【肉椅子】と【肉壁】だけでも、もう十分過ぎる奇抜な作品なのに、まだ本格的に肉塊ギャラリーにすら足を踏み入れていない。 いったいこの先にはどんな作品が展示されているのだろうと考えるだけで鼓動が速くなり胸が高鳴った。 ドキドキが抑えられないまま歩みを進めると開けた円形のギャラリーへと出た。 円形ギャラリーの中央には明らかに女性1人分ではない大きさの肉塊が展示されている。 「何?あれ?」 俺はすごく間抜けな声で言葉を発した後、慌ててパンフレットを開く。 ギャラリーの中央に展示されている肉塊の説明を読んだ。 ーーーーーーーーーーーー 【肉塊】 今回の作品のテーマである【肉塊】を2人の女性で表現した作品。 そして、今回唯一の動く作品がこの【肉塊】であり、こんな姿にもなっても表現者として人に見て頂くことに向き合う事のできるバレリーナとダンサーのお2人に【肉塊】となって頂きました。 時に荒々しく時に穏やかに、その身がただの【肉塊】となっても表現し続ける彼女たちをご堪能下さい。 ーーーーーーーーーーーー パンフレットの説明を読んでから、視線を上げると【肉塊】は確かに2人の女性の背中同士がくっついたようになり蠢いていた。 腕や足は短くなっていたり、もう1人の体にくっついていたりしているが、自分たちが人であり表現者であったことを訴えているかのようにしなやかでキレのある動きをしていた。 だが、ただの【肉塊】となった女性2人の顔はどこにあるのかも分からず、ただの【肉塊】が動いている光景は不気味さも感じた。 それでもその動きは何か惹きつけられるものがあり、バレリーナとダンサーであった彼女たちにしか表現できない部分であるように感じた。 そんな彼女たちのプロフィールを確認した。 【肉塊】 モデル : スズカ 職業 : バレリーナ 年齢 : 24歳 身長 : 165cm 【肉塊】 モデル : サキ 職業 : ダンサー 年齢 : 24歳 身長 : 162cm 2人とも幼さの残る顔立ちで可愛いかった。 “こんな娘たちがあんな姿に” そう思い見ていると【肉塊】の蠢めく姿から目が離せなくなり見惚れていた。 それでも後方から他の来場者もやって来たので、床に貼られた順路に従って進んでいくことにした。 パンフレットに目をやるとまず説明があったのは【肉電気スタンド】だった。 ーーーーーーーーーーーー 【肉電気スタンド】 ギャラリー内の作品横に置かれた高さ150cmほどの【肉スタンド】は作品に対して一つあり作品をより良く見せる角度で照らしてくれています。 もちろん、この【肉電気スタンド】も作品の一つとなっています。 同じ150cmの身長の女性に【肉電気スタンド】となって頂き、高さは揃えてあります。 【肉電気スタンド】からの照明が程よく当たるように、作品には台座で高さを調整して照明が当たるように調整してあります。 【肉電気スタンド】は支柱に固定されているため転倒の恐れはありません。 ーーーーーーーーーーーー 説明にはそう書かれていたが、今まであったような女性たちのデータはない。 “何故なのだろうか?” “数が多いからパンフレットに載せきれなかったのだろうか?” そんな事を考えていて、ふと思い浮かんだ事があった。 身長150cmの女性ばかりを集めるのは、かなり難しく思える。 だが、これが未成年となると… 例えば、女子高校生なら可能なのではと考えると合点がいく。 【肉塊】の作品となった女性たちのプロフィールには下の名前と年齢が明記されていた。 女子高校生なら年齢が書けないため【肉電気スタンド】にはプロフィールが載せられていないのだと思った。 そんなことを考えて【肉電気スタンド】を見ると体が細くモデルはやはり女子高校生のように見えてきた。 【肉電気スタンド】の足は一本で棒のようになっており、人であった時の足の痕跡は完全に消されてなくなっていた。 そんな【肉電気スタンド】が倒れないように足元から背中にかけて支柱になっているのだが、この支柱にも【肉電気スタンド】となったモデルの皮膚がしっかりと巻き付くように融着しているため、倒れる事はないように思える。 【肉電気スタンド】は頭部全体にLEDライトのチップが埋め込まれていて頭部全体が光っている。 到底、人には見えない姿にされた【肉電気スタンド】の首から背筋に沿ってLEDの電源コードが走っているようだが、肉に埋もれているので分からない。 背中側で腕を伸ばしアームバインダーで拘束されたような状態で一纏めにされているのだろう、胸が突き出し【肉電気スタンド】は女性らしいフォルムを強調させていた。 コードは踵と思しき辺りから出てコンセントへと繋がっていた。 もっと、じっくりと見たいところではあるが、来場者が増えてきたので先へと進むことにしようと思う。 それに【肉電気スタンド】はギャラリーの至るところに設置されているので、いつでも見ることができるとも思った。 そんな事を考えながら、ふと順路とは反対側を見て俺はギョッとした。 出口に設けられたアンケート記入スペースには俺の想像を超える肉塊が設置されていたから。 肉塊 第3話 アンケートスペース に続く