ラバーメイドとして働いていた小学5年生の記憶が戻り、私はまたあの無個性で下條 夏希に戻れないラバーメイドになりたいと思い始めている自分に気づきました。 でも、あのラバーメイド製造工場はもうありません。 今日は学校が終わったら、京子さんのお店でラバーメイドになれます。 そんな無個性ラバーメイドになりたい衝動をお店で補完しようと考えていました。 そして、またラバーメイドになった体を和也さんに触ってもらいたい。 そう考えると自然と言葉が出て来ました。 「また、和也さんに会えたらいいのになぁ」 「え!俺がどうしたの?」 保健室のベッドのカーテンの向こうから声が聞こえました。 「え!」 私の驚いた声に和也さんが尋ねてきます。 「カーテン開けても大丈夫?」 「は、は、はい、大丈夫です」 カーテンが開いて、和也さんと目が合うと私はまた顔に熱を持ち始めるのが分かりました。 「大丈夫?まだ、顔が赤いよ!」 そう言われて余計に恥ずかしくなり頷く事しかできません。 和也さんは私の顔を見ながら、聞いてきました。 「俺、さっき名乗ってた?」 「あ、いえ、その… 保健室の先生から聞いたんです!」 咄嗟に出た嘘だったが上手く誤魔化せたと思いました。 まさか、大人のお店で拘束されたラバーメイドになり、あなたにお股を触ってもらって喜んでいる女だなんてとても言えません。 「そうだったんだ、ところで君は?」 「下條 夏希と言います」 私はベッドで座りながら、ペコリと頭を下げました。 和也さんは笑顔を返してくれました。 「夏希ちゃん、良かったら寮まで一緒に帰ろっか、送るよ!」 男子寮と女子寮は隣同士なので、同じルートで学校から帰ることになります。 私は和也さんの言葉に頷いて返しました。 「ぜひ、お願いします」 私は和也さんと学校から一緒に帰ることになりました。 和也さんは私が顔が赤いのを心配してくれましたが、私は和也と目が合うたびに顔がどんどん赤くなっていくのが自分でも分かりました。 そんな私が体調不良ではないかと、心配してくれた和也さんは倒れてはいけないからと、私と手を繋いでくれたのです。 始めはガチガチに緊張していましたが、徐々に緊張がほぐれた私は和也さんとお話をしながら楽しく下校する事ができました。 今まではお店でラバースーツの上から体を触られる事はあっても会話もできず心の距離は埋められませんでしたが、和也さんと偶然ぶつかった事で心の距離を埋める事ができたような気がしました。 そんな幸せいっぱいで寮に戻って来ましたが、私には確かめなければならない事が一つあります。 それは記憶の中で登場したまどかお姉ちゃんが、由香里ちゃんではないかということ。 “まどかお姉ちゃんはどうしてまた私に接触してきたのだろう?” “たまたま、偶然他人の空似なのだろうか?” “それとも、あのラバーメイド工場がどこかで動き出したので、私を連れ戻すために接触したのだろうか?” いろいろな憶測を立てますが、結論には至りません。 直接本人に確かめれば済む事なのですが、由香里ちゃんは友達と遊びに出掛けたのか帰って来ませんでした。 しばらく、待ってみましたが由香里ちゃんは帰って来ず、時間になったので私はアルバイトに出掛けました。 私が寮を出た時、男子寮の前に車が横付けされて和也さんが乗り込もうとしていました。 そんな和也さんの腕にしがみつくようにくっつきながら車に乗り込む女性がいました。 女性は伊集院 穂乃果(いじゅういんほのか)さん、高校ではかなりの有名人です。 お金持ちのお嬢様で高飛車、人を蔑み、気に入らなければイジメを繰り返すというとんでもない人物です。 それらは全てお金の力で揉み消しているとも。 可愛いいとは程遠く、少しぽっちゃり、見た目と性格が連動していると陰で噂されていました。 “そんな伊集院 穂乃果と和也さんがなんで?” 私はその場に崩れ落ちそうになるのをグッと我慢して、その様子を見ている事しかできませんでした。 和也さんと手を繋いで楽しく下校して、もう一度お店でラバーメイドとなり和也さんと過ごせると思って喜んでいた私の心を伊集院 穂乃果が地獄へ叩き落としました。 それでもお店に行くと気分を切り替える事ができました。 それはきっとラバーメイドになれるからです。 無個性のラバーメイドに下條 夏希の落ち込んだ感情は入りません。 私はラバーメイドとして両腕を使えなくされ、足枷とチェーンで歩幅を制限され、首輪から下げたチェーンに支えられたトレーの上にドリンクを載せてお客様に提供します。 ミニスカートの中に手を入れられて、お尻を触られてもへっちゃらです。 驚いてドリンクを溢したりしません。 そんな嫌なことを振り払うように、私はラバーメイドとして働きました。 いつもなら和也さんとお父さんが入店している時間ですが、今日は来ていません。 伊集院 穂乃果と会食でもしているのかと思うと 悲しくなってきました。 その時でした。 和也さんとお父さんが入店して来ました。 すかさず、京子さんが私のところへやって来て耳打ちしました。 「夏希ちゃん、大手前さんのテーブルへ」 私は可動域が制限された首輪で頷くと和也さんのテーブルへ移動し、上半身で一礼してから和也さんの横へ座りました。 そんな和也さんとお父さんの会話が聞こえて来ます。 「和也、伊集院さんはどうだ?」 「いや、僕はあの子はタイプじゃないだよ!」 そう言って拒否する和也さんにお父さんが言いました。 「でも、彼女もうちと釣り合いが取れる数少ない家柄だと思うんだがなぁ、それに悪い子じゃないと思うぞ」 和也さんはお父さんの説得に対して納得していないように下を向きました。 この親子を見ていて私が感じた事は、父親の言うことは絶対で息子に拒否権はないということでした。 それでもなおも下を向いたまま拒否し続ける和也さんにお父さんが言いました。 「お前が本当に好きな女性がいれば話は別だがな」 それを聞いた和也さんが顔を上げました。 「好きな女の子はいます!」 「ほぉ和也、お前にしては珍しいな、どんな子なんだ!」 「同じ高校の一つ学年が下の女の子です!」 私はドキッとしました、理由は分かりません。 「それで、その子とはいつ知り合ったんだ」 「今日です、今日知り合いました!僕の一目惚れです!」 ドキッ!ドキッ!心臓が大きく脈打つのが分かりました。 「和也、縁談を断ろうと嘘をついているんじゃないか?」 「いいえ、僕は彼女に一目で魅入られてしまいました」 もう私のドキドキが止まりません。 「どれほど素敵な女性なのか、合わせてもらいたいなぁ」 「父さんにも気に入って貰えると思います、彼女の名前は下條 夏希さんと言います!」 私はビクッとして体が震えてきました。 武者震いというやつでしょうか。 同時に近くにいた京子さんがグラスを落として割っていました。 おそらく京子さんにも和也さん親子の会話が聞こえていたのでしょう。 「和也が惚れた女の子はまたそのうち会わせてもらうとしよう」 和也さんが私の名前まで出した事で、取り敢えずお父さんは引き下がってくれたようでした。 和也さんはお父さんに反抗した事に落ち着かない様子でラバーメイドである私の太ももを何度も何度も撫でていました。 私は心の中で呟きました。 “お父様すみません、あなたの息子さんが一目惚れした女は今、拘束されたラバーメイドとなって息子さんの隣にいます”と。 「ところで和也、話は変わるんだがお前がこの店に来たら必ず横に座らせているラバーメイドなんだが、購入しておいてやったぞ!」 驚いた表情の和也さんよりも私の方がかなり驚いて心臓が止まるかと思いました。 私は一切聞いていない話でしたので、怒っていいのか悲しんでいいのかも分かりません。 動けずにいる私を置いて父親は話を続けます。 「メンテナンスフリーの処置をしてから明日、我が家に届けてもらうから良かったら寮へ持っていって好きに使ってもいいぞ!」 これは人身売買の類では… 、そう思うと同時に甦った記憶の中のラバーメイド製造工場の事が過ぎりました。 ベルトコンベアでエデンに送られたラバーメイドは出荷されていたあの事が… 。 “私、和也さんと両想いになれたのに… 、逃げなきゃ!” そう思った私の背後から口に布が当てられました。 元々拘束されて自由のない体ですが、その体に全く力が入りません。 私は力なく崩れ落ちる中で和也さんとお父さんに話し掛けている女性を見ました。 “由香里ちゃん?!” 由香里ちゃんが和也さんとお父さんに説明をしています。 「ラバーメイドは本日は回収させて頂いて、一生ラバーメイドでいられる処置を施した後、ご自宅へお届けさせて頂きます」 「よろしく頼むよ!」 そんな会話を聞きながらトレーだけを外されると、私の体がギリギリ収まる遺体袋に詰められ、目の前のファスナーが閉じられ光が失われていくのと同時に私は意識を失いました。 気がついた時は車に乗せられて運ばれているようでした。 ラバーメイド姿である事はもちろん拘束され、ピッタリとした遺体袋に収まったままでした。 体を捩りましたが、ほとんど身動きできなかったので抵抗する心はすぐに折られました。 左右に体が振られていることから、かなり山奥に運ばれているような感じがします。 そんな揺れもようやく止まりました。 私は遺体袋ごと運び出されていきます。 遺体袋越しでも異様な感じがしてきました。 おそらく工場の中なのでしょう。 『製造番号K-1227 コーティング2層目に入ります』 『製造番号W-1843 エデンに送ります』 工場内は放送が流れ、以前私が働いていた時よりも大規模なものになっている感じがヒシヒシと伝わってきました。 『明日納期のK-7031が到着しましたので、こちらを最優先とします』 直感的にこのK-7031は私を指していると思いました。 あれだけ製造工場でラバーメイドとなりたいと思っていた私ですが、和也さんの一言でその思いは吹き飛んでしまいました。 しかし、このままでは言葉も話せず、一生ラバーメイドとして生きていくことになってしまうでしょう。 以前よりも研究を重ね、ラバーコーティングを剥がさなくてもラバーメイドとして生きていけるように改良されていることはおそらく間違いないでしょう。 それもありますが、一度ラバーコーティングされたらもう二度と人には戻れない事が一番の問題です。 小学5年生当時は簡単に洗脳されて、ずっとラバーメイドでいたいと思えたのですが今は違います。 人としての幸せを望む自分がいます。 ラバーメイド製造工場の事は幸い記憶が戻ったので知っています。 タイミングを見計らい逃げる事も私にはできるかも知れません。 遺体袋から出されて、拘束を解かれた後がチャンスです。 今着ているラバーメイドの衣装を脱いで、ラバースーツを脱がせるのは工程上、手間が掛かり簡単ではありません。 つまり、人の手が加わる時がチャンスだと私は考えています。 私は気を失っているフリをして、そのタイミングを見計らいます。 おそらく遺体袋の外側からでも、アームバインダーで腕を拘束されているのが分かるくらいピッチリとした遺体袋が開けられていくのが締め付けが緩んだことで分かりました。 腕に力を込めますが、かなり痺れているようで上手く力が入りません。 ですが、とにかく今は血の巡りを良くして拘束を解かれたその瞬間を狙って逃げるしかありません。 遺体袋から出されいる時も身動き一つしないで気を失っているフリをし、その時を待ちます。 足枷が外され、アームバインダーが外され始めた時でした。 また、口元に布が当てられて私の視界は歪み、力が抜けていきます。 “ああ、ダメだ” そう思いながらも意識を失いました。 『K-7031 最終コーティング10層目に入ります』 ぼんやりとする頭の中にそんな放送が聞こえてきました。 “最終コーティングって!しかも、10層って!” 私の記憶にあった当時のコーティングは3層、特別コーティングでも7層でした。 そんな特別コーティングを剥がすだけでもかなり苦労していた事は記憶の中にありました。 それなのに10層、しかもあれから時間が経っているので当時よりもラバーコーティング技術も向上し、ますます剥がせなくなっているだろうと思いました。 おそらく私は全身ラバーコーティングされて一生このままである事を覚悟しました。 抵抗しようにもフレームとシートで完全に固定されていて、指の一本も動かせません。 最終コーティングを終えた私は黒い水槽から引き上げられ、乾燥されながらベルトコンベアへと運ばれていきます。 ベルトコンベア上でコーティングが完了した後、フレームから外れた瞬間なら逃げる事ができるかも知ません、それがおそらく私にとっての最後のチャンスでしょう。 それを逃したらラバーメイドにされて私の人生は終わってしまいます。 以前に働いていたラバーメイド製造工場よりも遥かに大規模な工場内をフレームで固定されて動けないまま私は運ばれていきます。 眼下にベルトコンベアが近づいてきました。 もうすぐ、私はフレームから解放されるはずです。 どんどんベルトコンベアが近づいてきて私は言葉を失いました。 なぜなら、以前の記憶にはなかったベルトコンベアに人型の窪みがあるのです。 しかもその窪みに嵌って、フレームから外れるとすぐに上からのベルトコンベアで上下から挟まれて私はラバーメイドにされる工程へと流されていくのです。 もう何も考えられません。 私はベルトコンベア上でフレームから外れましたが、そのままベルトコンベアの人型の窪みに体がすっぽりと嵌まるとすぐに上からも窪みのあるベルトコンベアに挟まれて次の工程へと運ばれていきます。 体を動かそうとしましたが、フレームの時と同様に全く体が動かせませんでした。 『K-7031 スキャン開始します』 そんな放送を聞きながら、レザー光線が私の体を撫でるように移動していきました。 『K-7031 メイド衣装装着開始します』 無慈悲な機械的なアナウンスが流れ、私の体はベルトコンベアごとプレス機の中へ入っていきます。 私は一つ深呼吸した後、プレスされました。 プレスされながら私は思いました。 “終わった… ” もう抵抗したり逃げようとする気力もありません。 なぜなら今までなかった首に違和感を感じたからです。 おそらく、GPS付きの逃亡防止及び懲罰用の電流首輪が取り付けられたのでしょう。 それだけではありません。 両手首にも同じ違和感がありました。 “今は首輪だけではないんだなぁ” そう思いながら、私は【K-7031】と【QRコード】を刻印され、自動検品を受けてエデンへと流されていきました。 エデンには私の体に合わせた人型の窪みのある発泡スチロールで上下から挟まれます。 顔の部分だけ丸く開いているので、何をされているかが分かります。 ppバンドで発泡スチロールを外れない様にすると、お人形さんのようなマスクやリモコンも同梱されて段ボール箱に詰められました。 もう、真っ暗で何も見えません。 私が久しぶりに味わうラバーメイドは、以前よりも快適で気持ちよくなっていました。 私はそんな中で涙を流しながら目を閉じました。 その後も工場内を移動させられたり、車で運ばれているのは分かりましたが私にはもうどうする事もできません。 こうして私は大手前 和也さんにラバーメイドとして届けられました。 段ボール箱が開封され和也さんの顔を見た時は涙が溢れ、すぐにでも抱きつきたい衝動に駆られました。 ですが、私はただのラバーメイド、そんな事はできません。 和也さんのメイドとして仕える事しかできないのです。 私の意思で勝手に動いたり行動した場合、電流が流れるという説明が梱包されながらなされていました。 和也さんは取扱説明書を読んだ後、目の前でスマホを手にすると私に刻印されたQRコードをかざそうとします。 そこには私の顔写真と個人情報が… 。 慌てて、読み取りを拒もうとしましたが、電流が流れる事を思い出し体が固まりました。 QRコードを読み取った和也さんは、スマホを見つめて固まっていました。 目の焦点が合わず、手が震えたかと思うとスマホを落としてしまいました。 スマホには私の顔写真がしっかりと表示されていました。 和也さんは逃走防止及び懲罰用のリモコンを机の引き出しに仕舞うと鍵を掛けて使えなくしてしまうと私と向かい合って言いました。 「夏希ちゃんごめん、俺のせいでこんな事に… 」 涙を流しながら和也さんが話し始めました。 「高校で夏希ちゃんの事を見てから一目惚れして、君がメイドカフェでアルバイトしていた事も、あの夜のお店で働いている事も知ってたんだ」 目を少し瞑ってから和也さんは話しを続けます。 「ラバーメイドのお店は高校生だけで入店は拒否されるから、父さんに社会勉強の一貫として行きたいとお願いしたんだ」 「そして、拘束されウェイトレスをしているのが、直感的に夏希ちゃんのような気がして… そんな時に倒れそうになっていたので助けに入ったんだ」 「ラバーメイドになった夏希ちゃんと普段の明るい夏希ちゃんのギャップが堪らなくて、ますます惹かれていったんだ」 そう言った後、和也さんは俯いてしまいました。 「夏希ちゃんを一生ラバーメイドの姿にしてしまったのは、きっと僕のせいだ!お店で夏希ちゃんを気に入ってしまったばっかりに… 」 和也さんが私の事をずっと思ってくれていた事には正直驚きました。 私が和也さんの事を知ったのは京子さんのお店で働く様になってからだったからです。 「夜のお店で会うだけというのは、やめないといけないと思っていた時、学校で夏希ちゃんを偶然見かけて声を掛けようとしてぶつかったんだ」 あの時、私が和也さんにぶつかったのは偶然ではなかったのだと知りました。 だから、私のことを心配して、放課後も保健室に迎えに来てくれたのだと知りました。 “もう少し和也さんとの関係を築けていれば!” そう思う私に和也さんが言いました。 「もう少し早く告白していれば、こんな事にはならなかったかも知れなかったのに… 」 唇を噛み締めて、そう言ってくれただけでもう私は満足でした。 私はこれから和也さんだけのラバーメイドとして生きていきます。 ラバーメイドとなった私は言葉を発することも、自分の意思は何も伝えられませんが、和也さんに命じられれば動く事はできます。 この日、一人の女子高校生がこの世から姿を消し、その代わりに大手前家に製造番号【K-7031】という無個性のラバーメイドが誕生しました。 ラバーメイド【K-7031】はベッドに横たわり、主人である和也さんの指示の下、彼と抱き合うのですが決して人肌同士が触れ合うことはありません。 これからもこの先も… 。 これが高校生に戻れなくなった下條 夏希のお話です。 おしまい
ごむらば
2025-02-21 22:07:50 +0000 UTCJan Koda
2025-02-20 16:02:03 +0000 UTC