SamSuka
ごむらば
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ダイビングショップ 【中編】

冷静を装うとしているが、全く冷静でないことは自分が一番分かっていた。 今の私に出来ることは二つ。 一つは全力でうつ伏せになり、腕を前ひれから抜いて着ぐるみから出ること。 もう一つは誰か出勤するまで、着ぐるみを存分に楽しみながら待って助けてもらうこと。 私は後者を選ぶことにした。 ある意味冷静になると着ぐるみの中の包まれる安心感とより強い圧迫感、そして息苦しさを楽しめた。 アソコが濡れているのが分かる。 “手で弄りたい!“ しかし、手を持っていくことができないので足を動かして着ぐるみに擦り付けるようにしてみる。 初めての着ぐるみの感覚に異常な快楽を覚えた私にとっては当たるか当たらないような擦り付ける感覚でも、逝ってしまうには十分な威力だった。 誰もいないのは分かっているが、職場ということで声は必死に抑えた。 息苦しさと暑さの増した着ぐるみの中で、快楽の余韻に浸る。 が、一つ大変なことに気がついた。 誰か出勤して助けてもらうにしても、今着ぐるみの中は私の愛液の匂いが充満している。 熱を帯びた体から血の気が引いていくが分かる。 “ダメだ、早く着ぐるみから出ないと!“ まだ汗の止まらない体を左右に振って、うつ伏せに戻そうと試みる。 先ほどより必死になったおかげで、あと一踏ん張りでうつ伏せに戻れそうなところまできた。 “ドン!“ 大きな音とともにうつ伏せに戻ることができた。 「ハァハァハァ」 呼吸が整わない。 しばらく、うつ伏せのままジッとして呼吸を整える。 ある程度、呼吸が落ち着いたところで体を捻りながら右腕を抜く。 “ギュッギュッギュ“ 汗をかいて滑りがよくなったのか分からないが、音を立てて腕が抜けた。 「やったぁ!」 思わず声を上げる。 右手で探りながらファスナーを探る。 “あった!“ “これで着ぐるみから解放される“ そう思いファスナーのつまみを持って力を込めた。 “ん!“ “動かない!?“ 「なんで?ファスナーが噛んだの!」 悲痛にも近い声を上げる。 何度も右手の指先に力を込めて開こうとするが全く動かない。 嫌な汗が全身の毛穴という毛穴から噴き出るのを感じる。 “最悪だ!“ “どうしよう!!“ やれる範囲のことをやり尽くしてしまった私は脱力し動けなくなってしまった。 みんなが出勤するまで待つしかない。 しかし、そんなことをしたら着ぐるみの中で逝ってしまったことがバレてしまう。 仮にみんなが出勤してもファスナーのつまみは内側についているので、開けることができないかもしれない。 そんなことを考えていると疲れが押し寄せますます動けなくなってしまった。 疲れきって眠ってしまったのか、着ぐるみを小突く感覚で目が覚めた。 もう、動く力も残っていない。 体が横にされる。 着ぐるみの覗き穴から見えたのは店長。 店長の様子から着ぐるみを開けようとしている。 「ダメ!」 声を上げて左の前ひれをパタパタさせるが、抵抗にもなっていない。 ファスナーを見つけ出した店長は、外側から何かしたかと思うとファスナーが開いていく。 それとともに冷たく新鮮な空気を感じる。 愛液の匂いを誤魔化すために、素早く顔を出す。 「おはようございます!」 勢いよく飛び出したことで面食らった店長。 「あ、お、お、おはよう!」 と返してきた。 “なんとか誤魔化すことができた!“ 「どうです?イルカのルミの出来は?」 誤魔化すために若干早口になる。 「上手くできたなあ!」 店長は感心した様子で答えた。 “誤魔化せた“ と安心した時。 「ところで」 と店長が私の方を向いて何か言いにくいそうに話し始めた。 “やっぱり、バレたか!?“ と思ったが店長の発した言葉は 「綾子、髪ボサボサで汗だくだからシャワー浴びて来い」だった。 私は着ぐるみを脱ぐと 「シャワー浴びてきます」 と店長に声をかけ、 「着ぐるみの中、汗だくで恥ずかしいから見ないで下さいね」と言って、その場を離れた。 一時はどうなるかと思ったが、なんとか乗り切れた。 着ぐるみの試着で汗をかくことは想定していたので水着を着ていてよかった。 裸で着ぐるみに入っていたら大変なことになるところだったと思いながらシャワーを浴びる。 シャワーから戻ると店長が着ぐるみの中を見ていた。 私は焦りながらも「恥ずかしいから見ないで下さいよ」と店長に声をかけた。 店長は振り返ると真剣な表情で「綾子、おまえ」とこちらを見てきた。 “完全にバレた!“ 私は下を向いた。 「綾子、おまえ俺のこと、どう思う?」 “え!?“ 顔を上げると、店長の顔は赤く緊張しているのが分かった。 「どう?と言われましても凄いダイバーだし尊敬してます、憧れです」 と答えた。 「いや、そうじゃなくて男として」 店長が少し下を向く。 「綾子のこと、好きなんだ」 「え!」 言葉に詰まってしまった。 確かに店長には憧れており、好きという気持ちはあったが手の届かない存在に感じていた。 だから、自分でも恋愛感情を抱かないようにしていた。 そんな店長から告白されている。 想像もしていなかった事実を突きつけられ、私は急に顔が熱くなった。 「私も店長のこと、好きです!」 店長は私をバスタオルの上から抱きしめた。 私も店長に抱きついた。 急に幸せに包まれ、これもイルカの着ぐるみのおかげだと感謝する。 幸せに浸っていたがふと時計を見ると営業時間の1時間前、さすがに誰か出勤してくる。 「店長、もう誰か出勤してきますよ、私早く着替えないと」 そう言ったが店長は変わらず私を抱きしめたまま。 「あのー」 無理に引き離すこともできないでいると、店長はそのままで。 「今日は定休日だよ」と。 「あ!」 確かに今日は定休日。 着ぐるみのことに気を取られて定休日のことを忘れていた。 そこで一つの疑問が浮上してきた。 “どうして店長は出勤していたのか?“ 疑問をそのまま店長にぶつけてみた。 店長からは自分も思ってもいなかった回答が返ってきた。 それは、店長が私用で出かけている途中で私を見かけた。 私が笑顔でウキウキした様子で歩いているのを見て、デートかと思い後をつけた。 ところが入っていったのは職場であるダイビングショップ。 すぐに出てくるかもしれないと思い、しばらく待ってみたが出てこないので、店に入って私を探したらイルカの着ぐるみに入って出られなくなっていた。 ということだったが、問題は店長にどこから見られていたのかだ。 恐る恐る聞いてみる。 店長によると、店内に入ると私が着ぐるみを製作に使っている部屋の方からパタパタと音がしたので行ってみた。 倉庫の中では可愛い水色のイルカが、仰向けの状態で前ひれと尾ひれを動かしていた。 しばらく、パタパタしている動きからうつ伏せになりたいのだろうかと思って見ていると、仰向けのまま動かなくなってしまった。 しばらく様子を見ていたが、全く動く気配がないので心配になって部屋に入り近くと荒い呼吸をしていた。 しかし、その呼吸がだんだんと違うものに変わっていったと。 そこまで聞いて店長を制止した。 その先は言わなくても分かる。 自分のしたことだから。 それよりアレを店長に聞かれたことに顔が紅潮する。 「店長、私、あのー」 次の言葉が出てこない。 「俺も気持ちは分からなくもないよ」 「それに綾子を好きな気持ちに変わりないし、むしろ好きになったぐらいだ」と 頭を掻きながら照れたように店長は言った。 自分の覚醒したばかりの性癖を知られたのは、正直複雑な気持ちではあるが店長が受け入れくれたことは嬉しかった。 気不味い空気が流れる。 話題を変えたくて店長に聞いてみた。 「私用は大丈夫なんですか?約束があったとか?」 「あ!忘れてた、ちょっと電話してくるわ」 店長はそう言って部屋を出ていった。 ホッとして近くにあるイスに座る。 戻ってきた店長に聞いてみた私用は何だったのか。 店長は少し恥ずかしそうにフィギュア集めが趣味であることを教えてくれた。 そして店長の幼馴染の芳江さんとその夫が営んでいるおもちゃ屋にフィギュアを取りに行く約束をしていたということだった。 このままだと、気不味い空気が続きそうに思えたので店長に提案してみる。 「私もそのフィギュア見せてもらってもいいですか?」 「ああ、構わないけど、着ぐるみの方はいいのか?」 「はい!今日は休みですし」 笑顔で返すと店長も笑顔を返してきた。 すぐに髪を乾かし着替えて2人でおもちゃ屋へ向かう。 道中、店長とダイビング以外のことをあれこれ話をした。 【後編】につづく


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