ショッピングモールでのウルトラマンショーで見た怪獣が衝撃的だった。 その怪獣には頭も腕もなく足だけなのだ。 名前は確か【レッグス】だった。 見た目は全身が緑色で凸凹とした感じの皮膚、分かりやすいのはゴジラのような皮膚をしていた。 そんな【レッグス】は小さく弱いため他の怪獣や星人から攻撃を受け、それをウルトラマンが助けていた。 ショーのオープニングでは他の怪獣に蹴られたり、殴られたりして倒される度におそらくはうつ伏せに体勢を戻してから立ち上がっていた。 かなり肉厚に作られた怪獣の着ぐるみだったが、両手が使えない中の人はかなりの衝撃を受けているのだろう。 その証拠に怪獣や星人にやられても始めこそ、すぐに立ち上がっていたが、後半のウルトラマンが登場する少し前辺りでは、すぐには立てなかったり立ち上がってもふらついていた。 ただ、一つ分かっている事はその足だけ怪獣【レッグス】には女の子が入っている事は確信していた。 なぜなら、体が小柄で立ち上がり方が女性そのものだったから。 ショーのストーリーは怪獣や星人に痛ぶられる【レッグス】はウルトラマンをおびき寄せるためのオトリ。 ウルトラマンが現れると星人は怪獣たちにウルトラマンを倒すように指示すると、嫌がる【レッグス】をロープで縛り、そのまま引き摺りテントへと消えていった。 【レッグス】を助けようとするウルトラマンだが、その前に2体の怪獣たちが立ち塞がり戦いが始まった。 しばらく戦闘を繰り広げたウルトラマンと2体の怪獣だったが、決着がつかずに怪獣はどこからともなく聞こえてきた星人の声で退却していく。 ウルトラマンは後を追おうとするが、戦いの疲れから膝をつき、悔しさからか地面を拳で殴った。 そこへ司会のお姉さんが現れた。 司会のお姉さんは小柄で可愛らしく、元気いっぱいといった印象を受けた。 ピッタリとしたテカテカしたエナメルのワンピースを着ていた。 シルバーをベースに赤いラインが入っており、ウルトラマンを彷彿とさせる。 同じデザインのエナメルグローブにニーハイブーツで肌の露出は見られないが妙に色気を感じた。 「ウルトラマン大丈夫?」 『ああ、それよりあの怪獣の事が心配だ』 そう返事をするウルトラマンの声が流れた。 「お友だちのみんなもウルトラマンに声援を送って元気にしてあげて!」 お姉さんがそう子どもたちに話し掛けて、ウルトラマンに声援を送る。 「ウルトラマンがんばれー!」 「「ウルトラマンがんばれー!!」」 お姉さんの後に続いて子どもたちが声援を送るとウルトラマンは立ち上がり、舞台の両側にあるテントのうち、怪獣たちとは反対側のテントへ手を振り帰っていった。 「さあって、どうしたものか?」 そんな星人の声が聞こえた後、星人が現れて舞台に座ると足を組んでウルトラマンを倒す算段を一人で語り始める。 それを横で聞いていたお姉さんは言う。 「ウルトラマンがあなたたちなんてすぐに倒してくれるから」 「うるさい!黙ってろ!」 そう言って星人は立ち上がりお姉さんを脅すと、お姉さんは叫び声を上げながら怪獣たちのテントへと逃げていった。 「今日はいっぱい、地球人が来てるなぁ、お前らの前でウルトラマンを俺が倒してやろう」 「2階や3階から見ているお前らもよく見とけよ」 そう言って2階、3階を指差す星人。 再び、舞台に足を組んで座ると独り言を話し始める。 「あのレッグスを人質に取り、ウルトラマンが手出しできないようにしてやれば、ウルトラマンは倒せそうだなぁ」 『そうはさせないぞ!』 効果音と共にウルトラマンが現れる。 ゆっくりと星人は立ち上がると、ウルトラマンと対峙し戦いを始めた。 「今日がお前の最後だ!」 そう言って殴り掛かり戦いが始まった。 パンチ、キックの応酬を見事にお互い交わし決定打はない。 「さすがはウルトラマン、強いなぁ、でもこれならどうだ?」 星人がそう言うと、テントから怪獣2体と共に現れた【レッグス】は片足ずつロープをグルグル巻きにされていた。 「これは人質だからな、ウルトラマンお前が攻撃してきたこうだ!」 星人の掛け声と同時に2体の怪獣がロープを引くと、【レッグス】は股裂け状態になり、舞台に座り込んだ。 頭も腕もない【レッグス】は声を上げる事なく、胴体部分を左右に振るだけだった。 『やめろ!やめてくれ!』 ウルトラマンの声が流れ、膝から崩れ落ちた。 そんなウルトラマンの周りを股裂けのまま【レッグス】は引き摺られる。 【レッグス】はウルトラマンに助けを請うように何度も体を揺らして訴え続ける。 そんなウルトラマンへ星人が蹴りを入れると、ウルトラマンは地面に倒れた。 「前らもやれ!」 そんな星人の合図で怪獣たちはウルトラマンを踏みつけにしたり、跨ったりし始めてウルトラマンの大ピンチ。 そんな時、天から声がする。 『助けに来たぞ!』 そんな声の後、ウルトラマン側のテントから別のウルトラマンが3人登場した。 形勢逆転!ウルトラマンに攻撃を加えている怪獣2体に3人のうち2人のウルトラマンが飛び掛かる。 そしてもう1人のウルトラマンは素早く、【レッグス】を引っ張り起こしテントの中へと逃した。 星人に対してはやられていたウルトラマンと【レッグス】を逃したウルトラマンの2対1で戦いが始まった。 こうなれば圧倒的にウルトラマン側が有利、子どもたちの声援にも熱が入る。 そして、最後は4人のウルトラマンで光線を浴びせる。 「覚えていろよ!」 捨て台詞を吐いて、星人と怪獣2体はやられてテントへ引き揚げていった。 さて、ここからがイベントスタッフである俺の仕事。 ショーは1日2回、今のが午前の部。 終了と共にお客さんの誘導が始まる。 俺の仕事は怪獣側のテントに子どもがふざけて入ったり機材に触れたりしないように円滑に誘導する仕事だ。 イタズラしようとする子どもたちを上手く誘導し、無事に仕事を終えたが、まだ完全に終わりではない。 ここからはしばらくテント前での監視が続く。 怪獣やウルトラマンを演じた人たちが休憩に入ってもしばらくはテントの中に入らないように前に立っていなければならない。 お客さんがすっかりいなくなって、程なくして怪獣側のテントからジャージ姿の男性1人と女性2人が出てきた。 声からして男性はおそらくさっきの星人だろう。 という事は一緒にいる女性2人は怪獣? 確かに女性2人は汗をかいているようで首からタオルを巻いて、顔も少し赤らんでいるように見える。 でも、1人はかなり美人だし、もう1人も可愛い。 こんな女の子たちが怪獣に入ってウルトラマンと戦い蹴ったり殴られたり投げられたり痛い思いをしなくてもと思いながらも、彼女たちが怪獣に入っている姿を想像すると興奮してきた。 一応、俺はテントの中の人数は把握している。 星人1人と怪獣2人、【レッグス】1人、そして着ぐるみを着付け担当のスタッフ1人、それに司会のお姉さんの全員で6人だが、先に3人出て行ったので残りは3人。 と思っていたらまた1人男性が出てきた。 おそらく着ぐるみの着付け担当のスタッフだろう。 残りは司会のお姉さんと【レッグス】の着ぐるみを着ていたおそらくは女性の計2人。 仲良く話をしていて盛り上がっているのかと思ったが、声は全く聞こえてこなかった。 しばらく待ってみたが一向に出てくる様子がない。 俺は【レッグス】の中の女性の事が気になっていた。 手も使えず足だけで必死に頑張っている姿はグッとくるものがあった。 どんな女性が操演していたのだろうと思うと、一目でいいので顔を見てみたくなった。 それに司会のお姉さんも小柄で可愛くて俺好みだったので、仲良くなりたいと思っていた。 理由はなんでもいい、テントに入る口実を考えた。 そして思いついて声掛けを実行する。 「失礼します、休憩行かなくて大丈夫ですか?」 俺はそう声を掛けながら前傾姿勢でテントの中へと入った。 顔を上げると司会のお姉さんと【レッグス】の中の女性が雑談している光景を想像していたのだが、そうではなかった。 俺が見た光景は床に転がり悶えている【レッグス】の姿だけだった。 つづく