3着の全身タイツ重ね着動画を投稿し、かなり反響を得た。 そんな全身タイツの重ね着を投稿後、しばらくしてから1人の視聴者の方から全身タイツが10着も纏めて送られてきた。 同封されていた手紙によると、私のサイズで作られた全身タイツだと、同じサイズのためどうしても途中からは重ね着が難しくなるので少しずつサイズアップした全身タイツを製作し送らせてもらったと書いてあった。 確かに並べてみると微妙にサイズが違った。 そして手紙には、この全身タイツの生地は伸縮性の高い生地を使っている事も記されていた。 試しに引っ張ってみたが、なるほど普通の全身タイツと比較してもよく伸びる。 “これなら、上手く重ね着できるのではないか” そんな期待しかなった。 私はその重ね着するために作られた全身タイツを手にして思った。 普通に着たのではまた全身タイツに閉じ込められてしまう。 重ね着を5着した際、脱ぐ際に手が届かなくなった教訓から重ね着する5着目以降の全身タイツのファスナーには開閉用に紐を取り付ける事にした。 こうすれば、重ね着でファスナーに手が届かなくなっても紐を引っ張ればファスナーを開閉できると思ったから。 準備が出来て早速撮影を開始する。 なぜ、リハーサルをしないかというと、仮に閉じ込められて出られなくなったら、もう重ね着をしたくなくなると思ったから。 早速、1着目の全身タイツを着て顔を出したところから撮影をスタートさせる。 2着目、3着目と順調に重ね着していき、5着目を過ぎるとやはり手の感覚が怪しくなってきた。 取り敢えず順番に6着目以降も腰までは履いて準備したが、これがなかなかのもの。 10着全てを履いた足はかなり太く棒のようになってしまった。 だが、逆にこんな姿も面白い。 それに締め付けが凄くて興奮してお股が濡れてくるのが分かった。 ここで一旦、ファスナーに紐を付けていない全身タイツを顔まで被って閉めていくことにした。 1着目、2着目、… 順調だが、3着目からほとんど視界ゼロ。 指先の感覚に頼るしかない。 それでも5着目まで顔までしっかりと覆うことができた。 その後、腰までは履いている全身タイツを引き上げては指を通していく。 伸縮性に富んだ全身タイツのため、8着目まではファスナーの紐を上手く活用しながら着ることがてきた。 9着目、指が曲がらず紐を掴んでいるのかも分からないがそれでも着ることができた。 最後の10着目は無理に思えたが、ここまで来たら後戻りもできない。 私は10着目の全身タイツを顔まで被り、なんとなくある紐のような感触を頼りに紐を引き上げて10着もの全身タイツの重ね着に成功した。 顔は完全に潰されて私の顔は全身タイツの中でぺったんこ。 顔の表面を触っても何も凹凸がなかった。 流石にこうなるとかなり息苦しい。 一回一回気合いを入れて大きく力を込めて呼吸する。 そして視界は撮影用のライトの位置も分からないほど真っ暗。 手や足の感覚もほとんどなく、私に残されたのは聴覚のみ。 その聴覚も鮮明ではなくなっていた。 撮影しているので、10着もの全身タイツを重ね着した感覚を話していくが、もはやカメラの方を向いて話せているのかも分からない。 呼吸が苦しいので、ここまでと思った私は精一杯口を動かして言った。 「じゃあ脱いでいきまーす!」 だが、この10着もの重ね着を脱ぐ前に試しておきたい事がそれはお股を弄ること。 残念ながら弄ってみたが、触られている感覚も何も感じなかった。 それはそうだろう、体に触っている感覚もないのだから。 もう、やり残したことはないので、背中のファスナーへと続く紐を探す。 腰の辺りを何度も何度も集中して探っていると、あった! 微かに紐のような感触。 腰のすぐ下で両手で挟んで下の方へと引っ張るが動かない。 “あれっ、なんで?!” 私は何度も紐を引っ張ってみたが、ファスナーが開くことはなかった。 焦りとともに体温が急上昇し汗が噴き出してくる。 こうなると呼吸を阻害し、さらに体温が上昇し悪循環となる。 “なんで、なんで、開かないの?” 焦る気持ちは悪循環になると分かっていてもそれを止められない。 そして絶望的なのは、指先が全くといって使えない事。 大量に汗をかいて呼吸できなくなれば、窒息してしまう。 全身タイツの重ね着が3着くらいまでなら顔の部分を引っ張ればなんとか呼吸できたが、10着となるとそんなワケにもいかない。 “早くしないと本当に死んじゃう” そう思った私は家の外へ助けを求めようかと考えた。 だが、手足の関節も曲がらず奇妙な歩き方の巨大な人形のようなモノが歩いていたら、他人はどう思うだろうか。 きっと声を上げて逃げていくだろう。 しかし、躊躇している時間は私にはない。 とにかく、人に見られた時のことは後で考える事にした。 私の家はマンションの8階。 家を出て誰かに会えばすぐに助けてもらえるかも知れない。 でも、誰にも会えなかった場合、エレベーターで1階まで降りなければならないのだが、エレベーターのボタンを押す自信がない。 目も見えず手の感覚もないのだから。 仮に押せたとしても1階に辿り着けるか分からない。 そう考えるとエレベーターでなく、階段の方が確実に思えた。 しかし、階段は階段で膝が満足に曲がらないので降りていけるか分からない。 そもそも一段目から踏み外して、踊り場で動けなくなりそのまま… という可能性もある。 そうはいっても現状を打破しなければ何も解決しない。 まずはエレベーターへ行って、ダメなら階段。 そう決めて玄関の方へ向かおうとしたのだが、今どこを向いているのかも分からない。 手探りで進むがローテーブルで足を打ったり、物を踏んだりドアにぶつかったりしながらも何とか玄関に辿り着いた。 いよいよ外へ出る。 否応なしに緊張が高まる。 こんな姿なので当然靴は履けないし、靴がどこにあるかも分からない。 とにかくこのまま外へ出ようと、ドアノブを回した。 いや、回したつもりだったのだが、全身タイツで滑ってドアノブが回せない。 何度も何度も、両手でも試してみたがやはりドアノブを回すこともできなかった。 今の私にとってはこの部屋ですら監獄に思えてきた。 あれほどいろいろ考えたのに、家から出ることもかなわなかった。 絶望すると体温が上がり汗が噴き出て呼吸が苦しくなっていく。 私は最後の力を振り絞り、両手を背中へ回して集中する。 そして紐を見つけると、力一杯紐を引っ張った。 ファスナーが開くとを願って。 『ブチっ!』 嫌な音がして紐は千切れた。 “もうダメだ!” 私は心の中でそう呟き、重ね着した10着目の全身タイツを脱ぐこともできず、私は諦めるように床に倒れ込んで意識を手放した。 つづく