新進気鋭のアーティスト飛燕(HIEN)の個展へ招待された。 そこでは女性のモデルさんが作品となり展示されているという事で俺、真下 春馬(ましたはるま)はワクワクして個展へと向かった。 ただ一つ引っ掛かったことがある。 それはこの個展が【肉塊ギャラリー】となっていた事。 想像したのは一糸纏わぬ裸の女性が作品になっている画。 だが、【肉塊ギャラリー】の意味はすぐに知ることとなる。 重厚な自動ドアを抜けるとすぐに左右両側に肌色の椅子が現れた。 それを見てギョッとする。 俺の想像していたような裸の女性ではなかった。 それはまさに肉の塊、肉塊だった。 椅子の大きさは左右で少し違いがあり、人間が作品になっているのだと実感させられた。 その椅子には胸の膨らみがあり一目で女性だと分かるフォルムだった。 椅子の背もたれは女性の上半身がそのままといった感じだが、その顔には目や鼻、口もなく顔はノッペラボウ、腕は上半身に同化して腕の痕跡は見当たらなかった。 足は少し開いているが、スカートを履いたようになっていて座面がある。 それら全てが光沢を帯びた肌色をしていた。 その椅子の大きな特徴というべきだろうか、俺が受けた印象は肉の塊で出来た椅子であるという事。 大きな胸の膨らみはあるが乳首はなく、乳輪の痕跡もなく、お尻の穴もなければ女性器も見当たらない、そうただの肉塊。 そんな肉塊で出来た【肉椅子】の上には、会場内の展示品の説明が書かれたパンフレットが置かれていた。 そして、そのパンフレットにこんな説明が書かれていた。 ーーーーーーーーーーーー はじめに 肉塊となったモデルの方々には全て説明した上でご理解頂き、頭髪を含む全身を剃毛した上から特殊な塗料を塗布する事で皮膚が溶けて本来の人肌ではない光沢を帯び、かつこの特殊な塗料の効果により溶解した皮膚がくっつくことで作品となって頂いています。 ただの肉塊となり作品となって頂いたモデルの方には感謝の言葉しかありません。 腹をくくった全力の姿を見届けて頂ければモデルたちも後悔はないと思います。 ーーーーーーーーーーーー と締め括られていた。 はじめに と書かれた後から当然のように目の前の【肉椅子】の説明書きも続いていた。 俺は生唾を呑んでその説明に目を通し始めた。 そこにはモデルとなった女性の職業、年齢、身長、そして顔写真が付いていた。 【肉椅子A】 モデル : アミ 職業 : 大学生 年齢 : 21歳 身長 : 157cm 顔写真には肩までの茶髪の可愛らしい女の子が写っている。 【肉椅子B】 モデル : イオリ 職業 : 大学院生 年齢 : 23歳 身長 : 161cm 顔写真には長い黒髪のメガネを掛けた真面目そうな女の子が写っている。 左側の【肉椅子】に比べて右側の【肉椅子】の方が少し大きいことから、右側が【肉椅子B】で中身は女子大学院生のイオリ、左側が【肉椅子A】は女子大生のアミということになる。 ーーーーーーーーーーーー 【肉椅子】 ベースとなるシンプルな椅子に座った全身の毛が全くない肉塊となった女性を融合させる事で【肉椅子】としています。 頭髪を含む全身を剃毛した上から特殊な塗料を塗布する事で皮膚が溶けて本来の人肌ではない光沢を帯び、かつこの特殊な塗料の効果により溶解した皮膚が伸びて椅子に絡みつける事で作品【肉椅子】となって頂いています。 ーーーーーーーーーーーー と説明が書かれていた。 “まさかね!?” 正直、モデルといっても女性から型を取っただけでリアルさを出すためにこのパンフレットが作られたのだと俺は思った。 そう思いつつ、【肉椅子】に対峙すると不思議と人間のような気配を感じる。 パンフレットが置かれたその光沢のある座面、おそらくは太ももに当たる部分の皮膚に軽く触れてみた。 その人肌ほどの温かさに驚いて手を引っ込めた。 説明にはあったが、俺は正直今の今までこの【肉椅子】はただの作り物だと思っていたのだが… 。 触感はともかくとして光沢のある皮膚から感じられる温かみは紛れもなく人のそれだった。 俺は改めて【肉椅子】をじっくりと見た。 微妙にではあるが動いている、人の形は失ってもこの【肉椅子】は生きているのだと思った。 こんな恐ろしい作品なのに、なぜか興奮して勃起してしまう。 俺はきっと紛れもない変態なのだと思った。 恐ろしさと興奮が俺の中に共存したまま、パンフレットを手にギャラリーの奥へと足を進めるとすぐに【肉壁】が迎えてくれた。 早速、パンフレットに目を通す。 ーーーーーーーーーーーー 【肉壁】 3人の女性が前述の【肉椅子】同様の処置をされて肉塊となり重なり合うようにして皮膚を伸ばして一枚の壁に仕上げたものになります。 左右の壁には計6人の女性が文字通り体を張って肉壁となっています。 人でも物でもなく躯体の一部となった彼女たちの美しい姿をご堪能ください。 ーーーーーーーーーーーー 【肉壁A】 モデル : ウミ 職業 : 雑誌モデル 年齢 : 20歳 身長 : 169cm 【肉壁B】 モデル : エリカ 職業 : レースクイーン 年齢 : 21歳 身長 : 170cm 【肉壁C】 モデル : カリン 職業 : 短大生 年齢 : 20歳 身長 : 168cm 【肉壁D】 モデル : キホ 職業 : 雑誌モデル 年齢 : 21歳 身長 : 168cm 【肉壁E】 モデル : ココミ 職業 : 大学生 年齢 : 22歳 身長 : 167cm 【肉壁F】 モデル : ケイ 職業 : 大学生 年齢 : 21歳 身長 : 171cm 【肉壁】にされている女性たちの写真を見たがどの娘も若くて美しい。 そして、身長も高く美しい容姿の彼女たちは何故、肉塊の作品になろうと思ったのだろうか。 俺にはさっぱり理解できなかったが、彼女たちには彼女たちの理由があり、自ら進んでこんな姿になったのだろうと考える。 そうは考えながらも俺は興奮し、【肉壁】に触れてみた。 真空パックでもされたように、壁に体が半分めり込んだような形で【肉壁】となっている6人の女性たち。 【肉椅子】の時と同様に大きな動きはない。 やはり、【肉壁】からも【肉椅子】と同じように人の温かみが感じられた。 全ての【肉壁】に触れてみたが多少の温度差はあるものの人の体温程度の温かさを感じ、俺が触れると微妙にどの娘も反応した。 まだ、人としての感覚は残っているようだった。 【肉壁】については6人の女性たちのプロフィールが羅列されているだけなので、どれが誰なのかまでは分からなかった。 肉塊 第2話 展示作品 に続く