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ごむらば
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肉塊 第6話 【肉クッション】

トイレの次は芸術作品。 その名の通り彫刻のようになった肉塊が並んでいた。 座っているモノ、立っているモノ、2体が絡み合ったモノなど中には寝っ転がっているものや、体を交わらせているモノもあったが、どの作品も顔はなく肉塊が固められたような形をしていた。 芸術に精通する人ならば、いろいろ思うところはあると思うのだが、あいにく俺は芸術に詳しくない。 次は出入口付近に設置されたアンケート記入スペースだ。 靴を脱いで早速、畳が敷かれた4畳ほどのスペースへと上がる。 そこには【肉座卓】と【肉座布団】が6セット置かれていた。 【肉座卓】は肉塊となった女性が四つん這いになっているのは遠目では見ていたが、近くで見ると凄いの一言に尽きる。 人の痕跡はなくなり肉塊になっている。 そんな【肉座卓】の一つを選んで、アンケート用紙を置くと、少し躊躇しながら【肉座布団】に座ってみた。 柔らかくて温かみのある【肉座布団】から人の形を失ってしまったが命は尽きておらず今も生きているのが肌で伝わってくる。 そんな肉塊となり【肉座布団】に俺のお尻でしっかりと体重を掛けているのが申し訳ない気もした。 【肉座卓】の天板は肉塊となった女性の背中であり凸凹しているため、プラスチックのシートが敷かれていた。 そんな【肉座卓】の下に足を差し入れると天板の裏側にある肉塊となった女性の胸の柔らかい膨らみに触れた。 その柔らかさは人工物でなく人のものであり、接触していると【肉座卓】となった女性の胸から熱が太ももに伝わってきた。 入口でアンケートを記入する男性を見た時、肉座卓】の天板下に垂れた胸を弄ったり、【肉座布団】にお尻を擦り付けたりしながらアンケート記入していたが、寧々さんの【肉洋式大便器】を見た後ではとてもそんな気にはなれなかった。 アンケートの内容を見ると、[氏名と年齢、印象に残った肉塊作品を記入して下さい]とあった。 それに答えようとパンフレットを見返す。 いろいろとあったがやはり俺は寧々さんの【肉洋式大便器】が一番印象に残っている。 何か少しでも寧々さんに向けてコメントを残そうと思い、【肉洋式大便器】のところを見ようとして俺は固まった。 展示されていた【肉クッション】の説明とともに作品にされた女性の名前、年齢、職業、そして顔写真、全てがよく知っている女性だったから。 【肉クッション】はただの肉塊であり、あまりにも特徴がなかったのでパンフレットに目を通す事もなかった。 俺はパンフレットを握りしめたまま、アンケートの途中で靴も履かず【肉クッション】のところへと走って行った。 順路とは逆走する形となり、途中来場者とぶつかったがそんな事はどうでも良かった。 【肉クッション】の前に辿り着くと、パンフレットを改めて見直した。 「嘘だ!」 俺は涙を流して【肉クッション】の前で膝から崩れ落ちた。 俺の異変に気づいた男性スタッフが俺に声を掛けてきた。 「お客様、どうかなされましたか?」 俺は涙を流しながら男性スタッフを睨みつけて言った。 「飛燕(HIEN)はどこだ!今すぐ会わせろ!」 大声でそう言ったので周りの来場者は俺を奇異の目で見てきたが、そんな事はどうでもいい。 「とにかく、飛燕(HIEN)に会わせろ!」 男性スタッフは慌てた様子で、インカムで連絡を取ると俺はそのままバックヤードの個室へと案内された。 「こちらで少々お待ち下さい」 来客用の部屋に通され、男性スタッフはそう言って出て行って一人になった俺は一人掛けソファーに腰掛けて靴を履いていないことに気がついた。 それほど冷静さを失っていた。 【肉クッション】にされていた女性は、俺の婚約者の羽鳥 由香里(はとりゆかり)。 “半年後には結婚を控えていたのに、なぜ?” もう一度、パンフレットを見返す。 【肉クッション】 モデル : ユカリ 職業 : 会社員 年齢 : 24歳 身長 : 160cm 俺の知る由香里の情報と合致する。 トドメは顔写真、笑顔で写る由香里がそこに居た。 そんな由香里の笑顔の写真が涙で滲む。 個展の開催期間を見ると、その少し前から由香里は仕事を休んで友人と独身最後の海外旅行へ行くと言っていた。 俺も仕事が忙しい事もあり、連絡が取れていなかった。 だが、まさか肉塊に変えられてしまっているなんて夢にも思わなかった。 そう言えば、由香里は友達と2人で旅行へ行くと言っていた。 “確か名前は?” 思い出そうとするが冷静さを失っているので、すぐには思い浮かばない。 「はるか、そう小野 春香(おのはるか)ちゃんだ!」 涙ボクロが印象的な幼さの残る女性だった事を思い出した。 由香里の学生時代からの親友という事で一度紹介された事があった。 俺は導かれるようにパンフレットに目を通す。 【肉カウチソファー】 モデル : ハルカ 職業 : 会社員 年齢 : 24歳 身長 : 162cm 顔写真を見て俺はパンフレットを床に落とした。 パンフレットに載っていた顔写真は涙ボクロが特徴的な幼さの残る女性だったから。 一緒に旅行に行くと聞いていた親友の春香ちゃんも肉塊にされ【肉カウチソファー】にされているという事は、由香里が肉塊にされて【肉クッション】にされたという事が確定したようなものだった。 つまり、展示され並んでいた【肉クッション】と【肉カウチソファー】は親友である2人が肉塊作品となり並べられていたということになる。 肉塊 第7話 真実 に続く

肉塊 第6話 【肉クッション】

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