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ごむらば
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アート作品 マーメイドになった私

日雇いバイトに応募した。 その日雇いバイトは特殊メイクのモデルのバイト。 日給はかなりいい。 だが、応募要項には全身写真や体を細かく採寸したものを提出する必要があった。 まあ、面倒ではあったが高額な日給を得るためには仕方ないと思い指定された通りに細かく採寸して応募した。 結果は採用だった。 当日、指定された場所に向かう。 そこはイベント会場の控え室。 そこには1人の女性スタッフが待ってくれていた。 「おはようございます、本日はよろしくお願いします」 この人がアーティストか分からないがとにかくキチンと挨拶しておいて損はない。 「おはようございます、今日担当させて頂く那須です」 簡単な挨拶が済んだところで、説明が始まる。 今日は貴女にはマーメイドになって頂きます。 説明はそこから始まった。 そして、私が送った細かい採寸データから作られた特殊メイクの下地となるものを着用しなければならないとのことだった。 まず全裸になるように言われた時は少し焦ったが、確かに海外の特殊メイクを施されている女性は胸が丸出しだったように思う。 まず、渡されたのは私の頭と大きさが変わらない白い全頭マスク、そして白いラバースーツだった。 更衣室で全裸になってから、まずはラバースーツに足を通す。 このラバースーツにはファスナーなどは一切なく、ラバースーツのフードの顔が露出する部分から体を滑り込ませていくらしい。 そんなことができるのだろうかと思ったが、意外にもやってみると簡単にできた。 このラバースーツはフェイスエントリーというらしい、文字通り顔から着るからそう言うのだろう。 ラバーというだけあり、ゴムのように伸縮性があり思ったよりも伸びて着ることができた。 それに私の体を細かく採寸したデータも役に立っているようで、体にピッタリ過ぎるくらいフィットしている。 髪を簡単に束ねてフードを被る。 私の全身のほとんどが白に侵食されてしまった。 全頭マスクを被ろうとして気づいた。 私の乳首や陰部が白いラバースーツ越しに薄らと透けていることに。 急に恥ずかしくなり腕と手を使って乳首と陰部を隠すがどうにもならない。 こんな姿で人前に晒されるのかと思うと急に恥ずかしくなり顔が熱くなり赤面してしまう。 更衣室の外から那須さんが声を掛けてくれる。 「全頭マスクを被ったら一度出てきて下さい」 “そう言われても、無理無理無理!恥ずかし過ぎる!!” 私の心を見透かしたように那須さんが続ける。 「そのラバースーツだけだと、体が透けて見えてしまい人間であることが分かってしまいます、なので、人間らしさを消す処置をこれからします」 那須さんからは私の体が透けている事は承知の上のようだった。 それに人間らしさを消す処置をしてもらえれば問題はないだろうと思った。 改めて全頭マスクを被る、那須さんに教えてもらった通りに。 まず、ラバーでできたマスクを表裏を逆にしてから目の部分にある私の目が外からは見えないようになっているレンズ部分と合わせる。 次に口のところにある飛び出たマウスピースを咥える。 マウスピースの先はラバーマスクの左耳の後ろへと繋がっており、ラバーマスクで頭全体が覆われても呼吸するのに支障がない。 ただし、マウスピースをしっかりと咥えるため話す事はできなくなる。 それに人らしい顔の凹凸はほぼ無くなってしまった。 全頭マスクを被った後、フェイスエントリーのフードを被った私の今の姿は真っ白なマネキンのようだった。 更衣室から出るとシワがないかチェック 目のところだけマイクロホールになったタンクトップと一体型のラバーマスクを被る。 そして陰部だけを隠すための白いラバーのTバックを履くと、乳首も陰部も大分分からなくなった。 そこへネックエントリーのラバースーツを着るとほとんど乳首も陰部の存在も消えてしまった。 さらにここからマスクもグローブも一体となった足首まであるスカート丈の長いワンピースを着せられる。 ワンピースと呼ぶのが正しいのか分からないほど、体にピッタリとフィットし足が動かしにくくなった。 その上から足を一つに纏めてしまうスカートのようなモノを履く。 そしてさらにマーメイドのように足を一つに纏めるネックエントリーのラバースーツも着せられた。 こうして私は人間味の全くない真っ白なマーメイドの素体となった。 真っ白なマーメイドの素体となった私はストレッチャーのようなものに横たわり、その上に白い布を掛けられて運ばれる。 まだ、アーティストもスタッフもいないブースの作業台へと。 到着すると作業台へと那須さんに手伝ってもらいながら移動する。 作業台に横たわると、那須さんから全く動かないように言われた。 ただし、動いていいのはマーメイドの特殊メイクをされて水槽に落とされた時だけ。 網で吊り上げられればそこからは動かないように指示された。 作業台のすぐ脇に目をやると青く着色された水で満たされた水槽、その中には網が浸かっていた。 一見するとただの網にしか見えないが特殊なチューブで作られた網らしく中に空気を蓄えており、私の被るマスクの左耳の後ろのプラグに繋ぐとしばらく呼吸ができるらしい。 簡単に説明を受けたあと、全く動かないように念押しをされてから作業台の上に仰向けで横たわると上から白い布を掛けられた。 静まり返ったイベント会場で幾重にもラバースーツに体を拘束するように包まれ、横になって静かに呼吸していると作業台に溶けていきそうなそんな錯覚に襲われる。 目を閉じるとすぐに眠ってしまった。 周りが騒がしくなっていることに気づいて目が覚めた。 目の前には白い布が掛けられていて、すぐに体の違和感とともに今私は真っ白なマーメイドの素体になっている事を思い出した。 “動いたらダメって言われてたのに動いちゃったかな?“ そんなことを考えていると、白い布が取り除かれた。 “ここからは本当に動いたらダメだ!“ 自分自身に気合を入れるとともに体に力が入る。 音楽が流れて何か始まるのだろう、でも私の視線は天井から動かせない。 視界の中にアーティストらしき人が現れると私に特殊メイクを施し始めた。 マスクを被せられ、腕から体とどんどん特殊メイクを施されているのが、触られている感覚で分かる。 気になって仕方ないが見ることはできない、動いてはダメだから。 “水槽に入るまでの辛抱だ” 水槽に入ったらマーメイドとして動いていいと言われていたから。 特殊メイクが終わったようで私の体はアーティストによって転がされ、水槽へと放り込まれる。 “やったー!やっと動ける!” 私はそう思い体を動かそうとしたが、しばらく動かなかったので体が固まっていた。 それでもなんとか上半身を水槽から出して、尾ビレも水槽から出して、いかにもといったマーメイドっぽいポーズを取った。 そんなマーメイドポーズが良かったのか、観客からは拍手、写真を撮る人多かった。 私はちょっとしたアイドルになったような気がして気分が良かった。 少しすると今度はゆっくりと網とともに吊り上げられていく。 ここからは捕獲されたマーメイドが網から逃れようとする演技、自信はないが私なりに必死に網から逃れようと演技した。 私はそのまま大きなビニール袋の中へ網とともに入れられてしまう。 ビニール袋に入れられたら動かないように指示されていたので再び動かないようにする。 ビニール袋の口は閉じられた後、掃除機で空気が吸い出され私は真空パックされていく。 一緒に真空パックされた網のお陰で呼吸は確保できている。 私は真空パックされても暴れることはなかったが、かなりしっかり空気を抜かれて真空パックされたので少し怖かった。 ここからは観客に晒される。 私に特殊メイクを施したアーティストさんが挨拶を始めた。 “良かった!無事に終われる” そう思い私は安堵した。 これで私の特殊メイクのモデルは終了。 後は台車に載せられて控え室へ運んでもらうだけだ。 私を控え室に運んでくれた男の子は私より少し年下だが、私好みの男の子だった。 特殊メイクをしている時も控え室へ運ぶ時も凄く私に関心を持っているようで顔近づけて私を見てきた。 そんな彼に私は少しずつ興味を持ち始めていた。 真空パックから解いてもらったら抱きついてあげようかなんて考えていたのだが、彼は一向に袋を開けてくれない。 それどころかどうしていいか分からずにキョロキョロしていた。 “あれ?” そう思ってすぐに呼吸が苦しくなってくる。 分かった事は網のチューブの中の空気がなくなってきたということ。 私は慌てて体を揺すり袋を開けて欲しいと彼に訴えた。 『ギチギチ』 と大きな音にビックリした彼は慌ててビニール袋の口を開けてくれた事で私は事なきを得た。 暴れた分、空気が速くなくなったのだろう。 ビニール袋から体を出した時は苦しくて荒い呼吸を繰り返した。 “速く出してよ!” 私はそんな思いを込めて彼を見た。 その後は彼に手伝ってもらい、特殊メイクを外し、ラバースーツを脱ぐのも手伝ってもらった。 ある程度、ラバースーツを脱がせてもらったところで彼には控え室を出てもらった。 脱いでいくと私の恥ずかしい姿が見られてしまうから。 白いラバースーツを脱いで元の私に数時間ぶりに戻った。 シャワーを浴びて、体を癒してから控え室を出た。 モデルとしての日雇いバイトの日給をもらい、そのまま帰っても良かったが、せっかくなので特殊メイクにされている人たちを見に行くことにした。 いろいろ見て周り自分あの中の一作品だったのかと思いながら、最寄り駅へと向かっていると、あの彼が私の前を歩いていることに気づいた。 私はメモを取り出すと [特殊メイクを外すの手伝ってくれてありがとうございました] と簡単に記した。 改札を通ろうとしている彼に追いついた私は思い切って声を掛けた。 「お兄さん、お金いっぱい持ってそうだからご飯でも行かない?」 彼は振り返り私を見たが、声の掛け方がまずかったと今思えばすぐに分かるが、その時は上手く言葉が出て来なかった。 そんな私を一瞥すると彼は改札を通り過ぎて行く。 私も改札を通り彼に追いついた。 そして強引に彼の手にメモを捩じ込んだ。 私は自分でも驚くほど大胆な行動力に驚きながらも、今度は急に恥ずかしくなり彼から離れるように改札をまた出た。 “日雇いバイトの1日限りの恋だった” そう思い足早に改札から離れようとする私の背後から彼の声が追い掛けてきた。 「僕と一緒にご飯いきませんか?」 私は振り返り笑顔で答える。 「はい!ご飯行きましょう!」 おしまい

アート作品 マーメイドになった私

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