異質な存在【前編】
Added 2022-08-07 15:00:00 +0000 UTC私はグラビアアイドルから転身した新人女優 武上 絢香(たけがみあやか)20歳。 女優になって初めての仕事が学園ものの映画への出演、しかも主人公という大役を任された。 家に帰り早速、渡された台本に目を通す。 映画のストーリーは私が演じる【異質な存在】の女子高生の学園生活を描くもの。 そして、【異質な存在】の私に興味を持った男子生徒に付きまとわれて、距離を取ろうとしていたがある事件をキッカケに距離が縮まり付き合うというごくありがちなストーリーである。 気になるのは【異質な存在】。 どんなものだろうと台本をめくっていくと、ラバーキャットスーツという文字が点在しているのが目についた。 ラバーだからゴムの光沢あるスーツを想像する。 グラビアの時にもラバー製の水着を着たり、エナメルのキャットスーツを着て撮影する事は何度かあった。 台本を置いて、スマホでラバースーツを検索すると、さまざまなラバースーツ画像が出てきた。 主に黒いラバースーツが多くあり、中には全身が黒いラバースーツに覆われているものもあった。 こんな感じなのかなぁ?と横になりながらラバースーツの検索を続けながら、異質な存在だから、やっぱり私がこんな格好で学園生活を送るのだろうな思った。 映画の撮影のため、私は今控え室にいる。 思っていた格好とは少し違う。 普通のセーラー服を着て出番を待っている。 ラバースーツを着るのはプライベート、もしくは学園生活が進むに連れて、本来の主人公のフェチであるラバーを着るのかとも考える。 今日は主人公である私が学園に転校してきて、教室で紹介されるシーンからの撮影。 スタッフに呼ばれてセットの組まれた教室へと向かう。 廃校になった学校を貸切にしての撮影。 教室の前には黒い人影が立っている。 スタッフが黒い人影を紹介してくれる。 「担任の鳴沢先生です」 スタッフに紹介された黒い、いや黒光りした人影は「よろしくお願いします」と挨拶してきた。 顔はノッペラボウだが、口の辺りが少し動いた。 それにそこから発せられた声を裏付けるようにくぐもった女性の声だった。 私は呆気に取られながらも遅れて挨拶をする。 そして、簡単な段取り確認をする。 「まず、私が先に教室に入って、名前を呼びますので入ってきて、黒板に名前を書いて挨拶して下さい」 「後は台本通りやっていきましょう!」 慣れた感じなので、先輩の女優さんだとは思うが顔が見えないので誰か分からない。 役の流れは台本を頭に叩き込んできたので大丈夫なのだが、この鳴沢先生の姿が気になって仕方ない。 メリハリの利いたバランスの取れた体に、黒光りするラバースーツを纏い、足元は黒光りすりラバーに合わせた黒光りするエナメルのハイヒール。 服も黒光りするレザーの膝丈のワンピースに、同じレザーのジャケットを着ている。 顔も手も足も人間の肌の露出は一切なく、人間味が全くない。 「あの……… 、苦しくなっ……」 私が鳴沢先生に質問しようとした時、カチコンが鳴った。 鳴沢先生は教室の扉を開けて、中へ入っていった。 鳴沢先生が少し開けてくれている扉から自分が呼ばれるのを待つ。 少ししてから呼ばれる。 「武上さん、入って!」 くぐもっているが、よく通る声だ。 私の役は苗字だけ芸名を浸透させるためにワザと同じ名前にしてもらっている。 名前は武上絢香。 私は教室の扉を開けて中へと入る。 そして、固まってしまった。 教室の中に座っていた生徒全員がラバースーツ姿に、ブレザー、男子はズボンで、女子はスカート。 いずれも顔はノッペラボウ、目も鼻も口も見当たらない。 鳴沢先生だけだと思っていたが、ここでようやく気づいた。 ごく普通の存在こそがココでは【異質な存在】になる事を。 映画という事を忘れて茫然としていると、鳴沢先生が声を掛けてきた。 「どうしたの?緊張してるの?自己紹介して」 促されるまま、黒板に向かい自分の名前を書く。 「武上絢香です、よろしくお願いします」 頭を下げて目を瞑った。 聴こえてくる声はごくごく普通の高校生の会話、もちろん台本の通りに話していだけだと思う。 しかし、視覚をオンにすると、私はすごく異質な中にポツンと置き去りにされたような気分になる。 「じゃあ、武上さんの席は真ん中の後ろから2番目ね」 鳴沢先生に指定された席につくと、周りからすぐに話しかけられる。 前から振り返って「俺、中村よろしく」 左隣からは「私は、谷中真琴っていうの、困った事があったらなんでも言ってね」 後ろからは「俺は後藤ってんだ、何処から来たんだ?」 全て台本通りだが、私はドギマギして話せない演技をする。 「武上さんが困ってるでしょ、あんたたち」 私の右隣の女の子が男子を注意する。 「私は山岡智沙、よろしくね」 山岡智沙は親友となる人物なのだが、みんな顔がノッペラボウで着ているものもラバーとレザーで違いが全く分からない。 そのまま、授業のシーンの撮影に入った。 台本には自分が変に見られていないか、ずっとキョロキョロするとなっていたが、この状況が飲み込めずに、私は演技でなく本当にずっとキョロキョロしていた。 なので、OKは出たのだが、私の中では映画よりこの状況が信じられなかった。 キョロキョロして周りを観察した結果は、教室内にいる全員がピッタリとしたオーダーメイドのラバースーツを着ているという事実。 なぜなら、体の大きさがみんなバラバラなのに頭も手も足も体も制服も全てピッタリだったから、それは先生も含めて。 特に女子は胸の大きさがバラバラなのに、巨乳の子はしっかりとピッタリとした谷間があった。 これだけでも一クラスの人数分のラバースーツや制服を作るだけでもかなりの費用と手間ががかかっている事は明白だった。 さらに準備するにしてにもかなりの時間を要するだろう。 周りを興味深く観察していた私はだんだんと、周りに感化されてラバースーツを着てみたくなっていた。 教室での撮影が終了し、休憩時間の撮影に入る。 物珍しいものを見るように集まる生徒もいれば、軽蔑するように寄って来ない生徒もいる。 もちろん、これも台本通り。 私にやたらと興味を抱く男子は、後ろの席の後藤くん。 もちろんの事だが私からは誰が誰かなんて全く見分けがつかない。 そして、その後藤くんから私を守るように立ちはだかる親友となる山岡智沙。 「学校案内してあげる」 そう言って私の手を引くと教室を飛び出した。 ここでカットがかかり、校内のトイレや体育館、食堂も案内してくれた。 しかし、驚くべきはみんなラバースーツにレザーの服を着ている事に役も忘れてただただ驚いた。 私の中では生徒は先ほどのクラスの生徒を使いまわせば、代わりが務まると考えていた。 それが職員室に案内されて考えが一変した。 先生方は男女問わず統一されていない、つまり、個人個人好きな服(役柄にあったもの)を着用していた。 そこまで、手が込んでいるならば、全員がそのわずかな役だけでも役者はラバースーツを着せられて演じているのではないかと考えると妙な気分になってきた。 放課後、またも智沙に捕まり部活動の見学に行く。 そこで私はいくら映画とはいえやり過ぎではないかという光景を目にする。 最初は体育館の柔道と剣道。 いずれも道着の下にはラバースーツを着用していた。 剣道は幸か不幸か面から僅かにしか見えないが、防具を外している部員の手が黒光りするラバーだったので、見えなくても徹底しているのだと思った。 ただよくよく見ていると、柔道着も剣道の防具も全てレザーかラバーで造られており、鈍くだがテカリが見られた。 体育館のフロアでは、バスケットボール部とバレーボール部が練習しているが、こちらもジャージや短パン、Tシャツからは黒光りする手足が出ていた。 もちろん、ジャージや短パン、Tシャツもレザーで造られている。 激しい運動をしているので、ノッペラボウの顔が呼吸をする度に顔に張り付き、マスクを被っている人の顔を彫刻の様に浮き彫りにしていた。 それは男女問わず、男子はそれでも走り回っていたが、女子はかなり苦しそうにしてフラフラだった。 役を演じている人も得意不得意があるので、バスケットボール部にされた彼女を少し気の毒に思った。 そして、私が一番驚かされたのは水泳部。 全身ラバースーツの上、ラバー製の競泳水着を着て、頭にはラバースーツを着ているので不要と思われるゴム製のスイミングキャップを被り、水中ゴーグルをして泳いでいる。 ただ、息継ぎをしても空気を吸えないので、溺れているようになっている部員や上手く呼吸ができずに咽せている部員も数多くいた。 私が見ていると泳ぎ続けないといけないと思い足早に水泳部を後にした。 「えーと、次なんだけど私の部活動見てくれる?」 そう言うと私の手を引いて校舎へ戻っていく。 私は心の中で呟いた。 “運動部の皆さん、ありがとうございます“と。 茶道部とある部屋の前に着くと、智沙は「ちょっと待っててね」と言って部屋に入っていった。 その間も私は台本通り、校舎の窓からグラウンドを眺める。 グラウンドでは、野球部にサッカー部、陸上部が練習をしていたが、男女問わず全員体が黒光りしている。 そう全員がラバースーツを着ている。 台本には切なそうな表情をするとなっていたが、役作りしなくても、自然と切ない気分になっていた。 私以外みんな大変な思いをして、ラバースーツを着て役作りして映画に携わっている事に私は切なくなっていた。 背後で茶道部の扉が開いた。 振り返ると扉から智沙と思われるノッペラボウが顔を出していた。 「準備できたよ!」 「うん」 私は智沙に誘われて茶道部の部室に入る。 智沙は制服から着物に着替えていた。 「どうぞ」 誘われるまま、部室に入りお茶を立ててもらう。 畳の上に無機質で黒光りするノッペラボウが着物を着ている光景は統一感がなく、どれもがミスマッチに見えるのだが、それが返って日常とは違う奇妙な感覚にさせられる。 向かいあっていて気づいた。 智沙の着ている着物もラバー製だ。 活発な智沙の動きが緩慢になったと感じていたが、茶道に合わせた動きだとばかり思っていたが違う。 着物が重いのだ。 お茶を私に出そうとした智沙は、そのまま前のめりに倒れた。 台本にはない。 「カット!」 声がかかり、女性スタッフが駆け寄る。 仰向けに寝かせて、着物を脱がせるがラバー製の帯びはギュッと締まって簡単には外れない。 智沙は苦しそうに呼吸をしている。 私も加わり智沙の帯を外して着物を脱がせるのを手伝う。 着物は厚みがあり重量もある。 それに熱もかなり篭っていた。 着物を脱がせて、また私は驚く。 智沙はラバースーツの上にラバー製の矯正下着を着けていた。 かなり締め付けられていたのが、ラバーについたシワで分かる。 黒いラバースーツで分からないが、ラバー製のパンストも着用していた。 矯正下着もパンストも脱がせると、ショーツとスポーツブラが出てきた。 「こんなにも着ていたの?」 思わず声が漏れる。 女性スタッフはショーツとスポーツブラも外す。 ショーツを脱がせた智沙の股のところは、ラバースーツが女性器を型取るように、プックリとした割れ目がある。 スポーツブラを外すと、豊満な胸の天辺には勃起した乳首がクッキリと浮き出ていた。 ラバースーツを纏って妖しく黒光りする智沙の体は裸よりもエロさを感じるのではないかと思ったが今はそんな場合ではない。 ラバースーツを脱がそうとするのを止めた女性スタッフ。 「なんで、止めちゃうの?脱がしてあげないと!」 声を荒げて言う私。 一人の女性スタッフが私の肩を叩いて言った。 これ以上は脱がせられないんです。 もう一人の女性スタッフは智沙の体をうつ伏せにしたがどこにも脱着のファスナーはない。 当然仰向けの時もなかった。 「でも、でも、脱がしてあげないと智沙が!智沙が!苦しんでるのに!」 私は目が覚めた。 耳元でスマホから音が聞こえる。 スマホを見ると、ラバーマスクで呼吸制御された女性が空気を求めて苦しそうに呻き声を上げていた。 「智沙は?……夢か、良かった」 私はまた、眠りについた。 【後編】につづく