続・俺も彼女も高校生 完全版 【中編】
Added 2023-11-16 15:00:00 +0000 UTCいつもと変わらない日常の中に非日常がある俺のバイト。 非日常と言ったのは、全員がウルトラマン、ウルトラウーマンで言葉を話さずにゲームをしていること。 俺は石動 圭太(いするぎ圭太)は今、ウルトラマンゼウスの着ぐるみを着て、ウルトラマンポセイドン、ウルトラウーマンダークヘラ、ウルトラウーマンメティスと対戦中だ。 対戦といっても実際に戦っている訳ではなく、ジェンガで戦っている、罰ゲームを掛けて。 今回の罰ゲームは全身タイツをウルトラマンの着ぐるみの上から着ること。 遊園地でウルトラマンのグリーティングの仕事をしている俺たちはいつも休憩中、無言で何かしらのゲームをし、負ければ罰ゲームが待っている。 ここには負けられない戦いがある。 カッコよく言ってみたが、俺は負けることが多くことごとく罰ゲームの餌食になっている。 そんな罰ゲームでもいいことは多々ある。 今回、罰ゲームの餌食となったのは、ウルトラマンの着ぐるみの上から全身タイツを着る罰ゲームを提案したウルトラウーマンダークヘラこと尾花 紗弥香(おばなさやか)。 黒色を基調としたボディに紫色の禍々しいラインの入ったウルトラウーマンダークヘラはピンクの全身タイツに呑み込まれていく。 かなり伸縮性のある全身タイツのようで着ぐるみを着ていてもスムーズにウルトラウーマンダークヘラの体に張り付くようにして体を包み込んでいった。 最後は頭まで被れば完成なのだが、俺の考えていた全身タイツとは少し違った。 ウルトラウーマンダークヘラの顔だけが露出するとばかり思っていたのだが、顔までも覆ってしまうタイプのもの、いわゆるゼンタイだった。 顔までもピンクのゼンタイに覆われたダークヘラは少し可愛くなったように見えた。 だが、当の紗弥香はすごく不満なようで早く脱がせて欲しいとアピールするが、それでは罰ゲームにならない。 そのまま本日2回目のグリーティング開始10分前までピンクのゼンタイ姿のままだった。 そして本日2回目のグリーティング。 休憩時間、ジェンガで負けたことがショックなのか、それとも自分で用意した罰ゲームを自分で受けたのがショックだったのか、ウルトラウーマンダークヘラにいつものキレはなかった。 それでも無事にいつもより長めのグリーティングを終えて控え室へと戻って来た。 今日からは3回目のグリーティングは無しで、ショーに向けての練習が始まる。 俺も磐田先輩もウルトラマンの着ぐるみを脱ぎ、インナーのラバースーツを脱いで簡単にシャワーを浴びるとジャージに着替えた。 女性陣は時間が掛かりそうなので、控え室で磐田先輩と談笑しながら待った。 かなり時間が経ち、少し眠くなって来た時に高畠さんが呼びに来てくれた。 そして、なぜか高畠さんもジャージを着ていた。 控え室の外にはまだ湿った感じの髪を後ろで一つに纏めた莉乃ちゃんと紗弥香がいた。 「じゃあ、ステージへ移動しよう!」 高畠さんに言われるままステージへと移動した。 ステージ上にはすでにジャージを着た女性が2人立っていた。 高畠さんの後に続いてステージに上がる。 高畠さんが言う。 「今回のショーから参加してもらうことになった2人を紹介するね、寒河江 秋穂(さがえあきほ)さんと尾花 明日香(おばなあすか)さんだ」 俺はこの2人を知っている。 寒河江さんはウサギの着ぐるみに、そして尾花さんはパンダの着ぐるみの中に入っていた人。 そして、寒河江さんは間違えて俺のいる控え室を覗いたショートヘアで可愛い感じの人。 そしてもう1人の尾花さんは控え室にジェンガを届けてくれた女王様のような堂々とした印象を受ける美人… 尾花 明日香? どこかで聞き覚えのある名前。 「あ!」 すぐに気づいた、尾花 明日香さんは紗弥香の6つ上のお姉さん。 しばらく見ていなかったので印象がだいぶ変わっていたので全く気づかなかった。 今からこの6人でショーに向けての練習を始める。 ということは怪獣役は寒河江さんと明日香さんと言うことになるのだろう。 まずは準備体操をしてから2人1組でしっかりとストレッチを行う。 それから全員が横一列に並んでキックやパンチの練習。 後はステージのバックから出て来て少し高いところからジャンプしたり、マットを敷いたその上で一回転して背中から落ちる受け身の練習をした。 だが、俺はてっきり殺陣をやるのだと思っていたので正直ガッカリした。 高畠さんがジャージに着替えていたのは、お手本を見せるため。 高畠さんの動きにはキレがあり、かなり驚いた。 話を聞くと昔スタントマンをしていたが、大怪我をして辞めてしまったらしい。 知識と体の使い方を俺たちにこれから伝授し、怪我をしにくい体づくりをした後殺陣を教えてくれるのだそうだ。 いわゆる基礎練習がその日から始まった。 次の土曜のグリーティングは様相が変わった。 何が変わったかウルトラマンに加え、星人と怪獣もグリーティングに加わる事となった。 高畠さんが呼びに来て控え室から出るとウルトラウーマンダークヘラ、ウルトラウーマンメティス、それに俺が先週莉乃ちゃんと一緒に入ったウレタンたっぷりの怪獣、確か名前はギガントキングズだったような。 そして、星人もいる。 恐竜か爬虫類をベースにグロテスクに仕上げ人型にし、見た目だけでも近寄り難さが半端ない名前は確かリュウ星人。 ウルトラマンゼウスに登場する難敵だ。 配役を俺の頭の中だけで考えてみる。 ウルトラウーマンメティス→莉乃ちゃん ウルトラウーマンダークヘラ→紗弥香 ギガントキングズ→寒河江 秋穂さん 残ったリュウ星人は明日香さん といったところだろうか。 高畠さんからグリーティングを回る前にウルトラマンたちには怪獣と星人が子供たちに襲われないようにしっかりと守るように指示が出た。 “ヨシ、今日も頑張ろう“と思い込めてウルトラウーマンメティスをジッと見る。 いつもなら俺の方を見て、サムズアップを返してくれるウルトラウーマンメティスこと莉乃ちゃんだが、今日はなんの反応もない。 俺が首を傾げてウルトラウーマンメティスを凝視していると、そこへリュウ星人が割って入ってきた。 そのグロテスクさにちょっと引いてしまうが、同時に嫌な予感がした。 その嫌な予感はすぐに的中してしまう。 リュウ星人か俺に向けてサムズアップしてきたのだ。 俺はそれを見て固まってしまい返すこともできなかった。 俺の大好きな莉乃ちゃんが引いてしまうほどグロテスクなリュウ星人になってしまったのだから。 俺の予想した配役はあっさりと崩れた。 だが見ていて大体中の人が見えてきた。 やたらと何か小競り合いをしているウルトラウーマンダークヘラとウルトラウーマンメティスは尾花姉妹だろう。 そして、何をどうしていいのか分からずに佇んでいるゴツい怪獣ギガントキングズは可愛い印象の秋穂さんで間違いなさそうだ。 ゴツい怪獣ギガントキングズが何故か小さく見えた。 そんな中、グリーティングが始まった。 バックヤードを出るなり、怪獣と星人の登場に子供も大人もどよめき、泣いてしまう子供もいた。 子供たちに教えてあげたい、見た目は怖い怪獣ギガントキングズとリュウ星人だけど、中身は可愛い女の子が入っているのだよと。 ウルトラマンポセイドンを先頭にグリーティングがスタートする。 ウルトラウーマン2人が続き、怪獣ギガントキングズ、リュウ星人、で俺ウルトラマンゼウスの順で進んでいく。 やはり子供の攻撃対象は怪獣ギガントキングズ。 キックやパンチを浴びせているがかなりクッション性がいいのは一度着たことがあるので知っていた。 攻撃されても控えめな感じで秋穂さんは子供たちを威嚇していた。 そして、もう1人の攻撃対象はリュウ星人。 見かけがかなりグロテスクなこともあり、怖がって攻撃してくる子供は少ないとはいえゼロではない。 だが、攻撃されたリュウ星人は男性キャラにも関わらず、女の子のように俺の後ろに隠れる。 まあ、見た目とは違い中身が可愛い女の子なのだから仕方ない。 俺はそんな子供たちに暴力はダメだと言うように諭すと子供たちも分かってくれた。 そんないつもとは違うグリーティングを終えて控え室へ戻ってくるとかなり疲れていた。 それはきっとリュウ星人の莉乃ちゃんを子供たちから守らなればと思ったからだろう。 控え室で疲れた俺を見て、肩を叩いて労ってくれるウルトラマンポセイドンこと磐田先輩。 そんな俺たちの控え室の扉がいつものようにノックされた。 正直、この休憩はゆっくりしたかった。 入ってきたのはウルトラウーマンダークヘラ、続いてウルトラウーマンメティス、そしてリュウ星人、最後に怪獣ギガントキングズが入ってくるかと思っていたのだが意外にもラバースーツを着てラバーマネキン状態でショーのために準備されたジャージの上下を着ているのだが、頭や手など一部が黒光りしたラバーが覗いているのが逆にエロさを感じてしまうのは俺だけだろうか。 【隠れているからこそエロい】という記事を雑誌か何かで見たのを俺は思い出していた。 6人にもなると休憩時間の関係もあり、より分かりやすくできるゲームが求められる。 ウルトラウーマンダークヘラがトランプをウルトラウーマンメティスに渡すとメティスが全員にカードを配り始めた。 “ババ抜きだ!“ 俺は心の中で呟いた。 隣りの控え室では休憩時間の過ごし方をすでに話していたのだろう。 スムーズに事が進み、ウルトラウーマンダークヘラがホワイトボードで罰ゲームを発表する。 [罰ゲーム 抱き合ってラップ拘束] “誰と?“ そんな疑問の残る中、ババ抜きが始まる。 6人だとなかなか決着がつかないように思っていたが、あっさりとウルトラウーマンメティスが一抜け、続いてウルトラマンポセイドン、そしてウルトラウーマンダークヘラまでもがあっさりと勝ち抜けしていった。 残ったのは俺とリュウ星人の莉乃ちゃん、そしてラバーマネキンにジャージ姿の秋穂さん。 次に勝ち抜けたのはなんと俺だった。 そして、莉乃ちゃんと秋穂さんの負けられない女の戦いとなった。 最後はなんとか莉乃ちゃんが勝ち抜け、罰ゲームは秋穂さんに決定した。 “誰と抱き合ってラップ拘束されるのだろう“と思って見ていると、一抜けだったウルトラウーマンメティスの明日香さんが立ち上がった。 そして、負けた秋穂さんと抱き合うと、ウルトラウーマンダークヘラに顎でラップを巻くように指示をした。 なんとなくだが俺はその時、明日香さんも秋穂さんも幸せそうな雰囲気を醸し出しているように見えた。 ウルトラウーマンダークヘラである紗弥香は抱き合う2人の体を中心にラップをグルグル巻きにしていく。 ラップ拘束が終わるとウルトラマンポセイドンの力を借りて床に寝かせて転がし始めた。 罰ゲームだから何かしないとでもと思ったのだろう。 でも、転がされていても2人はくっついて幸せそうだった。 6人でのババ抜きは意外にも時間がかかり過ぎて罰ゲームはすぐに切り上げた。 それに秋穂さんは今から怪獣ギガントキングズに戻らなければならない。 ラップ拘束を解かれた秋穂さんと明日香さんは足早に隣りの控え室へと戻っていった。 紗弥香と磐田先輩はマスク同士をくっつけて何か話しているようだが、こちらに声は聞こえてこない。 そんなそれぞれの様子を眺めているとグロテスクなリュウ星人が腕を組んできた。 まだ、このグロテスクなリュウ星人に慣れていない俺はギョッとしてしまい。 莉乃ちゃんから仕草で怒られた。 そんなリュウ星人で一つ疑問が湧いてきた。 どうやって着ているのだろう。 体は爬虫類の皮膚が溶けて赤黒く爛れたところから、また同じような爬虫類のような深緑色の皮膚がところどころ露出している。 頭はツノのあるトカゲのようで頭の下辺りに覗き穴があると思うのだが穴もスリットも見当たらない。 正面の腹側にはファスナーはおろか切れ目すら見当たらない。 俺はリュウ星人の背中側に回ってみた。 頭の天辺から背中を通ってお尻から伸びる尻尾まで背ビレが走っている。 背ビレが外れるのかと思い引っ張ってみたが外れる様子はない。 リュウ星人の背中側を入念に調べてみたが、結局何も分からなかった。 あんまり背中側で俺が調べているのが気に入らなかったのだろう。 莉乃ちゃんは振り返ると俺にギュッと抱きついてきた。 『コン、コン、コン』 控え室の扉がノックされる。 時計を見ると2回目のグリーティングの時間。 莉乃ちゃんは素早く俺から離れ、磐田先輩と紗弥香も気づいた時には離れていた。 「ああ、やっぱりここか、また変な遊びしてないか?」 高畠さんの言葉に慌ててホワイトボードの文字を消すウルトラウーマンダークヘラ。 「ほどほどに頼むぞ!じゃあ、2回目のグリーティングに行こう!」 俺たち4人は頷き、控え室を出るとウルトラウーマンメティスと怪獣ギガントキングズに戻った秋穂さんが待機していた。 俺は莉乃ちゃんのリュウ星人を守るのに注力しながらもグリーティングをこなしていく。 順調だったグリーティングにトラブルが発生する。 多くの家族連れを対応している時、小学生高学年の男の子2人が怪獣ギガントキングズを押し倒したのだ。 見た目は強そうだが中身はか弱い女性。 簡単に倒されてしまった。 小学生たちはその場からすぐに逃げて行った。 ウレタンの塊の中にいるので秋穂さんにケガはないと思ったのだが、立ち上がろうとし時足に痛みが走ったのだろう、その場に崩れる。 押し倒された際、足を捻ったのだろう。 まだ、家族連れの対応途中なのでグリーティングを切り上げられない。 そう思っていると、ウルトラウーマンメティスが俺の肩を叩いた。 手振りで指示をしてくる。 内容は怪獣ギガントキングズをおんぶしろということのようだった。 昔から俺は紗弥香の姉ちゃんには頭が上がらない。 俺は怪獣ギガントキングズをおんぶすると、お客さんから歓声が上がった。 「さすが、ウルトラマンゼウス!」 拍手までしてくれる。 でも、見た目とは違い中には細くて可愛い女性が入っているとは伝える事もできず。 大きく頷いた。 そんな俺に高畠さんが声を掛けてきた。 「悪いけどよろしくな!」 俺はウンと一つ頷くと歩き出した。 俺の横には心配そうにウルトラウーマンメティスもついて来る。 俺だけでも大丈夫なのにとも思ったが、話せないし、怪獣ギガントキングズをおんぶしているので手振りで伝える事もできずにそのまま控え室へ向かった。 女性用の控え室へ怪獣ギガントキングズを運ぶとすぐに俺は控え室の外へと追い出された。 怪獣ギガントキングズの着ぐるみは背中のファスナーを開けられても大量のウレタンに阻まれて簡単には中の人まで辿り着けない。 そのため、ファスナーを隠す処置もファスナーをロックする処置もされていない。 怪獣ギガントキングズから出てきた秋穂さんの声が聞こえてきた。 「ありがとう、明日香ついて来てくれて」 「明日香は優しいね、大好きだよ!」 あの2人はとっても仲がいいのだと思い、もう大丈夫そうなのでグリーティングに戻ろうかと考えたが高畠さんからそんな指示もなかった。 それに戻る途中、1人でいるところを絡まれたら対処できない。 そう思い自分たちの控え室へ戻ろうとした時だった。 「あぁぁぁ、明日香ダメだよ、こんなところで」 「分かるよ、さっき抱き合ったからムラムラしているのは私も一緒だよ」 「ふぅぅーん、ダメだって明日香ダメ、そんなところ触らないで、変な気分になっちゃうから」 「もう、みんな戻って来ちゃうからダメだよー」 「あぁぁん、あぁぁ気持ちいい、私だけ気持ちよくなっていいの?」 「明日香は大丈夫ぅ?」 俺は遭遇してはならない現場に遭遇してしまった。 その後も喘ぎ続ける秋穂さんの声が女性用の控え室から響き、俺は秋穂さんの喘ぎ声を聞きながら中の様子を想像する。 怪獣ギガントキングズから出た体にピッタリとラバーが張り付いた秋穂さんの上にまたがり、その体を弄ぶウルトラウーマンメティス。 そんなとんでもない状況を秋穂さんの声だけで想像し、一人勃起し座り込んでいた。 正直、グリーティングから帰ってきた高畠さんの話し声がなければ、俺は秋穂さんの喘ぎ声と妄想の中でウルトラウーマンメティスに弄られているラバーマネキンの画で逝っていただろう。 俺は高畠さんの話し声にいち早く反応して控え室に入った。 その際、俺が女性用の控え室の前にいたことが気づかれたかどうかまでは分からない。 ウルトラマンゼウスから石動 圭太に戻り、これからショーの練習が始まる。 足をゲガした秋穂さんと病院に付き添う明日香さんは練習には不参加が高畠さんから告げられた。 あの2人のことを考えていて思い出したことがあった。 まだあの2人がウサギとパンダの着ぐるみを着ていた時、俺がまだあの2人のことをよく知らなかった時、奇妙なウサギの着ぐるみに遭遇したことがあった。 何かゴツくて動きが変だった。 それに喘ぎ声のような声も聞こえたような気がした。 ウルトラマンゼウスの着ぐるみを着ていたので気のせいだと思ったが、あれは気のせいでも聞き間違いでもなかったようだ。 だから、罰ゲームの時秋穂さんが負けたのに一抜けの明日香さんまで罰ゲームを受けたのだろう。 つまり、そういうことなのだ。