お盆休み、大学生の俺、谷本 雅史(たにもとまさし)は一人暮らしの部屋で何もせず過ごしていた。 一緒に過ごす予定だった彼女 鷺元 麻衣(さぎもとまい)が実家へ帰ってしまい、俺は暇になった。 一緒に過ごすといっても俺が一方的にそう考えていただけで、麻衣は毎年実家へ帰省している。 俺たちの通う大学から麻衣の実家は遠い。 新幹線とローカル線を乗り継いで帰ると聞いていた。 それに麻衣は毎年帰省すると決まってバイトに誘われるそうだ。 それは高校生の時からずっと続いているらしい。 親に元気な顔を見せるのと、そのバイトが目的で帰省するのだ。 バイト先の名前は教えてもらっている。 寝っ転がっていた俺は体を起こし、自分に気合いを入れる。 「ヨシ!行ってみるか!麻衣を驚かせて、ついでにどんなバイトをしているのか見てこよう!」 俺は新幹線のチケットを取ると早速旅行の準備を始めた。 ただ、思い立ってからの行動は早かったが、そもそも動き出したのは昼過ぎ。 麻衣の実家近くに着いた時はもうすでに暗くなっていた。 ビジネスホテルにチェックインして、夕食を外へ食べに出ている時に麻衣にメッセージを送った。 [麻衣、元気でやってる?] すぐにはメッセージは返って来なかったが、ホテルの部屋でのんびりしている時に返信があった。 [元気だよ!雅史も元気?私はバイトが終わって今帰り] [俺は年がら年中元気だよ、ところで明日もバイト?] [うん、朝8時からバイトなんだ、今は忙しくて] [暑いから体には気をつけて頑張ってね] [ありがとう、帰ったらデートしようね] そう、返事がありメッセージのやり取りは終了した。 今日は早く寝よう! 明日の朝7時には麻衣の実家の最寄り駅まで行くために。 “麻衣、俺が行ったら驚くだろうな!” 麻衣が驚きつつも笑顔で俺と抱き合う画を想像しながら眠りに就いた。 翌朝、早く目が覚めて俺は早々にホテルを出た。 それでも麻衣の実家の最寄り駅に着いたのは7時少し前だった。 程なくすると改札口の向こうに田舎にはいない垢抜けた女性が歩いて来た。 それは小柄で可愛い麻衣だとすぐに分かった。 やはり、田舎では麻衣の可愛さは抜きに出ている。 眠いのか、周りをあまりちゃんと見ていない様子。 改札口を抜けてホームへ向かう途中で麻衣の横にピタリと並ぶ。 怪訝そうに俺の顔を見た麻衣の驚きの表情は今日早起きした俺へのご褒美だ。 「え!雅史なんでいるの?」 「昨日、こっちに来てビジネスホテルに泊まったんだ、で、今日は麻衣を驚かせてそのままバイトしているところを見ようと思ってね」 俺がそう言うと麻衣の表情が少し曇ったように見えた。 「でも雅史、私のバイトの開園時間は9時からだよ!」 「いいよ!麻衣を送った後、適当に時間潰すから」 「今日は忙しいし、私裏方だから会えないと思うよ」 「いいよ、麻衣がどんなところで働いているのか知りたいし、帰りに一緒にご飯行こ!」 「うーん、今日は厳しいかな、かなり遅くなるし明日も早いから」 「まあ別に構わないよ、俺暇だしゆっくりしていくから」 そう言うと麻衣は喜んでくれると思ったのだが、表情が一段と曇ったように見えた。 麻衣のバイト先に到着した。 バイトというのは爬虫類園。 「私、昔から爬虫類が好きで」 「知ってる!カメレオンが特に好きだもんね」 俺は笑って答える。 「じゃあ、私行って来るね!」 そういって麻衣は振り向く事なく従業員出入口から爬虫類園の中へと消えていった。 俺は近くの喫茶店に入って時間を潰す。 麻衣は爬虫類が大好きなのは知っていた。 だから毎年帰省し、爬虫類園にバイトに行くことも頷けた。 でも、俺より爬虫類園を取るというのは負けた気がして少し悔しい。 いつも一緒にいる【俺】と【麻衣の両親プラス爬虫類園】を天秤に掛けると俺に勝ち目はない気もした。 まあ、両親にも会え、爬虫類園で働けて、俺にも会える、麻衣とっては最高の状況だろうと勝手に思い、俺はウンウンと頷いた。 時間もあるので爬虫類園について調べてみる。 園内には国内外の爬虫類が多数展示されていて、害もなく穏やかな爬虫類については触れ合いコーナーもあり子供たちには大人気とあった。 そのため、県外からも多数この爬虫類園には訪れるようだ。 爬虫類園の情報を見ていて俺は目を奪われる。 そこに紹介されていたのは巨大なカメレオン。 大きさから見てもリアルな着ぐるみである事は間違いない。 この巨大カメレオンは期間限定で現れ、1日に3回園内を散歩する。 その間、写真撮影は自由となっている。 麻衣には内緒だが俺は着ぐるみフェチだ。 特に着ぐるみの中身が女の子だと非常に萌える。 サイトに載せられている写真を見る限り、サイズ的にもカメレオンの着ぐるみの中身は女性で間違さそうだ。 だが、思った冬の寒い時期ならカメレオンの着ぐるみを来て園内を歩き回る事もできる。 それは冬に活動が鈍くなる爬虫類たちを補うためのものだと思った。 来園者を楽しませるために、カメレオンの着ぐるみが現れるのだと。 残念ながら、また冬に麻衣を誘って巨大カメレオンを見に来ようと思って画面をスライドさせて俺は固まった。 [巨大カメレオン マギーくん登場!] その下には登場期間が記されていた。 [8月13日〜8月15日まで] それを見た俺は思わず声を上げてしまった。 「え!うそっ!マジっ!今日からじゃん!」 1人声を上げて注目を受けてしまったので、恐縮しながら大人しくコーヒーを飲む。 今から巨大カメレオンに会えるのが楽しみになってきた。 巨大カメレオンと麻衣に会う事を楽しみにしていると居ても立っても居られず、開園10分前には爬虫類園の前にいた。 さすがに先頭は恥ずかしいので、何組かの家族連れに前を譲った。 そして爬虫類園は開園時間を迎えた。 巨大カメレオンの事が頭から離れないが、園内を散歩する時間は10時と14時と18時の3回。 間隔を空けて休憩を挟まないとこの暑い中、カメレオンの中の女の子が倒れてしまうだろう。 暑いお盆の時期なので当然熱中症も加味しての事だろう。 10時まではまだ時間がある。 それに麻衣のバイト終わりまで待つとなれば、全てのカメレオンの散歩に参加できる。 焦る事はない、まずは園内の展示された爬虫類を見て回る事にした。 展示された爬虫類を見ながらどこから巨大カメレオンが現れるのだろかと探し回る。 巨大カメレオンだからカメレオンのコーナーを念入りに見て回る。 同時に裏方にいるという麻衣の姿を探したが麻衣の姿はどこにも見当たらなかった。 そうこうしているうちに巨大カメレオンの登場時間となった。 俺の予想通り、屋外にあるカメレオンのコーナーのバックヤードへと繋がる扉から巨大カメレオンが現れた。 アテンドのスタッフが2人ついて巨大カメレオンのお散歩が始まった。 一斉に子供たちが巨大カメレオンの周りに集まり、撫でたり触ったりしている。 中には泣きながら母親に抱っこされる子も。 人集りになっているので俺は離れてその様子を伺う。 離れて見ている限りではカメレオンの着ぐるみはリアル過ぎてカメレオンの突然変異に思えてしまうほど。 歩き方もゆっくりで、巨大カメレオンの着ぐるみを着て操演している女の子は何度も何度も練習を重ねたのか若しくはカメレオンが大好きなんだろうと思った。 カメレオンが時々動きを止めると、子供たちが記念撮影を行う。 “そういえば!” 巨大カメレオンに気を取られていたが、アテンドのスタッフは2人とも女性で爬虫類園のロゴの入ったキャップを目深に被っている。 麻衣の口調からして今日から忙しくなるように言っていたのは、この巨大カメレオンの散歩が始まるからではないかと思った。 同時にアテンドを麻衣がするなら巨大カメレオンの中に入っている女の子がどんな子なのかも知っているかも知れないと思った。 バックヤードで巨大カメレオンの着ぐるみを着せるのを手伝ったりするんだろうか。 “羨ましすぎる!” そう思いアテンドスタッフ2人の顔を確認したが、2人とも麻衣ではなかった。 そして次に思いついたのは巨大カメレオンの散歩が3回、カメレオンの中の女性とアテンドスタッフが2人ということはローテーションで着ぐるみに入るのではないか。 アテンドスタッフの女の子もなかなか可愛い、あんな子たちが交代で巨大カメレオンに入るのかと思うと俺は1人興奮し、股間を熱くさせていた。 俺の妄想ばかりが膨らむ中、巨大カメレオンはいろいろな展示エリアを回りながら記念撮影を繰り返していく。 子供たち優先で記念撮影していたが、子供が減ってくると今度は大人も記念撮影を始めた。 子供や女性が抱きついている分にはまだいいが、男性が抱きつくのを見ていると【セクハラ】の文字が頭に浮かんだ。 それでも巨大カメレオンはゆっくりとした動きで、男性客にも抱きついていた。 “俺も抱きついちゃおうかな” そんな事を思いながら巨大カメレオンを見ていて首を傾げる。 着ぐるみなら絶対にあるはずのものが見当たらないのだ。 そう、着ぐるみに入るためのファスナー。 ファスナーはなくともスリットぐらいはあるはず、地面を這うように歩くので腹側にファスナーなり、スリットがあると思ったのだがそんなものは見当たらなかった。 そうこうしているうちに俺も記念撮影してもらえるタイミングを迎えた。 アテンドスタッフにスマホを渡して撮影してもらう。 俺は失礼のないように巨大カメレオンに向かって尋ねる。 「抱きついてもいいかなぁ?」 俺の言葉に今まで本物のカメレオンのような振る舞いをしていた巨大カメレオンが首を縦に振るような仕草を見せた。 俺は巨大カメレオンに抱きついて記念撮影をしてもらった。 触った感触はカメレオンそのもの着ぐるみならブカブカなところがあったり、多少なりとも中の人のヒト感を感じ取る事ができそうなものだが、それは全くなかった。 もちろん、間近で巨大カメレオンを見たがファスナーもスリットも見当たらなかった。 まあ、この後2回のお散歩で巨大カメレオンの謎を解明してやろうと思い、俺は記念撮影を次の人に代わるのだった。 その後も記念撮影をしながら巨大カメレオンのお散歩は続く。 ずっと一緒に歩いている俺は知っている。 何人かの男性は毎回隙を見て巨大カメレオンに異常なほど抱きついて記念撮影をしている事に。 俺もそうしたかったが恥ずかしさもあり、それは控えておいた。 爬虫類園を一周し、巨大カメレオンは元のカメレオンのコーナーへと戻ってきた。 残念ながら巨大カメレオンとはここでお別れと思っていたのだが、巨大カメレオンはアテンドスタッフに促されてガラス張りの展示スペースへと入っていく。 “え?え?え?” この暑い爬虫類園の中をゆっくりとではあるが、一周してもう体力的にもキツイはずなのに、巨大カメレオンの中の女の子は解放される事なく、ガラス張りの展示スペースへと誘導される。 “大丈夫なの?” 思わず声を上げたくなるが、巨大カメレオンは嫌がったり抵抗する事もなく展示スペースの中へと入って行き木につかまっている。 本物のカメレオンならともかくあれは絶対に人が入った着ぐるみだ。 その証拠に展示スペースの中の木につかまっている巨大カメレオンは体を上下させて苦しそうに呼吸をしていた。 これって巨大カメレオンの操演者への虐待ではないかと思うが、そんな事はとても言い出せない。 何の証拠もないし、今となってはもはや着ぐるみかどうかも怪しくなってきた。 俺はしばらく巨大カメレオンの展示スペースから離れられずにいた。 ずっと、巨大カメレオンを見守っていたが、呼吸だけは落ち着いてきたようで体の上下は小さくなっていった。 腕時計を見ると、すでに12時を回っている。 そういえばお腹が空いた。 園内で食事をしようかと思い移動し始めた時だった。 『ただいまから、カメレオン マギーくんの食事タイムになります!』 そんな園内放送が流れると巨大カメレオンの展示スペースの前に人が集まり出した。 食事に行こうと思っていた俺も展示スペースの前へ移動する。 先ほどのアテンドスタッフ2人が大きなコオロギとワームにヒモを付けて棒で吊るして展示スペースの中へ現れた。 『皆さん!カメレオンは、動いているものしか認識しないため、必ず生き餌の状態で与えないといけません、今日は皆さんに見て頂くためにマギーくんの餌を私たちが動かして生きているように見せますね』 そう言うとまずはコオロギをマギーくんの目の前で跳ねるように動かして見せる。 それをジッと見つめながらゆっくりと移動しコオロギとの距離を詰める巨大カメレオンのマギーくん。 コオロギが動きを止めた瞬間だった。 マギーくんの舌が伸びてきてコオロギを捉えると口の中へ。 どういう仕組みか分からないが、とにかくマギーくんはコオロギを補食した。 口をゆっくりと動かすとコオロギの脚が口からこぼれ落ちた。 しばらく口が動いていたが、食べ終わったのか口の動きが止まった。 しばらくすると、また口が動いたかと思うと胴体だけとなったコオロギを口から吐き出した。 コオロギを担当していたアテンドの女性が吸い取られたように縮んだコオロギの胴体をバケツに入れて回収する。 それを見て今度はもう1人のアテンドスタッフが大きなワームをマギーくんの前で生きているように動かし始めた。 マギーくんはワームを凝視していたが、コオロギと同様に舌を伸ばして補食、またゆっくりと口が動き出した。 『マギーくんのお食事は以上です、皆さんも園内で食事をお楽しみ下さい!』 アテンドスタッフ2人は手を振りながら帰っていくが、巨大カメレオン マギーくんはそのまま置き去り。 マギーくんは補食したワームを食べているのだろう。 口がゆっくりと動いていた。 巨大カメレオンの展示スペースに集まっていた人たちが離れていくタイミングで俺も食事のためその場を離れた。 時間は13時だがレストランには長い行列ができていた。 俺は待っていたら14時のお散歩に間に合わないと思い、ブランクフルトとおにぎりを買うとサッと食べて巨大カメレオンの展示スペースへと戻った。 今は一番空いている時間なのだろう。 巨大カメレオン マギーくんの展示スペースの前に誰もいない。 そんなマギーくんのところへ背後から近づいていった時だった。 つかまっている木を伝うように黄色の液体が流れていた。 “え?オシッコ?” “カメレオンの着ぐるみの中の人がオシッコしているのか?” 俺がもっと近づくと巨大カメレオンの中の人も俺の存在に気づいたのだろう。 かなり驚いたように大きく体を跳ねさせた。 だが、黄色の液体は止まることなく流れ続けた。 排尿を見られて恥ずかしかったのだろう、巨大なカメレオンはゆっくりではあるが俺から離れて行ってしまった。 少しするとお散歩の準備のためかアテンドスタッフの2人が現れた。 1人はすぐに巨大カメレオンのお尻の方へ行くと顔を歪めていた。 さっきのオシッコが臭うのだろうか。 それでもオシッコが出ていた辺りを紙のようなもので拭いている。 その後、2人掛かりで木につかまる巨大カメレオンを下ろすと、巨大カメレオンは方向転換し水槽の出口の方へと向かう。 アテンドスタッフの1人はお散歩のための準備をし、もう1人は排泄の処理を続けているようだった。 そして、14時になった。 お散歩のため、マギーくんは水槽から出てきた。 そしてゆっくりと歩き始める。 すぐに子供たちに囲まれて記念撮影が始まった。 1回目の散歩の時となんら変わりない光景。 順調にマギーくんのお散歩は進み、子供たちが減ってきたところで大人たちの記念撮影が始まる。 もちろん、俺もその輪の中にいた。 少しでもこの巨大カメレオンの謎に迫りたい。 そう思い、先ほどコオロギとワームを補食した口の辺りの匂いを嗅いでみた。 薄らと分かったのはスポーツドリンクのような匂いだけだった。 マギーくんは他の来園客に抱きつかれている時は、腕を開いて無防備に固まっているのだが、俺の時だけは俺を抱きしめてくれた。 俺もそれに応えるようにマギーくんを抱きしめ返した。 俺だけ特別扱いされているようで凄く嬉しかった。 その後もお散歩は続いて、またマギーくんはまた展示スペースへと帰っていった。 俺との記念撮影の時、マギーくんは俺を抱きしめてきた。 「あれってやっぱり中身が人って事だよなぁ」 そうポツリと呟いた。 そんな撮ってもらった記念写真を見ながら思った。 この写真を麻衣に送って自慢してやろう。 カメレオン好きの麻衣ならヤキモチを妬いて、マギーくんの中の人の情報をうっかり漏らすかも知れないと思ったから。 しかし、麻衣は忙しいようで返信はおろか既読もつかなかった。 でも俺はずっと巨大カメレオン マギーくんを見守り続けた。 最後の散歩までまだしばらくある。 動きのないマギーくんを置いて、気晴らしにもう一度園内を回る事にした。 意外としっかりと展示された爬虫類の説明や生態を読んでいると楽しくなってきた。 ついつい、時間も忘れて堪能していたのだが、時計を見ると16時30分になっていた。 またマギーくんの食事が見られるかも知れないと思い、巨大カメレオンの展示スペースへと戻る。 展示スペース前、お散歩前後は人が増えている。 それにまた餌やりもあるかも知れないし、ひょっとすると排泄も見られるかも知れない、そう思った。 マギーくんの視角の外から近づいていく。 展示スペースの前には今、誰もいない。 “今がオシッコのチャンスだよ!” 俺の心の声の囁きが通じたようにマギーくんはオシッコをし始めた。 俺はバッチリマギーくんの排尿を動画でスマホに収めた。 動画をスクショして、麻衣に送ってやった。 何か反応があれば嬉しいのだが、相変わらず返信も既読もつかなかった。 17時になると園内放送が流れた。 『ただいまから、カメレオン マギーくんの食事タイムになります!』 巨大カメレオン マギーくんの展示スペースの前に人が集まり出した。 何か別の餌を用意しているのかと思ったが、前回と同じ餌だった。 アテンドスタッフ2人が大きなコオロギとワームにヒモを付けて棒で吊るして展示スペースの中へ現れた。 『皆さん!カメレオンは、動いているものしか認識しないため、必ず生き餌の状態で与えないといけません、今日は皆さんに見て頂くためにマギーくんの餌を私たちが動かして生きているように見せますね』 そう言うアテンドスタッフの口の動きと言葉が少しズレていた。 “なるほど、放送なのね” 大体の流れは分かった。 お散歩の1時間前は餌やり、そしてその少し前にマギーくんは餌が入ってくるのに備えて排尿する。 排尿はきっと人が展示スペース前にいないのを狙って、この時間にするのだろう。 そして、巨大カメレオン マギーくんが食事を終えるとお散歩が始まった。 今日3回目のお散歩、なんとか巨大カメレオン マギーくんが着ぐるみである事を自分の目で確かめたい。 着ぐるみであるのは間違いないと思うのだが、間近で見ても今のところ本物ではないかと思ってしまうほど、着ぐるみ感が全くないのだ。 もともとお散歩をして来園者に触れ合う目的もあるのだから、簡単に着ぐるみであるとバレない工夫はしていると思うのだが… 。 とにかく、スッキリさせて今日を終えたい。 そんな意気込みで俺は3回目のお散歩に出発した。 この3回目のお散歩では子供が少なかったため、2回も記念撮影ができた。 思い切ってマギーくんに密着して匂いを嗅いでみたが、中の女の子はおろか着ぐるみのゴムの匂いもしなかった。 感触的にはゴムをベースに作られていると思うのだが。 結局、俺は巨大カメレオン マギーくんの正体に迫ることはできなかった。 後は帰りに麻衣と合流してマギーくんについていろいろ聞いてみようと思った。 お散歩を終えた巨大カメレオン マギーくん。 18時スタートのお散歩は約1時間かかるため、カメレオンコーナーに戻ってきた時には閉園1時間前となっていた。 アテンドスタッフ2人とそのままバックヤード消えていくと思われたのだが、マギーくんはそのまま展示スペースへ。 そして、木につかまると体を丸めて寝る体勢を取り始めた。 「うそー!」 呟くように声を上げた俺。 今日はほぼ1日マギーくんを見ていた。 10時にバックヤードから現れて、今19時過ぎだから9時間以上着ぐるみに入ったままだ。 “マギーくんの中の女の子はこんな暑い中で大丈夫なのだろうか?” 心配は尽きないが、閉園時間となり俺は帰らざるを得なくなってしまった。 朝9時のオープンから20時まで存分に爬虫類園を堪能した。 心残りはマギーくんについて、分かった事も多かったが確信をつけなかった事。 俺は爬虫類園の最寄り駅付近で麻衣を待つことにした。 [麻衣お疲れ様、駅の改札口付近で待ってるから、一緒にご飯食べに行こう] そうメッセージを送った。 21時を過ぎる頃には爬虫類園の従業員らしい人が改札を通り過ぎていく。 その中には今日何度も見たマギーくんのアテンドスタッフの2人も見かけた。 しかし、麻衣が現れることなく、俺が送ったメッセージにも返信も既読もつかなかった。 23時近くなり電車もなくなりそうなのでホテルへ戻る事にした。 麻衣は家で何かトラブルがあって先に帰ってしまったのだろうか。 トラブルでスマホのメッセージを確認できていないだけだろうか。 それともバイト先でスマホ水没させて壊してしまったとか。 いろいろ考えてみたが結局答えには至らなかった。 翌朝、バイトは15日までと聞いていたので麻衣の実家の最寄り駅で昨日と同じ時間に待ってみる事にした。 しかし、昨日よりも1時間長く麻衣が現れる事を期待して待ってみたが、結局麻衣が現れることはなかった。 【行方不明!】 そんな言葉が頭を過ぎたが、もしかするとバイトでトラブルを起こして昨日は遅くまで居残りし、そのまま爬虫類園に一泊したのかも知れないと思った。 だが、そんな俺の淡い期待は外れ、爬虫類園でも麻衣の姿を見ることはなかった。 そして俺はまたマギーくんの展示スペースの前にいた。 昨日一日中いたのでココが妙に落ち着く。 マギーくんはというと朝9時のオープンからずっと展示スペースにいた。 ということは昨日の閉園からずっと着ぐるみを着せられたままここにいるのだろうか。 休憩を取ることもなく、カメレオンを演じ続けているのだろうか。 麻衣の事も気になるが、カメレオンの中の女の子の事も気になる。 カメレオンの中の女の子は今日もまた着ぐるみを着せられたまま、お散歩と餌やりを繰り返す。 そこで俺はある事を思いついた。 それはマギーくんのお散歩の際、アテンドスタッフに麻衣の事を知らないか尋ねてみるというもの。 麻衣について何か知っていたら教えてもらえるかも知れないと思った。 そう思うとお散歩が待ち遠しくなってきた。 しかし、今日は昨日よりも来園者が多く、お散歩の記念撮影に追われるアテンドスタッフ2人。 とても麻衣について話を聞ける状況ではなかった。 そして、記念撮影も大人はご遠慮下さいと断っていた。 14時のお散歩タイムで今度こそ、麻衣の事を聞こうと意気込んでいたが、今度は1回目に記念撮影できなかった大人たちに圧倒されてアテンドスタッフに近寄る事もできなかった。 18時のお散歩タイムの後半でようやくアテンドスタッフの1人に麻衣ついて尋ねる事ができた。 彼女の名前は遠山 美月(とおやまみつき)、麻衣とは高校の同級生で麻衣からこのバイトに誘われたことを教えてもらった。 肝心の麻衣の事を聞く前に、インカムで呼び出された遠山さんは急いでバックヤードへと消えていった。 結局、麻衣についての情報は得ることはできなかった。 スマホを見るがやはり麻衣からの返信はなく、既読もついていなかった。 それでも麻衣の事が心配な俺は駅で麻衣が仕事を終えて現れるのを待った。 しかし、今日も麻衣は現れなかったのだが、アテンドスタッフの遠山さんが俺を見つけて声を掛けてくれた。 「あなたって、もしかして麻衣のストーカー?」 「違います!同じ大学に通う麻衣の彼氏です」 「うんうん、分かってるよ!麻衣の好きそうな顔だもんね!」 「ねぇ、麻衣の事が心配なら明日、朝8時前に爬虫類園に来て!麻衣に合わせてあげる!」 「え!麻衣がどこにいるか知ってるの?」 俺の質問に遠山さんは口に人差し指を当てて内緒というポーズを取った。 そして、そのまま笑顔で手を振って行ってしまった。 元気な遠山さんを見送りながら俺も明日、麻衣に会える事を期待してホテルに戻る事にした。 朝早く目が覚めた。 張り切り過ぎて爬虫類園の最寄り駅に朝7時に着いてしまった。 ゆっくり歩いて爬虫類園を目指す。 早過ぎたと思ったのだが、7時30分には遠山さんがやって来た。 社員証でセキュリティを解除して俺も一緒に園内へと入った。 遠山さんが向かった先はバックヤード。 何度も見た園内だが、裏側から見るとかなり印象は違った。 遠山さんについて行き、展示スペースの裏側へとやって来た。 遠山さんは俺にスタッフ用ジャンパー、それに爬虫類園のロゴの入ったキャップを渡して深く被るように指示し、それに従った。 そして、そのまま展示スペースへと入って俺は言葉を失った。 そこはマギーくんの展示スペース。 という事は! もう言葉にしなくても分かる。 ずっとカメレオンの着ぐるみを着せられて展示される女の子。 突然、全く連絡が取れなくなった麻衣。 答えは一つしかなかった。 そしてすぐに気づきそうな事実。 それはいろいろなところに散りばめられていた。 麻衣のバイト終了が15日まで。 マギーくんのお散歩も15日まで。 記念撮影で俺だけを抱きしめてくれたり。 「もしかして!マイ サギモトだからマギー?!」 思わず俺が口走った言葉に遠山さんが答える。 「正解!よく分かったね、名前考えるの苦労したんだよ、外国っぽい名前にしようと思ってね」 そう言って俺を見る遠山さん。 「今から麻衣に餌を上げるからね」 そう言って渡されたのはワームだった。 遠山さんの手にはコオロギがあった。 「コオロギはゼリー飲料で、ワームはスポーツドリンクが入っているの」 そう言われてワームを触ると液体のような感じがする。 「麻衣は今、カメレオンの中で口に咥えたホースを介してしか食事も飲み物も飲めなくなってるの、だってカメレオンが喋ったら変でしょ」 「まあ、そうだね」 「先にコオロギをあげて、コオロギのお腹の辺りに口から伸びる先の尖ったホースで穴を空けてゼリー飲料を吸い取るから」 そう説明されて俺は感心したように頷いた。 「次にあなたの持っているスポーツドリンクは突き刺しても漏れない仕組みになっているから少しずつ飲めるのよ、だからお散歩前に餌やりするのよ」 「なるほど!」 「ちなみに餌を取るときの舌は麻衣の右手、マギーくんがつかまっている木は鉄で出来てて、着ぐるみの中で右手を抜く前に電磁石のスイッチをオンにすると右手が自由に使えるってわけ」 いろいろなギミックを駆使して、巨大カメレオン マギーくんが存在している事を知った。 「でも、なぜ着ぐるみを着たまま脱げないの?」 俺は率直に聞いてみた。 「あなたもお散歩、記念撮影したから分かると思うけど、マギーくんは脱着不能な着ぐるみで乱暴に言えばゴムの塊なわけ、そこへ一度閉じ込められたら簡単には出られないのよ」 「ちなみに最低限の飲食と排泄は可能で、着ぐるみを脱ぐ時はマギーくんは原型を留めなくなるの」 「まあ、あと1日だから麻衣の頑張りを見守ってあげて」 「ここからは静かにね」 そう言うとガラス張りの展示スペースへと入っていく。 俺も遠山さんの後に続く。 遠山さんはマギーくんに話し掛ける。 「麻衣ご飯だよ!」 そう言うと、カメレオンの口を開いてコオロギを押し込む。 しばらくすると萎んだコオロギがカメレオンの口から出てきた。 俺もワームをマギーくんの口の中へと差し入れ、声を掛ける。 「麻衣、あと一日頑張ってね」 俺が言葉を掛けた瞬間、マギーくんは大きくバランスを崩して木から落ちてしまった。 「大丈夫?」 慌てて声を掛けるとゆっくりとマギーくんは体勢を立て直した。 マギーくんはゆっくりと歩き出したのだが、遠山さんに詰め寄っていく。 「ごめん麻衣、彼氏があまりにも心配してたから連れて来ちゃった」 笑いながら素早く逃げる遠山さんをマギーくんはそれ以上追いかけなかった。 「もう少しすると、開園してお散歩も始まるけど、どうする?」 遠山さんの言っている意味が分からず首を傾げていると説明を付け加えてくれた。 「アテンドスタッフとして一緒に麻衣を見守ってくれる?園長には私からお願いしてみるけど」 「是非お願いします!」 俺がそう答えると、遠山さんは巨大カメレオンの展示スペースを飛び出して行った。 「麻衣、すごく心配したんだよ!」 そう言って巨大カメレオン マギーくんを抱きしめる。 どこを触っても麻衣の痕跡はないが、この中には紛れもなくあの可愛い大好きな麻衣が入っているのだ。 そう思うと興奮してくる。 胸の辺りを触ってみたがやはり麻衣の痕跡は見つからなかった。 マギーくんとなった麻衣を抱きしめているところに遠山さんが戻ってきた。 「ごめん、邪魔したかな?」 「いや、大丈夫、どうだった?」 「OK出たよ!今日は特に来園者が多いし、マギーくんに何かあっても困るから男性がいてくれると助かるってさ」 「えーと、彼氏くんは?」 俺は名前を名乗っていなかったことに今更ながらに気づいた。 「雅史、谷本 雅史です、よろしくお願いします」 「雅史くん、こちらこそよろしく!」 「基本的にはお散歩の時、ついて来て来園者が変なことしないか見てくれていたらいいからね」 俺は大きく頷いた。 まさか、麻衣の地元で一緒に働くことになるとは夢にも思わなかった。 ちょっとワクワクを秘めて俺のバイト初日、麻衣のバイト最終日が始まる。 カメレオンの着ぐるみのカラクリや製作秘話も含めたメイキングストーリーは明日以降で【脱げないゴムの着ぐるみ】シリーズで公開していきます。
ごむらば
2024-10-08 13:57:44 +0000 UTC魔法のMMD🔞
2024-10-08 12:21:07 +0000 UTC魔法のMMD🔞
2024-10-08 12:19:02 +0000 UTC