家にカメレオンの着ぐるみを持ち帰るとお母さんが目を丸くして驚いていた。 「麻衣、何これ?」 「ああ、これね、バイトで使うから家でも練習しておいてって渡されたの」 よくわからない言い訳を玄関でやり取りしていると私の姉 結衣が2階から降りてきた。 「麻衣、何それ?」 「お姉ちゃんまで同じ事聞かないで!」 お母さんと全く同じリアクション。 説明が面倒くさいのでお姉ちゃんにもお母さんと同じ説明をしておいた。 ただ、お母さんと違うのは興味津々である事。 「リビングへ運ぼう!」 そう言って私から奪いとるようにして、カメレオンの着ぐるみを持っていってしまった。 「なになに、これって着ぐるみ?麻衣が入るの?」 「うんまぁ、そう言うこと」 妙にテンションの高いお姉ちゃんに押され、私のテンションは低め。 だが、お姉ちゃんの勢いは止まらない。 「ねえねえ、麻衣着てみてよ!」 「えー!かなり面倒くさいんだよ!」 「いいじゃん、いいじゃん、ねぇお母さんいいでしょ!」 「麻衣がいいなら、お母さんは構わないわ」 「よし決まり、麻衣、入って入って!」 そう言うがこのままでは着ぐるみの中へは入れない。 「このままじゃあ、入れないんだよ!準備が必要なんだよ!」 少し膨れっ面でお姉ちゃんに言う。 「お姉ちゃんも手伝ってあげるから、さぁさぁ」 「で、準備って何するの?」 「インナースーツ着ないとだけど… 」 「だけど? ああ、全身タイツみたいやつね」 「うんうん、じゃあ脱衣所で着替えよう!」 家に帰ってから、まだリュックを下ろす事もできずに私は脱衣所にお姉ちゃんに背中を押されて連れて行かれるのであった。 脱衣所で私は渋々リュックからラバースーツと渡されたビニール袋を取り出した。 「着替えるから出てって!」 「えー!お姉ちゃんも手伝ってあげるよ!」 「いいよ!1人でできるから」 私はお姉ちゃんの背中を押して脱衣所から追い出した。 ただでさえラバースーツ着るのは恥ずかしいのに、着替えてるとこまで見られるのはもっと恥ずかしい。 私はゆっくりとさっきまで着ていた、まだ汗が残るラバースーツに足を通していく。 マスクまで被ると銀行強盗みたいで恥ずかしいので被らずにリビングへ。 お姉ちゃんとあまり関心がなさそうだったお母さんがカメレオンの着ぐるみを興味深げに見ていた。 「あ!麻衣準備… 、えー凄いなにそれ!」 お姉ちゃんはラバースーツにもすぐに食いついた。 「なになに、テカテカじゃん!それに乳首も分かっちゃうよ!」 そう言ったかと思うと私の乳首を撫でるように触った。 「いやっ、もうぉー!」 私が胸を腕で隠してお姉ちゃんを睨む。 お姉ちゃんは不思議そうに私に触れた自分の指先を見ていた。 「麻衣、それってゴム?ラバースーツってヤツ?」 「らばーすーつ?」 お母さんもお姉ちゃんの言葉を復唱していた。 お姉ちゃんはどうやらラバースーツを知っているようだった。 だが、お母さんは全く知らない様子。 ともかく、こんな姿を晒していたくないのでカメレオンの着ぐるみに入る準備をする。 もらってきたカメレオンの着ぐるみの背中にはファスナーがあり、普通の着ぐるみと同じだった。 流石に家で着ぐるみから出られなくする処置は必要ないし、出られなくなっても困る。 ファスナーを開けると足を滑り込ませていく。 腕を通してから気づいた。 “あ!マスク被ってない!” このまま、着ぐるみに頭を埋めると絶対に途中で引っ掛かってしまうだろう。 どうしようか迷う私の背後でお姉ちゃんの声がした。 「麻衣、マスクも被らないダメなんじゃない?私が被せてあげる」 そう言うと私の背後からラバーマスクを被せ始めた。 目出し帽を被った銀行強盗のような顔にお母さんは目を丸くし、お姉ちゃんには指を差されて笑われた。 穴があったら入りたい私はカメレオンの着ぐるみの中へと逃げ込んだ。 すぐに背中のファスナーが閉められる。 お姉ちゃんの仕業だろう。 ファスナーが閉まるにつれて着ぐるみが体を締め上げてくる。 暑さが一気に増した気がした。 そしてファスナーは完全に閉められた。 「ねぇねぇ、麻衣歩いてよ!」 そう言われたが笑われてイラッとしている私は寝そべったまま動かなかった。 そうしていると急に口が開いてお姉ちゃんが覗き込んできた。 「ねぇ、麻衣歩いて見せてよ!」 「ヤダっ、お姉ちゃん笑ったもん」 「ごめん麻衣、機嫌なおしてよ!」 甘えた声でそう言うお姉ちゃんはいつもそうだ。 自分の希望が通らないと甘えてくる。 私は頑としてお姉ちゃんに屈しないことを決め込んで床に寝そべっていた。 私が応じないものだから、お姉ちゃんは口からどんどん中へと入ってきて目の前で私におねだりをする。 そんな中、外で大きな声が聞こえた。 「うわっ、なんだこれ!」 「結衣?結衣、大丈夫か!すぐに離れなさい!」 そんな声が聞こえたかと思うと突然、目の前にいたお姉ちゃんの顔が遠ざかっていく。 同時に顔に痛みが走った。 何が起こったのかさっぱり分からない。 お姉ちゃんのせいで視界が全くなかったから。 「ちょっとあなた止めてください!麻衣が入っているのよ!」 「え!どういうことだ!」 お父さんが帰って来たようだ。 リビングに入ると巨大カメレオンにお姉ちゃんが食べられていると勘違いし、お姉ちゃんを救出した後、私が操演するカメレオンに蹴りを入れたのだった。 その後、私はカメレオンから顔だけ出して(もちろんラバーマスク)は脱いで、お姉ちゃんと並んでお父さんに怒られた。 「私全然悪くないのに」 そう言って泣いた私をお姉ちゃんは慰めてくれた。 お詫びにとお姉ちゃんが提案してきた事に私は同意した。