どれくらい眠っていたのだろうか。 目覚めた時、窓の外はもう暗くなっていた。 “なにか凄く疲れ、興奮し、気持ちいい夢だった” “あれ?!” 俺はある事に気づいて体を起こした。 周りを見たが、由香里の姿は見当たらない。 もちろん、脱がせたはずの肌色のラバースーツも。 “やっぱり夢だったのか?” そう思い寝室を出ると、由香里が夕飯の準備をしていた。 「あれ?由香里!」 「疲れてたんだね春馬、それとも興奮し過ぎた?」 「あれって夢じゃなかったんだ」 俺は独り言を呟いたが由香里には聞こえていないようだった。 「お腹空いてる?」 「うん!」 そう返事を返してダイニングテーブルを片付け、夕食の準備を手伝う。 そして、久しぶりに由香里の手作り料理を口にした。 「あのさー、あれって夢じゃないよね」 「あれって?」 「肉塊ギャラリーのこと」 由香里はキョトンとした顔をして首を傾げる。 俺は夢と現実をごっちゃ混ぜにしたと思い、焦って弁解する。 「あっごめん、忘れて!」 そう言うと由香里はしたり顔で言った。 「現実だよ!」 「もうぉ!」 そう言ってから2人で笑った。 そんな由香里の口の周りは少し赤くなっている事に今更ながらに気づいた。 きっと長時間、口の中までラバーで覆われていたので赤みがすぐには引かなかったのだろう。 そして聞いてみた。 「あれって、ラバースーツって暑くないの?」 「熱が籠ってくるし逃げないから暑いよ、でも私暑いの苦手じゃないから」 「じゃあ、ピッタリした体に密着するのは?」 「うーん、どちらかというと好きかな、敏感に感じて気持ち良くなってしまうことも… 」 そう由香里が答えるのを聞きながら以前、人魚のゼンタイを着てもらおうとして断られた理由がなんとなくだが理解できた。 付き合って日が浅かった事もあり、全身をピッタリと覆われて気持ち良くなっている変態的な姿を俺に見られたくなかったのだろう。 それに水球水着を拒まれたのも同じような理由のような気がする。 興奮すると由香里は乳首が勃ってくる。 光沢のある水球水着ならば勃起した乳首が顕著に分かってしまうから拒んだのだろう。 「ねぇ、たとえばだけど、また【肉クッション】に俺がどうしてもなって欲しいってお願いしたら由香里は【肉クッション】になってくれる?」 由香里は少し顔を赤らめて言う。 「春馬がどうしてもというなら仕方なくだよ!」 「朝まででも【肉クッション】のままでいてって、俺の無理なお願いしたら聞いてくれる?」 「うん、いいよ!春馬がどうしてもというならそれも… なんだったら毎晩でも春馬専用の【肉クッション】になって上げてもいいよ」 由香里は顔を真っ赤にして最後は恥ずかしそうに声が小さくなりながら言った。 由香里の性格はよく知っている。 俺がどうしてもというと本当に嫌なこと以外は絶対に断らない。 むしろ、自分が好んでやりたい事なら多少の無理も聞いて貰えるし、自分から提案する時は自分がそうしたい時。 俺は笑顔で由香里に言う。 「ありがとう、これから毎晩夜が凄く楽しみだよ!」 由香里も満面の笑みで俺の言葉に応えてくれた。 「でも、【肉クッション】になる時は春馬もいろいろと手伝ってね」 「もちろんだよ!」 その晩、全裸になった由香里を肌色のラバーマネキンにし、俺の手で愛しの由香里を初めて【肉クッション】に変えた。 その夜はとても興奮し、夢を見ている様だった。 数日後、テレビ番組の特集で【肉塊ギャラリー】が取り上げられて反響があったと報道されていた。 個展の開催期間の様子も映し出され、そこにはまだ【肉クッション】として展示されている由香里の姿も映っていた。 インタビューを受ける新進気鋭のアーティスト飛燕(HIEN)の姿とインタビュー内容が字幕でも流れていた。 知っていることばかりなので内容はほとんど頭に入ってこなかった。 最後に肉塊作品として展示されていた女性たちが作品姿のまま顔だけ出している姿が映し出されていた。 その姿は俺でなくてもテレビを見た多くの人が衝撃を受けただろう。 テレビ番組の放送後、かなりの反響がありSNSでも話題となったようだ。 [肉塊ギャラリー行ってみたかった] [展示作品になりたい!] [また、個展開いて!次は必ず行きます] など高評価な書き込みが殺到したことをニュースで伝えていた。 アーティスト飛燕(HIEN)は今のところ次回の開催については予定していないと発表したが、近いうちに個展を開きたいという意向は示していた。 俺はそのニュースを見ながら一人優越感に浸っていた。 【肉塊ギャラリー】にも行けたし、なにより今俺の膝の上には【肉クッション】がいて抱きしめていたから。 そんなことがあってからしばらくしたある日、家に帰るとリビングが何やら騒がしい。 そう言えば、由香里に女子会をやっていいか尋ねられた事を思い出した。 それが今日だったことはすっかり忘れていた。 リビングに入った俺は自分の目を疑った。 そこには肌色のラバースーツ姿の女性や中には顔だけ出した肉塊作品となっている女性もいた。 「え、え、え!」 俺は驚きで全く言葉が出てこない。 どの女性も可愛く美しい、そしてその姿は顔こそ露出しているが肉塊姿。 そう、あの個展のパンフレットで見たことのある女性たちだった。 どこを見ても興奮する要素しかない状況に困惑していると由香里が声を掛けてきた。 「おかえり春馬、紹介したい人がいるんだ」 そう言って由香里から紹介されたのは俺が大好きなスーツアクトレスの加賀美 寧々さんだった。 俺が大ファンなのを知っていた由香里が寧々さんと仲良くなり家にまで呼んでくれたのだ。 俺は震える声で自己紹介をし、肌色のラバースーツを着た寧々さんに握手をしてもらった。 「今日はごめんさいね、女子会だから」 そう寧々さんに促され俺は由香里と一緒に自室へと移動した。 「ごめんね春馬、後でご飯運んでくるから」 「うん!楽しんで来て」 俺が笑顔で由香里に声を掛けると由香里が言った。 「肉塊作品になる様子をそれぞれ動画撮影してるから後で一緒に見ようね」 「え!マジッ!」 食いつくようにそう言う俺に手を振って、扉を閉めた由香里は女子会へと戻っていった。 俺は扉一枚で隔てられた女子会の様子を音を頼りに妄想を膨らませ、1人でその様子を楽しむのであった。 おしまい