我が家には一人掛けの革張りの椅子がある。 座り心地が良く私の夫 羽田 賢一(はねだけんいち)は好んで、この革張りの椅子によく座っている。 賢一曰く、座り心地は最高に気持ちいいらしい。 【らしい】と表現したのは、私はこの革張りの椅子に座った事がないから。 私は誰かって? 私は賢一の妻の羽田 美憂(はねだみゆ)。 妻なら自宅にある革張りの椅子に座ることは可能なはずなのだが座れないのだ。 賢一から革張りの椅子に座る事を禁止されているわけでもなんでもない。 何故座れないかと言うと、その革張りの椅子には私が詰められて完成となるから。 だから、どんなに頑張っても私は革張りの椅子に座る事ができないのだ。 休みの日には決まって夫からお願いされる。 「なあ美憂、今日もお願いできるか?」 「うん、朝ごはん食べてからでいい?」 「もちろん!」 そんな会話を交わし朝食を摂った後、私は排泄を済ませてから寝室へと籠る。 クローゼットからプラスチックケースを取り出すと、黒い塊の入ったジップロックの袋を取り出した。 続けて、ボトルを2本取り出す。 ジップロックの袋を開けると甘いラバーの香りが広がる。 黒い塊はラバースーツとラバーマスク。 そして2本のボトルはラバースーツを着るための潤滑剤であるドレッシングエイド、そしてもう一つは光沢剤。 服を全て脱いで全裸になると、ラバースーツと体にドレッシングエイドを塗った。 そうしてからラバースーツの首元を大きく開いて足を通していく。 少し冷たいが自分の足が黒光りするラバーの足に変わっていく事に私は興奮し、お股が濡れるのを感じて急いで体をラバースーツの中へと滑り込ませた。 腰まで妖艶に黒光りするラバースーツに覆われると、両手で足先からシワを伸ばすとともに空気を抜いていく。 しっかりとシワを伸ばして空気が抜けると、次は腕を通していく。 両手の先までラバーに覆われ両手を万歳すると、私の体はラバースーツに呑み込まれて首から下が黒光りしたラバーに覆われてしまった。 今でも黒光りしているが、さらに光沢剤を塗ることでより黒光りし、ラバースーツの維持メンテナンスにも良い効果がある。 光沢剤を全身に塗り終えると、今度は鼻からチューブの伸びたラバーマスクにも光沢剤を塗布する。 このラバーマスクは鼻のところから長いチューブが伸びており、被る際に内側にもあるチューブを私の鼻の穴へと突っ込んで着用する。 ラバーマスクを被ると視覚が奪われ、おまけに口には巨大な男性器を模したオモチャも付いており、それを口いっぱいに頬張りながらラバーマスクを被るので私の言葉は奪われ、開いた口からは絶え間なく涎が垂れ流し続けることになる。 私は目も見えず、鼻から僅かに呼吸し、言葉を奪われ口から涎が止めどなく流れるそんな状態にされてから革張りの椅子に閉じ込められモノとして扱われる。 普通の人なら怖いと思うかも知れないが、私はそんな管理された状態でモノにされると興奮してしまう変態だ。 だから、夫から革張りの椅子になって欲しいと言われると喜んで夫の賢一さんの椅子となる。 ラバースーツに着替えた私はラバーマスクを持ってリビングの革張りの椅子の下へ。 革張りの椅子の横には夫が笑顔で待ってくれていた。 「綺麗だよ、美憂!」 そう言われると私は笑顔になってラバーマスクを夫に渡した。 「ご主人様、私にラバーマスクを被せて下さい」 そう、ここから私たちの関係は夫婦ではなく、ご主人様と奴隷の関係となる。 私は鼻にチューブを突っ込まれると軽い吐き気に襲われるが、それほどチューブが長くないため吐き気はすぐに治まる。 続けて口にも巨大な男性器を模したオモチャが押し込まれると、反射にともなって咽頭反応(オエッ)や咳反応(ゴホッ)が現れながらも私はラバーマスクを被せられた。 もうこの時点で私の視覚と言葉はあっさりと奪われた。 ご主人様はラバーマスクの裾をラバースーツ内に収めてくれる。 こうしておかないと、開いた口から涎が垂れ流しになるので革張りの椅子の中が涎まみれになってしまうから。 そして、これからご主人様の奴隷である証の首輪が取り付けられる。 この首輪には【美憂】の文字が刻まれている。 私たちが夫婦になった後で、お互いの性癖を知ることとなり主従関係が生まれた。 主従関係が成立したその年の結婚記念日に贈られた大事な品だ。 私の首に取り付けられた首輪には鍵が掛かるようになっていて、この首輪を取り付けられるとラバースーツは絶対に脱げなくなってしまう。 これで下準備が終了、これから私は革張りの椅子となる。 革張りの椅子の背面の右上端から下へ、そして右から左下端に掛けて、見ただけでは分からないようにファスナーが走っている。 そのファスナーを開いていくと、私が体を滑り込ませるスペースが現れる。 私が収まるスペースには普段ウレタンが詰め込んであるのだが、それを取り除いて代わりに私がご主人様に誘導してもらいながら革張りの椅子の中へと収まる。 肘掛けに腕を通してから革張りの椅子のファスナーを閉めれば革張りの人間椅子の完成となる。 私はこれからモノとして扱われる事に興奮し、さらにはご主人様と密着しながら過ごせる時間が何よりも幸せな時間なので、もうお股が大変なほどにビチョビチョに濡れていた。 そこへ口から絶え間なく垂れ流す涎でラバースーツの中は気持ち悪いの一言に尽きる。 だが、ご主人様に座って頂けるだけで、そんな事はどうでもよくなった。 私の入った革張りの椅子に座って普段ご主人様はタブレットを使って小説を書いている。 そして、小説に行き詰まった時は革張りの椅子を撫でて私を刺激してくる。 私がモソモソ動くと、ご主人様にとっては良い刺激になるようで執筆が進むと褒められた。 かくいう私も実は小説を書いている。 もちろん、ご主人様に奴隷として扱われた事をノンフィクションでご主人様目線で書いていて、結構人気を博している。 ただ、一つ事実と異なるのはM目線ではなく、S目線で描いているところ、だがそれが良かったようで描写が素晴らしいと評価をされているのも事実だった。 いつもならご主人様の執筆の邪魔にならないように革張りの椅子に徹するのだが、今日は様子が違った。 ご主人様の友人が遊びに来るというのだ。 確かに昨日の夜にそんなことを話していたような気がするが、家事が忙しくてちゃんと聞いていなかった。 少しするとご主人様が立ち上がり、誰かと話しながら革張りの椅子へと座る。 ご主人様の温もりが改めて伝わってくる。 “ああご主人様、椅子の私をお使い頂きありがとうございます” そんな気持ちを伝える術もなく心の中で呟いた。 同時にご主人様の友人の登場に少し緊張が走る。 ラバーマスクを被り革張りの椅子の中にいるため、ご主人様と友人の会話はハッキリとは聞こえない。 ところどころ、聞こえてくる会話を聞きながらご主人様の温もりを感じて幸福感に浸っていた。 しかし、少しすると状況が変わってしまう。 ご主人様が友人にトイレに行くという事を話して、私から立ち上がった。 それだけなら良かったのだが、革張りの椅子から立ち上がる際、この椅子の座り心地が良すぎてトイレに立つのも嫌なんだといった事を友人に話していた。 ご主人様がトイレに立ったあと沈黙が続く。 革張りの椅子と友人だけなので、沈黙は当たり前、独り言をベラベラ喋っている方がむしろ変だ。 そんな友人に始めは動きはなかったのだが、突然歩いてくる音が近づいてくる。 どうしようバレたら…気づかれたどうしよう…!? ご主人様の友人が近づいて来て、目の前まで来ている気配がする。 気持ちは焦るが私にはどうする事もできない。 少しでも動いたら絶対にバレてしまう。 しかも座られた際、動いたり声を上げたりもできない。 本当に怖いしどうすることもできず、震えることも許されない。 ただただ、私に座らないことだけを祈るしかない。 だって、私はご主人様専用の人間椅子なんだから。 だが、私の思いとは裏腹に友人は私、いや革張りの椅子に触れて来た。 そして、こともあろうに背もたれにある私の胸を触ってきた。 “イヤッ、ダメっ!私はご主人様だけのものだから” 心の中で念じるようにそう言っても、友人に伝わる事はなく、胸をギュッと掴まれた。 私は微動だにせずにいたが、目からは涙が零れ落ちるのが分かった。 胸を触られた後、友人は革張りの椅子に腰掛けた。 そして、座面のお股の辺りを触る友人の手に私はこともあろう事に濡れ始めていた。 “ダメっ、ダメっ、ダメっ、絶対ダメっ!” いくら自分を戒めたところで、体はいう事を聞いてくれない。 心とは裏腹にダメだと思えば思うほどにお股はどんどん濡れてきた。 “私、ダメだ、ご主人様に申し訳なくて合わせる顔がない” 涙が止めどなく流れる。 そんな私に更なる不幸が襲いかかる。 友人が私の入った革張りの椅子から立ち上がった、それに喜んだのも束の間。 革張りの椅子を調べ始めたのだ。 “うわっ、どうしよう、どうしよう!絶対見つかったらダメっ、私はどうでもいいけど、ご主人様の人間性が疑われる” 自分の妻をノッペラボウのゴム人間にして、革張りの椅子に詰め込んでいるのだから。 私はそう考えながら、もし私が見つかり革張りの椅子から出された時の事を必死に考え始めた。 “そうだ!私がご主人様に無理を言ってこの革張りの椅子に閉じ込めてもらったことにしよう、私は特殊性癖の持ち主だと主張すればいい、これでご主人様を夫を守れる!” そう考えたが、そんな特殊性癖の妻と結婚している事がバレれば、それはそれで後ろ指を指され結局、私たちは引き裂かれてしまうかも知れないと考えると私は涙が止まらなくなってきた。 大好きなご主人様と離れるなんて、今の私には一番考えたくないことだったから。 友人は革張りの椅子のファスナーを見つけると、それを開け始めた。 私は鼓動が速くなり、口から心臓が飛び出してしまいそうなほどドキドキし始める。 ラバースーツに外の冷たい空気が触れる。 ご主人様なら「よく頑張ったね」って褒めてくれるかも知れないが、ご主人様の友人となるとそうはいかない。 “どうしよう、どうしよう” それだけが頭の中でグルグル回っている。 どうする事もできない私はグッと体を強張らせ、友人に革張りの椅子から引き出されないように力を込める事しかできなかった。 そしてその時が来た。 私のラバースーツで覆われた黒い腕が友人に捕まれて引っ張られる。 抗おうとしたが男性の力に敵うはずもなく、私は簡単に革張りの椅子から引っ張り出されてしまった。 “終わった” 視覚を奪われた私にはもう何もできる術は残されていなかった。 ガッカリと俯く私の頭をポンポンする友人。 「美憂ちゃん、よく頑張ったね!」 私は視界をラバーマスクで奪われていたが顔を上げた。 「どうしたの、椅子から出るの嫌だった?」 その声は紛れもなく、ご主人様の声。 私は首を横にブンブン振った。 そんな私のほっぺを両手で押さえると、ラバーマスク越しにキスをされた。 「ゴメンね、電話が長引いて、しかも友人の奴来るっていってたのにドタキャンしたから」 ご主人様の説明を聞いて、突然気の抜けた私はその場にへたり込んだ。 「やっぱり美憂ちゃん、革張りの椅子気に入ってくれたんだ、じゃあ!」 そう言うと私の体が持ち上がった。 「え、え、え!」 私が意思を伝える前に、また革張りの椅子に戻されてしまった。 「落ち着くんだこの椅子、最高!」 私はまた革張りの椅子に戻されたが一切不満はない。 だって、こうやってご主人様と密着していられるのだから。 おしまい