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ごむらば
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異常者5 case: U

月曜日を迎えたが、安藤課長は出勤するのか? 俺の中では週末からその事が気がかりだった。 亮介さんがあまりにも安藤課長に対して腹を立てていたから。 もしかすると、麻袋に入れられたままゴミとして出されたか、もしくはどこかへ埋められたよではないかと思ったから。 いつもは出社の早い安藤課長がまだ出社していなかった。 それに亮介さんも。 俺の中では嫌な予感しかしない。 2人とも出社しなかったら? 絶対に何かあったに違いない。 そんな事を考えていると鼓動が速くなるのに気がついた。 「おはようございます!」 元気に出社してきたのは乙葉ちゃん。 だが、この日の彼女からはあのゴムの匂いはしなかった。 やはり、あのゴムのシートで真空パックされていたのは乙葉ちゃんだったのだと再確認した。 それより今は安藤課長のことが気になる。 そう思っていると亮介さんが誰かと話しながら出社してきた。 その相手は安藤課長だった。 ひとまず事件には発展しなかったので、ホッと胸を撫で下ろした。 亮介さんは俺のところへ来ると挨拶もそこそこにこう言ってきた。 安藤課長からクレームの件で言い過ぎたと謝罪があって、今週末時間があるなら飲みに行こうということになったと。 だから、俺もお前も大丈夫なので、3人で飲みに行くことになった事だけが告げられた。 まぁ、安藤課長の無事を確認した俺にとっては飲みに行く事自体全く問題はない。 亮介さんが笑顔なら俺はそれでいいと思った。 そんな俺と亮介さんの会話に割って入ってきたのは乙葉ちゃんだった。 「私も行きたいです!飲み会!」 可愛くそう言われると俺も亮介さんも断れなかった。 乙葉ちゃんは俺たちが黙っているのを見ると、そそくさと安藤課長の元へ行ったかと思うと、何か話してこちらを向いて頭の上で両手で大きな丸を作った。 という事は乙葉ちゃんも飲み会に参加するのだろうか? まあ、飲み会はともかくとして安藤課長が無事で本当に良かったと思った。 その週末、飲み会の後予想だにしなかった事が起こった… 。 居酒屋はいつもの行き付けの居酒屋。 楽しく飲み、安藤課長と俺たちだけよりも、乙葉ちゃんがいてくれたお陰でかなり盛り上がり賑やかな飲み会になった。 そして気づけば終電がなくなっていた。 まさかとは思ったが、そしてそのまま亮介さんの家に全員転がり込む事に。 「男の部屋って感じね」 呆れたように言い放つ安藤課長。 「私、掃除しましょうか?」 笑顔でそう言う乙葉ちゃん。 そんなことより飲み直そうと言い出す亮介さんはいつも通りだ。 そして、買い出しに出掛ける亮介さん。 「私が出すわよ!」 そう言って亮介さんの後を追う安藤課長。 「私も行きたい!」 乙葉ちゃんもそう言うと安藤課長に続いた。 「じゃあ歩夢、留守番よろしくな!」 そう言うと3人は俺が引き止めるのも聞かないでそのまま出掛けてしまった。 亮介さんの部屋に一人取り残されて呆然とする俺。 そして思うことがあった。 ここでゴムの塊にされていた安藤課長と乙葉ちゃんはここに来たことがあるはずなのに、リアクションが妙だったと… 。 そんな事を思いながらも、居酒屋で少しはしゃぎ過ぎた事もあり疲れた。 今日は流石にゴムの塊にされている女性はいないだろうと思う。 亮介さんも安藤課長それに乙葉ちゃんと飲みに行くのが分かっていたのだから。 俺はそう思い主人不在の布団へ倒れ込んだ。 『ドサッ!』 脱力し倒れるように布団に体を預けた俺。 それに驚くように掛け布団が動いたような気がした、いや間違いなく動いた。 俺は何かスイッチが入ったように体を起こすと掛け布団を探った。 だが、敷布団の下でゴムのシートで真空パックされていた乙葉ちゃんとは少し様子が違う。 明らかに掛け布団に人が入っているようだが、露出していないし、人の形もしていない。 掛け布団の横のファスナーを見つけた俺はそれをゆっくりと開いていった。 俺の周りのゴムの匂いが広がった。 中にはやはりゴムの塊が入っている。 少し膨らみがあり布団の形をしているが、人の形は全く見てとれなかった。 乙葉ちゃんの時のように真空パックされた上、全体が膨らんでいるようで、触り心地はエアマットレスのような印象を受ける。 掛け布団から引き出して確認しようと思ったが、引き出した後元に戻すのは難しそうだったので断念した。 “飲み会の日に俺以外に人を連れてくる可能性のある日まで… ” そう思いつつも、俺は掛け布団の横のファスナーを閉めると、ゴムの塊にされた女性が誰なのか探るべく、俺はこの女性のバッグを探し始めていた。 いつものように敷かれたままの布団の奥に女性もののバッグを見つけた。 そのバッグに見覚えはある。 「あっ!」 特徴のあるバッグだったので、すぐに思い出した。 そのバッグの持ち主は先週から新人研修で営業部に来た金森 海風(かなもりうみか)ちゃんのものだった。 今までは社歴のある女性たちがゴムの塊にされていたので、亮介さんと恋人関係にあった女性たちばかりだと思っていた。 しかし、今回は明らかに違う。 今年の新卒新人だから、その可能性は低い。 俺の推測していたことが全て打ち砕かれてしまった格好となった。 念のため見つけたバッグの中を確かめたが、掛け布団にされている女性が海風ちゃんてあることを指し示す社員証が出てきた。 「ふぅー!」 俺は大きくため息をついて、仰向けに倒れた。 蛍光灯を眺めながらも時計を見ると、3人が出掛けてから30分が経とうとしていた。 「ヤバっ!」 そろそろ、3人が帰ってくるだろうと思い、海風ちゃんのバッグを片付けると、再び仰向けに寝そべった。 だが、楽しく買い物をしているのだろう、3人はなかなか帰って来なかった。 そして、その間掛け布団は一度も動く事はなかった。 ようやく、3人が帰ってきた時は出掛けてから40分が経っていた。 その後、買い込んだお酒やツマミ、デザートをを食べ明け方始発が走り出す頃に俺と安藤課長、乙葉ちゃんの3人は亮介さんの家を後にした。 俺は思い切って聞いてみた。 「お二人は亮介さんの家、初めてですか?」 俺の質問に二人の表情が一瞬変わったが、すぐに初めてだったと答えた。 その後、その事には一つも触れずに最寄駅に着いた。 俺と乙葉ちゃんは同じ方向で、安藤課長は逆方向だったためホームで別れた。 電車に乗って座るとすぐに眠くなった。 そんな時、乙葉ちゃんが話し掛けてきた。 「加瀬さんとは毎週飲んでるの?」 「うん、まぁ、飲んでるよ!」 そう答えると少し間が空いて乙葉ちゃんが口を開いた。 「先々週も?」 「うん、あの居酒屋で飲んで、そのまま今日みたいに亮介さんの家へ行ったよ」 「へぇー、そうなんだ」 なんとなくいつもと違うトーンの乙葉ちゃん。 それ以降はその事には一切触れなくなった。 乙葉ちゃんは手前の駅で降りて、俺は列車の中から見送った。 俺はやはり先々週の敷布団の下で真空パックされていたのが、乙葉ちゃんだと確信し、あの時の光景を目を瞑り思い浮かべていた。 そして… 気づけばいつもの終点まで乗り過ごすのであった。 つづく

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