「はい!OK !」 スタッフの声と共に俺は桜庭美麗ちゃんの膝枕から起き上がった。 「花輪 一輝(はなわいつき)さんのシーンは以上となります、お疲れ様でした」 俺は駆け出しの俳優、今回初めて脇役ではなく主役に近い形でドラマに出演させてもらった。 そして何より嬉しかったのは、共演させて頂いた相手。 劇中の役だけでなく俺は本当に桜庭美麗さんのファンだったから。 まさか共演させてもらえるとは夢にも思っていなかった。 俺が立ち上がると、メイド服を着たラブドールの桜庭美麗ちゃんも立ち上がり俺にハグを求めてきた。 俺は喜んで桜庭美麗さんとハグをした。 「お疲れ様です、またどこかで機会があればご一緒しましょう、ありがとうございました」 ラブドールの口は動いてはいないが、ラブドールの中からはくぐもってはいるが、確かに桜庭美麗さんの声が聞こえてきた。 「こちらこそ、ありがとうございます、これからも桜庭さんを応援していますので頑張って下さい!」 俺もハグをしながら桜庭美麗さんにお礼の言葉を伝えた。 今回はアダルトギリギリのシーンが多く、何度も本当に勃起して大変だった。 そしてラバーには興味はあったが、俺のラバーフェチの扉を完全に開くキッカケとなる作品となった。 特に桜庭美麗さんの7枚重ねのラバードール姿は堪らなかった。 ドラマのシーンではラバードールとして話す事はもちろん動かずに演技を求められているが、カットが掛かると動いて会話もする姿は俺のフェチ心を大いにくすぐった。 そんなラバースーツを7枚重ね着してなお、フェイクレザーの全身スーツ、ゼンタイを重ね着させられる裏方もしっかりと見学させてもらった。 極め付けはそんな桜庭美麗さんをラバー製のスリーピングバッグで真空パックして、リュックサックに詰めるのだから、休憩中何度もトイレに走ってはスッキリさせて現場に戻った。 そして、リュックサックに真空パックした桜庭美麗さんを詰めて電車で移動するシーンは本当にリュックサックに詰めて電車で移動させられたものだから、演技ではなく素の自分をそのまま出していたと思う。 思い出せばキリがない。 ラバードールを家に持ち帰った後は、重ね着させたゼンタイを脱がせ、さらには桜庭美麗ちゃんのラブドールを着せていくシーンでは桜庭美麗さん自身でカメラに映らないところでは着るのを手伝ってもらった。 でも一番印象に残っているのは、ベッドでの絡みのシーン。 全裸の桜庭美麗ちゃんが横になるベッドに裸の俺が潜り込んで、布団を覆い被せて一人でよがるシーンではスタッフからは分からない布団の中で桜庭美麗さんから「挿入してもいいよ」と言われた。 ただ、ラバースーツなどを重ね着してるのでアソコは硬いかもと言って笑っていた。 俺はドキドキが止まらず、そのご好意に甘える勇気がなかったことが、今では大変悔やまれる。 他にもラバードール販売店のシーンでは、桜庭美麗さんを含む14体のラバードールは全て中身は生身の女性である事を教えられて驚いた。 皆、同じくらいの身長、体型の人を集めたらしい。 ラバードールのほとんどが一般の方の公募から身長、体型で集めたとの事。 ただ、10枚以上の重ね着を担当された方は本当のラバーフェチの方に限ったそうです。 ちなみに15BRのラバードールを演じ、さらには15枚のラバースーツを重ね着させられていたのが、テレビ局アナウンサーの達磨 美晴さんと聞かされた時はかなり驚いた。 ドラマの中のテレビのシーンでは水槽にモカちゃんと達磨 美晴さんの2人とも着ぐるみを着せられた上からウエットスーツを着て器材を装備して潜っていた。 そして、やっぱり気になるのは30BRのラバードールを演じた達磨 美晴さん。 撮影時、あんなに重ね着させられて大丈夫だったのだろうか、画面越しに見ていたがかなりキツそうに見えた。 実際にテレビ番組のシーンに俺は立ち会う事ができなかったので、もしテレビ局で達磨 美晴さんに出会う事があったら、いろいろお話しを伺ってみたいと思う。 ところでこのドラマは、物凄く中途半端なところで終了してしまった。 それはなぜかというと、司会者役を務めた本物のアナウンサーさんが失踪してしまった事。 そしてこのドラマを企画したプロデューサーさんも行方不明になってしてしまい、一から全て仕切っていたプロデューサーさん不在の元ではドラマが立ち行かなくなってしまったらしい。 結局、ラバードールに経費も掛かっている事から、30分ドラマとしてカットシーンを減らして数回の放送はしたものの、結末がよく分からないまま終了となってしまった。 このドラマの結末をプロデューサーさんと、とても仲の良いディレクターさんから教えてもらえる事ができた。 それによると、ラバードールを粗末に扱った者は不幸となり、ラバードールを大切に扱った者は幸せになるというストーリーだったらしい。 達磨 美晴さんのラバードールを粗末に扱った司会者とプロデューサーは不幸になり、桜庭 美麗さんのラバードールを大切に扱った俺にはこれから幸せが訪れるようなそんな気がした。 俺は司会者役のアナウンサーさんとプロデューサーさんの事は少し心配しつつも、スタジオを出て駅へと向かう。 駅へ向かう途中、ラバードール販売店のロケをした店が近いことを思い出して少し立ち寄ることにした。 近づいてくるラバードール販売店を見て俺は自分の目を疑った。 そこには数週間前撮影をしたと思えないほど、朽ち果てた店がそこにあったから。 ガラスは曇り、店内には埃が積もり、天井が剥き出しになっているが、撮影後にこんな状態にしたとはとても思えない状態であった。 何かに化かされたような気分のまま家へと帰ることになった。 その後、俺は人気俳優となり再び桜庭 美麗さんとの共演を果たせた。 そして、あの酷い目に遭わされた達磨 美晴さんはお天気お姉さんを降ろされた後、紆余曲折あったようだが、あのドラマ以降はニュースキャスターとしてテレビで見ない日がないほどになった。 また、いつか俺がもっと大物俳優になり、達磨 美晴さんにインタビューされる事があれば、あのドラマの事を聞いてみたいと思う。 おしまい