってしまった。 かなりの時間と労力を費やし着ぐるみは完成できた。 可愛い萌絵ちゃんをギュッとする目的を達成するために。 しかし、それはあっさりと打ち砕かれ、私は一気に疲れを感じ萌絵ちゃんのいなくなったバックヤードで一人イスに座り項垂れていた。 そして、力の入らない私の頭に浮かんできたこと。 それは私が入る着ぐるみをこれから作らなければならないということ。 正直、暑くて狭い着ぐるみには入りたくなかった。 あわよくば、美少女着ぐるみを見て店長がナミだけで充分だと言ってもらえないかとも考えた。 そんな時、後ろで声がした。 「綾子、凄いなぁ、あの着ぐるみ、見事な出来栄えじゃないか」 テンション高めの声に、テンションの落ちきった声で「ありがとうございます」と返す。 「もう一つの着ぐるみだけどなぁ」 もういいと言って貰えるのではと、顔を上げて店長の方を向く。 「期待してるから」 そう言って店長は店舗へ戻っていった。 店長がいなくなった後、イスからずり落ちて床でしばらく動けなかった。 とはいえ、次の日にはイルカのルミの製作に取り掛かった。 イルカの表面はスキンスーツを水色に着色し表面に特殊な加工を施したものを使用することにした。 特殊な加工をしないとすぐにキズがついて破れてしまうから。 さて、問題はどうやってふっくらとした形を作っていくか。 ネットからイルカの画像を見て参考になるものを探す。 そしてイラスト通りだと自分で歩けないのは不便。 いろいろと検索し良いアイデアがないか探すが、これといったものは見つからない。 イルカの着ぐるみが検索にヒットしたが、自分で歩けないのは不便ということもあり、尾ひれが二つに割れて歩けるものと尾ひれはそのままで、足が別に二本飛び出しているものがほとんどであった。 見た目を重視し、尾ひれはファスナーを付けて二つに割れて歩けるようにし、動かない時はファスナーを閉めて尾ひれに見せる方法を取ろうと考えた。 ファスナーは閉めると内側に入り込むようにして見えない工夫をすることにした。 さて、問題はイメージ図のふっくら感だが、ネット検索をし続けてあるものを見つけた。 それは夏のプールや海で見かける空気で膨らませるフロート。 ネットではシャチのフロートに加工を施し、中に人が入り膨らませていた。 中の人は圧迫感と息苦しさで前ひれ、尾ひれをパタパタさせていた。 見た目の可愛さに反して中では圧迫され押し潰され変な顔になりながらも暑さと闘い、新鮮な空気を求めている画を想像しているとなんだか興奮してきた。 今までは人が着ぐるみに入っていることに興奮していたのだが、気づけば自分もあの中に入ってみたいと思うようになっていた。 頭を大きく左右にふり、イルカの着ぐるみをどのように作るか思案するが、全く浮かんでこなかったので、この日は製作をしないことに決め、通常業務を行った。 一日置いただけでも頭はスッキリ。 フロートを購入してスキンスーツの素材を貼り付けてから膨らましてみた。 内側の空気の圧力で、接着したスキンスーツがところどころ亀裂が入り外れた。 フロートのビニールだけなら問題ないが、その上からウエットスーツの素材を貼りつけると素材の伸びが違うのでこうなるのではないかと予想した。 実験してみるとやはりその通りとなった。 フロートで膨らませる方法は空気の入れ方にも個人差が出るので難しいとは思っていたのでこの案は却下となった。 最終的に取った方法は、スキンスーツでイルカの形を作ってから、私の代わりにマネキンを中に入れてから、発泡ゴム スプレーで膨らませることにした。 発泡ゴムはスキンスーツと融着することを確認してから行った。 もちろん、一気に噴射してしまうとイルカの着ぐるみからマネキンを取り出せなくなってしまうので、マネキンを上半身と下半身に分けて発泡ゴムをイルカの着ぐるみの中へと注入した。 発泡ゴムは固まり、イルカの中で私の入るスペースをマネキンが成型してくれた。 ここから着ぐるみの中を加工する。 私よりも細身のマネキンだったので、このままでは中に入ることができないので、自分の体が入るように削っていく。 私自身の体を中に入れてを繰り返し、適度な大きさへと調整を行った。 何度か調整後、イルカの中にすっぽりと収まった。 包まれる安心感と程よい圧迫感が堪らない。 今までそんなことを考えたことは一度もなかった。 イルカの着ぐるみはまだ未完成でお腹側が大きく開いている状態。 今よりももっと圧迫されて呼吸が苦しくなることを想像しただけで濡れてきた。 それは自分でも信じられなかった。 明日に仕上げと試着の楽しみを残して、今日の作業はここまでにした。 イルカの着ぐるみも完成に近づき、お腹の開いた開口部にファスナーを取り付ける。 もちろん、閉めると内側に入り込み見えなくなるようにして。 早朝一人で楽しみながら試着してみることにした。 開口部のファスナーは中から閉めることができるように作ってある。 尾ひれは二つに分かれるように作ってあるので片足ずつ入れていく。 頭を含め体全体を着ぐるみの中にいれると、あの安心感と圧迫感が私を包む。 取り付けたファスナーを力いっぱい引き上げると、お尻の辺りから体の上へと締め付けが押し寄せてくる。 その快感を体全体で受け止めて、ファスナーは閉じられた。 部屋には可愛らしい水色のイルカ ルミが尾ひれでバランスを取って立っていた。 目の前の姿見には我ながら上出来の着ぐるみのイルカが映っている。 前ひれが不自然に垂れ下がっているので、腕を通すことにした。 しかし、無理に腕を前ひれに入れようとしてバランスを崩して仰向けに転倒した。 尾ひれのファスナーを開けておくことを忘れていたのだ。 発泡ゴムのおかげで痛くはなったが、両腕が転倒の勢いでしっかりと奥まで前ひれに入ってしまい簡単には抜けそうにはない。 腕を曲げて前ひれから引き抜こうとするが、仰向けになった今の状態では床が腕の可動域を制限する。 うつ伏せの状態に戻そうと体を左右に振ってみる。 丸みのあるイルカは大きく左右に揺れるもののうつ伏せに戻すことはできなかった。 着ぐるみ越しに天井を眺めて冷静に対策を考える。 店舗の営業時間内ならば誰かいるので、暴れていれば気づいて助けてもらえるかもしれないが、早出して着ぐるみを楽しもうと考えたのが仇となった。 【中編】につづく


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