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ごむらば
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異常者17 本当の異常者

俺、佐々木歩夢は佐々木財閥の会長。 若くして会長になったが、俺には昔から役者になる夢があった。 だが立場上、夢は断念せざるを得なくなった。 そんな時、俺に声を掛けてきたのが映画【異常者】の監督 築島 学(つきしままなぶ)だった。 どこから情報を得たのか、細々と役者をしていた俺が佐々木財閥の会長になった事を知り声を掛けてきたのだった。 役者として最後に主演作品を撮る代わりに映画の出資者になって欲しいと申し出てきたのだ。 もう、役者を続けていけない俺は築島監督の要求を呑むことにした。 ただし、ラバーフェチである俺が満足する映画作品にする事を条件とした。 それが今回撮影された映画【異常者】という訳だ。 築島監督はラバーフェチの女優ばかりを集めて今回の映画の撮影に臨んだことを後に明かしてくれた。 女優たちにはこの映画でゴムの塊になり演じる事で佐々木財閥会長の夫人の座も夢ではないと触れ込んだ様だった。 そうして集められたラバーフェチの女優たち。 普段ならば隠している姿を映画のスクリーンで晒したのだった。 中には会長夫人の座だけが目的だった女優もいたが、ラバーフェチではないのでかなり無理をしたていたのは共演していてすぐに分かった。 あまり取り上げられないフェチズムに焦点を当てた作品という事もあり話題性があった。 加えて女優陣が豪華でかつそんな女優たちがゴムの塊にされるとなれば、足を運ぶ客も少なく映画は大ヒットした。 そして、そんな俺に映画のヒットを祝して築島監督からプレゼントが届いた。 それはゴムの塊になった女優のプレゼント。 「佐々木さんさえ良ければ、これから人生を共にしたい女性を選んで下さい」 そう言って俺の目の前に並んだゴムの塊にされた女優たち。 自分では気づかないうちに俺は怪訝そうな顔をしていたのだろう。 そんな共演した女優たちは一流芸能人と呼ばれるような女優ばかりだった。 そんな女優たちが映画やドラマでもないのに、ゴムの塊に自らなるとは考えにくかった。 「ご心配なく、彼女たちは強制ではなく、本人たちの意思で今、この姿でここにいますので」 俺は築島監督の説明で興奮し始めていた。 自分の意思で女優たちがまたゴムの塊になったと聞いたから。 そして、今回の映画【異常者】で一緒になりたい女性を見つけていたから。 そんな俺に築島監督が続ける。 「もし、誰も好みでなければ全員引き揚げます、好みの女性がいたら抱きしめてあげて下さい」 俺は大きく一つ頷いた。 俺の目の前に並んでいるのは… 両腕を背中で一つに纏められ足は短く折り畳まれているゴムの塊。 手足の自由を奪われ排水管に顔を接続されているゴムの塊。 ミイラのようにされた上、バキュームベッドで身動きできなくされているゴムの塊。 手足を拘束され完全に人としての自由を奪われたダルマのようなゴムの塊。 短い手足で震えながら四つん這いで立つヒトイヌのようなゴムの塊。 顔から2本のチューブが生えた人魚のようなゴムの塊。 俺は迷うことなく真っ直ぐと歩いていくと、腰を下ろして顔から2本のチューブが生えたゴム人魚の頭を撫でて抱きしめた。 「絵里香さん、これからもよろしくお願いします」 そう言うと、ゴム人魚はウンウンと2回頷き、俺に抱きついてきた。 抱きしめながら頭を撫でてやると、絵里香さんは何度も頷いて俺に抱きついて泣いている様であった。 築島監督が一緒にやってきたスタッフと共に撤収作業を始める。 そんな中、俺は築島監督に声を掛けた。 「もう一人、俺の秘書になって欲しい人がいるんですが交渉してもいいですか?」 「秘書ですか… 」 少し躊躇う築島監督だったが、本人と交渉して下さいとそれだけ言われた。 そして、俺はヒトイヌに声を掛けた。 「どうだろうか?秘書として私の下で働いて貰えないだろうか?」 ヒトイヌはしばらく考えているようだった。 「柊木 凪沙さん、いや春木 真央(はるきまお)さん、貴女の学歴等も考慮しての事です、苦労されたのに報われず今の仕事を選んだのでしょう、どうですか?」 俺がそう声を掛けると、ヒトイヌはウンウンと大きく2回頷いた後、土下座する様に床に頭を擦り付けるようにして泣き始めた。 私立大学を卒業しても、まともに就職できない事もある。 たとえ就職してもブラック企業だったりして辞める人も少なくない。 結果、仕事もお金もなく大学の奨学金だけが残り支払いに追われるというのをニュースで聞いた事があった。 築島監督は出演女優のラバーフェチ以外にも素性まで調査して俺に報告してくれていた。 それらも考慮して俺は結婚相手、そして秘書を選んだ。 その後、共演した女優たちもヒット作に出演し、順風満帆の人生を送っているのは耳に入って来る。 結婚した絵里香とは順調に愛を育み子宝を授かった。 残念ながら子供が生まれてからはすっかりラバーを着てくれる事はなくなったが、それも仕方がない事だろう。 その代わり俺の目の保養は秘書の春木 真央が補ってくれている。 来客がある時は、透明若しくは肌色のラバースーツをレディーススーツの下に着込んでいる。 そして、来客が全くない時は全身黒いラバーに覆われてラバーマネキン姿でその上から、特注のラバー製のレディーススーツを身に纏う。 テカテカと黒光りしピチピチとラバー独特の音を立てて、目の前を通られると思わず触れたくなり手を伸ばすが、俺の手は叩かれ注意される。 「奥様とお子様がいるので、お辞めて下さい!」と。 どちらかといえば大人しかった秘書の春木だったが、日を追うごと俺に対して厳しく対応する。 それは俺の立場が分かっていても揺るがない当たり芯が通っていていい事だと思う。 仕事もできて俺の目を癒してくれる春木にはこれからも秘書を務めてもらおうと思う。 そして、あの映画で共演した加瀬 亮介さんとは、週に一度ではないが月に一度くらいのペースで居酒屋へ飲みに行っている。 「歩夢、お前がまさかなぁ!」 加瀬さんはいつも酔っ払うとこのセリフを口にする。 酔ってフラフラの加瀬さんを俺はアパートまで送り届ける。 あの映画の出演後、加瀬さんだけはまだ売れずにいた。 加瀬さんの部屋はかつての映画撮影で使用されたアパートを彷彿させる。 敷きっぱなしの布団の上に加瀬さんを寝かせると俺は引き上げる。 『ガサッ、ガサッ』 とダイニングのゴミ袋から音が聞こえてくる。 俺はドキッとしてゴミ袋を確認する。 「うん、やっぱりそうだ」 ゴミ袋の中にゴキブリを見つけた。 ボロアパート、男の一人暮らし、散らかった部屋、出ない方がおかしい。 「じゃあ、また!」 加瀬さんからは返事の帰ってこないが、俺は部屋を出た。 「たまには電車で帰るのもいいかな?」 俺はそう呟いて最寄り駅へと向かった。 おしまい

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