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ごむらば
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金ピカの置物の中身は?

「菊川くん!君、一度やってみたいと言っていたね」 「ハイ!社長!」 「今日は夕方に岸田さんとの打ち合わせが入っているだけで、それ以外は何もないので一度体験してみるか?」 「是非、是非!」 菊川 紗羅(きくかわさら)のテンションは上がっていた。 着ぐるみやイベント用の置物を製作するこの会社に紗羅が入社したのは、着ぐるみに入ったりできると思っての事だった。 実際にスーツアクターとして演技をしたり、動き回るほどの運動神経も自信もなかった紗羅はこの会社で着ぐるみがどんな感じなのかを体験してみたくて入社した。 だが、現実は事務作業に追われ忙殺されていた。 今日は社員のほとんどが休みで、社長と紗羅、それに事務の先輩の若槻 史織(わかつきしおり)だけが出社していた。 事務作業が残っていた分も午前中で終わり、昼から夕方まで時間が空いたため、社長が紗羅に声を掛けたのだった。 社長は奥から金ピカのオスカー像のようなものを出してきた。 そのオスカー像は女性で胸がある。 台座の高さは20cmほど、台座ほどの高さの物に乗ってみると、紗羅の身長とほぼ同じくらいの高さだった。 「この金ピカの置物になって、岸田さんを迎えてみないか?」 紗羅は嬉しそうに頷いた後、少し首を傾げた。 「あれ?菊川くん、岸田さんの事… 」 社長はワザとそこで止めた。 「社長なんで?」 紗羅の顔は真っ赤になっている。 「菊川くんは分かりやすいからね、岸田さんが来た時の対応は他の来客とは明らかに違うから、そうかなっと思っていたんだが、正解だったかな?ハハハッ」 さらに顔を真っ赤にする紗羅を他所に社長は若槻史織に声を掛けた。 「若槻くん、菊川くんの着替え手伝って来てもらえるかい?」 「はい、社長」 「さあ、行きましょう紗羅ちゃん」 史織は紗羅の事務の先輩、史織もまた着ぐるみに入れると思い、この会社にやって来て何度も着ぐるみに入っている、言わば経験者だ。 史織に手を引かれて紗羅は更衣室へと向かった。 更衣室に入ると紗羅が聞いた。 「史織さん、私、岸田さんが来た時の対応っていつもと違ってますか?」 「ええ、社内のみんな分かってるわよ、だから岸田さんが来ても誰もお茶を持って行かないでしょ、紗羅ちゃんのためにみんな気を遣ってるのよ!」 「えーえっ!」 事務所内に響くような声で驚く紗羅。 そして、さらに顔を真っ赤にして俯いてしまった。 そしてボソリ。 「そうだったんですね」 「さあ、着替えようか紗羅ちゃん、早くしないと岸田さんが来ちゃうぞ」 「もう、史織さん!」 こんなやり取りをしながら着替え始める紗羅。 今回、紗羅は置物にされる。 着ぐるみと違って置物は動かなくていいので、演じなくても中の人を経験できる。 ただ、【モノ】にされるのにはそれなりに時間を要するため、今日みたいに時間がある時は体験するのには打ってつけだ。 まず紗羅は史織に促されるまま全裸になり、金色のラバースーツを着る。 史織の指導の下、全身にドレッシングエイドを塗り足を通していく。 金色のラバースーツは全身一体型でマスクは目のところは分からないくらい細かな穴、そして鼻には呼吸のための穴がしっかりと開いていて、口はラバーで覆われている。 目と鼻の位置を調整すると、背中のファスナーが史織によって閉められた。 「これ、凄いですね、肌に張り付く」 紗羅はくぐもった声でそう言いながら自分の体を触っている。 紗羅自ら体を触った事で、ラバースーツの表面に着用時についたドレッシングエイドを伸ばす形となり、体の所々が光沢がで始めた。 全身一体型のラバースーツを着たのは、汗を外へ逃がさないためのもの。 【モノ】が汗をかくことはないからだ。 「じゃあ、社長の所へ行きましょうか」 少し恥ずかしい紗羅は隠しきれない体を手で隠しながら社長の元へ向かう。 社長は金ピカの置物と同じ台座を準備していた。 違うところは台座から伸びる板状の金属棒、長さは紗羅の頭ほどある。 置物は固定する必要があるので、この板状の金属棒に固定されるのだと紗羅は思った。 社長は紗羅に台座に上がるように言う。 紗羅は台座に上がると身長を計るように、板状の金属棒に背中を押し当てる。 「そのままで!」 社長はそう言うと、工具を使って紗羅の背中側に板状の金属棒が沿うように加工していった。 一通り加工し終えると、社長からOKが出て、紗羅は台座から降りた。 その後も社長は板状の金属棒の微調整を行なっていた。 史織は金色のゼンタイを用意して待っていた。 ゼンタイは紗羅の顔を覆い隠しノッペラボウにしてしまうタイプのもの。 金色のラバースーツを着た紗羅に金色のゼンタイを着せるのを手伝う史織。 「なんか、私どんどん【モノ】になっていっている気がします」 紗羅の声は楽しげだった。 ゼンタイをマスク以外着た時、史織がチューブを取り出した、そして紗羅のラバーマスクに開いた鼻の穴へと入れようとする。 「あのー、ちょっと待って下さい史織さん、自分でやります!」 紗羅は史織を制止し、自分でチューブを穴へと差し込んだ。 なぜチューブが必要かというと、今着ているゼンタイが布ではなく、特殊なレザーだから。 このレザーは熱を通しにくいもので、最後の工程で必要になる。 当然、レザーのゼンタイを着ると呼吸ができなくなってしまうため、ラバーマスクの呼吸口である鼻の穴にチューブを差し込んだのだ。 史織は紗羅の鼻から伸びるチューブをゼンタイの右腕に通していく。 そして、肘のところまで来ると小さな穴を開けてチューブを外へ出しだらんと垂れさせた。 こうして呼吸を確保してから、ゼンタイを着せていく。 特殊なレザーゼンタイを着た紗羅は視界を奪われた。 そんな状況にも関わらず、紗羅は楽しんでいるようだ。 それに気持ちいいのか、ラバーとレザーの重ね着で全身を覆われているのに、乳首がしっかりと勃起しているのが分かる。 社長も史織も準備が整ったところで、史織が紗羅の手を引いて台座へと誘導する。 そして、板状の金属棒に沿うようにして立つ。 史織が視界の奪われた紗羅がバランスを崩さないように支え、社長は紗羅の足元から板状の金属棒を巻き込みながら紗羅の体にラップを丁寧に丁寧に巻いていく。 このラップも特殊なもので、単独ではただのラップなのだがもう一つのラップを重ねて巻くと化学反応を起こして硬化する特性を持っている。 さらに、硬化すると透明度が増す。 つまり、金色のゼンタイがそのまま前面に現れるのだ。 その際に熱が発生する、火傷を負うほどのものではないが念のため特殊なレザーで紗羅の体は保護している。 足はピッタリとくっつけて、ラップが巻かれていく。 腕は胸の下辺りでクロスさせて巻いていく。右肘から伸びる呼吸用のチューブは邪魔にならないように史織が手に持っていた。 下地のラップを巻いただけで紗羅は身動きが取れなくなった。 それは狭い間隔で社長が丁寧にラップを巻いたから。 これだけでも社長の額には汗が滲んでいた。 さらに仕上げのラップを巻き付けていく。 巻き付けて少しすると音がする。 早速、化学反応が始まった。 下地のラップを巻いた時点では白っぽく見えていたのだが、仕上げのラップを巻くことでレザーゼンタイの金色が綺麗に出てきた。 こうして、最後まで仕上げのラップを巻いてしばらくすると、硬化が始まり紗羅の全身が固まり金ピカの置物となった。 「紗羅ちゃん、綺麗よ!」 史織の言葉に対して金ピカの置物から唸るような声が聞こえてきた。 紗羅に史織の声は届いているようであった。 「あっ、そうそう」 史織は思い出したかのようにそう言うと、ハサミを持って来て、金ピカの置物の肘から伸びるチューブを切断した。 「これで、完全なる【モノ】ね」 腰に手を当てて頷く史織。 その言葉にお股の辺りが熱くなるのを紗羅は感じていた。 こうしてできた紗羅の入った金ピカの置物を台車に載せて、受付へと移動させる。 「岸田さんとの約束の時間まであと1時間だからね」 社長の言葉。 続けて、史織が言う。 「岸田さんが来ても、自分をアピールしちゃダメよ紗羅ちゃん!」 史織の言葉に唸り声を上げて抗議する紗羅。 それには全く相手にしない史織は、「【モノ】にしっかりとなり切ってね」と言い残して去っていった。 2人が去って急に静かになる受付。 “なんだか少し暑くなってきたなぁ“ “岸田さんまだかなぁ?“ 紗羅は拘束されて動けない体でそんな事を考えていた。 ラバースーツの中を汗が流れて、足に溜まっていくのが分かる。 “【モノ】になるっていうのも大変だ“ 紗羅がそんな事を考えていた時だった。 受付の扉の開く音がして、人の足音が聞こえてくる。 すぐ近くで足音は止まったが音はしない。 “私を見てくれているのかなぁ“ 紗羅がそう思っていると、内線のプッシュ音が聞こえてきた。 “そんな事ないか、岸田さんは仕事で来てるんだもんね“ 紗羅は自分に言い聞かせるようにそう思った。 内線の呼び出し音が微かに聞こえてくるが、社長も史織さんも内線には出ない。 “どうしたのだろう?“ “もしかして、私と岸田さんを2人きりにするために内線に出なかったのでは?“ そんな紗羅の想像が岸田に伝わる事は当然なく、紗羅の耳にはベンチにカバンを置く音と岸田の座る音が聞こえてきた。 “岸田さん、スマホのゲームにハマってるって前に話した事があったから、こんな時間潰しにはもってこいだよね“ 紗羅がそんな事を考えていると、声が聞こえてきた。 「ん?  あれ?」 岸田の独り言だが、何か異変を察知したようだ。 ベンチから立ち上がる音が聞こえる。 紗羅は慌てて静かにゆっくりと呼吸をして音を消した。 “気を抜き過ぎてた、私は今は置き物なんだ“ 静かにゆっくりと呼吸をするがだんだんと苦しくなってきた。 気を失っては元も子もない。 「フゥー、フゥー、フゥー」 先ほどよりは音は出てしまったが大丈夫だろうと紗羅は楽観視していた。 ただ、岸田がベンチに座る音は聞こえてこない。 それに近くに人の気配がするような気がした瞬間だった。 呼吸穴が塞がれたが、紗羅は自分が【モノ】であるため、息を止めて【モノ】になりきる。 だが、息を止めているのもそんなに長くは続かない。 もうダメだと思った紗羅は目一杯吸い込んでいた息を吐き出すが、吐き出せない。 ならばと吸い込んでみるがこちらも無理。 “ヤダ、私【モノ】として死んじゃうよ“ そう思った時だった。 社長の声がした。 「やあ、岸田さんお待たせしたね」 岸田の指が呼吸穴から離れて紗羅は呼吸ができるようになった。 それでも、深くゆっくりと極力音は出さずに呼吸する。 「お忙しいところ申し訳ございません」 “岸田さんの声だ、岸田さん私のすぐ近くにいたんだ“ 呼吸を止めていたのが岸田と分かるとテンションの上がる紗羅。 そんな紗羅の耳に社長のとんでもない言葉が飛び込んできた。 「岸田さん、その置物気に入ったのかい?試作品だけど良かったら持って帰ってもいいよ!」 驚きのあまり、妙な呻き声を上げる紗羅。 その声に岸田が気づいたかまでは分からない。 「え!いいんですか?」 岸田のテンションの高い声が聞こえてきた。 “社長、ダメです、勝手に私を岸田さんに上げないで下さい!“ 紗羅の声も気持ちも社長には届かない。 「ああ構わないよ、先に用件を済ませてしまおう、応接室を取ってある」 社長と岸田の声が遠ざかっていく。 “えー、私どうなっちゃうの?岸田さんの家の置物にされちゃうよ!“ そんな事を考えていると、台車の音が近づいてくる。 「紗羅ちゃん、ちょっと衝撃があるかも」 史織の声が聞こえた。 すぐに体が斜めになり、背中側に衝撃を感じる。 そして、紗羅の体は斜めになりながら運ばれていった。 紗羅を金ピカの置物にした作業場まで運んできた史織が声を掛ける。 「紗羅ちゃん、そのままちょっと待っててね」 そう言うと、台車の音が遠ざかっていった。 “あ!社長が岸田さんに置物を持って帰ってもいいと言ってたから、史織さん代わりのものを置きにいったんだ“ 紗羅の思った通り、史織は金ピカの置物を受付にセットして戻ってきた。 「どうだった、岸田さんと2人きりで受付でいるの、ワクワクした?」 紗羅は唸り声を上げて何か言おうとするが言葉にならない。 「すぐに出して上げるから待ってて」 史織はそう言うと、硬化したラップを専用の薬剤を用いて、元の柔らかいラップへと戻した。 こうして、自由を取り戻し動けるようになった紗羅のレザーのゼンタイも脱がせてもらい。 ラバースーツのマスクも脱いだ。 紗羅は汗だくになっている。 「暑かったでしよ!私もやった事あるけど結構キツイでしょ!」 疲労を隠せない紗羅は言葉なく頷くだけだった。 少し休憩した後、史織が声を掛けてくる。 「もうすぐ打ち合わせ終わりそうよ!」 紗羅は腰までラバースーツを脱いでいたが、もう着替えている時間はなさそうだ。 上半身はいつもの事務服を着て、下半身は金色のラバースーツを着て自分の席へと向かう。 来客がカウンターの中まで入ってくる事はないので、見られる事はないが、後ろの席の史織から紗羅の姿は滑稽でしかなかった。 応接室から社長と岸田さんが出てきた。 紗羅は岸田と目が合うと笑顔で会釈をし、岸田も笑顔で会釈を返してくれた。 そんな岸田の顔はどこか、ワクワクした少年のような表情をしていた。 受付まで送って行った社長が慌てた様子で戻ってくる。 それを見た史織はすぐに台車だと気づき、社長に手振りで台車の場所を示し、社長もそれを理解したようで、“ありがとう“といった手振りで台車を押して行ってしまった。 しばらくすると、エンジンの音が聞こえた。 紗羅は席から立ち玄関へ。 社長と並んで角を曲がる岸田の車を見送った。 「菊川くん、彼に気づいて欲しかったのかな?」 社長は真っ直ぐ前を見たまま、紗羅に話し掛ける。 紗羅は顔を真っ赤にして答えた。 「そんな事ないですよ」 おしまい


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