網で捕えられた怪物は逃れようともがくが網が引っ掛かり思うように動けない。 あっという間に警察官たちに制圧されて檻へ閉じ込められた。 閉じ込められる際、俺の上に優木さんが乗る形となった。 俺と優木さんの手足は檻から飛び出した形となり押し込められて南京錠が掛けられた。 怪物は網に絡まり、檻から逃れようとする演技をするのだが、動けば動くほど俺のペニスは優木さんに挿さり込んでしまう。 優木さんは高い鳴き声のような喘ぎ声を上げながら、俺の腹の上で動き回った。 気持ちいいけど、俺も耐えるのは大変だ。 後はこのまま薬で殺処分されれば、この怪物とともに俺の俳優人生も終わりだ。 そう思っていたのだが、トラブルが発生したようで撮影が中断した。 話によると俺と優木さんの入った檻に掛けられた南京錠は解錠するための鍵を紛失したため使用禁止になっていたのだが、手違いで撮影に使用されてしまったというのだ。 つまり、俺と優木さんは怪物の着ぐるみを脱ぐこともこの狭い檻からも出ることもできなくなってしまったのだ。 もちろん、俺のペニスは勃起したまま、優木さんに挿さったままということになる。 「何とかしますので、もう少し頑張って下さい!」 スタッフにそう声を掛けられたが、俺としては少しだけ俳優人生が伸びただけに過ぎない。 「もう、終わりだからしばらくこのままでもいいよ!」 そう呟いた。 「え!何が終わりなの?」 頭同士を接触させていた優木さんが話し掛けてきた。 もちろん、他のスタッフたちには怪物の鳴き声にしか聞こえないのだが、イヌのようなマスクを接触させる事で2人だけの会話ができる。 「ああ、うん、今日で俺、俳優辞めて家業を継ぐことになってるんだ」 「ええ、なんで俳優辞めちゃうの?」 「もう今年で30になるし、俳優として目が出なかったから」 「そうなんだ、でも高城和菓子店の商品はどれも美味しいから無くさないようにしないといけないし、難しいよね」 その言葉を聞いて俺は驚いた。 なぜなら、俺はSNSもやっていないし、個人情報を一切公開していない。 俺の芸名が高嶋 健吾(たかしまけんご)で本名が高城 健一(たかぎけんいち)は事務所のごく僅かな人間しか知らない。 さらに言えば売れない俳優について誰も興味がないだろう。 だから実家が高城和菓子店という事は誰にも知られていないはず、それなのに優木さんはなぜか知っていたのだ。 そんな俺に優木さんは話し続ける。 「【けんち】は俳優続けたくないの?」 優木さんのその言葉で俺は完全に固まってしまった。 彼女が口にした【けんち】は俺が幼い頃に自分の名前けんいちを上手く言えずに言っていた名前だ。 しかも、そう呼ばれていたのは小学生の低学年ぐらいまで、だから【けんち】を知っている人間はごく僅かに限られる。 それをなぜ優木さんが… 。 「ねぇ、聞いてる?」 俺は頭の中でいろいろ整理がつかず優木さんの質問に答えられずにいた。 「あっ、ごめん聞いてる!」 「じゃあ、あの時の約束覚えてる?」 「約束?」 「そう約束、約束したよね」 そう詰め寄られたが、優木さんとは今日が初共演、しかも約束をするほどの間柄でもない。 「ごめん、全然覚えてなくて… 」 「… 」 重い空気が流れる中、優木さんが口を開いた。 「30歳になっても… 結婚してなかったら【けんち】のお嫁さんになるって約束… 」 恥ずかしそうにそう言う優木さんの言葉はだんだんとは小さくなっていた。 「えー!」 俺はそれ以上の言葉が出てこなかった。 優木さんと俺が結婚の約束をしていた。 しかも、そんな凄いことを俺は一切覚えていないのだ。 だが、遠い記憶の中に1人の可愛い女の子の笑顔が浮かんできた。 その女の子と俺はよく遊んでいた。 そして結婚しようと約束を交わした様な気もする。 俺もその女の子もお互い大好きだったので。 名前は確か… さくら ゆうこ 佐倉 優子だった。 “ ! ? ” 【さくら ゆうこ と ゆうき さくら】 俺の中で全てが繋がった。 「優ちゃん!!」 「やっと気づいてくれたぁ!嬉しい!」 そう言うと優ちゃんは俺に力一杯抱きついてきた。 俺の興奮冷めやらぬペニスは優ちゃんの体の奥深くへと挿さり込み、優ちゃんは今日一番の喘ぎ声を上げた。 その後、無事に南京錠を破壊する事ができて、俺と優ちゃんは檻からも怪物の着ぐるみからも解放された。 もちろん、肉塊スーツからも。 当然と言えば当然なのだが、ラバースーツの中は俺の精液と汗で大変な事になっていた。 こうして俺は俳優人生最後の日を憧れていた優木 咲良とラバー越しだが結ばれ、最高の終わりを告げた。 それだけではなく、優木 咲良が俺の幼馴染みの佐倉 優子である事も知る事となったのだった。 数ヵ月後、実家へ帰る俺の隣りには映画を撮り終えた優ちゃんがいた。 「別について来なくても良かったのに」 そう言う俺の腕にしがみつく優ちゃん。 「だって、和菓子食べたかったんだもん!」 お店の入口から店内に入ると母親が出迎えてくれた。 そして、俺の横にいる優ちゃんに声を掛けた。 「もしかして優子ちゃん?えらいべっぴんさんになって… お父さん!」 俺の母親はすぐに優ちゃんに気づいて、父親に声を掛けた。 「どうぞどうぞ、入って入って」 そのまま、店の奥へと通される。 お客さんもいなかったので、俺の両親と俺と優ちゃんでテーブルを囲む。 父親も綺麗な優ちゃんを見て驚きを隠せない様だった。 俺の両親は店の事で手一杯なので、テレビを見る事がほとんどないため優ちゃんが女優をしている事を知らない。 そして、俺が俳優しているのも知ってはいたが、テレビやドラマを見る事はなかった。 俺は改めて座り直すと両親に言った。 「今まで好き勝手やらせてもらってありがとうございます、これからは和菓子作りでお世話になります」 そういって深々と頭を下げた。 顔を上げると父親は満足げに頷き、母親は笑顔だった。 そんな俺の両親に優ちゃんが話し始める。 「それとですね、私たち結婚します!」 そう言って俺の腕にしがみつく優ちゃん。 「ちょっと、まだ結婚は… 」 焦る俺とは対照的に父親は満面の笑みとなり、母親は少し涙を浮かべていた。 結婚はまだ早いと言おうとした俺に優ちゃんが言った。 「約束したでしょ!」 「それはそうだけど… 」 「約束は守らないとダメよ!」 そう母親に諭された。 俺と優ちゃんが結婚して、高城和菓子店の看板娘となるのは、そう遠くない未来に訪れるだろう。 おしまい