仲間たちとお酒を飲んで盛り上がってくる。 当然、エヴァの大ファンの友人達がアクリルケースに入ったエヴァ弐号機をそのままにしおく訳がなかった。 「真矢(しんや)!エヴァ弐号機触られてくれよ!」 始めはアクリルケース越しに見ていたが、友人達が触りたいと言い出すのは必然。 シラフならそこはキッパリと断っていたと思うが、お酒の入った俺は気が大きくなっていた。 「じゃあ、少しだけな!」 そう言ってアクリルケースを友人の元一(げんいち)にも手伝ってもらい取り除いた。 妻の明日菜(あすな)からの視線を感じたが笑顔で返した。 触れる状況にあっても、エヴァの大ファンの友人たちはエヴァ弐号機に粗雑に触れたりはしない。 硬質パーツを指で撫でるように触り盛り上がっていた。 「へー、こうやって固定してるんだ!」 女友達の美沙子(みさこ)が背中側に回って腕や足、体を固定している透明の支柱を見ていた。 「ポーズがリアルで動き出しそうだね」 そう言うと美沙子もかなりお酒が入っていたのだろう。 「えい!」 そう言ったと思うとエヴァ弐号機の背後から抱きついた。 支柱を確認したのは抱きつくためだったのだと、気づいた時にはもう遅かった。 突然のことで明日菜は驚いて動いてしまうかと思ったが、そこはなんとか耐えたようだった。 明日菜と美沙子は高校からの付き合いなので、美沙子の行動は推測できていたのかも知れない。 お酒に強い麗香(れいか)が聞いてくる。 「ねぇ、ずっと思ってたんだけど明日菜は出掛けてるの?」 「うん!ちょっと実家に用事があるからって帰ってるんだ」 そう返したが麗香は昔から勘が鋭いので侮れない。 「美沙子あんた、そんなことにして壊したらどうするつもり!」 エヴァ弐号機に抱きつき頬擦りする美沙子を注意しながら麗香もエヴァ弐号機に少しだけ触れていた。 「おい真矢!これなんだ?」 斗真(とうま)が声を掛けてきて、その手にあるものを見て固まった。 それはエヴァ弐号機用の特別なスイッチ。 隠してあったはずなのになぜ? 斗真は手グセが悪く、遊びに来ると他人の家をいつも物色する。 「これ?ATフィールドって書いてある、面白そう!」 「ATフィールド全開!」 俺は慌てて斗真の下へと走ったが遅かった。 「痛い!痛い!やめてー!」 いきなり、エヴァ弐号機から悲鳴にも近い叫び声が発せられ、頬擦りしていた美沙子が驚いて尻餅をついた。 いつもは冷静な麗香も言葉にならない声を上げ、元一は手に持った缶ビールを落とし、スイッチを操作した斗真は固まっていた。 俺はそんな斗真からスイッチを奪うと、ATフィールドを解除し、ついでに起動スイッチも切った。 お酒を飲んで盛り上がっていた場が一瞬にして静まり返った。 そんな中、いつも冷静な麗香が興奮気味に俺に聞いてきた。 「エヴァ弐号機には明日菜が入っているの?」 麗香を見つつ、その後ろのエヴァ弐号機を見ると首が微妙に左右に振れていた。 しかし、あんな声を上げて誤魔化しが通じるわけもなく友人たちにはエヴァ弐号機に明日菜が入っている事を打ち明けた。 それを聞いて美沙子は抱きついてエヴァ弐号機の全身を触り始めた。 麗香も触りたいのを我慢していたのだろう。 美沙子と一緒にエヴァ弐号機に触れて堪能し始めた。 便乗して元一と斗真もエヴァ弐号機に触れようとしたが、美沙子と麗香から私たちのエヴァ弐号機に触らないでと怒られていた。 その後、俺以外の全員の意見でみんなで飲み食いしてるのに、明日菜1人だけが着ぐるみに閉じ込められて動けないように支柱に磔にされているのは可哀想だと言う事で支柱から外すように言われて従うことになった。 美沙子と麗香に支えてもらいながら、電動ドリルで支柱へ磔するように固定していたネジを外していく。 こうして支柱に磔にされていたエヴァ弐号機は解放されたのだが長時間動けずにいた上、慣れない足だけ竹馬のようになった器具を取り付けているので満足に立つ事もできずに片膝ずつ床に着いて倒れそうになったが、さすがに受け身なしで倒れる事はなく、両手をついて明日菜は倒れないように体を支えた。 「エヴァ初号機の初出撃のシーンみたい!」 と全員が興奮する中、美沙子がある提案を始める。 それは全員でエヴァのコスプレをしてエヴァ弐号機の明日菜も加えて飲み会をやり直すというもの。 全員が同意したため、俺も同意せざるを得なくなってしまった。 エヴァ弐号機と写真を撮りたい美沙子と麗香は言った。 「部屋借りるね!」 そう言って勝手にうちの部屋へ入っていった2人。 残された男3人とエヴァ弐号機。 間近でマジマジとエヴァ弐号機を眺める元一と斗真だったが、麗香や美沙子から釘を刺されているのでエヴァ弐号機には触りたいけど、触れない2人がいた。 そんな時、斗真が思い出したように聞いてきた。 「なぁ真矢、あのATフィールドのスイッチなんだったんだ?」 その質問に俺はドキッとし、明日菜の体がピクンと跳ねた。 俺が答えに困っていると、着替えにいった麗香が頭だけ綾波レイのマスクを被って顔を出した。 「真矢、これって明日菜着てるのと同じ?」 その言葉に俺はハッとした。 エヴァ弐号機に続いてエヴァ零号機の着ぐるみを今2人が着替えている部屋に隠していたことを思い出したから。 「あ!それはちょっと!」 後日、明日菜に綾波レイのコスプレをさせてエヴァ零号機に閉じ込めるつもりだったので、全くの未使用。 麗香に見つかってしまったからには着たいと言い出すのは必然だった。 そのお陰というべきか、斗真からのATフィールドのスイッチに関する追求は逃れられた。 ミサトさんのコスプレをした美沙子が出て来ると、俺は麗香の待つ部屋へ美沙子に入るように促された。 美沙子はすぐに明日菜の入ったエヴァ弐号機に抱きついていた。 元一が美沙子に尋ねている。 「何があったの?」 「ヒ・ミ・ツ !」 とだけ答えるそんな美沙子と元一の会話を聞きながら俺は麗香の待つ部屋へと入った。 麗香はすでにいつもの綾波レイのプラグスーツのコスプレ姿でそこに立っていた。 そしてその背後にはエヴァ零号機の着ぐるみパーツが広げられている。 「見つかった?」 「うん、見つかった!私も明日菜みたいにエヴァ零号機にしてよ!」 俺が躊躇してると、綾波レイが迫ってくる。 「何?ダメなの?」 俺は麗香の強引なところが苦手で押し切られる事が多い、なぜか彼女の押しには負けて、言うことを聞いてしまうのだ。 結局、今も断り切れずに最終的には麗香の思うようになってしまうので、俺は麗香の要求を呑むことになってしまった。 部屋の外ではエヴァ弐号機とミサトさんの写真撮影が始まったようで盛り上がる声が聞こえてきた。 俺は綾波レイとなった麗香にエヴァ零号機の着ぐるみを着せていく。 パーツは基本的には前後で挟み込むようになっていて、足元から順番に取り付けていき、足先を取り付けて、ふくらはぎ、膝、太ももといった具合に挟み込みネジで細かく取り付けていく。 下半身はお尻のパーツを取り付ければ、足の部分は順番に解体しないと脱げなくなってしまう。 ネジ留めしたところは穴が残るので、周りの硬質パーツと同色の円筒形のゴムを詰めて目立たなくしていく。 腕も同様にグローブを嵌めてから順番に取り付けていく。 頭の部分を取り付けた後、最後に腕と頭、それにお尻を含む腰回りのパーツと接続し、胸の部分を取り付ければ完成となる。 俺の前には綾波レイのプラグスーツをコスプレをした麗香を閉じ込めたエヴァ零号機が完成した。 意外だったが麗香はエヴァ零号機の着ぐるみを着ても器用に歩いて見せた。 ただ、部屋から出る扉の前で立ち止まってこちらを見てくる。 どうやら扉は開けられないようだったので、開けてやった。 エヴァ弐号機とミサトさんの写真撮影会の場に零号機も加わり、さらに盛り上がりをみせる。 このまま女性陣だけの撮影会で終わると思っていたのだが、そうはいかないようで男3人も着替える流れになってしまった。 ただその際、エヴァ零号機は彼氏の元一に何か耳打ちをしていた。 俺はその行動が気になり、先に着替えさせてもらう事にした。 俺のコスプレは碇シンジのでプラグスーツを着たもの。 先に着替えさせてもらったのは、インナーとして明日菜と同じ肌色のラバースーツを着ておくため。 それはエヴァ零号機を着せた麗香が元一に何か耳打ちをしていたのが気になっていたから。 『コンコンコン!』 俺が着替えた部屋は鍵が掛かるので、外からノックする音が聞こえる。 「おい!真矢俺たちも着替えるから早く開けてくれ!」 そう急かされて扉を開けると、元一と斗真、それにミサトさんのコスプレをした美沙子の3人が雪崩れ込んできた。 そしてクローゼットに隠してあった初号機の着ぐるみを引っ張り出すと俺に着るように迫ってくる3人。 “やっぱり!麗香に見つかっていた” そう思ってはみたがもう俺は観念していた。 友人たちは一度言い出すとそれを絶対に曲げたりはしない。 すでに明日菜と麗香がそれぞれエヴァ弐号機とエヴァ零号機になっている以上俺の拒否権はなくなっていた。 俺は友人たちに従いシンジのプラグスーツ姿でエヴァ初号機に詰められる事となった。 着ぐるみの取り付け方は記憶力のいい美沙子が元一と斗真に指示を出して俺をエヴァ初号機に変えていった。 最後にネジ穴まで丁寧に円筒形のゴムで埋められた俺はエヴァ初号機となり、この後碇ゲンドウのコスプレをした元一と鈴原トウジのコスプレをしたエヴァ3体とともにキャラクター3人と一緒にプチ撮影会を実施した。 プチ撮影会は盛り上がりを見せたが、エヴァ零号機が騒ぎ出す。 「トイレに行きたいから、早くエヴァ零号機を脱がせて!」 麗香があまりに騒ぐもので慌てて元一と斗真は2人掛かりでエヴァ零号機を解体して麗香は綾波レイのプラグスーツのままトイレへと駆け込んで行った。 麗香のトイレの一件で興醒めしてしまったようで、美沙子は麗香がトイレから戻ってくると普段着に着替えるべく更衣室代わりに使っている部屋へと入って行った。 俺もそうだが、明日菜もかなり疲れているようで横になっている。 俺も少し気が抜けた事もあり横になった。 ウトウトしていると、体が大きく揺さぶられた。 いつの間にか眠ってしまっていたのだろう。 元一と斗真もいつの間に着替えを済ませていた。 「今日は楽しかったよ!ありがとう!」 そう言って玄関へと向かう友人4人。 それを見送ろうとして気づいた。 “俺、まだエヴァ初号機のままだ!” 傍には動かなくなったエヴァ弐号機が横たわっている。 「え!ちょっと待って!」 俺が声を上げた時には友人たち4人は部屋を出て扉が閉まった。 慌てて立ち上がり後を追いかけようとしたが、眠っていたせいで体が上手く動かない。 おまけに足に取り付けた竹馬のような器具が立ち上がるのを邪魔する。 結果、なんとか立ち上がれたのは友人たちが帰ってしばらくしてから。 後を追っても無駄な事はわかっているので、諦めてしまった。 続く